「はい、みなはん、ほーもるーもをはでぃめまず、せぎにづいでくだざい。」
(訳:はい、みなさん、ホームルームを始めます、席についてください。)
どしたの、それ。
「殺せんせー、33%ほど巨大化した頭部についてご説明を。」
「あぁ、すいぶんをずってぶやけました。しつどがだがいので…ムムム…。」
(訳:あぁ、水分を吸ってふやけました。湿度が高いので…ムムム…。)
そう言うと先生は顔を絞り出した。
なんだよこの表現、顔を絞ったなんた初めて聞いたよ!!
「さぁて、烏間先生から転校生が来ると聞いてますね?」
え、なにそれ聞いてない。
「あぁ、うんまぁ、ぶっちゃけ殺し屋だろうね。」
「律さんの時は甘く見て痛い目を見ましたからねぇ。
先生も今回は油断しませんよ!」
「うふふ。」
え、なにそれカワイイ。
はい矢田さん疑心の目で見ないで!
「いずれにせよ、みなさんに仲間が増えることは嬉しいことです。」
「そういや律、何か聞いてないの?
同じ転校生暗殺者として。」
「はい、少しだけ。
初期命令では私と彼の同時投入でした。
私が遠距離射撃、彼が肉迫攻撃。連携して殺せんせーを追い詰める、と。」
それ確実に死んでたんじゃね?
「ですが、二つの理由でその命令はキャンセルされました。」
「へぇ、理由って?」
「一つは、彼の調整に予定より時間がかかったから。
もう一つは、私の性能では彼のサポートに力不足。
私が暗殺者として、彼より圧倒的に劣っていたから…。」
それはおかしい…。
律がその転校生に劣るのかどうかは知らんが、圧倒的に劣っているとはいえ、サポートは多い方がいいはずだ。特に遠距離射撃なんて願ってもない戦力。
つまり、律が介入することになんらかの問題があった。
ということは…もしかして…転校生は…対先生用BB弾が効くのではないだろうか…?
律がそいつの動きを読み取れず当ててしまう可能性があった、と考えるのが自然だろう。
あのタコ…もしくは、触手持ちか…?
「裕?どうかした?」
「ちょっと転校生が気になってな。」
「確かに…律でも力不足ってどれだけ強いんだろうね?」
「いや、そうじゃなくて。そいつ…対先生用物質に弱いのかもしれない…。」
「え?どういうこと?」
ガララ…。
胸騒ぎ…寒気…憎悪…後悔…自責。
そういった感情が湧き出てきた。
どういうことだ…自分でも分からない。
ただ、その感情すべてにおいて、今教室に入ってきた男が原因だということだけは分かった。
「何…あの格好…?」「あれが…転校生…?」
いや身長的にそれはないだろ…、たぶん。
しかし、白装束に身を包んだ男はまさに異端。
すると突然手を突き出し、煙を出した。
そこには…鳩?
「あっははは。ごめんごめん、驚かせたね。転校生は私じゃないよ。
私は保護者。まぁ白いし、シロとでも呼んでくれ。」
「いきなり白装束で来て、手品やったらビビるよねー…。」
「うん、殺せんせーでもなきゃ誰だって…。」
渚が言葉を止めた。
あれ?殺せんせーは?
「ビビってんじゃねーよ!!殺せんせー!!」「奥の手の液化まで使ってよー!!」
「い、いや、律さんがおっかない話をするもので…。(汗」
あーいたいた、天井の隅の方でゼラチンになっていらっしゃる。
「は、初めましてシロさん。えーそれで、肝心の転校生は?」
「初めまして殺せんせー。ちょっと、性格とかが特殊な子でねー。
私が直で紹介させていただこうと思いまして…。」
シロが渚の方を見た。あくまで渚の方面だ。
「何か?」
「いや、みないい子そうですなー。これならあの子も馴染みやすそうだ。
では紹介します。おーい、イトナ!入っておいで。」
ドカン!!
え、なに?土管?
「俺は勝った。この教室の壁より強いことが証明された…。」
「「「「いや!ドアから入れよ!!」」」」
教室の壁壊すなー。
あと、イトナつったか?あいつ。
イトナ…1107番…なんてな、バカバカしい。たまたまだ。
「それだけでいい…。それだけでいい…。」
えっと…何を言っていらっしゃるのでしょうか…?
殺せんせーが完全にパニクって中途半端な顔になっちゃってるよ!!
ところで羽肉≪パニク≫っておいしそうじゃない?あ、全然?そうですか…。
「堀部イトナだ、名前で呼んであげてください。」
「ねぇイトナ君?ちょっと気になったんだけど、今外から手ぶらで入ってきたよね?
外土砂降りの雨なのに、なんでイトナ君一滴たりとも濡れてないの?」
…触手説が有望になってきたな。
「お前はたぶんこのクラスで一番強い。けど、安心しろ。
俺より弱いから、俺はお前を殺さない。」
そう言ってイトナはカルマの頭を撫でた。あらー良かったですねぇー。
「俺が殺したと思うのは…俺より強いかもしれないやつだけ…。
この教室では殺せんせー…あんただけだ。」
「強い弱いとは喧嘩のことですか?イトナ君。
力比べでは先生と同じ次元には立てませんよ?」
「立てるさ…。だって俺たち、血を分けた兄弟なんだから。」
は!?
「「「「えーーー!!!き、き、き、き、き、兄弟―――――!!!!????」」」」
「負けた方が死亡な、兄さん。
兄弟通し小細工は要らない。
兄さん、お前を殺して俺の強さを証明する。放課後…この教室で勝負だ…。」
そう言うと、イトナは出て行った。
「ちょっと先生!兄弟ってどういうこと!?」「そもそも人とタコで全然違うじゃん!!」
「いやいやいや!全く心当たりありません!!先生、生まれも育ちも一人っ子ですから!!
昔両親に、『弟が欲しい』ってねだったら家庭内が気まずくなりました!!」
「そもそも親とかいるのか!?」
***
「裕、大丈夫?顔色悪いみたいだけど…。」
「ん、大丈夫…。て、天気のせいかもしれない…。」
「まーた嘘ついて!…さっきのシロって人、知ってたの?」
「いや…でも、何か…あいつに対してとてつもない憎悪が湧いた…。」
「…裕、それって、どういうこと…?」
「…。」
もしかしたら…本当にもしかしたら…あいつらに、関係あるのかもしれない…。
***
昼休み。
ボリボリボリ…。
「すごい勢いで甘いもん食ってんなー。」「甘党なところは殺せんせーと同じだ。表情が読みづらいとことかな…。」
「にゅう…兄弟疑惑で、みなやたら私と彼を比較してます…。
むずむずしますねぇ。気分直しに、今日買ったグラビアでも見ますか♡
これぞ大人のたしなみ…にゅや!!」
「巨乳好きまでおんなじだ!!」
ドクン…。
…やばい!
この気持ち悪い感じ…消える…!こんな昼間に!?
まだクラスの奴らには言ってない…、パニックになってもらっては困る…。
俺は急いで教室から飛び出した。
「裕!?」
…はぁ、なんかコナン君思い出したよ…。
「だ、大丈夫?」
「なんとか…。」
「汗が…。いつもこんな感じなの?」
「いや…今日は明らかにおかしい…。いつもは夜中なのに…。」
「先生は分かるだろうし、とりあえず、教室に戻ろ?」
「そうだな…。」
殺せんせーは事情に即気づいてくれた。
しかし…ほんとに今日は異常だ…。
体がおかしい、何かに呼応しているようだ…。
***
放課後。またシロがやってきた。
「では殺せんせー…。
…これは…!!
イトナ、計画変更だ、この教室ごと破壊しなさい。」
「生徒には手出しさせません!!」
「殺せんせー、悪いけど気が変わったよ。
今日は君だけが標的のつもりだったが…どうやら、面白い獲物がいるようでね…。
やれ、イトナ。やつは見えなくても当てれば必ず死ぬ。」
「見えないって…まさか!!」
見えない…俺のことか…?
「やぁ久しぶりだね。こちらからは見えないから久しぶりという表現も違うかな?
まぁいい。こんなとこに隠れていたなんて…。
探したよ…検体番号801番。」
ッ!!
…やっぱりそうか…そうだよな…。
なんでもっと早く気づかなかったんだろう…いや、気づいていたのだ。
ただ、その事実から逃げたかった…。
「どういうこと!?見えないって、今はみんな…。」
「あれ?夜舞君は…?」
「ふふふ…。その名前も久しいものだ。
そうだ、君のお兄さんの体。良い道具になったよ、君にも感謝しないとね。」
こいつ…殺す…。
俺の中で…俺が…死んだ。
…コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス!
「お、ようやく姿を見せてくれたね。久しぶり…夜舞君?」
***
裕は…別人のようだった。
「よく…俺の前に…姿を現せれた…もんだな…。」
「それは私のセリフだよ。それに言っただろう。
当初はほんとに殺せんせーだけがターゲットだったんだ。
しかし、君がいるのを感じた…消えている君をね?」
「夜舞がいきなり現れた!?」「夜舞君ッ、どういうこと!?」
「…それは…後で…。」
「夜舞君!いけません!これは先生の仕事です!!」
「邪魔…どいてて…。じゃないと…殺す…。」
殺気…。とても深く濃密な…殺気。
「イトナ、やりなさい。」
ビュン!!
裕の横の机が飛んだ。幸い、教室がリング仕様だったのでけが人はいなかったが…。
「まさか…触手…!?」
裕が朝言っていた言葉を思い出す。
あの時、気づいていたの…?
「良い触手だ…。それは…?」
「もちろん、君の研究のたまものさ。
まぁ、君よりお兄さんの方が役に立ったけどね。」
裕が突然走り出した。
「イトナ、仕留めなさい。あの程度、簡単にヤれる。」
「言われなくとも…やるさ。」
だが、イトナの攻撃は裕に難なく躱された。
「ッ!?イトナ!しっかりしろ!」
イトナ君は何度も攻撃したが、一発も当たらない。
それどころか、攻撃をナイフでいなしているため、イトナ君の触手がダメージを受ける。
恐ろしい…不覚にもその表現が適切なのだろう。
みながみな、殺せんせーでさえ、彼らの戦いをただ黙って見ている。
「その程度じゃ…俺は…殺されない…邪魔を…するなっ!!!」
消えた。
と同時に裕はシロの背後をとった…。
「何ッ!?」
そして、渾身の一撃を与えようと拳を振りかぶった。
私は…彼のことを完璧に理解できている訳ではない…。
けど!ダメ…これじゃ…いけない!!
***
これで…殺せるよ…兄さん…。
ドンッ!!
俺の脇腹に何か飛んできて俺は押し倒された。
「矢田…さん…?」
「ダメッ!!今その人を殺したら!!
…裕が…死んじゃうよ…。」
「ッ!?」
俺が…死ぬ?
ハハハ…何言ってるんだ?俺はもうとっくに死んだ…。
死んだ?俺は…死んだ?
彼に…兄さんに…会える?
会えてない…死んでない…?
訳が…分からない…。俺は…死にたい?
死にたい…そうだ…俺は…あの時…。
「…いやだ…裕…死なないで…。
私の前から…いなくならないで…。」
「ッ!?」
彼女は、泣いていた。
こんな俺に、死ぬなと泣いていた。
俺は…彼女にもうこんな表情をさせないとあの時決めたのではなかったのか?
そうだ…、こんな顔…しないで…。ほんとに自分勝手だな…俺は…。
「矢田さん…ごめん、俺…もう大丈夫…。
だから…お願い…泣かないで…笑って…。
お願い…。」
「裕…?ほんと…?
そっか…良かった。」
彼女は安心したように微笑んだ。
またか…また、矢田さんに助けられちゃったな。
お礼…しない…と…。
俺は、気を失った。
***
くっ…。頭痛がする…。
「あ、ようやく起きましたね。己の殺気による反動でしょう。」
あーやだ、もっかい寝よ。寝起きにタコとかやってられんわ。
しかしその試みは遮られた。
「裕!」
「うわぁ!矢田さん!苦しい!死ぬっ!」
「あ、ごめん。」
「…奴らは?」
「シロさんたちは先生が追い払いました。
それより、夜舞君。先生この前、全部話してもらうと言いましたね?
シロさんと何があったか、話してください。みんなの前で。」
見渡すと、俺は教室の真ん中で横たわっていた。
全員が俺を見下ろしている。
「そうか…悪かった…。パニック起こさせて…。」
「そうじゃなくて!全部話してみなさいっての!」「そうだよ~!何がどうなってるの?」「夜舞、俺らは、君のことが知りたい。同じ…仲間として。」
仲間…ね。
とうとう俺も認められちゃったか…。
そうなると、もう逃げ場はないな。
「分かった、全部話す。だから…最後まで聞いて欲しい。」
「おう!」「ゆっくりでいいからな!」「もう俺らに迷惑かけないように全部さらけ出せ!」「ついでに恥もさらけ出せ!」
おい最後の奴誰だよ!
岡島か!?岡島だな!よし岡島、後で覚えてろ!
やっぱり俺は…このクラスにいて良かったな…。
そして語りだす。長いようで短い…俺の過去を。
お読みいただきありがとうございました。
シロ登場です。
というかイトナ君適当に扱われすぎじゃないですかね…?
はい、というのもこの作品ではイトナ君はそんなに重要じゃないからです。
理由は特にありません。理由がないのに無下に扱われるって…俺かよ。
新学期が始まってしまいました。
今まで春休みだったので毎日投稿してたわけですが、そうもいかなくなります。
序盤で言ったように週一を目指して頑張ります。
では次回もよろしくお願いします。(次回は過去編!)