暗殺教室verβ   作:サクソウ

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教育論の時間

杉野と進藤が握手を交わす。

その様子を遠くから眺めていた。

いいねぇ、そういうの。まぁ俺は部活というものをやったことがないからよく分からんが。

 

***

 

球技大会も不思議な勝利を収め、段々と夏が近づいてきた。

今日も体育は暗殺。

 

「視線を切らすな!ターゲットの動きを予測しろ!

全員が予測すればそれだけ奴の逃げ道を防ぐことになる!」

 

俺の得意分野だ。

 

(訓練開始から四カ月目にあたり、可能性がある生徒が増えてきた。

磯貝悠馬と前原陽斗、運動神経がよく、二人がかりなら俺にナイフを当てられるケースが増えてきた。

だが、ペアで言えば夜舞裕と矢田桃花が群を抜いてトップだ。彼らはシロの一件以来、目まぐるしい成長を遂げている。

赤羽カルマ、一見のらりくらりとしているが、その眼には強いいたずら心が宿っている。

女子は、体操部で意表をついた動きができる岡野ひなたと、男子並みのリーチと運動量を持つ片岡メグ。この辺りがアタッカーとして非常に優秀だ。)

 

「そして殺せんせー、彼こそ理想の教師像だ。あんな人格者を殺すなんてとんでもない。」

 

「人の思考をねつ造するな!失せろ!ターゲット!!」

 

ごもっともです。

 

「ッ!?」

 

「ぐはっ!」

 

渚が烏間先生に投げ飛ばされた。

それより…なんだ今の…?殺気…?

 

「いった…。」

 

「す、すまん!ちょっと強く防ぎすぎた。」

 

「あ、平気です。」

 

「ばっかめー。ちゃんと見てないからだ。」

 

渚…俺が言うのはなんだが…何者だ…?

 

***

 

授業終了。

 

「いやーしっかし当たらん。」「隙なさすぎだぜ、烏間先生…。」

 

「先生!放課後みんなでお茶してこーよー。」

 

「あぁ、誘いは嬉しいが、まだ仕事が残っていてな。」

 

「私生活でも隙がねーなー。」「ていうより、私たちとの間に壁っていうか距離を保っているような…。」

 

「私たちのこと大切にしてくれているけど、でもそれって…ただ任務だからなのかなぁ…?」

 

烏間先生はあまり私情をはさまない。

それゆえ隙が出来ることはない。

だが…その教育方針に若干の疑問を抱いているようだ。

教師として、どう振る舞うのが正解なのか…。

 

「よぅ烏間。」

 

「鷹岡?」

 

「新しい先生?」

 

「やぁ!今日から烏間を補佐して働くことになった鷹岡明だ!

よろしくな!E組のみんな!」

 

へぇ…。意味のないことを…。

俺に対してその程度の猫かぶりで騙せると思ってるの?

相当頭お花畑だな、こいつ。

 

「あんまり関わるなよ?」

 

矢田さんに軽く耳打ちしておく。

 

「裕…分かった、安心して。」

 

矢田さんにだけしか言わなかった俺が悪いかもしれないが…、恐らく人体に影響が出るようなことはしてこないだろう…。

だが、頭お花畑なのは俺だった。こいつは…相当やばい。

 

***

 

「な、なんだ?」「け、ケーキ!」「ラ・ヘルメスのエクレアまで!」

 

「いいんですか!?こんな高そうなの。」

 

「おう!食え食え!

俺の財布を食うつもりで遠慮なくな!」

 

じゃあ後でお前の財布盗んでやるよ、カルマが。

ってカルマいないしー、あいつ…逃げやがったな…。

 

「よくこんな甘いものブランド知ってますね?」

 

「まぁ、ぶっちゃけラブなんだよ…砂糖がよ♡」「でかい図体してかわいいな。」

 

何言ってんのこいつ…。

一刻も早く離れたいのだが、矢田さんを置いていく気にもならないので、黙って動かず見ていた。

まさしく「木」の役!俺は木だー俺は木になりきるんだー…。

 

「明日からの体育の授業は鷹岡先生が?」

 

渚!手出しちゃダメっ!

と、大声で言うこともできない。

なぜなら俺は今、木なのだから…!何言ってんの俺…。

 

「あぁ!政府からの要請でな。烏間の負担を減らすために…。」

 

「ケーキ…。」

 

よだれ!よだれ!!

 

「おぉ!!あんたが殺せんせーか!!食え食え!!!

あまぁ、いずれ殺すけどな。ハッハッハ…。」

 

なんたって餌だもんな。食ってもらわなきゃ釣ることもできない。

 

「同僚なのに烏間先生とずいぶん違うっすね。」「なんか近所の父ちゃんみたいですよ?」

 

釣られてる!!完全に釣られてる!!

よく考えろよ…近所にこんな親父いるかよ…。

いたら不審者通報しちゃうまである、匿名で。(弱気)

 

「へっへっへーいいじゃねぇか、父ちゃんで。

同じ教室にいるからには、俺たちも家族みたいなもんだろ?」

 

吐き気がしてきた…。

烏間先生が校舎からこちらを見ていた。

遠くて何を考えているかは分からない。だが…まだ悩んでいるのだろう。

 

***

 

翌日。俺が甘かったと言わざるを得なくなった。

 

「よぉし!みんな集まったな!

今日からはちょっと厳しくなるが終わったら、またうまいもん食わしてやるからな!」

 

完全に餌付けじゃねーか。

働かずに食う飯はうまい…こいつから提供されないのであれば。

 

「そんなこと言ってー、自分が食いたいだけじゃないのー?」

 

「まぁな、おかげさまでこの横幅だ。」

 

 

 

「さて!訓練内容の一新に伴って、新たな時間割を組んだ。」

 

「えぇ…」「嘘…だろ…?」

 

クラスがどよめいた、それもそのはず、その時間割には10時間目まで記されていたからだ。

 

「このぐらいは当然さ。

このカリキュラムについてこられれば、お前らの能力は飛躍的にあがる!

では早速…」

 

「ちょ!待ってくれよ!無理だぜこんなの!

勉強の時間、これだけじゃ成績落ちるよ!!

遊ぶ時間もないし、できるわけねーよこん…グハッ!!」

 

前原が蹴られた。

くそっ、警戒してたのに…反応できなかった…。

 

「出来ないじゃない、やるんだよ。

言っただろう。俺たちは家族で、俺は父親だ。

世の中で父親の命令を聞かない家族がどこにいる?」

 

あの薄っぺらい猫をかぶっていたのは…「かぶる必要がなかった」からか…。

別にこいつは本性が見えようとどうだって構わないのだ。

その前に逆らえないように手を打ってさえいれば…。

 

「抜けたいやつは抜けてもいいぞ?

その時は俺の権限で新しい生徒を補充する。

けどな、俺はそんなことしたくないんだ。

お前らは大事な家族なんだから、父親として一人でも欠けてほしくない。

家族みんなで地球を救おうぜ!なっ!」

 

「なっ、お前は父ちゃんについてきてくれるよな?」

 

おいてめぇ…そんな目で神崎さんを見るな。

 

「は、はい…。あの…私…私は嫌です!烏間先生の授業を希望します。」

 

間に合うかっ…!?

 

バシン…!!

 

鷹岡の振るった右手はなんとか止めれた。

 

「や、夜舞君…。」「裕!」

 

「ほぅ…。お前も父ちゃんに逆らうか?」

 

「は?何言ってんの?俺お前のこと誰とも思ってないけど?」

 

「このクラスにいる限り、俺は父ちゃんでお前らは子供。いいか?」

 

「理解できないな。そもそもお前、うちの教室に入ったことあったっけ?

そんなんで『このクラスにいる』とか…笑える。」

 

「ちっ、どうやら体で教えた方がもの分かりが…よさそうだっ!!」

 

遅い。烏間先生の半分だ。

 

「止めろ!鷹岡っ!!」

 

「大丈夫か?」「へ、平気っす。」

 

「夜舞は?」「俺受けてないんで大丈夫です。」

 

「ちゃんと手加減してるさ、烏間。

大事な俺の家族だ、当然だろ?」

 

う、後ろ後ろ!!

 

「いいや…!

あなたの家族じゃない…!!私の生徒です!!」

 

「殺せんせー!」

 

「私が目を離したすきに…何をやっている…!!」

 

「文句があるのか?モンスター?

体育は教科担任の俺に一任されているはずだ。

そして今の罰も立派に教育の範囲内だ。

短時間でお前を殺す暗殺者を育てるんだぜ?厳しくなるのは当然さ!

それとも何か?多少教育論が違うだけで、お前に危害も加えてない俺を攻撃するのか?」

 

殺せんせーは何も言えなくなった。

そして体育は続行。

正直…だいぶきついし、面白くない。分かっちゃいたけど…。

 

(くやしかろう…烏間。

育てた生徒をこの俺に奪われるのは…。

部隊で最優秀だったお前は俺の力など気にも留めてなかったが、

その俺にこれ以上ない出世のチャンスを奪われるんだ…。

こいつらの大部分はつぶれてもいい。

残った生徒が精鋭に育ち、あのタコを殺せれば英雄を育てた英雄としてお前を顎で使ってやるぜ…。)

 

こいつ…。これ以上ない下種な考えは、わざわざ読もうとしなくても伝わってきた。

少なくとも矢田さんだけはつぶさせない…。

 

「じょ、冗談じゃねぇ…。」「スクワット300回とか死んじまうよ!」

 

「烏間先生ぇ…。」

 

「おい!烏間は俺たちの家族じゃないぞぉ?

お仕置きだなぁ…。父ちゃんだけを頼ろうとしない子はっ!!」

 

ダメだ、俺もう体力が…。

…烏間先生!!

さすが…。倉橋さんを殴ろうとした腕は烏間先生にいともたやすく止められた。

 

「そこまでだ…。暴れたいなら俺が相手を務めてやる!」

 

「烏間ぁ…横やりを入れてくるころだと思ったよ…。

言ったろぉ、これは暴力じゃない。教育なんだ。

暴力でお前とやる気はない、やるならあくまで教師としてだ。

烏間、お前が育てた生徒の中で一押しの生徒を一人選べ。

そいつが俺と戦い…一度でも俺にナイフを当てられたら、お前の教育は俺より優れていたのだと認め出て行ってやる。ただし…使うのはこれじゃない…。」

 

そう言って、対先生用ナイフを投げ捨てた。

 

「殺す相手は俺なんだ…使う刃物も…本物じゃなくっちゃな…?」

 

「本物のナイフだと…?よせ!彼らは人間を殺す訓練も用意もしていない!!」

 

「安心しな、寸止めでも当たったことにしてやるよ。」

 

「俺は素手だし、これ以上ないハンデだろ?」

 

一見ハンデを持ったフェアな決闘。

だが、奴の狙いはそこじゃない。

俺らは初めてナイフを扱って人とヤりあう。

そのため、一瞬の躊躇と不安が生まれる。

そこを突く気だろう…。とことん下種な奴だ。

 

「さぁ烏間!一人選べよ!嫌なら無条件で俺に服従だ。」

 

烏間先生がまだ迷っているなら服従という手もある。

しかもこれはかなりリスキーな挑発…。

仮に乗ったとすると、誰かを選ばなきゃいけないわけだが…。

こういう時一番役に立つのがカルマ…なんだけどなぁ…。

すると…磯貝?前原?いや、あえて…渚…?

 

「渚君…できるか?」

 

「な、なんで渚!?」

 

「俺は地球を救う暗殺任務を依頼した者として君たちとはプロ同士だと思っている。

プロとして君たちに支払う最低限の報酬は当たり前の中学生活を保障するものだと思っている。

だからこのナイフは無理に受け取る必要はない。

その時は俺が鷹岡に頼んで、報酬を維持してもらえるよう努力する。」

 

渚は、静かにナイフを受け取った。

 

「やります!」

 

一言だけ告げると、渚はナイフを口にくわえると準備体操を始めた。

シリアスな場面でなんだけど、その渚超かわいい。永久保存したい。

 

「烏間ぁ。お前の目も曇ったなぁ。」

 

「渚のナイフ当たると思うか…?」「無理だ!プロ相手に本物のナイフなんて…。」

 

「渚の顔、よく見た?」

 

「夜舞?どういうことだ?」

 

「あいつ…お前らより緊張してるはずなのに、お前らより落ち着いてる…。

渚は大丈夫だ。じゃなきゃ烏間先生が選ぶわけない。」

 

「そうだね。裕の言う通りだ。」「確かに…。」

 

さっきまで『超かわいい永久保存したい』とか思ってたやつがよく言うよ…。

渚は…大丈夫。俺は渚と烏間先生のどちらも信用してるからな。

がんばれ。

 

「さぁ来い!!」

 

渚は、何も言わず…

 

笑った。

 

何気ない日常のように、学校に登校するように、当たり前のことを当たり前のように…彼は笑った。

 

そして、いつの間にか鷹岡の真正面にいた。

 

正面に来て、ナイフを振りかざしたところで…初めて鷹岡は渚の『殺気』を知った。

体勢を崩す。そこを渚が一気に襲った。

 

決着は…早かった。

 

「捕まえた。」

 

その一言で勝負は終焉を迎える。

一言で始まり、一言で終わった。むなしくも鮮やかな暗殺。

それはまさに…肉食動物が、草食動物の殺気に全く気付かずヤられるようだった。

渚は…それまた一言でいうなら『暗殺の才能』を持っている。

 

「あれっ?峰打ちじゃダメなんでしたっけ?」

 

渚がふと、ひょうきんな声を出した。

 

「そこまでです。勝負ありですね、烏間先生!

全く…本物のナイフを生徒に持たせるなど正気の沙汰ではありません。

怪我でもしたらどうするんですか。」

 

ボリボリボリ…。殺せんせーがナイフを食べ始めた。

 

「また裕は何でもお見通しですかー。」

 

うわびっくりした!だからいきなりは止めなさいと何度も…言ってないわ。

 

「いやそういうのじゃないよ…。

ただ、渚は最初の暗殺の時、全く殺気を感じなかった。

暗殺者としては、彼がずば抜けてる。」

 

「あー爆弾のときか。なるほどねー。

ところでさ?」

 

嫌な予感がする…。

 

「さっき渚君のこと『かわいい』とか思ってなかったー?

ダメだよー手出しちゃ。」

 

「そういう矢田さんは俺のことなんでもお見通しで…。ていうか出さねぇよ!」

 

「えっいや…そういうつもりじゃ…やっ、お見通しとか…そんなの…。」

 

なんか焦っていらっしゃる。

ついでに言っておこう。『何それかわいい永久保存したい』と。

 

「このガキ…父親も同然の俺に刃向かって…まぐれの勝ちがそんなに嬉しいか!!!!!

もう一回だ…心も体も全部残らずへし折ってやらぁぁぁ!!!!」

 

あー相当怒っていらっしゃる。正直な話、もうどうでもいいんだけど…。

 

「確かに、次やったら絶対僕が負けます。

でもはっきりしたのは…僕らの担任は殺せんせーで、

僕らの教官は烏間先生です、これは絶対譲れません。

父親を押し付ける鷹岡先生より、プロに徹する烏間先生の方が僕はあったかく感じます。

本気で僕らを強くしようとしてくれていたのは感謝します。

でもごめんなさい、出て行ってください。」

 

渚が頭を下げる。渚…こんな奴に頭下げる必要なんてないのに…。

 

「教師として一番うれしい瞬間は、迷いながら自分が与えた教えに生徒がはっきり答えを出してくれた時です。

そして烏間先生、生徒がはっきり出した答えには…先生もはっきり答えなければなりませんねぇ。」

 

烏間先生が鷹岡の顎に強烈な肘打ちを決めた。

 

「身内が迷惑をかけてすまなかった。

後のことは心配するな、今まで通り俺が教官を務められるよう上と交渉する。」

 

「「「烏間先生!」」」

 

「や、やらせるか!そんなこと!」

 

あんたもしつこいなぁ…。

すると、理事長が出てきて直々に解雇通知を渡した。

相変わらず恐ろしい人だ…俺は思わずぞくっとする。

鷹岡は何やら発狂して出て行った。

 

 

先生という職業はかっこいい。

前に殺せんせーが教えてくれたことがある。

迷いながらも生徒には悟られず、毅然と振る舞う、それが先生だと。

烏間先生は、そういう意味では理想の教師像なのだ。

だけど、たまには悟られてもいい、隙を見せてもいいんじゃないかと俺は感じた。

 




お読みいただきありがとうございました。

ちょっと別のことしてたら1時過ぎてました…。いやほんと申し訳ない。
ん?大丈夫、ちゃんと謝ってるよ?いやいやいや、棒読みじゃないですって~(棒)
さて、鷹岡の話です。正直無くてもいいぐらいどうでもいい奴です。
まぁ夏休みの島に繋げなきゃいけないんで、仕方なく書きました。
プール、オリジナル、そして期末。
もうすぐ夏休みですねー。いやだ!春休み終わったばっかとか聞いてない!

では次回もよろしくお願いします。
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