暗殺教室verβ   作:サクソウ

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二泊二日の時間

カリカリカリカリカリ…。パタン。

し、集中できない…。

お母さんめ…なにもっともらしい理由つけて私の部屋に裕を寝かせてるのよ…。

いやまぁね、リビングに寝かせるわけにはいかないし、両親の部屋ももっとダメだけど…。

 

「桃花?夜舞君の体拭いてあげたらー?」

 

ちょ!?いやいやいや…。一応私…というか裕も中三なんですよ!?

 

「え、で、でもほら!裕ずっと寝たきりだし!」

 

「さすがに四日も寝たきりじゃあねぇ…。死んでる訳じゃあるまいし。

お風呂に入れてあげたいけど…どうする?」

 

「拭かせていただきます!」

 

ダメだー。お母さんは私の親だけあって、強い…。

渋々私は裕の制服を脱がす。さ、さすがに上半身だけね。

3ヶ月間烏間先生の授業を受けてきたのだ、体つきもだいぶたくましい。

普段は結構ほっそりしてるのになぁ、意外と筋肉あるんだねー。

裕の胸に耳を当ててみる。

 

ドクン…ドクン…。

 

生きてる、動いてる。当たり前のことがものすごくありがたく感じた。

やだ何これ、ちょっと気持ちいい…。

 

そのまま、私は寝てしまった。

 

***

 

頭がぼーっとする…。

そういえば…俺は…シロに何か撃たれたんだっけ…?

あんまり覚えてないや…。

それより、なんか胸の辺りが重い…。

 

「へ?」

 

ちょーっと待って?

いやいやいや、全然理解できない。

上半身裸なのはこの際置いておこう。

だが、なぜ矢田さんが!?というかここどこ!?

ゆ、夢だな。うん、これは都合の良い夢だ。

こういう時はもう一回寝るのが一番。おやすみー…。

 

「ゆ、裕!?」

 

なーんてタイミングの悪さでしょう!

アニメでよくやるような、ちょっと事故で抱きついちゃったりしたとこに幼馴染が入ってくる時並みにタイミング悪い!

…そんなことリアルであんのかよ…。あるわけねぇだろ…。

ていうか入る前に気づけよ、察しろよってなるよね!

 

「ひゃ!い、いや、これはね!ちょっと色々あって…。」

 

何それ可愛い。艦隊っぽくコレクションしたい。

いや待て、それだと戦わせなきゃいけないのか…却下だな!

一応俺もジェントルマンですし、察しはしましたが…。

おい誰だ今首捻ったやつ。

ちょっと小指蹴ってやるから校舎裏に来い!(あくまで弱気)

 

「えーと…ここどこ?」

 

「わ、私の家…正確に言うと私の部屋…。」

 

いやまぁ分かっちゃいたけどね。

うん、そうでしょうね。

ここ俺んちとか言われたら末期症状だと思って精神科に入院しちゃうレベル。

 

「細かな状況の説明をお願いします…。」

 

「あら!夜舞君起きたの?」

 

「あ、お母さん。」

 

「桃花の母ですー。いつもお世話になってますー。」

 

あーなんだ、言われなくともそんな感じ。

 

「いえいえ、こちらこそ…というか矢田さんにはお世話にしかなってません…。」

 

「あら、謙虚なのね。」

 

「事実ですから…。」

 

ほんと、お世話にしかなってないよ…。

 

「んー烏間先生には…明日連絡しましょう!それじゃ夜舞君、明後日までうちにいてね!」

 

「そこまで迷惑かけるわけには…。」

 

「かなり強力な麻酔打ったんですって?じゃあちょっとまだ頭痛いわよねぇ?」

 

正確には撃たれたんですけどね。

 

「そんなことな…。」「痛いわよね?」「めっちゃ痛いです!」

 

あ、矢田さんのお母さんだ。

疑ってた訳じゃないが確信が持てた。

 

「ちょ、お母さん!」

 

矢田さん頑張って!俺ここにあと一日とか耐えれる気がしない!!

 

「桃花は遅れてた分の勉強とか教えてあげたらー?ね?」

 

「う、うん。そうする。」

 

弱い!矢田さんが弱い!

さすが母上…俺は知らないがこういうものなのだろう…。

 

「この人誰ー?」

 

小学三年生ぐらいだろうか?男の子がひょいと首を出した。

 

「この人はねーお姉ちゃんの同級生の夜舞君よ。

夜舞お兄ちゃんって呼んであげてね?」

 

その呼び方…普通なんだがこの人が言うとなんか意図的な何かが含まれてる気がするな!

 

「夜舞お兄ちゃん!」

 

「お、おう、よろしく。」

 

「なんで姉ちゃんの部屋にいるの?」

 

「俺もよく分からん…。」

 

「夜舞お兄ちゃんって…頭悪い?」

 

このガキ…。

 

「待て、それじゃちょっと問題出してやる。

1+2は?」

 

「3。」

 

「1+2+3は?」

 

「6。」

 

「1+2+3+4は?」

 

「えーっと…10。」

 

「それじゃ1から100まで足すと…?」

 

「えっとえっと…。」

 

「答えは5050だ!」

 

「おぉ!賢い!」

 

よしよしと頭を撫でてやる。

ちっさい子は単純でかわいいな。

 

「ほらほら、あっち行ってなさい。それじゃ夜舞君、また後でね!」

 

嵐は去った。

この空間に矢田さんと二人ってのは…なんか気まずいんだけど…。

 

「えっと…。俺どうすればいい…?」

 

「んーお母さんは理想を押し付けるタイプじゃないけど…こういうの、好きなのよねー…。」

 

「つまり明後日まで家には戻れない…と。」

 

「ごめんね。」

 

「いや謝られても困る、むしろ謝るのは俺の方だからな…。

その…迷惑かけてごめん。」

 

ん?なんか矢田さんの目の色が戻ったような気がした。

 

「そうだよ!まったく!殺せんせーに抱えられてきた時はびっくりしたよ!

裕はいっつも一人で行動するから!」

 

矢田さんが俺をそっと抱きしめる。

 

「次は…私も一緒だよ?」

 

「…分かった…。」

 

妙な胸の高鳴りを覚えた。

それは、安心する…失いたくない…ずっと一緒にいたい…そう俺に思わせた。

 

「桃花ー夜舞君ーご飯出来たよー。」

 

「はーい!

裕、行こっか?」

 

「そうだな。」

 

***

 

「うまい…。」

 

「それは本音みたいね!良かったわ!」

 

「裕はすぐ顔に出るからねー。」

 

「ついいじりたくなっちゃうわ。」

 

何この二人親子なの?そうだ、親子だ。

ていうか俺どんだけいじりやすいんだよ!

ほら!目付き悪いし、ついでに性格も悪いし、いじる要素がないと思うんだが…。

 

「姉ちゃんは夜舞兄ちゃんのこと好きなの?」

 

「ッ!?ゴホッゴホッ!!ご、ごめん、ありがと。」

 

コップを矢田さんに渡す。

そんなに咽るなよ…。

この年代の子ってそういう話題好きじゃない?

おいそこの母親さん、なんであなたまで目輝かせてんの!?

 

「それじゃあ、夜舞君はー?」

 

こっちに振るな!!

まぁ、俺はこういう質問に…慣れてるわけないじゃんふざけてるの?

 

「い、いや、その…なんですか…まぁあれですよあれ。」

 

「裕、動揺してる。」

 

「お前に言われたくねーよ…。」

 

「かっわいー♪」

 

「あなた絶対楽しんでますよね!?」

 

「そりゃ大事な娘の彼氏さんだもの。」

 

「いや俺別に彼氏じゃないんですが!?」

 

「え!?違うの?じゃあ夜舞君は他に好きな子いるの?」

 

「なめないでください!俺は他の女子とほとんど関わりがありません!」

 

修学旅行のノリで答えてしまってことに、一秒後、後悔することになる。

 

「それじゃ付き合っちゃえば♪私が直々に認定してあげよう!君ならいいよ?」

 

うーん、やっちまいましたねー。完全に地雷を踏んだなぁ…。

矢田さんはまだ咽てるのか顔が赤いし…弟さんはなんかニヤニヤしてるし…。

全く戦力にならんな…。

仕方ない、俺がまいた種だ、自分で収穫しないとな。

どうせ矢田母は俺の本心を見抜く、それならいっそ本心で…。

 

「それこそなめないでください。

俺は、別にその場の雰囲気に流されるほど堕ちちゃいません。

もし矢田さんと付き合うなら、俺はちゃんと告白してからにします。」

 

「おぉ、ますます君が好きになってきたよ。楽しみにしてるね♪」

 

ふいーっ。なんとかここを切り抜けられそうだ…。

しかしなんか告白まがいなことしちゃったな…深く反省。

矢田さんにも悪いことをした。後で謝っとこう。

 

***

 

私は弟にあの質問をされてから、赤くなりっぱなしだった。

お風呂から上がってリビングでくつろぐ…。

裕は今お風呂に入っているところだ。

 

「桃花。あの子、いい子じゃない。」

 

「またその話ー?茶化さないでよー…。」

 

「今はちょっと真面目な話よ。

桃花、あなたは可愛いしスタイルもいいわ、昔のお母さんみたい。」

 

最後の一言は聞かなかったことにしよう。

 

「だからね、私は母親としてあなたが心配。

いつどんな男にたぶらかされるか分からない。

あなたの容姿だけで選ぶような男に、私の娘を取られたくないの。

もちろん、あなたがそんな男に引っかかるとは思えないんだけどね…。」

 

うわーやっぱり私のお母さんだ、独占欲が強い!

 

「えっと、話が見えないんだけど…それで?」

 

「夜舞君…嘘つくの下手くそでしょ?

だから、晩御飯の時彼が言った言葉…あれは本心よ。

あんな風に言う子、私は今まで見たことがない。」

 

「まぁ確かに裕は変わってるからね。」

 

「ふふふ…。桃花は夜舞君のことどう思ってるの?」

 

「私は…。」

 

「焦らなくていいわ。あの子も迷っているもの。

二人が答えを出すのを、私はいつまでも待ってあげる。」

 

お母さんは私の後ろから腕を回した。

ほんと…似てるなぁ。

 

***

 

翌日。

俺は頑張って矢田母を説得し、リビングで寝かせてもらっていた。

『桃花と一緒に寝ればいいのにー。』

止めて!ほんとあの人の暴走止めて!

 

「おはよー夜舞君、よく眠れた?眠れないわよねぇ、やっぱり一緒に…」「遠慮します。」

 

「むー、私は全然気にしないのよ?あなたが桃花を襲っても。」

 

「俺が気にしますよ!ていうか恐らく矢田さんも!」

 

「じゃあ桃花がオッケーすればいいのね?」

 

「いやそういうわけじゃ…。」「桃花ー?」「待って!!」

 

「んー?どうしたのー?あ、裕おはよ。」

 

「お、おう、おはよ。」

 

「…何かあった?その顔はあったって顔だね…。」

 

「いやぁね、ちょっと夜舞君と…。」「ほら!矢田さん!学校遅れるよ!」

 

「そういえば、今日裕は学校行くの?」

 

「ダメよ。夜舞君はまだ寝てることになってるんだから。」

 

「…だそうだ。今日は一日おとなしくしとく…。」

 

「うん。その方がいいよ。私の部屋勝手に使っていいから。

それじゃ、行ってきまーす!」

 

「行ってらー。」「行ってらっしゃーい。」

 

バタン。

というかこの人と二人ってのも気まずいな…。

俺世界中のどの人とも気まずくなれるんじゃね?

 

「さて!私は買い物にでも行ってくるわ。

夜舞君、晩御飯何食べたい?」

 

「今晩御飯の話されても実感ないんですが…そうですね、じゃあ一番自慢な料理が食べたいですかね。」

 

「ほうほう。ここで『なんでもいい』っていう無責任な答えが出ないとこが感心だね。

言ってることは変わんないけど。」

 

ごもっともです、言ってること変わんないのよ。

 

「ま、俺はそういう奴ですから。」

 

「なるほど、夜舞君は卑屈…と。」

 

ねぇ今なんでメモしたの!?俺の個人情報!

…そういやもうバレまくってるから今更だな。

 

さて、暇だし、俺が寝てた時の勉強の復習でもしますか…。

 

***

 

「おぉ、肉じゃがですか!」

 

「そうよ。純和風自慢の料理!」

 

「お母さん、これだけは得意だからねー。」

 

「『だけ』は余計ですー。」

 

「うまい…。」

 

「昨日と一緒じゃない!他にないのー?

んーでもいいわ。下手に言葉並べられるよりも素直に一言もらえた方が嬉しいもの。」

 

「それじゃ、おいしいです。感謝感激です。」

 

「そこまで言ってくれるなら作った甲斐があったわね!」

 

「お母さん言ってること矛盾してない…?」

 

「夜舞お兄ちゃんは明日帰っちゃうの?」

 

「そうだな、学校行ってそのままうちに帰る。」

 

「また来てねー。」

 

「それは明日言ってもらいたいな…。」

 

そんな会話を交わす。

勝手ながらほんとに家族みたいだ…。

暖かいこの空間、矢田母のいじりは相変わらずだったが、居心地がすごく良かった。

 

 

 

「裕、起きてる?」

 

「起きてるよ…寝付けない…。」

 

結局、矢田さんに今朝の事がバレて同じ部屋に寝ることになってしまった。

さすがに最後の抵抗をして、俺は布団で寝せてもらえた。言わずもがな矢田さんはベッドだ。

 

「裕より先に寝ちゃったら襲われるかも…。」

 

「そういうこと言うなよ…俺結構メンタル弱いんだから…普通に傷つくぞ…。」

 

「ふふふ。別にいいんだよー?」

 

「お前いつかほんとに襲われるぞ?」

 

「そうなったら裕が助けてくれんでしょ?」

 

「…そうかもね。」

 

「ッ!?あ、明日も学校だからっ。おやすみ!」

 

「おう、おやすみ。」

 

俺はこの人を守りたいと思ったから…。

だがそれは自己満足なのではないのだろうか…?

自分の理想を彼女に押し付けているのではないのだろうか…?

それは…彼女を傷つけることになる。

だから俺は…どうすればいい…?

 

今すぐに答えは出ない。

このまま一生出ないかもしれない。

それでもいいかもしれないと思いどこか妥協している自分に腹が立つ。

こんな関係いつまでも続く訳がない。

矢田さんにも出会いがあり、別れがある。

それを俺が奪っていい理由にはならない…。

 

俺は…どうしたい…?

 

***

 

「それじゃ、行ってきまーす!」

 

「行ってらっしゃい。夜舞君また来てね!いじり倒してあげるから。」

 

「その言葉聞くと来たくなくなるんですが…お世話になりました。」

 

「裕ー学校遅れるよー?」

 

「では、行ってきます。」「行ってらっしゃい!」

 

 

俺は初夏の空間へと足を踏み出す。

期末テストが、近づいていた。

 




お読みいただきありがとうございました。

ストック切れです。これからは週一投稿です、すいません…。
さて、矢田母が登場、なんか勝手な事言ってます。
ていうか夜舞君?それ『告白まがい』じゃなくて『告白宣言』だからね?
こんな彼女欲しいものです、夢物語ですが…。(願望ですらない)
とうとう一学期編が終わりになります。
評価によっては二学期編でもっとオリジナルを増やしていこうかなと考えている所存です。

では次回もよろしくお願いします。
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