暗殺教室verβ   作:サクソウ

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期末の時間

「ヌルフフフフ。皆さん、一学期の間に基礎ががっちりできてきました。

この分なら期末の成績はジャンプアップが期待できます。」

 

ジャンプだけに?はいすいませんでした反省してます。

 

野外で勉強会。

暑くなってきた最近でも木陰は涼しく快適だ。

期末テストまで残り一週間ほど、最後の詰め込みに追われていた。

 

「殺せんせー、期末もまた全員50位以内を目標にするの?」

 

「いいえ、先生はあの時総合点だけ気にしてました。

生徒それぞれに見合った目標を決めるべきかと思い至りまして。

それで今回、この暗殺教室にぴったりな目標設定しました。」

 

なるほどなるほど。

聞けば殺せんせーは触手一本失うことで10%~20%機動力が落ちるそうだ。

 

「そこで問題です。今回は総合点の他にも教科ごとに1位を取った者に触手を一本破壊する権利を進呈します。」

 

まじか、うちの学校は6教科、総合点も含め計7本の触手が破壊できるのか。

 

「これが暗殺教室の期末テストです。賞金100億に近づけるかどうかは、皆さんの努力次第なのです!」

 

さすがだな、殺せんせーは。

自分の体を賭けた大勝負。普通の人間にはできんわ(笑)

 

***

 

放課後。

お気に入りの場所で寝ていると矢田さんが申し訳なさそうにやってきた。

 

「ねぇ…裕、あのね…。」

 

もう嫌な予感しかしない。

俺はテストの勘は当たらないくせに、嫌な予感は外れたことがない。

ほんと俺ってネガティブ!!まじどこのネガ谷君?

 

「今日、お母さんがうちに来いって…。」

 

「この前行ったじゃねーか…不可抗力だけど…。」

 

ほら!悪い予感当たった!!

ていうかこんなペースで行ってたら俺矢田家に取り込まれちゃう。

なんなの?俺は進化素材か何かなの?

俺なんか進化素材にする奴を見てみたいものだ。

そうとう卑屈でそうとうネガティブなのだろう、ネガキングとかその辺りだろうか。

メガシンカじゃなくてネガシンカ!!…最悪じゃねーかそれ。

 

「そこをなんとか!!」

 

矢田さんがこんなに懇願するということは何かしら仕込まれているか、何かしらリスクを背負っているのだろう。可哀想に。

だが俺はあのコメディ空間にこんな早々戻るつもりはない。

矢田さんには悪いがここは一旦引かせてもらお…。

 

「この前のことバラすって…。」

 

んーこの前のことというのはつまりこの前のことでしょうか?

いやーほんとあの母様には頭が上がんないな…悪い意味で。

 

「…はぁ。仕方ないな…。」

 

「ほんと!ありがとう!!」

 

「いや行かないとなんか俺も危なそうだし…。」

 

つ、ツンデレなんかじゃないんからねっ!!

 

***

 

「いらっしゃーい!」

 

「は、はぁ、どうも。お邪魔します…。」

 

「あらー、なんか元気ないわね?」

 

「半分脅されたからじゃないでしょうか…。」

 

「だって夜舞君そうでも言わないと来てくれそうになかったんだもん。」

 

あー矢田親子はなんでそんなに俺の考えが分かるんでしょうか?

俺の顔に逃げるという文字でも書いてあるのでしょうか…。

ちょっと洗面所行って落としてくる!

 

「まぁ、私としては今日も泊まっていただきたいところなんだけどー。」

 

「今日はちょっと頭が頭痛で…。」

 

「桃花ー?看病してあげた…。」「治りました。」

 

「晩御飯ぐらいは食べていってねー?

さすがに無理やり連れてきて何も無しってのも申し訳ないし。」

 

なら今すぐ帰してほしいんですが!?

さすがに口に出すのはまずい。

いずれにせよ、この人なら分かってる気がする…。

 

「そ、それじゃ、裕、どうしよっか?」

 

居心地が悪そうに矢田さんが聞いてきた。

唯一無二の答えは『帰る』なのだが、第二候補としては…?

 

「勉強…か?それ以外特にやることもないしな…。」

 

「そうだね!そうしよ!それじゃ裕が教えて!」

 

「え、なんで?勉強って一人でやるもんじゃないの?」

 

「んーそれでもいいけど…。せっかくだしねー?」

 

「ていうか矢田さんって俺より成績良いイメージがあるんだが…。」

 

「いや!私の方が悪かったもん!」

 

なんで知ってるんだよ…俺の成績。

もう最近は矢田さんが何知ってても驚かなくなってきた…。

 

「この前の中間ならノーカンだ。」「それ以外でも!」

 

「とにかく!教えてくださいお願いします…お願いっ♪」

 

そこまで言われたらするしかないか…。

ていうか言い直さなくていいからね!?

 

***

 

正直俺が教える必要があったのかというぐらい矢田さんは割と理解していた。

 

「それでそれで?進展あった?」

 

「いや普通に勉強してただけですから…。」

 

「そうだよー。」

 

まだ言ってるのかこの人…。

俺は呆れつつもほうれん草を口に入れる。うまい。

矢田さんもだいぶ慣れてきたようで今は普通に受け答えができるレベルだ。

 

「なぁんだ、つまんないなぁ?」

 

「それに裕に期待しても無駄だよー、一応ヘタレなんだから。」

 

「ちょっとー本人いるんですけどー。

あと一応ってなんだよ、俺が一回しでかしたみたいじゃねーか…。」

 

「え?何々?何やらかしたの!?」

 

「いや何もしてませんよ…。」

 

「ところで夜舞君?そういえば家に何も連絡入れてないみたいだけど大丈夫?」

 

うわっ!この人まだ常識人だったんだ!?

いやはや、てっきり『常識ナニソレオイシイノ』症候群にかかった人かと思ってたのに!

 

「あー、ま、まぁ大丈夫です、えぇ…。」

 

「なんか失礼なことと他に何か隠してる気がする。」

 

「お母さん、あまり人の家のことは詮索しない方がいいよー?」

 

うわっ!矢田さんも常識人だったんだ!?

いやはや、てっきり『常識ナニソレオイシイノ』症候群にかかった人かと思ってたのに!

大事なことなので二回言ったわけじゃないです。二人だからです。

 

***

 

「テスト終わったら夏休みだね。」

 

「そうだな。」

 

フェイバリットプレイスでのんびりと勉強中だ。

日差しが肌を焼く。

その感触でさえ心地良いと感じるほど、矢田さんと一緒にいるのが好きだ。

 

沈黙、ペンを走らせる音、そしてまた沈黙。

何も話さなくても気まずいとは思わない自分に気づいた。

『目は口程に物を言う』とはよく言ったものだが、空気でもその役割を十分すぎるほど果たしているように感じる。

 

「ここどうやってやるの?」

 

「発展問題じゃねーか…、俺に聞くな。もっと頼りになる活字さんがいる。」

 

そう言って俺は『活字さん』なる解答を持ち上げた。

今若干引かれた気がする…。

おいおい、活字さんって偉大すぎて尊敬しちゃうレベルなんだぞ!?

 

「さっき裕やってたじゃん!ねぇ教えてよー。」

 

鬱陶しいあざとい煩い可愛い。

 

「…これ代入してf(x)をだな…。」

 

我ながら俺ってチョロいな。

これじゃ矢田さんに何か頼まれたらもう断れない気がする。

ちなみに同級生女子の頼みも断れないし、年下(矢田弟)も然り。

やだ、俺って超チョロい!『チョロ裕』とか発売したら売れんじゃない!?

 

「おぉ!なるほどねー。ありがと♪」

 

今度の期末は一味も二味も違う。

なんたって100億がかかってるからな。

そろそろ所持金も少なくなってきたから、何としても手に入れたいところだ。

 

とは言え、俺はずば抜けてる教科がある訳でもない。

唯一得意な数学はカルマに勝てないだろうし…。

クラス平均を下げないように頑張りますか。

 

「夏休み始まったらどっか行こっか?」

 

「唐突すぎて話が読めん。何?地球爆破が早くなったの?」

 

「『逝く』じゃないよ!ほら、弟も連れてさ!」

 

「姉弟で行って来いよ…。俺いるのおかしいだろ。」

 

「行こ…?」

 

「あのな…、俺に色仕掛けは通じな…ッ!?」

 

「ふふふ、ビッチ先生に教わったんだー♪」

 

「いや普通に理性飛ぶとこだったぞ…。」

 

「ん!それ色仕掛けしてる人に言ったら失礼なんだよ!

裕の理性飛ぶところとかむしろ一回見てみたいまである!」

 

「さいですか…。

つーかビッチ先生、人に教える暇あったら烏間先生なんとかしろよ…。

あとその喋り方変だからやめた方がいいよ?(小声)」

 

「あ、裕もやっぱりそう思うんだ?

あれっ!?変だった!?裕の真似なんだけどなぁ…。」

 

「いや、ありゃ明らかにそうだろ。うわ俺って客観的に見たらああなるの!?」

 

「絶対気があるよね!純情だなービッチ先生。」

 

「いっそ言っちゃえばいいのにな…?」

 

…人の事言えたもんじゃない。

俺は自分の感情に気づいているんだと思う。

だけど、失うのが…壊れるのが…怖い。

それで壊れるならその程度の関係だとどこかで読んだ。

 

そうなのかもしれない。

俺は『その程度の関係』に居心地の良さを感じているのかもしれない。

いや…感じているのだ、明らかに、はっきりと。

この関係で良いと思っているのだ。

決着をつけるのを…躊躇う。

人間は少なからず自己中心、他力本願なのだから。

 

「裕?どうかした?」

 

「いや…ちょっとな。」

 

俺は未だ悩み続ける。

 

 

答えが出ていることはとっくに気がついているのに。

ただただ先延ばしにする、この問題に直面することを。

 

そんなことに意味が無いのにも気がついているのに。

 

***

 

期末テストが始まった。

どうやら渚たちはA組と賭けをしたらしい。

 

『首位を獲った方の勝ち』

 

たった一行のシンプルな賭け。

ルールもベットもゲームボードも変わらない。

まさに真剣勝負。

真剣な勝負ほどシンプルになってくるという法則があるような気がする。

 

開幕のチャイムが鳴る。

 

さぁ…ゲームを始めよう…!

 

***

 

「素晴らしい!!学年1位も奥田愛美!!」

 

数学の結果を待たずしてE組の勝利が確定した。

英語で中村さん、社会で磯貝、そして理科は奥田さん。

ちなみに俺は総合12位。

こらそこ!微妙とか言わないで!!

分かってるよ!微妙なんだよ!!

 

赤羽カルマ:総合13位

 

というより気になったのはこっちだった。

あいつ…手抜いたな…。

どうせ『通常運転で勝ってこそ云々…』とか思ってたのだろう。

 

 

人は敗北を知って強くなる。

 

本で読んだ時は単なる絵空事だと思っていた。

負けただけで強くなれるものか…と。

だけどこの教室で過ごしていて本当に敗北は成長なのだということを実感した。

 

つまりだ…黒歴史は成長!うん!

中二病とか高二病とかは立派な成長なのです!!

俺とか成長しまくってて寧ろヤバいんじゃないかと心配してる。(中二病)

いやでも社会は闇だからな、もっと黒歴史を残さないと…。(高二病)

社会が闇ってことは光はどこ?あ、もう消えたのか…。(ネガティブ)

もうマジ社畜怖い、全部まとめてなんとかならないかしら?(卑屈)

 

***

 

「一人一冊です!」

 

ズシッ、メキッ!…という音と共に、机の上に何やらアコーディオンが置かれた。

おいおい、机壊さないでくれ…。

そもそもアコーディオンって『冊』って数えないからね?

 

「これでも足りないぐらいです!夏の誘惑は枚挙にいとまはありませんから!」

 

これ夏休みのしおりだったの!?

いやーてっきり吹奏学部に入って『響け!』とか『ユーフォ…なんとか』とか言っちゃうのかと思った。

え?あのアニメそんなこと言わないの?偏見って駄目だね。

 

「これより夏休みに入るわけですが、皆さんにはメインイベントがありますねぇ。」

 

「ああ、賭けで奪ったこれのことね。」

 

「本来は成績優秀クラス、つまりA組に与えられるはずだった特典ですが、

今回の期末はトップ50のほとんどをA組とE組で独占している。

君たちだってもらう資格は十分あります!」

 

 

『夏休み!!椚ヶ丘中学校特別夏期講習!!沖縄離島リゾート二泊三日!!』

ドンドンパフパフー!

 

 

「―君たちの希望だと、触手を破壊する権利は教室では使わず、

この離島の合宿中に行使するということでしたね。

触手7本の大ハンデでも満足せず、四方を先生が苦手な水で囲まれたこの島も使い、

万全に貪欲に命を狙う。

 

…正直に認めましょう。君たちは侮れない生徒になった!

親御さんに見せる通知表は先ほど渡しました。

これは…標的≪せんせい≫から暗殺者≪あなたたち≫への通知表です…

 

暗殺教室!基礎の一学期!!

 

これにて終業!!!」

 

 

教室いっぱいの二重丸。

そして、俺の決断が迫られる夏休みへと、突入する…。

 




お読みいただきありがとうございました。

週一投稿ってかなりゆっくりしたペースなんだなぁと思いました。
まぁとりあえず、これで一学期編が無事終了となります。
夏休み編はそんなに長くならないつもりですが、一応章は分けておきます。
これからは曖昧な表現が多く、分かりにくい書き方で進めていこうと思います。
いやだってなんかかっこいいじゃん?
文学タグを狙っていきましょう!
…冗談は置いといて、それは夜舞・矢田さん自身がかなり迷って混乱しているからです。
混乱しているが故、敢えて曖昧な表現にしています。
分かりにくいかもしれませんが決着がつくまでどうぞご了承いただけると嬉しいです。

では次回もよろしくお願いします。
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