暗殺教室verβ   作:サクソウ

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決意の時間

「俺が行く。」

 

一瞬全員が静まり返った。

 

「それは承服できません、それでは茅野さんや渚君が行くのと同じです!」

 

「そうだよ!」「お前ひとり行かせる訳にはいかんだろ!」

 

「俺なら気配を消して潜入できる。それに俺は恐らくカメラに映っていない。

つまり、ここからどこに立ち去ろうと問題はない。」

 

この状況でどのようにカメラを何台置くかは電話の内容から推定していた。

案の定、カメラは3台、北東・東南東・南南西に設置してあるのを視認した。

 

「にゅう…。分かりました…。」

 

「いいのか!?」

 

「仕方がありません、烏間先生。私が責任をもって夜舞君をサポートします。」

 

「待て、それなら俺も責任者として行かねばなるまい。」

 

「烏間先生は気配が強すぎる。俺が消せる範囲じゃない…。」

 

「…そうか。」

 

「先生…私も…行く。」

 

「矢田さん!?ダメだ!俺はさすがに矢田さんに気を回せる程強くない!」

 

「理由がネガティブです…。しかし、夜舞君が言ったことは正しい。

矢田さんは…。」

 

「でも!私この前決めたんだよ!次は裕と一緒って!

だから行かせて!私は裕のために動きたい!!

ずっと裕の傍にいたから多分私も映ってないし…。」

 

「…夜舞君、矢田さんの気配は消せますか?」

 

「まぁ、一応…。でも本気か!?殺せんせー?」

 

「恐らく君一人では厳しいでしょう。

夜舞君と矢田さんの連携の良さは烏間先生から聞いています。」

 

「…分かった、それじゃ早いとこ行かないとな。」

 

「お、おい!ほんとに大丈夫かよ!?」

 

「私がついていますから大丈夫です!」

 

「それが一番不安なんだよー。だって実質夜舞君と桃花ちゃんの二人だけでしょ!?」

「俺らもクラスのために動きたい!」「そうだ!そうだ!」

 

騒がしくなってきたな…。

どうしたものか、時間がかかるほど厳しくなってくる…。

 

「止めろっ!」

 

「か、烏間先生…。」

 

「ここは…彼らに任せるのが一番だ。

俺たちは彼らが無事終わらせるのを待っているべきだ。」

 

「そ、そうかなぁ…。」

 

「では夜舞君、矢田さん!早く行かないと動きがバレてしまいます!」

 

「そ、そうだな。んじゃ行くか。」

 

「夜舞!」

 

「磯貝…?」

 

「クラス委員として、E組の一員として、君と矢田さんに全て託す。

だから、絶対帰ってこいよ!君らが帰る場所はちゃんと用意しておくから!」

 

「おう!大丈夫だ、問題ない!」「夜舞それフラグや。」

 

俺たちは歩き出した。

E組をこんな目に合わせたやつのもとへ。

大体検討はついているが…当たってなきゃいいなと願った。

 

「時に夜舞君?どうやって気配を消すんです?」

 

「この前言ったろ?消える前から肌に触れている奴も一緒に消えるの。」

 

そう言って俺は矢田さんの手を握った。

 

「ひゃっ!?」

 

「…ごめん、これが一番楽なんだよ…。」

 

「い、いや別にそんな悪いとかじゃないからっ。」

 

俺は存在を消す。

暴走したシロ戦以来、俺はある程度この能力を操れるようになっていた。

 

「ほう、これでもう先生たちも消えているのですか?」

 

「あんまり実感ないんだけど…。」

 

「先生は死んでもいいけど 「にゅや!?」 矢田さんは細心の注意を払って。ドアに挟まれたり、飛来物にぶつかったりしたらそれだけで終わりだから。」

 

「う、うん分かった。」

 

(あれ?この能力使えば今の状態なら簡単に殺せるんじゃない…?)

 

「夜舞君!!今結構ひどいこと考えませんでした!?」

 

「よし!それじゃ、潜入開始だ。」「無視ですか!?」

 

***

 

さすが俺…。

存在感の薄さなら誰にも負ける気がしない。

影薄四天王レベルだ、チャンピオンじゃないのかよ。そこも影薄仕様かよ。

 

「ここってどうやって通るの?」

 

どうやら劇場を通らなければならないらしい。

しかし今の状態では俺らはドアを開けることができない。

 

「んー、仕方ない、少しだけ解除するから…。」

 

「分かった、すぐ入ってまた消えるんだね。」

 

さすがに自分で能力とか二度と言いたくない。

黒歴史確定だ、あれ?俺の記憶ほとんど黒歴史なんだけど…どないやねん。

 

さすが矢田さんと言うべきか俺の言わんとすることを先読みして、行動してくれる。

やだ、すげぇかっこいい!

イケヤダ…なんか違うな。イケ桃?いやいやダサすぎだろ。

イケバナ!もはや違うじゃねーか!!

 

くだらないことを考えつつ出口の扉の前に来たとき。

 

「あぁ?誰だ?」

 

き、気づかれた!?

幸いステルスモードだったので、姿は見られていないようだ。

 

「裕!どうする!?」

 

「こっちの声は聞こえないハズだから…何とかしよう。」

 

「説得力ない!!」

 

え、そうですか?めっちゃ説得力ありますよハハハ…。

 

「矢田さん、夜舞君。先生に一つ案があるのですが…。

これはかなり危険な賭けです。やってみますか…?」

 

***

 

「ヌルフフフフ。始めましてですねぇ。」

 

「…。テメー何かぶりつきで見てやがんだ!!」

 

「ヌルフフフフ、無駄ですねぇ。これこそ無敵形態の本領発揮!

まぁまぁそう怒らずに、少し世間話でもしましょうよ。」

 

「白々しいわ。お前一人ではここには来られないからな、数人いるんだろうよぉ!」

 

「はて?そんなに気配は感じられませんが…。不思議ですねぇ。」

 

「なめんじゃねーぞタコ…ボール野郎。俺はこの程度の一対多戦闘は何度もやってる。

幾多の経験の中で敵の位置を把握する術や、銃の調子を味で確認する感覚を身につけた。

中坊ごときに遅れをとるかよ。」

 

「では正確に教えていただけないでしょうか?何分このような身ですので。」

 

「くっ…。」

 

「あれぇ?分からないのですか?いやー残念ですねぇ…。」

 

「なめんじゃねぇって何度も…」「今ですっ!!」

 

殺せんせーの合図と共に俺はターゲットの目の前で能力を解除し攻撃態勢に入る。

 

「ッ!?…だが!甘いなぁ!所詮中坊だ!」

 

俺に銃口が向けられた。

くそっ思ったより早い!!間に合うか…?

 

 

 

パンッ!!

 

 

 

「…あ?グハッ!!」

 

顎に強烈な蹴りを入れる。

烏間先生でさえ戦闘不能に出来そうだ。

倒れたところを持参したテープでしっかり縛り上げた。

 

「お見事です、二人とも!!」

 

「くそっ…なぜ…?」

 

「私の合図と共に夜舞君は飛び出し、君はそこに銃口を向ける。

それは想定内です。

なので、矢田さんに銃身を撃ってもらいました。

BB弾なので威力はないですが、弾道を少しでもずらせば夜舞君は避けられますからね。」

 

「いやー冷や冷やしたよ…だって失敗したら裕死んじゃうでしょ?」

 

軽く言わないでー。

いやマジで矢田さんの指に俺の命かかってたんだよな…。

矢田さんがまた命の恩人になった…何回目だよ!!ていうか俺死にかけすぎじゃね!?

 

「そんなバカなっ!!小僧はともかく、そっちの小娘はどこにいた!?」

 

「先生の後ろです。私の殺気で彼女を覆っていました。意外と気づかれないものですねぇ。」

 

「怪物かよ…こいつら…。完敗だ…。」

 

***

 

「…。」

 

「さすがに予定外だ。残ったやつら全員で来ると思ってたんだが?」

 

俺は目の前の男を凝視した。

禍々しい形相、その頬には無数の引っ掻き傷が残されていた。

鷹岡…。

少し前に俺らの教鞭をとった男だ。

 

「まぁいい。てめぇらを人質にすればまたいくらでも湧いてくるさ。」

 

「狙いは渚か…。」

 

「いやそうでもないさ、俺は純粋にそこの賞金首を獲るつもりだった。

もちろん!リターンマッチでボロ雑巾みたいにしてやろうとも思ったがなぁ!!」

 

やっぱりか…電話の声には復讐の念が強く感じられた。

しかし、こうも悪い予感が当たると寧ろすがすがしいな。

 

「父ちゃんは残念だぞぉ?てめえらがそんなにこの怪物に情がないとは…。」

 

「お前が情とか言うのな。笑わえない。」

 

「おいおい。俺にだって情ぐらいはあるさ!殺すつもりはこれっぽっちもなかったんだからな!今すぐあいつを連れて来い!!じゃないと…。」

 

やつがサッと手を挙げる。

 

「きゃっ!!」「矢田さんっ!!」

 

「てめぇの可愛い可愛い生徒がどうなってもいいんだな?」

 

「にゅう…!」

 

「くそっ!!矢田さんから手を離せっ!!」

 

「これは脅しじゃない。正当な契約さ!やつを連れてくればそいつはすぐにでも離してやる。まぁ、連れてこない場合は知らんがな?」

 

「…分かった。」

 

俺は羽織っていたパーカーを脱ぎ捨てる。

もう、迷う余地はない。

渚を…矢田さんを…E組を…傷つけられてたまるか。

 

***

 

「夜舞君…?」「裕…?」

 

「俺が相手してやるよ。」

 

「てめぇじゃ意味ねぇんだよぉ!!俺をこんな目に合わせたやつを打ちのめさないとなぁ!?」

 

すると裕は静かに深呼吸した。

 

「!?」

 

私でもわかった。

明らかに裕の持つ雰囲気が消え、新たな殺気が生まれる。

これは…渚君の殺気…?

 

「これでどうだ?上手いだろ、渚の殺気だ。」

 

「あれは…私のスキル…なぜ夜舞君が…?」

 

「チッ。まぁしょうがねぇ。それで妥協してやるよ。いちいち待つのもめんどくせぇ!」

 

「ついでに、一つルールを設けよう。」

 

「殴る蹴るは無しってか!?ハッ!やっぱり…」「俺は10分間逃げも避けもしない。」

 

「「「!?」」」

 

「その代わり、制限時間内に俺を気絶させれなかったら、矢田さんは解放・解毒剤も提供、どう?それなりな条件だと思うが…?」

 

「夜舞君ッ!!あまりに危険です!!」

 

「ヒャハハハハハ!!いかれてやがるっ!!いいだろう、だが思う存分行かせてもらうぜ…?」

 

「裕っ!ダメだよっ!!私は大丈夫だからっ!!!」

 

必死の叫びに応じるように、彼は微笑を浮かべた。

 

「矢田さん、俺は…大丈夫だよ。」

 

返す言葉もない。

 

「さぁ、始めよう。」

 

「いいぜ…途中でギブアップは許さねぇからな…意識が無くなるまで痛めつけてやるよ。」

 

***

 

リンチ…あまりにも適切な表現だった。

一方的な攻撃は途切れることなく裕を襲う。

7分経過、彼は十分すぎるほど耐えていた。

 

「おらおら!!あと三分も残ってんだぜ!?もっとしっかりてくれよぉ!!」

 

何度も殴られ…何度も蹴られ…何度も倒れた。

しかし彼は意識を失うことなく立ち上がる。

その姿はもう無意識に立っているのではないかとさえ思わせた。

何度も、彼は立ち上がった。

 

裕…。

何もすることが出来ない、声をかけることさえはばかられる。

 

『彼と仲良くするんだ。』

『何言ってるの!?桃花の気持ちも考えてよ!!』

『桃花はどうなんだ?』

 

少し前の家でのやり取りを思い出した。

私は…何も出来てないじゃない…。

裕についてきても、結局彼の足かせになってしまった。

 

ごめん…。

 

「はぁ…はぁ…ゴホッ…10分…経過…俺の勝ちだ…。」

 

「くそ…くそっ!!」

 

「早く…解毒剤を…。」

 

「ふふふ…ははは…ひゃははははは!!解毒剤は渡してやるよ!!ほらなっ!!」

 

鷹岡は解毒剤が入っていると思われるスーツケースを裕に投げつけ…爆発させた。

 

「なっ!?」

 

「ひゃはははははははははははは!!!!!!お前ら全員徹底的に教育してやるさ!!

ははははははは…あ?」

 

煙の中から裕が姿を現した。

もう偽りの殺気を纏ってはいない、裕本来の殺気を宿していた。

 

「…。」

 

「うっ、動くなっ!!そ、そそその小娘がどうなっても…。」

 

「矢田さんは傷つけさせないよ。

だから…もう終わりにしよう。

せめて…彼の最高の暗殺方法で…あんたを苦しめ…殺してやるよ…。」

 

そう言うと彼はニコッと笑った。

渚君のようにごく自然に。

 

ドクン…。

胸の鼓動が聞こえた。

裕も迷っている、そう母は言っていた。

なら…私が答えを出させてあげるんだ…。全部、話そう。

それが私に出来る精一杯の事。

 

私も、彼を失いたくないから。

 

「ひぇっ!!わわわ分かった!!おい!そいつを離してやれ!!!!」

 

私は拘束から解放された。

と同時に鷹岡は倒れた。気を失ったようだ。

 

「殺気に…圧倒されている…。夜舞君はなぜあそこまで殺気を上手く…。」

 

***

 

終わった…。

 

「裕っ!!」

 

矢田さんが俺の体を支えてくれた。

申し訳なさで胸が詰まる。

俺は必死に言葉を絞り出した。

 

「ごめん…俺…無理だった…。ダメだった…。」

 

彼女は優しく微笑んでいた。

まるでさっき俺が彼女に対して笑ったように。

責める言葉も慰めの言葉もなく、彼女は俺の頭を撫でていた。

 

「さすがのあいつも…もう動けねぇか。」

 

「!?」

 

嘘だろ…もう戦える体じゃない…。

 

「ふーん、あいつら二人にヤられたのか。」

「あの男…よくあそこまで耐えたぬ。死んでないのが不思議ぬ。」

 

仲間まで連れてきやがって…。

 

「止めてっ!これ以上裕を傷つけないで!」

 

矢田さんが立ち上がり、叫んだ。

 

「…。ふっ。」

 

「?」

 

「ふははははは!お前らやっぱ面白れぇわ!いや何、俺らはただその小僧の様子を見に出てきただけだ。」

 

「は…?」

 

「仲間のためにそこまでなるやつは俺らの世界でもまずいねぇ。

ま、元々仲間意識ってのは低いしな。

だが、自分からリンチになろうなんざぁ聞いたことねぇよ。」

 

「毒はただの食中毒みたいなものだ。

契約期間は一時間、その時間だけ猛威を振るう毒を盛った。

だからあと数時間もすれば元気になるさ。」

 

「は!?どういうことだそれ!!」

 

嘘をついていないのは一目瞭然だった。

俺は何のためにここまでしたんだか…。

唐突にバカバカしくなってきた。

 

「夜舞君、別に自分を卑下する必要はありません。

君は十分よく頑張りました、E組のみなのために。

それを誇りに思いなさい。」

 

「こいつの暗殺任務が来るのが楽しみぬ。」

 

「え…おじさん達殺し屋なの…?」

 

「なんだ、そんなことも知らなかったのか。多少傷つくぜ、嬢ちゃんよ。まぁなんだ。」

 

殺し屋が俺の耳元で囁いた。

 

「気持ちは早いとこ伝えた方がいいぜー?俺らがヤる前にな。」

 

「はぁ!?」

 

「んじゃ、そゆことだ。また会ったら次は殺してやるよ!もちろんお前もだ!タコ野郎!」

 

嵐のように去っていった。

ていうか…余計なお世話だっ!!

なんで暗殺者にそんなこと言われんだよ!!

 

「裕?何言われたの?」

 

「えっ、い、いやなんだ、あれだ。社交辞令だ。」

 

おいおい俺何言ってんだよ…。

暗殺者の社交辞令ってナイフの打ち合いか何かかしら?

 

「どうした?殺せんせー?」

 

「いえ、ところで…どうやって帰るのでしょうか?」

 

「あっ。」「あっ。」

 

***

 

結局俺が体を引きずって帰ることとなった。不幸だ。

 

「夜舞っ!!」「おかえりー!!」「うわっどうしたんだそれ!?」

 

「まぁ…いろいろあって…。」

 

「おいタコ!お前責任持つとか言ってなかったか…?」

 

「か、烏丸先生!せ、責任はきっちり取ります!!」

 

「お疲れ、夜舞。」

 

相変わらずのイケメン磯貝。

俺が倒れなかったのはこいつのお蔭でもある。

 

「おう。」

 

「そうだ、薬は!?」

 

「それがねー、なんか放っとけばすぐ治るみたい。ビタミン剤もらった。」

 

「なんだぁ…。」「よかった。」「桃花ちゃんもお疲れっ!」

 

 

 

数時間後、彼らが言っていた通り、たちまち元気になっていた。

またにぎやかなこのE組に戻った。

矢田さんと目が合う。

彼女は何かを決心していた。

 

「裕、後で話したいことがあるの。」

 

俺にとって人生最大の答えを出さなきゃいけない時は、もうずいぶん近づいている。

 




お読みいただきありがとうございました。

ほんとはね、昨日も投稿する予定だったんですけどね…。
どうもすっかり忘れてました、ショボン。
夏休み編が折り返しを迎えました。
夜舞が覚醒してますね、彼の能力の本質も二学期編で出てくると思うんです。
ちなみにゴールデンウィーク毎日更新したいですね!(願望)

では次回もよろしくお願いします。
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