暗殺教室verβ   作:サクソウ

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先生の時間

「先生、ちょっと中国に行って麻婆豆腐を食べてきます。あぁ、暗殺希望者がもしいれば携帯で読んで下さい♪」

 

そう言うと、タコ大王は教室から飛び出していった。

中国…ね。片道10分てとこだな。

 

「え…と、マッハ20だから…。」

 

「麻婆の本場、四川省まで10分ぐらいだね…。」

 

何、俺の心読んだの?ヤバイヤバイ、これも読まれてるかもしれないから落ち着かないと。円周率を数えるんだ!3.1415…これ以上知らんわ。

 

「しかも、あいつ高速飛行中にテストの採点までしてるんだぜ?」

 

「まじで!?」

 

「俺なんかイラスト付きで返ってきた…。」

 

なんというか、平和そのものだな。まぁその輪の中に俺はいませんけどね。

ちなみに俺もイラスト付きで返された、羊のイラストが。何なの?俺そんなに草食動物?

 

「裕は羊のイラスト描かれてたよねー。」

 

なんで知ってんだよ!怖いよ、普通に怖いよ!

 

「どうせ羊肉食べてるときに採点でもしたんだろ。」

 

というか矢田さん、俺に話しかけると周りの人の目が痛いから止めた方がいいよ?

 

「ていうかあいつ、何気に教えるのうまくない?」

 

「わかるー、放課後に数学教えてもらって、次のテスト点数良かったもん。」

 

…空気が変わった。地雷を踏んだか。

 

「ま、でもさ、所詮俺らE組だしなー。」

 

その一言で闇に包まれた。

このクラスの本性だ。これがE組。はぁ、くだらない…。卑屈になるのはクラスの中で俺の専売特許だ。それをみすみす奪われるわけにはいかない。

 

「んじゃ、転校したらどうだ?環境も変わって、変われるかもしれないぞ?」

 

「は?それができたら苦労してないっつの。」

 

中村莉桜、金髪・強気という俺が最も苦手とする部類だ。

だが今は臆している時ではない。円周率を数え、平常心を取り戻す。

 

「それができたら、苦労しないのか?転校出来たら?俺にはそうは見えないな、ここで腐ってるぐらいだ、どこへ行っても変わらない。」

 

「…ッ!じゃあどうしろっての!」

 

「這い上がればいい、たったそれだけの苦労で、ここから出られるんだ。

人間なんて本当の天才以外は特に大差ないものだ。ちょっと苦労すれば変われるんだよ、お安いもんだよな。」

 

これでいい、クラスの色は「黒」から「赤紫」になった。よっぽどマシだ、腐ったやつを見てるほど気分が悪いものはない。

我ながら見事な演技だ。あー怖かった。

その後、寺坂竜馬ほか二名が潮田渚と暗殺どうのこうのと言って出て行った。

ていうか渚君女子じゃないんだ…。初めて知ったよ。ちょっとついて行ってみますか…。す、ストーカーとかじゃないんだからねっ。

 

「ちょ、ちょっとどこ行くの?」

 

トイレ…と言おうとしたが、矢田さんならおそらく見破るので

 

「飯食ってくる。」

 

「え、いや、ご飯食べ終わっ…ちょっと!」

 

「やめときなよ、桃花。」

 

ちょっとナイスだ、中村さん。ちなみにもう食べ終わっている。

あえて訳分からないこと言って混乱させる作戦だ。今日の俺冴えてる気がする。ダメだ、こう思う日は大体冴えてない。

 

***

 

「あいつが一番油断してるときに、お前がやれ。」

 

「え…でも…。」

 

「いい子ぶってんじゃねーぞ、俺らはE組だ。進学校で有名なこの学校のレベルについていけなくなった脱落組。」

 

あいつ俺の挑発全然聞いてなかったのかよ…。すげぇ怖かったのに…、ちょっと悲しい。

 

「毎日隔離校舎山の上まで通わされて、あらゆる面でカスみたいに差別されてる。落ちこぼれの俺らが百億円稼ぐチャンスなんてこの先一生回って来ねぇぞ?」

 

説明ありがと、でもね、それどんどん俺のライフ削ってる。もうまじガリガリ君。

ってあれ?なんか話終わってない?聞きそびれたー…。誰だよ今日頭冴えてるとか言ってたやつ。

 

***

 

五時間目が始まる少し前、タコは満足そうな顔をして帰ってきた。いいなちきしょう、空気摩擦で焼かれてタコ焼きになってしまえ!おっと失礼、焼きタコになってしまえ!(茹でタコでも可)

 

ところで、潮田渚…あいつの心、かなり冷たい。この数分で何があったんだか。

それに、作戦というのも気になるな。そもそも寺坂が考え出した案なのであれば、あいつが実行すればいい。わざわざ渚にやらせて手柄を渡すことに何のメリットがある?

…デメリットがあるのか。寺坂がやることにデメリットが…。渚が少し危ないかもしれない、さすがに命の危険はないだろうが…。

 

「はい、それでは、お題にそって短歌を作ってみましょう。ラスト7文字を『触手なりけり』で締めてください。」

 

相変わらず良い球ぶっこんでくるなー。なんだよ「触手なりけり」って。

 

「できた人は先生のところへ持ってきなさい。チェックするのは文法の正しさと、触手を美しく表現できたか、です。」

 

ふざけているようで真面目な授業ですねー、ふざけてるけど。

仕方ない、さっさと終わらせよう。渚が気になる。べ、別にあんたのことなんか心配してなんかいないんだからねっ。

短歌ってことは百人一首か。それなりに字数があるので自由に表現できそうだ。

現代語から考えた方が楽か。最後を「~は触手だったのだなぁ」で締めればいいから…

 

『春すぎて 夏待ちわびる ものどもに 降りつづきしは 触手なりけり』

 

…何書いてるの俺。

 

「早いねー。どういう意味?」

 

「ちょっとは考えろよ。ていうか言いたくないし、勝手に見るなし。」

 

「相変わらずだなぁ…。で、どういう意味?」

 

お前もな。

 

「はぁ…春がすぎて、夏を待っているもの達に降り続けるのは触手だったのだなぁって意味だ。」

 

「え、なにそれ訳分からない。」

 

矢田さんがクスクスと笑う。だから言いたくなかったんだよ。

 

「出しに行かないの?」

 

「…先に出したところで意味はなさそうだしな、五時間目が終わる前に出す。」

 

「修正されたくないんだ?」

 

「なんでそう俺の考えが分かるんだよ…。」

 

「だって裕だし。」

 

「俺の短歌より訳分からん。」

 

早く五時間目、終わらないかなぁ。ちなみにこれ出来た人から帰ってよかったみたいだ。…ナニソレ聞いてない。

 

「せんせーしつもーん。」

 

えっと誰だったかな、そうそう茅野カエデ。

 

「名前、なんていうの?他の先生と区別するとき不便だよー。」

 

「名前…ですか?」

 

「そういや…。」「名乗ってないね。」

 

「名乗るような名前はありませんねー。なんならみなさんで付けてください。でも、今は課題に集中ですよ。」

 

「はーい。」

 

「では、先生はその間一休みを…。」

 

がたっ。

 

渚が動いた。手には、課題用の短冊と…暗殺用のナイフだ。

その程度の作戦なら、問題ないか。深読みしすぎたかぁ。

 

「おぉ、もうできましたか、渚君。」

 

なるほど、あいつの顔がピンクになった時を狙ったのか…。反応速度が極端に落ちる時間だ。

だが、もちろん極端に落ちると言っても恐らく並の人間の比ではない。

それは渚も重々承知のはず…。ナイフで狩る気か…?いや、違う!ナイフはフェイクだ!

それに気づいた時にはもう遅かった。

 

渚は、ナイフを突き立てようとするが、簡単に触手に止められる。

 

「言ったでしょう、もっと工夫を…。」

 

しかし渚はナイフを振るった勢いのまま、超生物に抱きついた。その胸には、手榴弾。

 

バンッ!!

 

中から対先生用BB弾が飛び散った。

 

「っしゃーーー!」「やったぜーーー!」

 

寺坂あたりの人間、名前なんて知らん、そいつらが騒ぎ出した。

 

「寺坂!」「何やったんだ!」

 

「へへっ、こいつも自爆テロは予想してなかっただろ。」

 

「渚に何持たせたのよっ!」

 

「あ?おもちゃの手榴弾だよ、ただし火薬を使って威力を上げてある。300発の対先生弾がすげぇ速さで飛び散るようにな!」

 

「なっ!」

 

「人間が死ぬ威力じゃねーよ。俺の100億で治療費ぐらい…。」

 

寺坂が何かの異変に気付いた。

 

「無傷…やけど一つ負ってねぇのか?それになんだこの膜…タコの死体に…。」

 

「実は先生。」

 

ゾクッとした。悪寒というレベルではない。何を考えても勝算がないと思えるほどの、とてつもなく強い、殺気を、感じた。

 

「月に一度ほどの脱皮をします。脱いだ皮を渚君にかぶせて守りました。月一で使える、先生の奥の手です。」

 

やつは、天井にいた。

 

「寺坂、吉田、村松。」

 

目を光らせ、顔が歪み、牙をむく…。これが…化け物…、これが…怒り…。全てが常識をはるかに超える。

 

「首謀者は…君ラ三人ダナ。」

 

「いいい、いや…渚が勝手に…。」

 

この期に及んで言い逃れとは…大した度胸だ。俺なんか、やってないのにやったとか言っちゃうまである。さすがにそれはまずいか。

そして、やつは何も言わず、教室を出て行った。まぁすぐ帰ってきたが。

腕、もとい触手には大量の表札が。

 

「政府との契約ですから、先生は決して君らに危害は加えない。

が、しかし、次また今のような方法で暗殺にきたら、君たち以外に何をするか分かりませんよ。

家族や友人、いや君たち以外地球ごと消しますかね?」

 

家族や友人…か。恐ろしいやつだ。

 

「な、なんなんだよてめぇ!迷惑なんだよ!いきなり来て、ち、地球爆破とか、暗殺しろとか!迷惑な奴に迷惑な殺し方して何が悪いんだよ!」

 

「迷惑?とんでもない、君たちのアイデア自体はすごく良かった!特に渚君、君の肉迫なまでの自然な体運びは百点です!」

 

丸い顔には今のことが嘘のように正解マークが映し出されてる。

 

「先生は見事に隙をつかれました。ただし!

寺坂君たちは渚君を、渚君は自分を大切にしなかった。そんな生徒に暗殺する資格はありません。

人に笑顔で胸を張れる暗殺をしましょう!君たち全員それができる力を秘めた有能な暗殺者≪アサシン≫だ。標的である先生からのアドバイスです。」

 

不思議だ。自然と信頼して、自然と殺してしまいそうで、でも殺せない…。

 

「殺せないせんせーかー。殺せないーころー…あっ、ころせんせー、は?」

 

と唐突に茅野が問う。

 

「ころせんせー?」「にゅや?」

 

何その驚き方。こっちが驚いちゃうよ。

この教室に、心地よささえ感じる。

 

 

そんな自分を…俺は責めながら、その空間を、関係を、欲してしまう。

 




お読みいただきありがとうございました。

溜めるって言ったやつ誰だっけ?
なんとなく続きを勢いで書いてしまいました。不覚。
不定期更新でいこうと思います。
さすがに毎日は無理なので、週一かな、目標は。
今回は結構長かったですね、お疲れ様でした。
矢田さん成分あんまり含んでない?いやいや、今はこれくらいがちょうどいいんですよ、たぶん。

では次回もよろしくお願いします。

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