暗殺教室verβ   作:サクソウ

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ホームの時間

「ねぇ!今から家に来てよ。」

 

「え、なんで?俺早くおうちに帰ってちょっと自分を慰めたい…。」

 

「ほらいいからいいから♪」

 

片岡さんの計らいでようやくカルマから解放されてからの最初の会話だった。

相変わらず矢田さんは俺の意見を聞いてくれない。

時と場合によるが、彼女が楽しんでいる時は大抵彼女のペースだ。

まぁ別に悪い気はしないからいいけどね。

 

「ていうか今行ったら確実に矢田さんの父親とエンカウントしちゃうでしょ…。」

 

「あ、バレた?それも理由の一つだよ。」

 

そう言って矢田さんはペロッと舌を出した。

なにそれ可愛い。

 

「お父さんと会ってもらいたいの。」

 

「あーそういや、あいつの事があったんだっけか…。そりゃ仕方ないな…。」

 

あいつ…とは名前さえ知らない伝説級のやつだ。

俺のライバル…というかライバルにもならなかった気がする…。

まぁなんだ、ちょっと意識高い系だ。

ありゃ意識高いというかただのバカだけどな。

 

「ではではよろしくでーす♪」

 

「何それどこのいろはす?」

 

「ピンポーン!正解!裕知ってたんだ、ちょっと意外だな。」

 

「普通に有名だからな、あの主人公はマジふざけてる。普通にリア充じゃねーか。」

 

「裕も似たようなもんだと思うんだけど…?」

 

「待て、俺はあんなに自意識高い系じゃない。強いて言うなら影薄意識高い系だ。」

 

「ふふ。」

 

少し笑ったかと思うと彼女は急に抱き着いてきた。

何なの、情緒不安定なの?

恥ずかしい…。このまま穴掘ってもぐりたい…。

それ地味に犯罪チックだからやめようね、俺。

 

「なんだよ…。」

 

「私は裕のこと見えてるからね♪」

 

「分かってるよ…。俺も矢田さん見えてるからな。」

 

「私は別に影薄くないよ!…たぶん。」

 

「自信なくすなよ…。可哀想になってきちゃうでしょ。」

 

「慰めてよー。」

 

「ほらよしよし。これでいいか?」

 

「う、うん。ありがと///」

 

自分で言っといて照れるとか俺的にポイント高い!

 

***

 

無事矢田さんの家に到着。

ここに来るのも慣れたものだ。

あんまり慣れたくなかったんだけど…。

そう言えば、俺今日のこと言わなきゃいけないんだよな…。

正直超怖い。他人の父親に会うとか初めてだし、というかそもそも父親というのものがどういうのか分からないし…。

 

「ただいまー!」

 

「おかえり、あら!夜舞君!!」

 

「どうもです。」

 

「うんうん!良かったわ!夜舞君が来てくれて!さぁ入って入って!」

 

「お邪魔します。」

 

ん?なんか飾りつけしてある?

今日何かの日だったのかな?

矢田母に促されリビングへ入る。

 

「えっと…これは?」

 

「今日は桃花の誕生日なの!あれ?夜舞君それで来たんじゃないのかしら?」

 

「た、誕生日!?」

 

「裕には言ったことなかったからねー。」

 

「まじか…俺何も用意してないんだけど…。」

 

「もう貰ったからいいんだよ♪」

 

「何々?何あげたの夜舞君!?」

 

興味津々すぎるでしょ…。

 

「いやまぁ色々あったんですよ…。」

 

そう言って俺はこれまでのいきさつを話し始めた。

祭りに行ったこと…励ましてもらったこと…問いてもらったこと…告白したこと…

 

矢田母は決して話の腰を折らず聞いてくれた。

こういうとこはほんと似てるよな。

 

「良かった、夜舞君が恋人になってくれて。

正直あの人はあまり好きじゃないの…。」

 

「でも…ほら…何というか。」

 

「あぁ旦那の事は気にしなくていいわ。

あの人は『仲良く』って言ったのよ。付き合えなんて言ってないし。

というかそもそも親の事情で娘の恋愛が邪魔されるなんて恥よ!」

 

んーさすがだな…。

 

「だから、私は純粋に嬉しいわ。これからも桃花をよろしくね♪」

 

「もちろんです、まぁ俺の方がお世話になりそうなんですが…。」

 

「ふふふ。さ、パーティを始めましょうか!」

 

「ただいま。」

 

ガチャリと音を立てて俺より少し背の高い男の人が入ってきた。

 

「あらおかえり、夜舞君、これ旦那よ。それでこっちが夜舞君。」

 

「初めましてです。」

 

「桃花の恋人。」

 

俺は思わず吹き出してしまった。

 

「順序ってものがあるじゃないですか!?」

 

「隠しててもしょうがないもの。」

 

「桃花の恋人?君が?」

 

「は、はぁ。一応そうです。」

 

「桃花のことどう思ってるんだ?」

 

いきなりですか…。

こりゃ人格を疑われてるな、俺の得意分野だ。

なにそれ悲しい…。

 

「矢田さんは…俺にとってお姉さんのような人です。

いつも俺に構ってきて、あざとくて、ちょっとうるさくて。」

 

「ちょっと裕!?」

 

「ははは…。でも、なんというか…たまにドジるし…守ってあげたいような人だと思います。」

 

「…そうか。ならいい。」

 

「意外とあっさりひくのね。」

 

「ははは。理由は簡単だ。俺だってお前のこと似たように思ってたんだからな。

…夜舞君なら、桃花を幸せに出来るだろう。」

 

「あら、私が今幸せって言ったことあったかしら…?」

 

「ちょ!?そこは言ってくれよ…ていうかそうじゃないと夜舞君を受け入れられないんだが…。」

 

「嘘、超幸せ!」

 

「昔から変わってねぇ…。」

 

「あっ、夜舞兄ちゃん!来てたんだ!」

 

「おぉ、久しぶりだな。」

 

「へへん!俺この前より賢くなったからな!」

 

「それじゃ問題だ。1から1000まで足してみな。」

 

「え…1000?んーんー…。」

 

「答えは500,500だ。まだまだだな。」

 

「んー!そりゃ俺にはわかんないよー。」

 

「ま、いつか分かるって。まぁそのころには俺はもっと賢くなってるけどな。」

 

「あー!年上ってホントずるいや!

姉ちゃんも何かにつけて夜舞兄ちゃんの話してくるし!俺も会いたいのに!」

 

弟君よ、デリカシーというものを学ぼうか。

お姉ちゃん顔真っ赤にしちゃってるから。

ていうか俺何気に矢田家からの評価高くない!?

あ、この家族に俺みたいなやつがいないからか。

俺何かの展示物かよ!

 

「い、いやべ、別にそんなに…///

ね、ほら!ケーキ食べよ!」

 

「んじゃ俺は用事も済んだしそろそろ…。」

 

「何言ってるの?もちろん裕もだよ?」

 

「そうよ!もともと5人分のケーキ用意してたんだから。」

 

「5人分?」

 

「あぁそうだ。一応、上司の息子の分だ。」

 

「だから!ねっ♪」

 

矢田さんは相変わらずだ。

そんな彼女を俺は好きになった。

そんな彼女を俺は守りたいと思った、恩返しや義理じゃなく。

 

俺の意思で。

 

***

 

「裕…。」

 

「…。」

 

「ねぇってば!」

 

「ごめん、この状況が未だに把握できなくて…。」

 

この状況というのは…まぁその状況ですよえぇ。

俺が矢田母に関して一番危惧していた事態ですよえぇ。

なぜか俺は今日帰してもらえないらしい。

そこまでは500歩譲って良しとしよう。

だが…なぜ布団を全部クリーニングに出している?なぜソファーのクッションを干している?

今の会話内容と、今の矢田家の事情から、俺が今置かれている状況は一つしかない。

…全部あの人の策略のような気がして俺はぞっとしていた。

 

「お母さんも好きだね…。」

 

「下手すりゃ殺せんせーよりひどいぞ…?」

 

「申し訳ない。」

 

「いや矢田さんに謝られても仕方ないよ…。

えっと?で、なんだって?」

 

「ううん、やっぱいいや。」

 

「矢田さんらしくもない、俺はストレス発散機みたいなもんだから別にぶちまけてもいいぞ?」

 

「自分でそう言うとは…。んーとね。

私は裕から離れるつもりはないの。今もこれからもずっと…。」

 

「よく恥ずかしげもなく…俺当分慣れそうにないんだけど…。」

 

「恥ずかしいよ!…でね、裕はどうなのかなって…。

私より良い子なんてこの世にいっぱいいるし…私より…好きな子だって…。」

 

「…それは分からん。」

 

「むっ、そこは『そんなことないよ』って言ってくれるとこじゃないの?」

 

「未来のことなんて誰も分からないんだ。殺せんせーを殺せるかってことも。

だけど、矢田さんほど衝撃的な出会いや矢田さんほど一緒に苦労した人はもう二度と現れない。

俺は過去に戻ることは出来ないからな、子供の俺を救ってくれたのは矢田さんしかいない。

というかそもそも俺なんかを好きになってくれる人がいないっての。」

 

「よく私に『恥ずかしげもなく』とか言えたね。裕の方が恥ずかしいと思うんだけど。」

 

「俺なんて散々恥ずかしい思いしてきたからな、今のも黒歴史入りだ。」

 

「ふふっ。私は今のを思い出に入れるよ。

ねっ!散歩でもいかない?」

 

「やだよ眠いし…そもそもそんなことしていいのかよ?」

 

「断る理由が…。

私たまーに外に出てるし、その度に怒られるだけで済んでたし。」

 

「おい怒られるんじゃねーか。俺はあれか?身代わりか?」

 

「裕が一緒なら怒られないよ。」「それフラグや。」

 

「大丈夫だって!ほら行こ!」

 

そう言うと矢田さんはベットから飛び起き、俺の手を引いた…というより引っ張った。

 

「お、おい!ちょ!?矢田さん!」

 

「それに!裕がいれば、私は安心できる!」

 

「後でどうなっても俺は悪くない。」「裕が悪い。」

 

「おい待てこら。」

 

「あははっ。」

 

俺は矢田さんに透明化を施した。

はぁ…なんでこんなことに…。

 

「分かったから…俺の手離すなよ、一度解除されるとめんどくさくなる。

それにお前パジャマだろ。女の子がそんな恰好で外を出歩くんじゃありません。」

 

「はいはい。裕も、私から離れないでね!」

 

俺は素直にその言葉に返答することが出来なかった。

嫌な胸騒ぎがずっと続いていたからだ。

彼女は気に留めず、先を歩いている。

そんな背中を、追い続けることができるのだろうか…?

 

***

 

「矢田桃花をA組に?」

 

常に理事長は屈しない。

相手が誰であろうとそれは変わらない。

変わってはいけないのだ、それがこの学校の方針なのだから。

 

「えぇ、あんな腐った場所に置いておいては花が枯れてしまう…。

それは美しくない。僕の傍にいるのは美しいものでなくてはならない。」

 

「少し考えておきましょう。さぁもう遅い時間だ、早く帰りなさい。」

 

「失礼しました。」

 

そう言うと椚ヶ丘中学の制服をきた男子生徒は出て行った。

矢田桃花のA組入り…。

それだけではメリットがない…。

常に彼は合理的だった。

その考え方は思わぬ形でメリットを生むことになる。

 

「至急シロさんに連絡をとってください。」

 

秘書にひと声かける。

 

「シロさん…ですか?」

 

「えぇ、少し交渉をしてみようかと思いましてね。」

 

彼は微笑んだ。

とてもじゃないが悪だくみをしようとしている人間には見えない。

それが彼の武器であり、強さであった。

 

「防衛省から搾り取れるものは搾り取った…。

次はシロさん、あなたからもいただきましょう。」

 

「理事長、シロさんと繋がりました。」

 

「もしもし、浅野です。こちらの準備が整いそうなのでね、その依頼、引き受けましょう。

二学期中間テストが終わった辺りにまたいらしゃっていただければ…。

えぇ、期待してますよ。」

 

『お互い様だ。』と受話器の向こうの男が言い、電話は途切れた。

 

「夜舞裕…良いものを拾った…。」

 




お読みいただきありがとうございました。

ゴールデンウィークも着々と過ぎて行っているのに、宿題と言う名の悪魔はまだ多数残っております。
そんな中小説カタカタ打ち続けています。
暇なの?そうなの、暇なの。(やることがないとは言ってない)

では次回もよろしくお願いします。
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