「にゅうう。」
「なんだよ殺せんせー…。」
いつも通り俺らが暗殺補習をしている時、殺せんせーが何やら不満げな声を出した。
「だって夜舞君と矢田さんが普段通りすぎるんですよ!!
なんでですか!?」
「いやなんでって言われてもな…。」
「手ぇつないで照れている二人を見て(ry
ひどいです!何の仕打ちですか!!いったい私が何したって言うんですか!!」
「月壊したんじゃねーの?」
「にゅう…。」
「そもそも手なんてつないだら、俺の手汗が矢田さんを汚しちゃうからな。」
「夜舞君は変わらないね…。」「夜舞、その卑屈さは治した方がいいと思うぞ…?」
やだ!なんかみんなから白い目で見られてる!!
あ、いつも通りか、なんだ驚かせやがって。
「んーでも裕から卑屈とネガティブをとったら何が残るんだろ…?」
はいちょっと待って!
なんで矢田さんがその疑問抱いちゃうかな?
あれなの?今日俺の精神を削る会なの!?
なんかラノベのタイトルみたいじゃん!
『俺会→俺かい→俺ガイル』Q.E.D.証明終了。
「夜舞…夜舞ねぇ…?」「あれ?何かあるっけ?」
「何も残らないんじゃない?」
「おい待てカルマ、それは盛大なブーメランだ。
お前からデビル属性とったら何が残んだよ。」
「顔の良さ?」
自分で言いやがったぞこいつ…。
ぐう正論すぎて言い返せない!
いいもん!俺その二つの属性だけでいいもん!
むしろイケメン属性とかゾクッとしちゃう!
「休憩は終わりだ、続き始めるぞ。」
「あ、そうだ烏間先生!
夜舞君から卑屈とネガティブとったら何が残ると思う?」
おいそこのゆるふわ倉橋さん?
ゆるっと俺にダメージ与えてるからね?
「…。補習を続ける。」
考えるのを止めた!!
うひゃあ、おらびっくりだわさ。
まぁ授業続けてもらった方が、話題が違う方向へ行ってくれるからいいんですけどね。
忘却の彼方に忘れたい…。
…それ意味一緒なんじゃねーの…?
***
昼頃、暗殺補習は無事終了した。
「よし!それじゃ今から、夜舞君の卑屈さを治せ大作戦を開始します!!」
は!?
片岡さん?ちょっと何言ってるか分かんないんですけど…?
「おぉ!いいねそれ!」「面白そう!」「俺も乗った!」
「せっかく矢田さんという素晴らしい彼女を手に入れた夜舞君…しかし!
それで満足してたら、彼女さん可愛いからすぐ取られちゃうよ?」
不破さんノリノリじゃねーか。
何気に初コンタクトだったりする。
つーか改めて言われるとかなり恥ずかしいので止めてもらえません?
「…勝手にしてくれ、別に俺が何かする訳じゃないんだろ…?」
「はいそこ!ネガティブ!」
え、こんな感じでやられるの…?
「待て、今のはネガティブじゃなくて諦めと妥協だ。」
「それネガティブって言うんじゃないの…?」
少しの抵抗も許されないようだ。
ふふふ…こういう時こそ役に立つ諺があるのだよ。
『逃げるが勝ち』!なんと偉大な言葉でしょう!
「逃げようったってそうはいかないからね♪」
矢田さん…こいつは難敵だ…。
俺の腕を完全にロックしてやがる…。
消えようとしても矢田さんに掴まれていては全く意味を成さない。
「よし分かった、受けて立とう。その謎なイベントに!
…こんな感じでいいのか…?すげぇ嫌なんだけど…。」
「最後の一言がなぁ…。」「こりゃ苦戦しそうだね。」
***
「んじゃ最初は…矢田さんをデートに誘うとかどう?」
「待って!難易度高すぎっ!無理!」
ていうかいつの間に磯貝いたのよ、俺そっちのがびっくりだわさ。
あとそれ地味に矢田さんに影響出てるから、超赤くなってるから。
「諦め早すぎだろ…。」
「てかお前ら別の意図混じってね…?」
「「「な、ナイナイ。」」」
「おいどうすんだよ!夜舞の奴勘が鋭すぎる!」「だってあの夜舞君だからねー。」
「最初にあれ持ってきたのが不味かったな、すまん。」
「気にすんなって、次からはちょっとずらしていこう。」
全部丸聞こえですよー?
ちなみに今いるメンバーは、矢田さん・不破さん・片岡さん・倉橋さん・カルマ・磯貝・前原・渚の計八人。
おい渚いるじゃん、先に言えよ。ちょっとだけやる気出るじゃん。
前原はなぜいるのかかなり疑問。
あれか、色恋沙汰だからか。
「よし!んじゃデートは置いといて、まずは…。」
「普通の会話じゃないかなー?」
「そうだな、まずはそこからか。よしっ、誰かテーマ決めてくれ。」
さっそく人任せかよ。これほんとに大丈夫か…?
ていうかさすがに普通の会話ぐらい出来るからね!?
…出来る、出来るよ…ね?
Round1:片岡メグ
「そうねー…、夜舞君は趣味とかないの?」
「そうだなぁ、将棋とか結構好きだけど…。」
「へぇ、意外。強いの?」
「まぁそれなりに?」
「今までの戦歴みたいなのあるのか?」
「ん、あるぞ。ずっとコンピューターとの対戦だったからな。」
「あっ…。いえ、ごめんなさい…。」
片岡さんノックアウト!
俺別にそんな黒歴史気にしてないから大丈夫なんだが…。
Round2:倉橋陽菜乃
「ほら!この昆虫とかどう!?すごくない?」
「こんなのがほんとに生きてんのか…、すげぇな。」
いや純粋にすごいと思います、ここで昆虫の話を持ち出した倉橋さんが…。
「あとこれっ!この前ねー殺せんせーが見つけてくれたんだぁ。」
「あぁ目が白いやつか、何て言うんだっけ…。」
「アルビノ個体!」
「それそれ、うん十万するんだったな確か。」
「みんなお金好きだねぇ。」
「この世の中なんて金で出来てるようなもんだろ。
政治家なんて汚職事件が後を絶えないし、空き巣や泥棒も完全にいない訳じゃない。
金がなくちゃ生きていけない世界ってのはヤなもんだな…。」
「う、うん、そうだね…。」
んー引かれてますねー、いや自分でも引くわ。
別にわざとやってる訳じゃないんだが…。
さすがと言うべきかオートで発動してしまうようだ、ほんと俺って何なんだよ…。
Round3:カルマ
「この前奥田さんにクロロホルム欲しいって言ったらすぐくれたんだよね。」
「あそうだ、前から言ってるけどクロロホルムってあんまり効かないらしいぞ?
口から瞬間的に吸う程度ではまだまだ眠れないってさ、無駄だからやめとき。」
「へぇそうなんだ、しかし貰ったものは返せないしなぁ。
吸ってみる?」
「やだよ、自分で吸え。」
何なんだあいつ…。というかなんで奥田さんそんなもん持ってんの!?
大丈夫!?法律とかよく知らんが大丈夫!?
「カルマ君!何世間話してんのよ!!」
「んーこれでいいんじゃない?」
「あれ…?なんか夜舞君に関わった人までネガティブというか消極的になってない!?」
ヤバい!俺のスキルって伝染するらしいよ!!
今から俺を荒療治しようとしてる人は気を付けて!!
…いやもうほんと止めた方がいいと思うよ…マジで。
Round4:不破優月
「時に夜舞君!探偵ものは読んだことある?」
満を持して不破さんが投入された。
俺の攻略どんだけ難しいんだよ。
もはや無理ゲー認定されてもいいんじゃない?
よし!帰ろうぜ!(本心)
「なくはないか、ホームズ物は普通に読んでた。」
「メジャーだねぇ、好きな話は?」
「まぁ『最後の事件』…の続編の『空き家の冒険』が好きかな。
一番ホームズの性格が顕著に出てると思う。」
「ほう!なかなかコアなのかな?私は『緋色の研究』推しだよ!」
「それもメジャーじゃねーか、事件は嫌いじゃないが初期のホームズはあまり好きじゃないな。何か人と交わるのを絶ったあの感じ。」
「夜舞君と一緒だね!」
「おいこら待て。俺はあんなに博識じゃないし、研究してないし、さらに言えばあんなに向上心がない。よって全然違う!」
「そこじゃないんだけどなぁ…。」
「不破さんが負けた!?」「夜舞…恐るべし強敵だな…。」
俺は今何と戦わされてるんでしょうか?誰か詳しく教えてくれない?
***
「んーしっかし夜舞…、お前一体何者なんだほんと。」
「いやぁびっくりするほど卑屈だね。」
「これはほんとに重症だわ…。」
謎の会議が展開される。
ここで格言(パクリ)を一言。
『会議をしてはならない。~結論は話し合う前からすでに決まっている~』
結論を言おう。俺の性格は治らない。
「そういや夜舞ってずっと『矢田さん』って呼んでるよな。そろそろ呼び方変えたら?
矢田さんの方は『裕』って言ってるけど。」
「…矢田氏?」
「なんだよそれ!!」「こういう時は普通下の名前でしょ!?」
「そういうもん?」
「夜舞君はあれね、まず恋愛に関しての一般常識がない気がするわ…。」
そうなの?そりゃ仕方ないね!だって本には書いてないもの!
「ていうかやっぱりお前ら別の意図があったんじゃねーか。」
「い、いやぁ、まぁ…。」「だって夜舞君と桃花ちゃんいつも通りだもん。」
「いつも通りじゃダメなのかよ…。」
「ところで桃花ちゃんはなんで夜舞君に惚れたのー?」
おいこら。あっさり聞くんじゃねぇ、てか本人いる前でその質問はヤバい。
それ『夜舞君みたいに良いとこ全くない奴に惚れたの?』って意味になっちゃうからね。
事実過ぎて倉橋さん超ヤバい。
「へっ!?え、と…んー///」
「俺はこんなやつ彼氏とか絶対嫌だけどな。」
ほんとデリカシーないな、前原。
俺は別に構わないが、『矢田さんのレベルが低い』ってのと同義だからな、それ。
「そ、そんなことないよ!裕って意外と優しいし!」「そうよ!夜舞君って結構いじりやすいのよ?」
ちょっと待って。
フォローしてもらってるはずなのに、なんか若干けなされてない!?
『意外と』は余計だ!
俺なんて超優しいぞ?殺せんせーのジェラート全部食べちゃうのは悪いから1割残してあげる程度には優しいんだからな!
…え?優しくないって?ソンナワケナイジャナイデスカー。
「確かに夜舞君の第一印象ってなんかちょっと怖かったよね。」
渚に止めを刺される。なんだこれ、悪くない。
「でも僕は夜舞君カッコいいと思うよ?
内心ではすごく苦労してるのにいつもクールだから。」
やだ渚に惚れそう。
ていうか俺クールか?ただあまり喋らないだけだと思うが…。
なにそれただのコミュ障じゃん!そうだよコミュ障だよ!
「そうか?何考えてるか分からんからなー。暗いし。」
「それ以上言うと私ほんとに怒るよ?」
そのセリフもう怒ってる人が言う奴な。
矢田さん怒らせるとほんと怖いからな…絶対怒らせたくない人ランキング3位だ。
ちなみに1位は殺せんせー、2位に片岡さんがランクインする。
「前原君、矢田さんに謝りなさい。」
「か、片岡、そんなに怒るなよ。悪かったよ…。」
あれ?おかしくない?
その謝罪俺に対してはないのかしら?まぁいいけど。
「私思いついちゃった!」
「え、いきなりどうしたの不破さん?」
「夜舞君の属性!夜舞君は器が大きいのよ!」
「ん?あー確かに。いじったりする程度では絶対怒らないわね。」
「でも皆が自分を卑下した時は本気で怒ってたな。」
「実は夜舞君って意外と良い人…?
やだちょっと夜舞君の株上がった!」
なんか勝手に話を進められてるんですが…。
「いや待て、俺だって実はいらだってるかもしれないぞ?」
「それはないよ。だって裕ってすぐ顔に出るもん。
嫌がってたり、恥ずかしがってたり、困ってたり…。」
「ていうか夜舞君…なんでわざわざ自分で株を下げようと…。」
「夜舞は前から変わんないなぁ。」
「それはお前だ、カルマ。」
それに…俺は前から随分と変わっている。
その変化に最近ようやく気付き始めたのだ。
人は知らないうちに苦痛を経験し、乗り越え、成長していく。
無自覚が一番自覚できるのは、自分自身でしかない。
小さな変化でさえ、自分で見つけてやらなくてはいけないのだ。
「まとめっ!!夜舞君は卑屈で!」
「ネガティブで。」
「コミュ障で。」
「変に論理的でー。」
「カッコよくて。」
「俺と少し似てて。」
「いじりがいがあって。」
「ちょっとかわいい♪」
なんだよそれ。
半分ぐらい悪口じゃねーか。
ほんと…俺らしいな。
「これからもよろしくね、夜舞君!」
「あぁ、よろしく。」
差し出された手に握手を返す。
自分では分からないが、俺は笑っていたのだろう。
小さな変化が、また一つ…。
どうでもいいが、結局俺の性格は治らないのね?
知ってた。
お読みいただきありがとうございました。
この話は…なんだろ?夏休み編を少し延ばす形で書いたような感じですね。
最後8個のセリフ、誰が言ってるかわかりますか?
分かりにくい人は消去法で決めることが出来るかと思います。
答え合わせはしません!想像にお任せしますので~。
では次回もよろしくお願いします。