暗殺教室verβ   作:サクソウ

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存在の時間

「おはようございます。では、出欠をとります。」

 

今日の俺にとって出欠をとる行為ほど無意味なことはない。

 

「矢田さん。」「はい。」

 

「夜舞君。」「…。」

 

「夜舞君、返事をしてください。」

 

!?

 

「先生、今日夜舞いないみたいですけど…。」

 

夜舞いないって何かの言葉遊びみたいだな。

それより、今ころせんせー明らかにこっち向いてたよな…。気のせい…かな?

 

その後はいつも通り授業が進んでいった。

相変わらずビッチ先生はビッチだし。烏間先生の授業は受けがいい。というかイケメン。

ころせんせーはというと…、

 

「では今日は、餡かけホットケーキを作ってみましょう!」

 

え、何その独特なホットケーキ、好きなの?

ていうかやたら家庭的だな。

俺はとりあえず教室の端の方にいることにした。

 

「夜舞君も、さぁ早く。」

 

は?いや、は?

クラス全員がころせんせーの方を向き、「?」を浮かべている。

この状況…どうしろってんだよ!

もしかして、こいつ…見えてるのか?

試しに俺は口に×を作って口封じを試みた。

 

「はて?」

 

どう収拾つけんだよこれ!!

仕方ねぇ…最終手段だ…。

逃げる!!!全力で!!!

 

***

 

昼休み、俺はお気に入りの場所に向かうことにした。

教室にいてても仕方ないからだ。

 

「今日のころせんせー…どう思う?」

 

「さぁな…ていうか明らかに見られてる気がした。」

 

…っておい!すげぇびっくりしたよ!矢田さんナチュラルすぎるよ!!

 

「もしかして見えてるのかもよ?」

 

「…ありえなくはないな…。でも、会って数週間、しかもまともに話さえしたことないんだぞ?」

 

「私でさえ二ヶ月かかったのに…なんか複雑…。」

 

そんなに落ち込まないでよ、ほら、あれじゃん、あいつ基準にしちゃダメだから。

それに数週間と二ヶ月ってそんなに差ないから。

 

「どちらにせよ、午後の授業も出るしかないからな…。バレたら逃げる。」

 

「なんで裕は逃げることに関してだけ絶対の自信があるんだろ…?」

 

「逃げるのは人生で一番大切なスキルだ、鍛えておいて損はない。」

 

「私なんか涙が出てきたよ…。」

 

ただ、問題は…。

 

「そもそもあの先生から逃げるのって無理でしょ。」

 

それな。無理だ。

 

「諦めて話しちゃえば?ていうか話すのは…嫌い?」

 

上目遣いやめて!理性的な意味で!

 

「それは…。」

 

なぜだろう…。俺はなんでこんなに自我をさらすのを疎んでいるのか…?

 

「俺にも…分からない。」

 

「それなら、ころせんせーにきっちり尋問してもらわないとね♪」

 

反則スマイルいただきましたー、さらっと手厳しいこと言われてるけど。

苦言一言でスマイルか…悪くないな。

 

***

 

なーんかめっちゃ見られてますねー。

午後の授業も出たのはいいものの、めっちゃ見られてる、ころせんせーに。

感情が読めん、なんだあの顔。いやあれは奥田さんの薬の影響か。

ま、今日一日無難に過ぎれば何の問題もないんですけどねぇ。

 

知ってた。このまま終わるわけがないって。

放課後、マイフェイバリットプレイスに来たのが間違いだった…。

お気に入りの場所ね。

ここに来て寝転んでいると、やけに重々しい物体が横にいるのを感じた。

矢田さん…ではないですよね知ってる。

 

「夜舞君、今日はどうされたのです?」

 

「別に、いつも通りですよ。」

 

と言いつつ俺は帰ろうとする。

 

ガシッ。

 

肩をつかまれた、それもめっちゃ重い…。逃げられねぇ…。

 

「まぁまぁ、そう言わずに、ちょっとケーキでも食べていきませんか?」

 

「いやー俺今ちょっとダイエット中で…。」

 

「さぁ行きましょう!」

 

聞いちゃいねぇ!なんで質問したんだよ!

そのまま俺は体を捕まれて、文字通りマッハで移動した。

ちょー速い、ていうか見えない。どこだよここ。

いつも間にかどこかの路地に入っており、横には例の変装した男が立っていた。

 

「夜舞君は先生のこの姿初めてじゃないですね?」

 

「なんだよ、気づいてたのかよ…。」

 

「尾行はもう少し計画立ててやりましょう。行き当たりばったりではすぐにボロが出てしまいます。」

 

行き当たりばったりなのもお見通しですかそうですか。

 

「ここのケーキがなかなか美味でしてね。先生、たまに寄るんですよ。」

 

「こういう隠れ家みたいなとこって意外とおいしいですよね…。」

 

「おや、元気がないようで?」

 

「そりゃそうですよ。いきなりマッハで飛ばされたんですから。」

 

「これは失礼。しかしあんまりのんびりしていると逃げられそうだったもので。」

 

「反論できない…。」

 

ころせんせーは扉を開けて入っていく、俺もそれに続くことにした。

 

「いらっしゃい、あら、お久しぶりね。」

 

「えぇ、ようやく給料が入ったものですから。」

 

「お連れさん?」

 

「教え子です。少し相談に乗ってほしいと言われまして。

抹茶ロール二つ、個室でお願いします。」

 

「今個室全部空いてるから、好きな場所使ってもらっていいわよ。」

 

「ありがとうございます。」

 

いや、言ってないからね、相談に乗ってほしいとか。

 

「ケーキ屋に個室があるんですか?」

 

「うちは見た通り和風スイーツの店なのよ。

『和風には座敷が必須!』って店長が聞かなくてねぇ。ま、たいていのお客さんはカウンターで済ますことが多いんだけどね。」

 

ほぅ、かなりいい雰囲気の店だ。フェイバリットプレイス並に落ち着く。

 

「では行きましょうか。」

 

ころせんせーが奥の方へ進んでいったので、ついていく。

個室も個室でいい感じだ。狭いのが落ち着くってのはこういうことなんだろうな。

 

「さて、君の話ですが…。単刀直入に聞きましょう。夜舞君、君の体はいったいなんなんです?」

 

化け物に化け物扱いされた気がする。

 

「…言った方がいいですか?」

 

「もちろん、生徒のことを知るのも先生の仕事ですから。」

 

「俺の…体は…いたって健康です。」

 

うわ何言ってんの俺。

 

「そうですか。」

 

ガララ。

 

「抹茶ロール二つ、お待たせしました。」

 

「おぉ、相変わらず美しいフォルムですね!見てくださいよ夜舞君、この造形美!」

 

「そ、そうですね、おいしそうです。」

 

「ではごゆっくり。」

 

「夜舞君、この後も時間ありますか?」

 

「え?まぁ特に何もないですが…。」

 

「それならよかった。ごちそうさまでした。」

 

はやっ!!もうちょっと味わって食べようよ。

俺も急いで食べ終わる。やべぇ、超おいしい。

 

「あ、勘定は先生がやっておきますので、先に外で待っていてください。逃げたら明日も来てもらいます。」

 

「あ、はい。」

 

逆らえない…。

 

「あの人、あんななりだけどすごく頼りになるし話も聞いてくれるから、悩んでるなら全部言った方がいいわよ。」

 

知ってる。頼りになるのも、話を聞いてくれるのも…。

だが、俺はまだ何かが…足りない気がした。

 

***

 

「さて、では…。」

 

またマッハ移動だ。ちょっと慣れてきた。

ぼんやりと周りを見渡してみると…学校だ、正確に言うと学校の校庭。

 

「古来より命を懸けた勝負というのは言葉にも勝ると言われます。」

 

つまり…どういうことだ?

 

「10分間、本気で先生を殺しにかかってください。一発でも当たれば、君のことはこれ以上聞かない。当てられなかったら、全部話してもらいます。」

 

「強引だな…。」

 

俺は苦笑いした。だが、

 

「いいですよ、その勝負、受けて立ちましょう!」

 

「良い目です。殺せるといいですねぇ。武器は先生が用意しました。存分にかかってきてください!では、はじめ!!」

 

掛け声と同時に俺はいつの間にか目の前に並んでいた武器をとる。

まずは小銃、これで様子をうかがう。予想通り全然当たらん。

ライフルはこの状況では不利でしかない。つまり、残る武器は、ナイフだ。

ナイフはまず間合いを詰める。そのためにころせんせーの動きを見て、次にどこに動くかを予想する。

全然見えない、だが予想することはできる。見えなくても0.1秒後の場所が分かればいい。

0.1秒ということは半径約700mが移動範囲だ。その中で立ち回るには…。

 

「にゅや!?」

 

惜しいな…。もうちょっと早く!

 

 

…楽しい!

 

 

これが俺に足りなかったもの。これがころせんせーという超生物に求めていたもの。

思えば、俺は一度も先生の暗殺に参加していなった。

クラス一斉射撃の時も俺は引き金を引かなかった。

本気になれなかったから。自分の中で何かにけりをつけていた。

だが、ナイフがどれだけ空を切ろうと、体がどれだけ不安定になろうと、この暗殺は…楽しい!

初めて何かに本気になった。本気で打ち込もうと感じた…。

 

 

「ハァ、ハァ…10分です。残念でしたねぇ。」

 

「ハァ…でも楽しかった。」

 

「えぇ、かなり惜しかったです。先生も必死でした。」

 

「ほんとかよ…。」

 

「さて、約束通り、全部話してもらいますよ。」

 

「分かりましたよ…。」

 

「俺の体は…存在を消すことができます。」

 

「存在を…?」

 

「えぇ、見えないだけじゃありません、

俺の音も聞こえないし、誰も触ることはできない。

ただ、その力を俺は使いこなせない。自分がいつ消えるかも分からないんです。

いつ現れるかも。ちなみに今日は放課後にはもう戻ってました。」

 

「なるほど…。」

 

「しかも、この力致命的な欠点があります。

この世から俺の存在が認められないので、消えている間、俺は何も動かすことができません。

消える前から体に触れているものは別ですが。服とかですね。

つまり、何か物が飛んで来たら一巻の終わりと言っても過言ではありません、たとえそれが消しゴム一個でも。」

 

「動かせないから、防ぐ術もないということですか?」

 

「ええ。人知れず体に風穴が開くでしょうね。」

 

「それはなんと卑屈な…。」

 

「そういう存在なんです、俺は。」

 

「先生と矢田さんにだけ見えているのはなぜか考えましたか?」

 

「分からない…ってあの会話聞いてたのか!?」

 

「ヌルフフフ。それはひとまず置いといて。」

 

置いとける問題じゃないんだが…。

 

「先生は夜舞君の話を聞いてこう考えました。

 

『夜舞君の存在を認めた者には見える』

 

のではないかと。」

 

「俺の存在を…?」

 

「えぇ、先生は先生ですから生徒の存在を忘れるわけにはいきません。

矢田さんは二ヶ月間君と苦楽を共にして、君の存在を心から認めているのではないでしょうか。」

 

そう考えると納得はするのだが…少し恥ずかしい。

 

「良い関係ですね。羨ましいぐらいです。」

 

 

俺にとってころせんせーは、まだ本当に信用できる存在ではない。けど、頼っていくことに全然悪い気はしなかった。これからは俺も暗殺しよう、全力で。

 




お読みいただきありがとうございました。

ようやく主人公らしく話に出てきましたね、夜舞君。
えっと、夜舞、かなり特殊な能力持ってますね。
チートというか寧ろ不利な能力じゃないでしょうか?
能力が裏目に出る作品って…聞いたことないよ…。
まぁ呑気に成長していくので、いつか使えるようになる日が来ると信じて…。

では次回もよろしくお願いします。
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