全校集会でE組がそれ相応の対応をされたが、殺せんせー達のおかげで惨めな雰囲気ではなくなったのは、言うまでもない。
「桃花、久しぶりー。」
「あ、久しぶりだねー。」
俺らが元々いたC組のやつらだ。
「夜舞…。ありがとう。まだ感謝してる。」
「いきなり礼を言われてもな…。ていうかあれは俺の黒歴史なんだが…。」
「あはは、そうよね。久しぶり。少し高くなったかしら?」
「裕はまだ成長期だもんねー。」
「桃花もまだ成長期じゃないの?」
「え?そんなことないよ?」
あると思います、主にちょっと目の行き場所に困るところが…。
ていうか俺と話すと周りの目が(ry
ちょっと離れたところでは、渚が本校舎生徒を怯えさせていた。
E組って恐ろしいやつらが集まるのかしら…?
***
数日後。
「さてみなさん…始めましょうか!」
「な、なにを…?」
ゲームかな? アッシェンテ!!
「学校の中間テストが迫ってきました。」「そうそう。」
「そんな訳でこの時間は…高速強化テスト勉強を行います!!」
「先生の一人ずつマンツーマンで」
「それぞれの苦手科目を徹底して復習します。」
うわぁ…カオス!!
先生の分身が教科ごとにはちまきをつけている。なんか一人だけ木の葉の忍がいるけど。
ぐにゃあ。
「急に暗殺しないでくださいカルマ君!それを避けると残像が全部乱れるんです!」
あ、そこは現実的なんだ。
ていうか分身の一人が外で休んでるけど…それ休憩って言わないからね!
なんというか…ほんと規格外だよなぁ…何もかも。
***
「初めまして、殺せんせー。」
理事長だ…。なんでここに…。
また俺ストーカーみたいなことしてるな、ストーカー属性でもあるの?要らん!
「この学校の理事長様ですってよ。」
「俺たちの教師としての雇い主だ。」
「にゅや!これは山の上まで…もみもみ…それと私の給料もうちょっとプラスになりませんかねぇ?」
「あれ?夜舞君?」
渚…ナニコレデジャヴ?
「いや…ちょっと面白そうだったもんで…。」
「僕も見てていい?」
「どうぞ。」
「こちらこそすいません。いずれ挨拶に伺おうと思っていたのですが。
あなたの説明は防衛省やこの烏間さんから聞いていますよ。
まぁ、私にはすべて理解できるほどの学はないのですが、なんとも悲しいお方ですね。
世界を救う救世主となるつもりが…世界を滅ぼす巨悪となり果ててしまうとは…。」
過去ね…俺も色々あったよ…。
「いや、ここでそれをどうこう言うつもりはありません。
私ごときがどう足掻こうが地球の危機は救えませんし。
余程のことがない限り、私は暗殺にはノータッチです。」
それフラグや。
「十分な口止め料もいただいてますし…。」
「助かってます。」
ナニソレ俺らにはないのかよ。いいの?喋っちゃうよ?いや喋らんけどさ。
「ずいぶんと割り切っておられるのねぇ。嫌いじゃないわ、そういう男性。」
「光栄です。
しかしだ、この学園の長である私が考えなくてはならないのは、地球が来年以降も生き延びる場合、つまり仮にあなたを誰かが殺せた場合の未来です。
率直に言えば、このE組はこのままでなければ困ります。」
胸が痛む。罪悪感というやつだろう。
「このままと言いますと、成績も待遇も最底辺という今の状態を?」
「はい、働きアリの法則を知っていますか?
どんな集団でも20%は怠け、20%は働き、残り60%は平均的になる法則。
私が目指すのは、5%の怠けものと95%の働きものがいる集団です。
『E組のようにはなりたくない』『E組には行きたくない』
95%の生徒がそう強く思うことで、この理想的な比率は達成できる。」
「なるほど、合理的です。
それで5%のE組は弱く惨めでなくては困ると。」
「今日D組の担任から苦情が来まして、『うちの生徒がE組の生徒からすごい目でにらまれた。殺すぞと脅された』と。」
渚のことか。なかなかやりおる。
「暗殺をしているのだから、そんな目つきも身につくでしょう。
それはそれで結構。
問題は…成績底辺の生徒が、一般の生徒に逆らうこと。
それは私の方針では許されない。以後慎むよう厳しく伝えてください。
そうだ、殺せんせー。一秒以内に解いてください。」
そう言うと殺せんせーに向かって知恵の輪を投げた。
「えぇ!!いきなり!?ちょあ!!」
テンパってますねー、これは完全にテンパってますねー。
「噂通りスピードはすごいですね。確かにこれならどんな暗殺者だって躱せそうだ。
でもね、殺せんせー、この世の中にはスピードで解決できない問題もあるんですよ。
…では、私はこの辺で。」
あ、やべっ!
「やあ!中間テスト期待してるよ!頑張りなさい。」
恐ろしいやつだ…。何を企んでいるのか…。
***
「…どう思う?」
「何が?」
「殺せんせー、変わっちゃうのかな…。」
「あの人は理事長に影響されるほどやわな人じゃない。
だけど…理事長は目的のためならなんでもする男だ。」
「そう言えば夜舞君って理事長のこと知ってたの?」
「…いろいろあったんだよ。ちょっと前に。」
「そうなんだ…。」
渚は口をつぐんだ。もちろん、俺はそれ以上語る気はない。
「それじゃ、また明日ね。」
「お、おぅ。」
渚が笑って手を振った。
え?ヒロイン!? いやいや渚は男だって…。
今告られたら速攻オッケーしてフラれちゃうまである。なにその状況訳分かんねぇよ!なんで告られたのにフラれるんだよ!あれかドッキリか。たち悪いな、渚。(被害妄想)
***
翌日。先生が増えた。
いや正確に言うと、分身が増えた。
「おはようございます。みなさん。」
「今日は先生!さらに頑張って増えてみました!!」
「さぁ!授業開始です!!」
増えると残像が雑になるのか…。
っておい!俺の横にミッキーマウス的な何かがいるんですが!?
乱れ方おかしいだろ!!
「どうしたの?殺せんせー、なんか気合い入りすぎじゃない?」
「んー?そんなことないですよ!!」
***
授業終了後、殺せんせーは伸びていた。
あれだな、茹でダコ。一番適切な表現だ。
「さすがに相当疲れたみたいだな…。」
「今ならヤれるかな?」
「なんでここまで一生懸命先生をするのかねぇ?」
「ヌルッフフフフ。全ては君たちのテストの点を上げるためです。そうすれば…!」
なんか幸せそうな顔してる。さしずめ評判を上げて巨乳女子に「勉強を教えて~」とか言われる妄想でもしてんだろ。なにそれ羨ましい。
んでも巨乳というステータスは俺の評価基準には入らない。やっぱりスレンダーな方がいいと思うのよ、うん。何言ってんだ俺…。
「いや、勉強の方はそれなりでいいよなぁ…。」
「うん、なんたって暗殺すれば賞金100億だし。」
「100億あれば成績悪くてもその後の人生バラ色だしねー。」
「にゅや!?そ、そういう考えをしますか!?」
「俺たち、エンドのE組だぜ?殺せんせー。」
「テストより暗殺の方が、よっぽど身近なチャンスなんだよ。」
…プッツン…。何かが切れる音がした。
「ふざけんなよ…。」
「え?」
クラスの奴らがこっちを見る。気にしたことか。言いたいこと、全部言ってやる。
「ふざけんなよ、お前ら!!
そんなこと言って、殺せんせーが来なかったらどうする気だったんだよ!!
そもそも殺せんせーを俺らが殺せる保証なんてどこにあるんだよ!!
3月直前に殺せんせーが『はいどうぞ』って殺させてくれるのかよ!!
人生には、いくつも選択肢が与えられる、今は『暗殺』という選択肢が与えられている。だけど!なんでそれが失敗するという可能性を考えない!なんで失敗したときどう対処すべきかを考えない!!
『E組だから』ってなんだよ…。俺はこのクラスにいることに誇りを持ってるし、このクラスにいることで惨めなんて思ったことなんてないのに…。
お前ら、贅沢すぎるんだよ…。」
「裕…。」
挑発とかそういうのじゃない、これは本心だ。
言いたいことは全部言った。全部殺せんせーに任せるのが正解だったかもしれない。
だけど…これだけは、言いたかった。俺が、自分の言葉で。
もう…俺みたいな失敗者を出さないために。
***
裕は、怒鳴り、囁くと、出て行った。
「夜舞君は、卑屈でマイナス思考です。
でも、だからこそ、とことん慎重で、色んな可能性を考えられる。
そして、このクラスのことをとても気にかけている。
彼が言ったことが正解かどうかは分かりません。
しかし、少なくとも今の君たちに…暗殺者の資格はありません。
全員校庭に出なさい。夜舞君が言いたかったことを、先生が引き継ぎましょう。」
私は、首を垂れた。そうすることしか出来なかった。
一番クラスから遠かった裕が、一番クラスのことを考えていたのは知っていたのに…。
***
「夜舞君ってあんな人だっけ?」
「ていうかそんなこと考えられるんだったら、さっさと本校舎に戻ればいいのに。」
やはり、裕の言いたいことはクラスには伝わっていないようだった。
だからこそ、殺せんせーは「引き継ぐ」と言ったのだろう、裕のしたことを無駄にしないために。
あんな彼、初めて見た…。
怒って、でも悲しそうで、不安げで、罪悪感に飲み込まれていた…。
自分勝手だけど、私は、もう二度と、裕にあんな顔させたくない。
「なんなのよ、急に来いって…。」
「殺せんせーがイリーナ先生も呼べって。」
片岡さんが、ビッチ先生を連れてきた。
「イリーナ先生、プロの殺し屋として伺いますが。」
「何よいきなり。」
「あなたはいつも仕事をするとき、用意するプランは一つですか?」
「いいえ。本命のプランなんて、思った通りいく方が少ないわ。
不測の事態に備えて、予備のプランをより綿密に作っておくのが暗殺の基本よ。」
「では次に烏間先生。ナイフ術を生徒に教えるとき、重要なのは第一撃だけですか?」
「第一撃は、もちろん最重要だが、次の動きも大切だ。
強敵相手では、第一撃は高確率で躱される。その後の第二撃、第三撃をいかに高精度で切り出すかが、勝敗を分ける。」
「結局何が言いたいんだよ。」
「先生方の仰るように、自身に満ちた次の手があるから、自身に満ちた暗殺者になれる。
夜舞君のように、誇り高い目を持てる。
対して、君たちはどうでしょう?
『俺達には暗殺があるからいいや』と考えて、勉強の目標を低くしている。
それは、劣等感の原因から目を背けているだけです!
もし、先生がこの教室から逃げたら?もし、他の殺し屋が先生を先に殺したら?
暗殺というよりどころを失った君たちには、E組の劣等感しか残らない!」
殺せんせーが校庭の真ん中で高速回転をし始めた。
「そんな危うい君たちに、先生からのアドバイスです。
『第二の刃を持たざる者は…暗殺者の資格なし!!』
…校庭に凸凹や雑草が多かったのでねぇ。手入れしました。」
殺せんせーが止まった。
砂埃が消えていくと、そこは以前とは別の場所のようだった。
「先生は地球を消せる超生物。この一帯を平らにするなど、容易いことです。
もしも君たちが、自身を持てる第二の刃を示せなければ、
先生の相手に値する暗殺者はこの教室にはいないとみなし、校舎ごと平らにして、先生は去ります。」
「第二の刃…いつまでに…?」
「決まっています。明日です。
明日の中間テスト、クラス全員50位以内をとりなさい。
君たちの第二の刃は先生がすでに育てています。
本校舎の教師たちに劣るほど先生はとろい教え方をしていません。
自身をもって、その刃を振るってきなさい。
ミッションを成功させ、恥じることなく、笑顔で胸をはるのです!
自分たちが暗殺者≪アサシン≫であり、E組であることに!
夜舞君が言いたかったのは、そういうことです。」
***
やっちまった…。関わらないって決めてたのになぁ…。
しかし、あいつらは見るに堪えなかった。
ま、どうせ俺が何言っても「何言ってんのこいつ」程度にしか扱われないから…まぁ、いっか。
「やっぱりここにいた。」
「矢田さん…。殺せんせーの話は終わった?」
「分かってたの?」
「殺せんせーはあそこで話を変えるほど腐った先生じゃない。
何かしら対策は打ったと思っただけ…。」
「殺せんせー、さすがだったよ。裕にはできない説得だった。」
「って俺限定かよ。あいつの説得なんて人類全員未来永劫出来ねーよ。まぁ…そっか、それならよかった。」
「でも、私にはちゃんと届いたよ。」
「…そう。」
「裕の悲しみも、罪悪感も…。何か思うとこでもあった?」
「…別に、俺みたいなやつをこれ以上この世に存在させてはいけないと思っただけだ。」
「まーた嘘ついた。ま、今はいいよ。いつか話してくれれば…。
それと…今日はごめん。」
「なんで矢田さんに謝られるんだよ。訳分からん。」
「うん、そうだね、訳分かんない。」
そういうと、矢田さんは何かを決心した顔で立ち上がった。
「それじゃ、帰るね。
あそうだ、明日のテスト、50位以内じゃないと殺せんせー出て行っちゃうって。じゃ、また明日♪」
「そうか、じゃ、また…って、は!?50位以内って、おい!」
えー、とんでもない地雷置いて帰ったな、あの人…。
でも、正直矢田さんと話して、少し落ち着いたし、気が楽になった。
ていうか50位以内か…まぁいつも通りなら問題ない…が。
あの理事長…なんか引っかかるんだよな…。
このタイミングで、この校舎に来た意味…。
俺も帰ろうと、校舎の階段に来たとき、
「夜舞!」
振り返ると、杉野を含めた数人の生徒がいた。
「夜舞、さっきは悪かった。」「ごめん。」
「俺ら…暗殺に逃げてた…すごく見苦しく見えたんだろうな、お前からは。
でも、もう逃げない。勉強も、全力でヤってやるから…その…
明日のテスト、頑張ろう!」
少し意外な言葉に、おれは戸惑ったが、
「暗殺者の前からみすみす標的を逃がすわけにはいかない。
絶対50位以内とらないとな。」
「おう!んじゃ、また明日!」
俺らしくもない定番な青春のやり取り。だが、こういうのも悪くない。
次の日、俺が気にかけていたことは…現実となった。
お読みいただきありがとうございました。
うん、夜舞君いい動きしてる!
まぁ正直あのまま原作通り進んでも良かったのですが、それではつまらないなぁと思ってたんですよ。さすが夜舞、空気読んでるわぁ。
修学旅行間近ですね、その時に矢田さんと夜舞の話をすると思います。
では次回もよろしくお願いします。