中間テスト。3年になってから初めてのテストだ。
これが終わると修学旅行!…なんてうかうかしてはいられない。
今回のテストは…いつもとは一風変わった緊張感。
50位以内という明確な目標があった。
テストの時だけは本校舎にて受講する、これはいつも通りだ。
A~D組の前を通るとき、見下したような目で見られる、それもいつも通り。
しかし、違うのは見下されたとき、ビクビクしないことだ。
みんな誇りをもって、受験している。いい景色だ。
こういう景色を俺は知らず知らず望んでいたのかもしれない。ふとそんな甘い考えが浮かんだ。
***
一時間目・数学
コツ・コツ・コツ…。
テスト監督の…名前知らんわ、よく分からん教師が、俺らの集中を削ごうとしている。
少なくとも俺にとっちゃ、メトロノーム感覚だ。全く影響がないどころか、むしろ心地いい。いい仕事してるよ、給料上げてもらったら?
他のE組生徒も特に問題ないだろう、なんたってあの規格外教師に教えられているのだから…。
≪問一≫
x³+3x²y+6xy²+8y³を因数分解しなさい。
因数分解なんてただのパズル。
x³+8y³を先にやってしまえばあとは簡単だ。
≪問二≫
(x-y)²+(x+y)²を展開しなさい。
え、ナニコレ。普通すぎる展開。
なんというか拍子抜けだ。
≪問三≫
4xy²-49xを因数分解しなさい。
xでくくって、a²-b²の公式を使えばいい。
なんてことはない。
≪問四≫
√75-√12-12/√3+3√15/√5を計算しなさい。
分母の有理化の問題。
めんどくさいが、落ち着いて解けば大丈夫だ。
計算ミスの多い俺にころせんせーは極意を教えてくれた、もう何も怖くない。(フラグ)
≪問五≫
関数y=3x²について、xの変域が-2<x<3のとき、yの範囲を求めなさい。
代入して解く、関数問題の基本。
まぁ最小値に気を付けなければならないが、図を書けばすぐ分かる。
≪問六≫
右の図において、4点A,B,C,Dは円周上の点であり、
直線TAは点Aにおけるこの円の接線である。
∠BDA=52°、∠DAB=35°、∠CBD=61°のとき
∠CATを求めなさい。
Cat(猫)?何その可愛い問題。
角度の移動が重要になる問題、図が描いてあるから分かりやすい。
≪問七≫
△ABCの内部に適当な点Dをとる。
直線CDと線分AB、直線BDと線分AC、直線Dと線分BCが交わる点をそれぞれE,F,Gとし、
AE:EB=2:3、BD:DF=4:3になるとき、
BG:GCを求めなさい。
メネラウスの定理と、チェバの定理を使わせる問題。
計算も楽そうでなにより。
***
≪問十≫
問九の図において、△AEBは△CEDの何倍か求めよ。
台形の問題の続き、長さの比を二乗してやるだけ。
さて、もうそろそろ終わりだ、意外と簡単だったなぁ…。(フラグ)
次の問題は…初見だった。
初見なんてレベルではなく、もはや授業でやった覚えさえない。
いやぁ…すがすがしいまでのフラグ回収。
やっぱり仕掛けてきたか…これはE組云々の話じゃねーぞ…。
訴えたら勝てるまである。まぁ裁判所が取り扱ってくれないだろうけど。
それからのテストも、明らかにやっていない問題が多発した。
理科の波の問題…こんなの聞いてない。
***
夜舞裕…64/168位
結果が返却された。E組は惨敗。
クラス全員が50位どころじゃない。
烏間先生に聞いた話、二日前に全教科で範囲が大幅変更。本校舎組は理事長が直々に全部教えたそうだ。
「ねぇ…こんなのあり得る話?」
「いや、普通だとあり得ない話…。」
「そう…だよね…。」
矢田さんが明らかに落ち込んでいる。
…心が痛い。こうなったのは俺のせいと言っても過言ではない…。
何とかしないとな…。
「先生の責任です…。
この学校の仕組みを甘く見すぎていたようです。
君たちに顔向けできません…。」
ヒュン!
「にゅや!?」
ナイフが空を切った。
「いいのぉ?顔向けできなかったら、俺が殺しに来るのも見えないよ?」
「カルマ君!先生は今落ち込んで…ん?」
カルマが自分の解答用紙を教卓においた。
英語99,数学100,国語98,理科99,社会98
なんとも完璧な解答用紙だ。
「俺問題変わっても関係ないし。」
カルマの覚えがいいので、ころせんせーは進んだ範囲の問題もやらせていたそうだ。
「俺はこのクラス出る気ないよ、前のクラス戻るより、暗殺の方が全然楽しいし。
で、どうすんの、そっちは?全員50位以内入んなかったって言い訳つけて、ここからしっぽ巻いて逃げちゃう?それってさぁ、結局殺されるのが怖いだけなんじゃないのぉ?」
「なるほど、ころせんせーって意外とビビりだな。」
俺がカルマに続く。
すると全員感づいたようで。
「なぁんだ、ころせんせー怖かったのか。」
「それなら正直に言えばよかったのに。」
「ねー怖いから逃げたいって。」
「にゅや!!逃げるわけではありません!!」
「へぇ、んじゃどうすんの?」
「期末テストであいつらに倍返しでリベンジです!」
全員、その一言で笑い出した、もちろん俺も含めて。
にぎやかな暗殺教室。この雰囲気、嫌いじゃない…いや、大好きだ!
***
「ここに来るのはいつぶりでしょうか、夜舞君。
テストの件なら、私に非はないですよ?」
「えぇ、理事長。あなたを責めるつもりはありません。
今日は別件で伺いました。」
「別件ですか?」
「はい。俺らE組はおそらく…本校舎組に宣戦布告します。」
「ほぅ…今私に言ったところで特に意味はないですが。」
「宣戦布告するのは、今じゃない。
ただ少しお願いに来たんです。
この勝負は互いの誇りを懸けた勝負になるでしょう。」
「君たちE組に勝たせろと?」
「面白いこと言いますね。
そんな要求俺が一番嫌いだってこと、とっくにご存じのはずですが?
そうではなく、俺は公平な勝負を要求します。
これはE組のためだけではなくあなたがた95%にとってもそれなりにおいしい要求です。」
「もともとそのつもりです。
…実に効果的で合理的だ。E組が負けたところで、万が一勝ってしまったところで本校舎組にはそれなりに良い影響を与えるでしょう。
まぁ、結果は見えていますが。」
「負けるつもりは毛頭ありませんけどね。
まぁそのつもりならこれ以上とやかく言う気はありません。」
「ふふふ…。君は実に人の心を操るのが上手い。二年前からその能力は衰えていないようだ。
私がそう考えているのは分かっていたのでしょう?
君が作ったE組…存分に見せてもらいますよ…。」
「…失礼します。」
***
「ね、裕は班決めた?っていないよね…。ごめんなさい…。」
「ちょっと!?何勝手に決めつけてんの!?」
「え?じゃあ班決まってるの?」
「そもそも何の話だよ、あとその顔やめろ。うざかわいい。」
「かわッ!?し、修学旅行の話!もうそろそろ班決めしないとダメでしょ?」
「あぁ、あったね、そんなの。もちろん俺は誰からも誘われないし、誘ってもいない!」
「ちょっと、私泣いてくる…。」
「なんで矢田さんが泣くんだよ…。泣きたいのはこっちだよ…。ていうか泣くよりフォローしてくれ。」
「フォローは出来ないけど。」
出来ないんかい!
「班、一緒にならない?」
んーその流れになるのは分かってたが、少し意外だ。
「ん?なんか意外って顔してる。私が裕と組むのは当たり前だよ。裕、私がいないと何もできないんだから…。」
「いやなんというか、矢田さんなら俺なんて放置してパッパと五人ぐらい集めそうだったから。ていうか何その子供設定、俺精神年齢そんなに低くないよ?」
「私のイメージって…。」
ということで(どういうことだ)班が決まった。主に矢田さんが集めた班が。
つまり相手はほぼ初対面ってことになる。やだ、俺の知名度低すぎっ!
「初めまして、磯貝です。」
「初めまして、片岡メグよ、よろしく。」
「は、初めまして、木村正義です。」
いや初めましてってなんかおかしくね?
「久しぶりー」とか「改めてよろしく」とか色々あるだろ!
ないか、ないな…。ここ数ヶ月矢田さんや渚以外関わってないもんな。
「こちらはご存じの通り、夜舞裕です!」
「ども…ってなんで矢田さんが紹介してんの!?」
あと、「ご存じの通り」って言ったとき、全員首傾けたよね!?
いやまぁいいけどさ。
「まぁ…なんだ…よろしく。」
「よろしくね、夜舞君!」
「夜舞君って…この前教室で切れた人?」「え?まじで!?」
その認識のされかたはヤダなぁ…。
ていうか「誰かが切れた」としか噂されてないのね。
救われたというか…なんか複雑。
「は、はぁ。まぁ一応…。」
「そうだ、コース決めないと!」
矢田さんは切り替えがうまいですね。尊敬する。
***
「知っての通り、来週から京都二泊三日の修学旅行だ。君らの楽しみを極力邪魔したくはないが、これも任務だ。」
「ってことはあっちでも暗殺?」
「その通りだ。京都の町を学校とは段違いに広く複雑。
しかも、君たちは回るコースを班ごとに決め、奴もそれに付き合う予定だ。
スナイパーを配置するには絶好のロケーション。
すでに国は狙撃のプロを手配した、成功した場合、貢献度に応じて100億円のなかから分配される。」
誰それどこのソゲキング?
「暗殺向きのコース選びをよろしく頼む!」
「「「はーい。」」」
***
「ねぇ、夜舞君っていつからE組にいるの?」
班決めの時間、俺が入ってる…もとい入れてもらっている班はもう決まっているので、雑談をしていた。
「あーわ、ワスレチャッタナー。」
「「「「嘘だ。」」」」
全員から全否定!
「俺そんなに顔に出てるかなぁ…。」
「あはは、夜舞君って面白いね。」
はいそこのイケメン、俺をおもちゃにしないで。
「でも、私たちって夜舞君のことぜっんぜん知らないのよねー。」
強調しなくていいから!知ってるから!知らないこと知ってるから!
「それじゃあせっかくだし、夜舞君に自己紹介してもらおう!」
「え、いや、あの…。」
「そっか、そうだね。自己紹介した方がいいよ。」
矢田さんに言われてはどうしようもない。って俺矢田さんに弱すぎ!
「えっと、夜舞裕です。14才です。」
あーなんだこれ、幼稚園の自己紹介ですか?
恥ずか死にたい…。
「好きなものとかはないの?」
「そうだな…この前ころせんせーに連れてってもらったロールケーキがおいしかったな…。」
「え!なにそれ聞いてない!!」
「へぇ…ころせんせーにねぇ。いいなぁ。」
「まぁ、連れてってもらったというより連行されたって言った方が的確かもね…。」
「んじゃ、逆に嫌いなものは?」
「研きゅ…えっと、と特にないかなぁ…アハハ…。」
ご、誤魔化せたか…?いや微妙だな、暖簾に腕押しかもしれんが、一応予防線を張っておこう。
「け、化粧水の匂いとか?」
「あー、分かる、キツイのとか鼻にくるもんなー。」
俺はよく分からんが、ナイスだ木村!
「なるほどね、俺はあまり意識したことはなかったな…。
そもそも化粧水の匂いなんて滅多に嗅がないからなぁ…。」
「でも夜舞君の言うこと、女子の私でも分かるかも…。」
意外と効果あったな、矢田さんには完全にバレてるけど…。
問い詰めてやるから後で覚悟しとけって顔してるもん!
ガララ…。
「一人一冊です!」
え、なにあれ広辞苑?
広辞苑を修学旅行に持っていくとか意識高すぎ。
…いや、高いというか寧ろアホだな。
「何ですか?」
「修学旅行のしおりです。」
そう言うところせんせーには高速で生徒に配り始めた。
「うわっ!」「重っ!」「辞書だろこれ!!」
「イラスト付きの全観光スポット!お土産人気ベスト100!
旅の護身術入門から応用まで!昨日徹夜で作りました!!
初回特典は組み立て紙工作金閣寺です!」
初回特典って…売ってるの?これ?
いや、でもこれ売ったら普通に稼げそうだな。
多分1万円は軽くいくぞ…。これを100万冊集めれば100億いくね!やった!
「どんだけテンション上がってんだよ!」
ペラペラとページをめくっていく。
色々書いてあるなぁ…。他校生に誘拐されたときの対処法ってなんだよ。
まぁ無きにしも非ずだが…。
「ね!どこ行きたい?」
「そうだなぁ、清水寺は外せないだろ?」
「金閣寺って清水寺からどれくらいなのかしら?」
「逆さ金閣ってやつは必見だな。」
「俺京都って初めてなんだよねー。楽しみだ。」
「磯貝は何が一番楽しみなんだ?」
「そうだなぁ、生八つ橋ってのは食べてみたい!」
ていうか俺意外と馴染んでるな、意外。
いや向こうが適応力高いだけか、納得。
そんなこんなで修学旅行当日。
3年E組、課外暗殺活動、開始だ!
お読みいただきありがとうございました。
テスト回ですね。
アニメでところどころに見えていたのを何とか復元しようとしました。
まぁオリジナル問題もあります。そんなに難しくないです、暇だったらどうぞ。
ようやく修学旅行ですね。
もう書き終わっているのですが、だいぶラブコメしてる気がします。爆ぜろ夜舞。
矢田さんのような姉が欲しかったなぁと思いつつ、締めようと思います。
では次回もよろしくお願いします。
※追記:スマホ版では指数(累乗のやつね)がフォントの関係で表示されていないかもしれません。
どうしても問題が知りたい時のみ、パソコンでお読みいただけると幸いです。