新幹線というものはいいものだ。
俺は何もしなくても勝手に進んでくれる、なんと素晴らしい乗り物か。
「また夜舞の一人勝ちかよ~。」
「持ってる手札が大体予想できるからな。」
「裕とババ抜きして勝ったこと一度もないもん。ほんと強すぎ。」
「相手の心情を読むのが得意なのね。意外だわ。」
ていうか寧ろどんなイメージだったんだろうか…?
「夜舞って相手の気持ちが分からないからいつも誰とも話そうとしないのかと思ってたよ。」
「真逆だったみたいね。」
「そういえばなんで夜舞はずっと一人だったんだ?」
おぅ、それマジボッチの人に聞いちゃダメだよ。
心のダメージやばいから。
「そ、そうだな…。いやまぁ昔色々あって…。」
「どうして裕はこんなに嘘つくのが下手なんだろう…?」
え、なにそれ、バレてたの?
「夜舞君は良くも悪くも正直なのね。」
「ていうかなんで今俺の研究会みたいになってんの!?修学旅行ってこんなもんなの?」
「そうそう、修学旅行って人の知らない一面が見れたりして面白いのよ。
今も夜舞君見てて結構面白いしね。」
片岡さん、俺はおもちゃじゃないんだよ?
あとその凛々しい顔で見られると思わずすくんじゃう。
「でも裕ってあんまり裏表ないよねー。」
それあなたが言っちゃいます?
矢田さんの方が裏表ないんだけど。
「俺も実はもっとはじけてるかもしれないぞ?」
「えー夜舞君が?ないないwww。」
「夜舞は大体こんな感じだろ(笑)」
「ダメだー。反論できねー!!」
「あれだな、夜舞はちょっとこじらせた弟みたいだな。」
「おい待て、なんで年下なんだよ。俺なんてめっちゃ大人じゃん。
ほら、なんだ…卑屈なとことか…ネガティブなとことか…。」
「裕の大人のイメージって…。うぅっ…。」
「うん、やっぱり夜舞君はこじらせ系弟ポジションね。」
「こじらせたはいいとして、弟ポジションの改正を要求する!」「却下!」
おい。そんな笑顔で却下されたら俺反論できないんだけど…。
「もうちょっと情報が欲しいわね、クラス委員として。」
「そういう理由付けて、絶対ただの興味本位だろ…。」
「俺も気になる、クラス委員として。」
「お前ら…。ていうか他に何が気になるんだよ?
俺の性格とか大体分かっただろ…。」
「そうね…。さっき『修学旅行ってこんなもんなの?』って言ってたわよね?あれってどういう意味?」
「そのまんまだけど…?」
「違う違う。なんか修学旅行初めてみたいな言い方だったから。」
す、鋭いな…。んー確かに初めてなんだよなぁ…。
「ま、まぁ、小学校の時は風邪でな、アハハハハ…。」
「ほんと嘘が下手くそね…。寧ろすがすがしいわ…。」
「それじゃあさ!なんで矢田さんとはあんなに話してたの?」
「一年の時クラスが一緒だったんだよ。それだけだ。」
「んでも、今見た感じの夜舞の性格ならそんなに親しくなったのが疑問なんだけど。」
「確かに!気になるな!」
木村君。後で校舎裏な。(ニッコリ)
余計なこと聞きやがって…。
「まぁ、色々あったんだよ。色々。」
「見て!富士山!」
「ほんとだ!俺初めて見たよ!」
キャー矢田さん素敵!救世主!
男だったら兄貴って呼びたくなる。あ、まぁ兄貴でもいいかも…。
「ん、今失礼なこと考えなかった?」
「いいいいや、そ、そんなこと、あああありませんよー?」
矢田さんがニッコリ笑った。
…わ、笑ってるよね?あれ。
***
さすがにちょっと疲れたので、1000ページ越えしてそうなしおりを読んでみる。
ほんと色々書いてあるなぁ。
あ、これとかおいしそう。
「これおいしそう…。」
うわびっくりした!ほかの人寝てたからてっきり寝てると思ったよ!
「鴨川の縁でイチャつくカップルを見た時の寂しい自分の慰め方…。」
あ、もう別の項目に行ってるのね…。
ていうかなんだこれ。そんな対処方法決まってる。
相手を爆ぜろと強く呪うことで自分を卑下しないようにする!だ。
え、違うの?
「カップル…ね…。」
「なにか思うとこでもあるのか?話してみそ。」
「ううん、なんでもない。ところで裕は眠くないの?」
「なんと言うか昨日は熟睡だったからな。目覚めはばっちりだ。」
「そう…。私は…ちょっと…眠いかも…ふわぁ…。」
「寝とけよ、せっかくの旅行なんだ、矢田さんにはあのテンションを保ってほしい。」
「ふふふ…。それじゃ、おやすみー…。」
そう言うと、矢田さんは俺に体を預けた形で眠りについた。
んーこれ大丈夫かな、理性が…。
いやだって隣でめっちゃ可愛い子が寝てんだよ?やばいよ、これ。
俺そんなに信頼されてんのかね…。
…俺は矢田さんのこと、本当に信頼しているのだろうか…?
矢田さんには傷ついて欲しくない。何も負わせたくない。俺一人で抱え込んでおきたい。
この考えは、矢田さんを信頼しているということにはならない。
俺は自分が自分で分からなくなった。
矢田さんを信頼したいのか…迷惑をかけたくないのか…。
自分のことではっきり言えるのは、そういう風に考える俺は…嫌いだ。
***
数時間後、俺たちは無事京都に到着した。
「んーーっ!疲れたーーー!」
「座って寝てただけなのになんで疲れるんだよ。」
「さて!まずはどこに行くんだっけ?」
「清水寺から西の方へ進んで…。」
***
「おぉ!窓がないからすごい迫力ですねぇ!!
これだけ開放的なら酔いませんし。
しかし、時速25kmとは速いですねー。」
これが人間の知恵ってもんよ!どうだ!
いやなんで俺がドヤッてんの?
俺らが殺せんせー暗殺場所に指定したのは…。
嵯峨野トロッコ名所の一つ、保津峡だ。
保津川下りが有名で、列車が一時停止してガイドしてくれるらしい。
「あ、見てみて殺せんせー!
川下りしてる!」
「どれどれ…。」
今だ!
…ん?殺せんせー、八つ橋に弾丸刺さってない?
「失敗みたいだね。」
「ま、こうならないと俺も興ざめだけどな。」
「裕、すごく嬉しそう。」
「100億から分配されたらたまったもんじゃない。」
「私もちょっと嬉しいかも。」
「おっと、八つ橋に小骨が…危ないこともあるものですねぇ。」
スナイパーさんには悪いが、俺らの暗殺計画はこれで終わりだ。
次の班のとこで頑張ってくださいな。
その後も失敗するスナイパーの姿が多数目撃されたらしい。
ご愁傷さまです。
***
いやーここで引き下がれるわけないでしょー。
もちろん、俺は今殺せんせー暗殺に協力していただいた「レッド・アイ」なる人物の尾行をしている。やだ、暗殺者の尾行なんてスリリング!!
もう俺新聞記者にでもなろうかな…。どこへでも張り込める気がする。
「ね、今どんな感じ?」
ちょっと!なんで矢田さんもついて来てんの!?
っと今はそれどころじゃない。
「あんたぁぁぁぁ!?」
ターゲットが大声を上げた。
あ、殺せんせーだ。
「生徒のトラブルも無事解決したのでねぇ。
今日一日一緒に観光したあなたにもご挨拶しておこうと思いまして。」
***
殺せんせー達についてきて、入ったのは湯豆腐屋。
なんとも言えない素晴らしい香りが漂う。
「何もかもお見通しで遊ばれてた訳かぃ…。
こんな怪物がいたとはなぁ。
国が厳重に口止めするわけだ…。」
落ち込んでるなぁ、レッド…なんとかさん。
「で?俺を殺す気かい?いいぜ、ヤれよ…。
こんな商売やってるんだ、覚悟してる…って早く食えよ!!!」
なるほど、猫舌なのか、後で渚に教えてあげよう。
「殺すなんてとんでもない。おかげで楽しい修学旅行になりました。
お礼が言いたいだけです。
私を殺すポイントを探すため…ハフハフ…生徒たちは普段よりたくさん京都について調べたでしょう。
地理…地形…見どころや歴史…成り立ち…それはつまりこの町の魅力を知る機会がより多かったということです。人を知り、地を知り、空気を知る。
暗殺を通して得たものは生徒を豊かに彩るでしょう。はいどうぞ。
だから、私は暗殺されるのが楽しみなのです。
夜舞君、矢田さん、ちょっと来てください。」
げ、バレてたか…。
「き、奇遇ですね、殺せんせー。」
「お前らはさっきの…。」
「この生徒たちもまた、先生の弱点を調べようとしてここまで尾行してきました。
そして、前よりもかなり尾行が上手くなっている。これも大切なスキルです。
しかし、こんな遅くまで出歩いてはいけませんよ、後で先生が送ってあげましょう。」
「はい…。」「はーい。」
「体も考えもいかれてるぜ、あんたは…。
なのに…なんでかなぁ…立派に先生してやがる…。」
殺せんせーは暗殺に来た者をただでは帰さない。その言葉に偽りはないようだ…。
***
「なんか…良い感じだったね。こっちまで心が穏やかになったよ。」
「そうだな。あ、そうだ、渚に伝えなきゃいけないことがあったんだった。」
「何?告白?ごめん…それはちょっと応援できないな…。」
「なんでそうなるんだよ…。んじゃ、また明日。」
「うん!また明日ね。」
渚たちはゲームコーナーにいた。
「お、いたいた。おーい、渚。」
「あ、夜舞君、どうしたの?」
「ちょっと言いたいことがあって…ってか神崎さんゲーム上手いなー。」
「恥ずかしいなぁ、なんだか。///」
「ところで夜舞君、言いたいことって?」
「告白?」
「なんでみんなそう言うの!?うち合わせでもしてんの!?
ちげぇよ、今日殺せんせー尾行して得た弱点メモを渡しておこうと思ってな。」
「へぇ、尾行してたんだ。」
「まぁ興味本位だけど、んじゃこれで。」
「うん、ありがと!って夜舞君同じ部屋じゃん、一緒に帰ろうよ。」
え、なにこれフラグ立っちゃった?んなバカな。
「そうだな、それじゃ神崎さんの神プレイをもう少し拝ませてもらおうかな?」
***
「しっかし、ボロイ旅館だよなぁ。
寝室も男女大部屋二部屋だし。」
いつの間にか岡島が合流していた。
「E組以外は全員ホテルの個室だってよ。」
「いいじゃん、にぎやかで。ん?
ねぇ、二人で何してんの?」
そこには中村さんと不破さんがいた。
「シッ!」「決まってんでしょ?覗きよ!」
「覗き!?」「それ俺らのジョブだろ!!」
「ジョブではないよね…。」
「あれを見てもそれが言える?
あの服が掛けてあって、服の主は風呂場にいる…言いたいこと分かるよね?」
あれは…殺せんせーの服ですね。他に誰がいるというのだろうか?いやいない。(反語)
なるほどね、殺せんせーの裸を見たいと…中村さん大胆ね。
「う、うん。」
「今なら見れるわ…殺せんせーの中身…。
首から下は触手だけか、胴体あんのか、暗殺的にも知っておいて損はないわ!」
いや言いたいことは分かったけど、あんまり女の子の口から聞きたくはなかったなぁ。
「この世にこんな色気がない覗きがあったとは…。」
同感だ。
中村さんが、そっと扉を開ける…そこには…。
「女子か!!」
適切な突っ込み。殺せんせーは泡ぶろに入っていて胴体がみえない…。
それもはや普通にタコじゃね?
「おやおや、みなさん。」
「なんで泡ぶろ入ってんだよ…。」「入浴剤禁止じゃなかったっけ?」
「これ先生の粘液です。」「は?」
「泡立ち良いゆえに、ミクロの汚れも浮かせて落とすんです。」「ほんと便利な体だな。」
「ふっふっふ、でも甘いわ!出口は私たちが塞いでる、浴槽からあがるとき必ず私たちの前を通るよね?
殺すことは出来なくても裸ぐらいは見せてもらうわ!」
甘いのは中村さんの方だ。それをやんわりと伝えようとした時。
「そうはいきませんせい!」
「煮凝りかっ!!」
そう、まさしく羊羹のごとく、浴槽の水が固まっていたのだ!…ほんとなんなのあの生物。
「おっと、湯冷めしてしまいます。ニュルッフフフフ。」
それだけ言うと殺せんせーはプルンプルンしながら出て行った、窓から。
「逃げた…。」「中村、この覗き虚しいぞ。」
「修学旅行でみんなのこと色々知れたけど。」「殺せんせーの正体は全然迫れなかったなぁ。」
「大部屋でだべろっか。」
***
「やっぱ一位は神崎かぁ。」
気になる女子ランキングだそうだ。
「まぁ嫌いなやつはいないわな。」
「で?上手く班に引き込んだ杉野はどうだった?」
「それがさぁ、色々トラブルあってさぁ。じっくり話すタイミングが少なかったわ。」
「あぁ、なんか大変だったらしいな。」
さっき先生が言っていた「生徒のトラブル」ってやつだろう。
「気になるのは、誰が誰に入れたか、だよなぁ。」
「俺は一人に決められないんだよぉぉぉ!!」
ちなみに俺も半強制的に投票させられた。あと岡島うるさい。
「うん、岡島はいいから。」
「渚ぁ、お前は誰に入れたんだよ。」「え?ぼ、僕は…。」
「そういや夜舞にも聞いたんだっけ?誰に入れた?」
「俺が知る女子なんて矢田さん以外いないからな。」
「うわっ、なにそれかわいそう。」
それ俺のことだよな?矢田さんがかわいそうって意味じゃないよな?な?
「お、面白そうなことしてんじゃん。」
「カルマ!いいとこに来た!お前、気になる子いる?」
「んー、俺は奥田さんかな。」
「言うのかよ…。」「お、意外、なんで?」
「だって彼女、怪しげな薬とかクロロホルムとか作れそうだし。俺のいたずらの幅が広がるじゃん?」
守れー!今すぐ奥田さんを守れー!
「絶対くっつかせたくない二人だな。」
「みんな!この投票結果は男子の秘密な!」
「ま、そうだよな。」
「知られたくないやつが大半だろうし、女子や先生に絶対知られないように…。」
んータコの気配…。
「なるほど、なるほど。」
…。
「メモって逃げやがった!!」「殺せーーー!!」
「ヌルッフフフフ。先生の超スピードはこういう情報を知るためにあるんですよ!」
***
裕と別れて、部屋に戻ってくると何やら修学旅行らしい話をしていた。
「え?好きな男子?」
「そうよ!こういう時はそういう話で盛り上がるものでしょ?」
「はいはーい!私は烏間先生!」
陽菜乃は相変わらずだね。
「はいはい、そんなのはみんなそうでしょ。クラスの男子だと例えばってことよ。」
「えー…。」
「うちのクラスでましなのは…磯貝と前原ぐらい?」
「えーそうかなぁ。」
片岡さんがそう言うなんてちょっと意外かも。
「そうだよ、前原はたらしだから、まぁ残念だとして。
クラス委員の磯貝は優良物件じゃない?」
「顔だけならカルマ君もかっこいいよね。」
私がそう言うと、莉桜がこう言った。
「またまたぁ、桃花は夜舞でしょ。さっき風呂覗いてたけど。」
「夜舞君が?意外。」
「いや、私や渚とかと殺せんせーの覗いてたのよ。」
なんだ、良かった…。
「で、夜舞のことはどうなの?」
「裕は…顔は普通じゃないかなぁ。」
「そういうことじゃないよー。好きかどうかで言うと?
というかあんたらのなれそめを知りたいんだけど。」
「い、いやぁ、ふ、普通だよ?」
「普通で夜舞があんなに心開くかっての。ほら、話してみなさいよ。」
「あんまり面白くないよー?それになんで裕があんなに心開いてるのかは私にも分からないし…。」
「いいから話しなさいって。」「私も気になる~。」「新幹線の中では聞けなかったからね。」
「仕方ないなぁ…。」
そう言って、私はこの学校で裕と出会ったときのことを話し始めた。
お読みいただきありがとうございました。
えー、リア充な会話を書いていて寂しくなった自分の慰め方。
「いいことあるさ!(リアルでとは言ってない)」
次回は中一の頃のお話です。オリジナルなんで「そんなの興味ねぇよクズ!」って方はお読みいただけると幸いです。
え?逆じゃないかって?やだなぁ、そんなことあるわけないじゃないですかぁ~。
ところで、これ毎回0時をめどに投稿しているのですが、
少し早い方がいいのでしょうか?本当に暇で仕方ないよって方がおりましたらご感想をいただけると嬉しいです。
では次回もよろしくお願いします。