暗殺教室verβ   作:サクソウ

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中一の時間

私は、入学当初、というか小学校の頃から同級生にいじめられていた。

自分が何かしたという認識はなく、ただただ理不尽に思えた。

 

***

 

「あら、こんなとこにゴミが残っているわ。誰?掃除さぼったやつ?」

 

吉田里奈。簡単に言えばボス的なやつ。

クラスに笑いが起こる。

普段通りだ、なんてことはない。

机の上に落書きされるのも、上履きを隠されるのも、もう慣れっこだ。

 

「ていうかあんたマジ喋んないわね、ほんとにゴミなんじゃないの?

髪の毛で自分の顔を覆っても、存在を消すことなんてできなくってよ?」

 

いじめは小学校時代から続いていたが、いじめにあったとき最初に変えたのが髪型だった。

強気になっちゃいけない、反抗してはいけない。そう思い込んだ。

自分を隠すために、私は髪を伸ばした。

髪を伸ばすのは嫌いじゃなかったが、この髪の毛さえ鬱陶しく感じる。

自分にも…いじめられているみたいだ。

 

***

 

「矢田さん…。」

 

後ろで自分の名前が呼ばれたような気がした。

振り返ると後ろの席の…夜舞…夜舞裕が私を見ていた。

 

「いや、なんでもない。ごめん、邪魔した。」

 

なんだったのだろう。

夜舞君はそれだけ言うと窓の外を眺めていた。

よく分からない人だ。

だんだんクラスの雰囲気が柔らかくなっているのに、この人だけは、誰とも話そうとしなかった。

 

***

 

次の日、物理的ないじめがピタリと止んだ。

毎日のように隠されていた上履きも今日はきちんと指定位置に存在している。

汚れすぎてとれそうになかった机の汚れも、今日は新品のようにピカピカだ。

どういうこと?私に飽きた…?

 

いじめというのは実行者が飽きるか、ターゲットが変わるかでもしない限り特定の人物が標的となる。

あの吉田が飽きるとは到底考えられなかった。ということはターゲットが変わった…?

そうなると、うちのクラスでは…夜舞君、かな?

昨日私に話しかけたのが癪に障ったのだろうか。

私なんかに関わるから…。

 

それはどうも検討違いのようだった。

教室の雰囲気は相変わらず私に冷たいし、夜舞君に対しては特にいつもと変わりなく誰も話そうとはしていない。

ただいつもと違うのは、吉田が少しいらついているようだ。

どういうこと…?

 

***

 

次の日も、また次の日も、私は言葉以外でのいじめを全く受けなかった。

そしてとうとう、吉田の堪忍袋の緒が切れた。

 

「どういうこと!?説明してよ!!」

 

「な、なにが…?」

 

「とぼけないで!!あんたにしたいじめがことごとく無効化されてるのよ!!」

 

無効化…?それじゃ、ずっといじめは続いてたの…?

 

「し、知らない!私、何もしてない!」

 

「この嘘つき!どうせ先公にでも話したんでしょ!その体で誘惑して!」

 

「え…知らないよ、そんなの…。」

 

「嘘をつくな!!」

 

吉田が私を蹴ろうとした。

だが、その攻撃は途中で阻まれる。

 

「誰?あんたみたいなやつ、このクラスにいたかしら?」

 

「や、夜舞君…?」

 

「いじめを止めてヒーロー気取り?アホくさ。いいの?そんなことして。

次はあんたがターゲットになるかもしれないのに。

でも、丁度いいわあんた、誰も庇ってくれる人がいなさそ…」

 

「矢田さんに言いたいことがある。」

 

吉田の話をさえぎって夜舞君は言った。

 

「ちょっと!私の話をさえぎるなんて、いい度胸してるじゃない。」

 

「今お前の話はどうでもいいんだ。邪魔するな。」

 

何、私に言いたいこと…?

この人もいじめに参戦するとかそういうことだろうか?

無下に扱われた吉田はご乱心だ。

 

「どうでもいいってどういうことかしら?」

 

「そのまんまの意味だ。お前のことは後、今は矢田さんが先。理解できたか?」

 

吉田が黙った。夜舞君は肯定と受け取ったのだろう。

静かに話し始めた。

 

「矢田さん、君は、もっと強い人だ。

いじめられてるからって弱くなくちゃいけない理由にはならない。

いじめられていても強くなっていいんだ、その権利がある。

矢田さんは元々強い人だ。自分を抑える必要なんて…どこにもない。

もしあんたが強くなって反抗するやつがいるのなら、俺がそいつを止める、絶対に。

だから、自信をもって、自分を出して欲しい…。笑顔でいてほしい…。

それだけ…。」

 

クラスがシンとした。

夜舞君の話が意外過ぎたのだ。

でも…少なくとも私には…夜舞君が、本当の私を見てくれているような気がした。

 

嬉しい…。私は、私のままでいいんだ…。

 

***

 

次の日、私は前の髪型に戻した。

 

「おはよ!」

 

「えっ!?お、おはよう…。」

 

ふふふ、戸惑ってる戸惑ってる、ちょっと楽しいかも。

 

「夜舞君、おはよ!」

 

「お、おう。」

 

こちらはそもそも人に話しかけられるという行為が少ないため焦っていた。

なんかカワイイ。

 

「な、なによ!あんたら調子のってない!?」

 

「乗ってないよ♪いつもの切れがないね、調子悪いの?」

 

「う、うるさい!!」

 

気分がいいな、こういうやり取り。

 

***

 

私が教室に入ろうとしたとき私の名前が聞こえたので、ちょっと盗聴してみることにした。

 

「桃花…と夜舞、最近調子乗ってるわよね?」

 

「そ、そうだね。あいつらちょっとうざいよね、特に夜舞。」

 

というか夜舞君後ろにいるんだけど、気づいていないのかな?

 

「なぁ、吉田さん。」

 

「ひゃ!?や、夜舞、いたのね…。で、何よ?」

 

「お前さぁ、矢田さんと仲良くなりたいんだろ?」

 

夜舞の意外過ぎる二度目の言葉にまたクラスはシンとなった。

 

「え、ど、どういうことよ…?」

 

「いじめの原因って大きく分けて二つぐらいしかないんだ。ソースは俺。

一つは、身体的特徴や精神的特徴。まぁ簡単に言えばデブだったり、根暗だったりってやつだな。

もう一つは…標的が気になるとき。これがすごく曖昧だ。恋愛感情なのか憎悪なのか。」

 

「だ、だだだから何よ!」

 

「矢田さんは身体的特徴に欠点はない。つまり大雑把な消去法で、あんたが矢田さんに個人的な感情を抱いてるってことになる。

いじめの質がそんなに高くないから、憎悪のように見せかけて憎悪ではない。

あんた…矢田さんと友達になりたかったんじゃないのか?」

 

「なっ!?」

 

私を含めたクラス全員が息をのんだ。

 

「そそそそんなことないわ!桃花は…。」

 

「その呼び方もだ。マイナスな感情をもつ相手を普通、名前で呼んだりしない。」

 

「ッ…!」

 

「素直になった方がいい…。

俺が言うのはおかしいかもしれないけど、矢田さんは素直なあんたを拒絶したりはしないはずだ。

それに、そうじゃないと

 

…俺みたいになるぞ。」

 

ゾクッとした。

夜舞君の後悔…?不安…?罪悪感…?

なんだろう…すべての負の感情が混ざったような…寂しい声…。

 

***

 

次の日、吉田はきちんと私に謝罪してくれた。

夜舞君の言葉が効いたのかな…。最後のセリフ、私もゾクッてしたもん。

もちろん、私は快諾した。今更いじめの件はそんなに気にしていない。

 

「ね、夜舞く…裕!色々ありがと!」

 

「ん?いや、別に…。ていうかなんで下の名前…?」

 

「んー?なんとなく?」

 

「いや知らねぇよ、なんで疑問形なんだよ。」

 

今度は私が裕を助けなきゃ…。深い深い…負の闇から…。

 

***

 

裕は、一学期中間テスト後、E組に移った。

E組って…?そんなの初めて聞いた…。

なんでも落ちこぼれが集まるとこらしい。

 

「夜舞…あいつそんなに成績悪かったのかしら?」

 

今ではすっかり仲が良い里奈が聞いてきた。

 

「さぁ…?裕はあんまり自分のこと話さないから。でもこの前ちらっと見たとき、そんなに悪くなかったと思うけどなぁ。」

 

「いずれにせよ気の毒だわ…。あいつにも礼を言わなきゃと思っていたのに…。」

 

「離れ校舎だと会えなくなるもんね…。」

 

裕…どうしてるの…?

 

***

 

私は過去を思い出しながら、話を終えた。

 

「へぇー、夜舞君とそんなことが…。」

 

「いじめなんて聞いたことなかったわ。」

 

「ほんとに最初の方だったし、クラスが違ったからね。」

 

「じゃあ桃花は夜舞君を追いかけてE組に来たの?」

 

「追いかけてって…。違うよ、そんなこと裕が望んでいないと思ったから。私がE組に来たのは別の理由。」

 

「ほーい、ガキどもー。

もうすぐ就寝時間だってこと、一応言いに来たわよー。」

 

「一応って…。」

 

「どうせ、夜通しお喋りするんでしょ?あんまり騒ぐんじゃないわよー。」

 

「先生だけお酒飲んでずる~い。」

 

「あったりまえでしょう、大人なんだから。」

 

あ、そうだ。

 

「そうだ、ビッチ先生の大人の話聞かせてよ!」「はぁ?」

 

今私が一番気になる話だ。

 

「普段の授業よりためになりそ~。」

 

「なんですって!?」「いいからいいから。」

 

 

 

「「「えぇーーーー!!」」」

 

「ビッチ先生、まだ二十歳!?」

「経験豊富だからもっと上かと思ってた…。」

「ねー、毒牙みたいなキャラのくせに…。」

 

「そ、濃い人生が作る毒牙のような色…誰だ今毒牙っつったの!!」

 

「突っ込みが遅いよ。」

 

「いい?女の賞味期限は短いの。あんたたちは、私と違って危険とは縁遠い国に生まれたのよ。感謝して全力で女を磨きなさい。」

 

うわぁ、ためになる!普段の授業より!

 

「ビッチ先生がまともなこと言ってる~。」「なんか生意気~。」

 

「なめんなっ!ガキども!!」

 

「じゃあさじゃあさ!ビッチ先生が落としてきた男の話聞かせてよ!!」

 

「あぁ~興味ある~。」

 

「うふふ…。いいわよ、子供には刺激が強いから、覚悟なさい。」

 

それだけで十分色気があるビッチ先生って…。

 

「例えばあれは十七のとき…っておいそこ!!」

 

びっくりしたー。殺せんせー、いつの間にかいるんだもん。

って私っていつもこんな感じなのかな…?裕の驚き方と似てる気がする…。

 

「何気なく紛れ込むな!!女の園に!!」

 

「えー、いいじゃないですかぁ。私もその色恋の話聞きたいですよぉ。」

 

「そういう殺せんせーはどうなのよ?」

 

「自分のプライベートはちっとも見せないくせに…。」

 

「そうだよ~、人のばっかずるい~。」

 

「先生はコイバナとかないわけ!?」「そうよ!巨乳好きだし、片思いぐらい絶対あるでしょ!?」

 

「にゅう…。」

 

ビュン!

 

「逃げやがった!!」「捕らえて吐かせて殺すのよ!!」

 

結局最後はこうなるのね…。いつものE組に。

 

***

 

「いたぞ!!」「ぶっ殺す!!」

 

俺ら男子組はようやく殺せんせーを発見した。

ていうかなんで俺も参加させられてんの?別にあの投票バレてもいいんだけど…。

ん?あの人女子組にも追われてない…?何したんだよ…。

 

 

結局殺せんせーを殺すことは出来ず、修学旅行は終焉を迎えた。

なんだかんだ言って、結構楽しかったものだ。

 




お読みいただきありがとうございました。

展開としては定番でつまらないかなぁ…。
いじめが周りであんまりないので、リアルさに欠けているかもしれません、ていうか欠けてます。
小説なので~という「何それどこの倉橋さん?」みたいな言い訳はしないです。
これが小説初心者です!!(誇り)
Beginner最高!Beginner万歳!

では次回もよろしくお願いします。(なんだこの終わり方)
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