夢を馳せる少年   作:主任大好き

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約1ヶ月ぶりです。大変申し訳ありません。忘れてた訳では無いです。言い訳としてはレポートが終わったと思ったら試験勉強、そして、試験。休みが13からでぼんが終わったと思ったら外せない用事で2日取られる。車校が入り今に至るという形です。

すんまっせんしたぁ!

ていうか、いつの間にかお気に入りとか増えてて嬉しいです。本当にありがとうございます。


17話 戦いと答えと解決と

「何だ、あの機動は・・・・・・下手をしたら自分に少なくないダメージがあるはずだが・・・・・・」

 

今、ラウラには通常のISとはかけ離れた機動に目を丸くしている。それもそうだろう。QB(クイックブースト)を吹くだけで軽く1000km/hを超す、速度という圧倒的な暴力をきちんと制御しているだけではなく、その速度でありながら相手に攻撃を当てているのだから。

たしかに、自分も高速移動中であるのならば1000km/hを超えていても問題は一つとして無い。しかし、戦闘中は別だ。物理運動を無視したような動きすら見せるそれ。以前説明されたものの、半信半疑だったその光景に思わず口を閉じること忘れてしまう。秋磨はそんなラウラを嘲笑うが如く戦闘中にも関わらず完璧に機体を制御し、両背部武器と左右の腕部武器を使いこなす。

それに、一夏のことにも驚いていた。『ブレードオンリーの機体で初心者に何が出来る』と思っていたラウラだが、その初心者が守るために間に割り込み、自分の武器の特性を活かし牽制、さらには直ぐに攻勢に切り替えを行うその姿には本能として刻まれていると言っても過言ではない程だ。

 

「まあ、対処できないわけではない、か。どちらが勝っても私が勝つだけだ」

 

む?そろそろ試合が動く・・・・・・か。ふんっ、まだまだ甘いな。パイルバンカーをあの場面で食らうなどありえん。あいつも、マシンガンを直で食らうなど何を考えているつもりだ。

 

「これでは私が勝つのは自然の摂理だな」

 

1匹の黒い兎は獰猛な笑みを浮かべ、この試合に勝って次に戦う相手をどうやって潰そうかと深く深く思考を潜らせた。

 

 

 

 

「くそっ!勝ったと思ったのに!」

 

「・・・・・・ご、ごめん。勝てなかった」

 

「秋磨怖い・・・・・・速い怖い」

 

「一夏のせいで汗すごい・・・・・・疲れた」

 

「いやー、熱い戦いだったわ。ホントに手に汗握る展開よ」

 

「お二人が頑張ってらっしゃるのは知っていましたがまさかここまでの技術を身につけているとは思いませんでしたわ」

 

思い思いに自分の感じたことを述べる鈴とセシリア。シャルロットと簪は言うまでもなく男性陣2人のせいで汗の量と疲労感が手に取るように分かる。

 

「本当にISに触って数ヶ月なのかしら。お姉さん超えられちゃいそうで怖いわー」

 

如何にもといった具合の棒読みで言うが一夏からジト目で見られ、秋磨からは怒っていると見られたのか若干悲鳴が混じりながらの猛謝罪を受ける。秋磨の行動にまた心を抉られてしまう楯無だった。

その時、空気の抜けるような音ともに担当の教師の千冬がピットの中に入ってきた。その手にはやはり、いつものように持っている出席簿。もはや千冬のアクセサリーと言っても過言ではない程しっくり来ている。

 

「面倒なことをしてくれたな。まあ、いい。過去、引き分けにしたとしても今試合のように同時にシールドエネルギーがなくなったことは無い。さらに、相方同士が疲労で動けないと来た。終いには動けるのはただでさえ良くも悪くも問題の男性操縦者だ。よって、現状を鑑みて出された結論は『男性操縦者である2名を特例として組ませて大会続行』だ」

 

全く・・・・・・とため息混じりに今後の試合のことについて説明を受けた。そして、アリーナの放送でも千冬が今言ったことと同じが内容が伝えられる。

 

「・・・・・・えっ!?ちょっと待ってくれ!理解はしたけど納得いかねえ!元々のチームはどうするんっあ"あ"あ"あ"あ"!!?」

 

千冬とアリーナのアナウンスの内容に一瞬なのんことかと考えすぐに理解した一夏は声を上げるが、敬語を使わなかったのがいけなかった。『敬語を使え!』と千冬の出席簿ブレードが火を吹き過去一番の音を響かせた。一夏は一夏で痛みに耐えきれず、サーダナのような声を上げる。

 

「ふん、元々のチームも何もお前ら2人のせいで動けなくなっているというのに鞭を打つ気か?ん?」

 

「ひ、ひえぇ!?そ、その、あの、いや、ちが、じじじじじ、じじぶじぶじじ自分が悪かったですから、その、あの、あれ、えと、違くてえぇぇぇぇ・・・・・・」

 

ガクガクブルブルと震える秋磨にこれまた千冬も楯無同様ダメージを受ける。一夏に向けて放たれた言葉に秋磨もとばっちりを受けた訳だが、千冬も千冬であれだった。

男性陣はあまり乗り気ではないにしてもピット内の女性陣どころかアリーナの観客はアナウンスの内容にどっと沸き立つ。

 

「あんたたち!次はラウラよ、勝ってこないと赦さないわよ!」

 

「そうですわ、秋磨さん。秋磨さんの力見せつけてきてください。応援してますわ」

 

「頑張ってね秋磨、一夏。応援してるから!」

 

「疲れ吹き飛んだ。汗かいてない。応援してるから頑張って」

 

「織斑先生!この人たち全く疲れてないそうですよ!?変わる必要は無いと思います!」

 

「うるさい織斑。もう決定事項だしどうにかしたいのなら自分でなんとかしろ。まあ、上からの命令なのだから変えられるかどうかはわからんがな」

 

そう言って去ろうとした千冬だが、一度秋磨を見てため息をつき近づき耳打ちをした。すると、どういうことかついさっきまで『負けたのにまた・・・・・・胃が、胃がぁ・・・・・・』と暗い雰囲気を漂わせていた秋磨がみるみる目に活気が灯っていく。

その光景に当然、その場にいる者は首を傾げている。すると、ついに完全にやる気になった秋磨が一夏の肩を掴んだ。

 

「さあ、一夏。早く行こう!出たらいいことがあるんだ!だから行こう!」

 

「うお!?ヴォォォ!?」

 

一夏は秋磨に強くつかまれた腕を引かれながらISを纏わされ今すぐにでも出撃できるような状態にさせられた。

もちろん、ピット内にいる女性陣は何が何だか、といった具合に内容が何なのかを話し合っている。しかし、流石と言うかなんと言うか楯無がここで口を開いた。

 

「おねーさんには織斑先生口の動き的にはスイーツとかデザート、甘いものなんてワードは無かったと思うわ。なんか『好きにしていい』って感じの口の動きだったけど・・・・・・みんな分かる?」

 

「「「「あー、なるほど」」」」

 

その言葉で納得した。分かってないのは楯無だけとなった。

 

「楯無さん、覚えてる?一時期あるラファールがみんなと取り合いになったあの醜い争いの話。私たちも参加しちゃったんだけど」

 

「ええ、まあ」

 

「その時、授業でそのラファールを整備したのが誰だかご存知ですか?」

 

「ええ。秋磨くんでしょ?」

 

「それだけじゃないんです。整備と言っても、ただの整備じゃないんです。部品部品を解体して各パーツの整備なんです」

 

「えっ?ちょっと待って・・・・・・だからかしら。なんか、ラファールにしては加速も速度も照準は速度、正確さも段違いのレベルだったって聞いたのは」

 

「お姉ちゃん、何が言いたいかわかったでしょ?」

 

「・・・・・・分かっちゃったわよ。それよりも、きっと織斑先生が言うからには学園側の了承も得ている可能性が高いわね。しかも、学園側からの要望って言うのもありえそうで怖いわね」

 

奇しくも、同時に彼女らの脳裏には秋磨が魔改造に魔改造を積み重ねて魔改造のレベルを超えてしまうという光景が思い浮かんでいる。

女性陣がその原因となる人物に脇の方に目を向けると秋磨と一夏はもう既に準備は出来ていると言いたげに目を輝かせていた。

数秒後、大きめな音を立てながら目の前に反対側の観客席と白い光が広がって行く。そして、完全に広がったのを確認する前に2人は飛び出して行った。

 

 

 

 

アリーナの中央で1人はげんなりしつつ、もう1人は大会が終わってからのことを楽しみにしているようで、今にも小躍りしそうなな勢いで腕をめいいっぱい振るっている。

 

「魔っ改造!魔っ改造!」

 

「ああ・・・・・・千冬姉に何言われたのか分かってしまった自分が嫌だ。どんなふうに魔改造されるんだろ・・・・・・あれかな?ラファールは『メリーゲート』みたいになるのかな?なんか、なりそうで怖い」

 

秋磨たち2人が何を喋ってるのか知ってか知らずか、湧き上がる観客席。1年生の試合でこうも観客席が騒がしくなることが珍しい。本人たちは自覚はしていないのだろうが、何かしらの人を引きつける魅力があるのだろう。

しかし、まぁ秋磨からしてみればそんなものはありがた迷惑な話だ。人間恐怖症、人間不信という、いうなればコミュ症を地で行く人間に魅力とはなんとも皮肉が聞きすぎているのだが。

話している間にラウラたちのペアが中央までよってきた。ラウラの隣にいる人物は披露によって顔色が悪い。ISの機能を以てしてそれなのだから、どれだけきついのかがよく分かる。

 

「挑むつもりか。このシュバルツェア・レーゲン(黒い雨)に」

 

その言葉を聞いて秋磨は箒に視線を送ると、やはりというかだいぶ疲労がたまってキているようだ。

 

「へえ・・・・・・調子に乗って倒されに来たのか?」

 

「何・・・・・・?」

 

「自分が何をしたか分かるか?」

 

「・・・・・・ふん、戦場では弱い奴から死んでいくんだ。当然の結果だ」

 

その言葉を聞いた一夏と箒は同時に『やばい』と思い始める。2人は、その言葉どれだけ秋磨を怒らせてしまうのかが分かっているからだ。自分の夢を実現するために共同で作り上げたISを戦争の、人を殺すための道具だと思っているのだから。しかし、そんなことを知る由もない上に、軍で育てられたラウラにとってはそれが当たり前なのだ。そのように育てられた(・・・・・)のだから。

その状況の中でついに戦いの火蓋は切って落とされた。

試合開始とともに一夏と箒は気を入れ直し互いの相手へと向かう。

 

「「叩きのめす!」」

 

互いにそう言うや否や一夏はラウラに瞬時加速(イグニッション・ブースト)で急接近を行う。以前、シャルロットと秋磨と特訓していた時の話の内容が頭に蘇る。

───曰く、『直接腕を止められた』

───曰く、『自分の動きが単調で読みやすい』

それらを自覚していた一夏にとって、事実を改めて突きつけられると結構心に深く刺さったことを今でも覚えている。

しかし、逆にそれを逆手に取った作戦を今回は採ることにした。口には出して言っていない。所謂、土壇場の大勝負を開始直後にしたわけだ。しかし、一夏は心配など一切していなかった。

 

「開幕直後の先制攻撃か・・・・・・単純馬鹿が。私がわからないとでも思ったか?」

 

「脳まで(かび)たのか?俺は1人じゃない。俺と秋磨で2人なんだよ!」

 

一夏が大きく叫ぶと共に秋磨はHLC09-ACRUX(ハイレーザーキャノン)を射出する。高火力を謳うレーザーが射出された際の圧倒的とさえ言える音を聞き、一夏に掛けていたAICの解除を急ぐ。

 

「・・・・・・なっ!?」

 

驚くのも無理はないだろう。急いで解除したため完璧に避けた、そう思っていた。しかし、秋磨の展開していたそのハイレーザーキャノンは双発なのだ。プレイした人の間では少佐砲などと呼ばれており、瞬間火力は最高にハイッてやつだ。

ラウラとて油断はしていなかっただろう。しかし、人間は突然思いがけないことがあれば行動は停止してしまう。その人間の性は、軍属のラウラも例外ではなかったらしく、掠っただけで通常のレーザーライフルを直撃したのと同程度のシールドエネルギーの減少量を受ける。それにもまた眼をむくことになった。

 

「くっ、まさかラウラに向かうためのブラフだったとはな・・・・・・」

 

秋磨は箒にQBを吹き一気に接近。直ぐにEG-O700(パルスガン)を展開して斉射。箒の視界を遮ったところでそこから離れて一夏とラウラのところへ向かったのだ。

 

「一夏ならああやるって思ったから、ねっ!」

 

最後に大きく声を出して箒から離れる。秋磨のいたところには、ラウラの放った弾丸が一直線上に伸びていた。

避けられたことを見ると舌打ちをしながら一夏へと向き直り、ワイヤーブレードを使って対処する。

 

「くっ!は、速い・・・・・・!」

 

「・・・・・・っふ!」

 

秋磨と箒は共にブレードを振るっていた。秋磨は箒を中心に縦横無尽に駆け回る。QBの音が空気を伝わり観客席に大きく響く。その音で、機動で、怪しく紫色に煌めくブレードに目を奪われる。

皮肉にも、秋磨は人の目を集めてしまう。無自覚ではあるが、観客を魅了し味方につけつつあった。

 

 

 

 

「ふん、所詮はその程度が限界か・・・・・・」

 

「今は俺個人じゃこんなもんだよ!」

 

挑発にそう切って返す一夏は秋磨の機体よりだいぶ速度は無いが、それでも縦横無尽に駆け回る。あちこちに飛び回っている様子を傍から見ればヒットアンドアウェイを狙っていると感じるだろう。

しかしだ、ここで考えて欲しいのは零落白夜を纏う雪片弐型でそのような戦法を普通は採らないのだ。何故なら、零落白夜を発動させた状態なら多少くらいながらでも相手に一太刀入れればそれで試合が終わるのだから。この場合、攻撃しては離れての繰り返しをするだけ無駄なのだ。それだけエネルギーを無駄に食うのだから。

では何故そんな行動をとるのか───

 

「(今だ!)」

 

一夏は心の中で秋磨と交差するタイミングを探っていた。そして、最高のタイミングで秋磨が来たのだ。

 

「次はこちらから行かせてもらうぞ」

 

「───させないよ」

 

ボボフゥ!

 

一夏と秋磨が交差する時を狙って互いにターゲットを変更。秋磨とラウラが、そして、一夏と箒が互いの相手へ変わる。

秋磨は先ほどのハイレーザーキャノンではなく、普段のKAMAL(スラッグガン)を両背部に展開しており、2つの砲を至近距離で斉射。同時発射数は32発。もちろんAICで止められる事はなく数発は逸れながらも相手へと吸い込まれていく。

 

「っ!?なんだその威力は!」

 

「答えるとでも思ってるの?」

 

「ッチィ!」

 

今度はラウラが必死に逃げ回る番だった。

秋磨はラウラのAICの特性についてある程度の対処法知っていた。いや、知っていたと言うよりもその単語からある程度の憶測はあった。

AICの弱点として上げらるのはまず、発動中は集中していなければならないこと。このため、AICの対象となるのは1人しか止めることは出来ない。そして、それらは目で目視できないと意味がない。

秋磨がスラッグガンを放つ瞬間を狙って横に避けるが、散弾であるそれを全て避けることが出来るはずもない。ラウラは徐々にだが、確実にシールドエネルギーが減らされていくのだった。

一方、一夏と箒の戦闘はというと拮抗状態であった。

 

「ふっ!」

 

「くっ、何で追いつけるんだよ!」

 

「秋磨の速度の方がえぐかったからだ!」

 

「くそ!まさかこんなことになるなら箒を先に倒しておけばよかったよ!」

 

「そんなことができるなら、なっ!」

 

箒が懐へ入り(ブレード)を振るうと一夏は雪片弐型でガードし、またその逆の繰り返しだ。

機体性能で言えば一夏の方が上なのだが、現状、剣の腕だけならば箒に軍配が上がる。さらに、他の人にはプレッシャーである零落白夜でさえ、箒にとってそれは大したプレッシャーでもない。剣道での試合がそういうのに強い心を作り上げているのだろうが、それは箒が思っている以上にすごいことなのだが。

 

「くっ、流石に、これ以上は!」

 

「箒には悪いが、俺は上に行く。悪く思うなよ」

 

しかし、訓練機と専用機。機体性能は比べるべくもなく専用機に軍配が上がり、先程から零落白夜がほんの少しずつ擦ることで削られていシールドエネルギーが限界を迎えていた。

そして、そこでいっきに終わらせるべく一夏は瞬間加速を行う。爆発的な推進力を得て箒が剣を振るう前に懐に入った。

 

「なっ!」

 

「悪いな」

 

そして、一夏は雪片弐型を横薙ぎに振るい箒を行動不能へ。

ISが、行動不能となり動けなくなった箒に一夏は手を伸ばして言った。

 

「ほら、捕まれよ。安全なところまで運ぶからさ」

 

ニカッと気持ちのいい笑顔を箒に向けて笑うその顔は、箒の顔を赤く染め上げさせるのだった。

 

「うっ、そ、その・・・・・・優しく頼む・・・・・・」

 

「ん?ああ、任せとけって」

 

箒を抱えて運び終え戻ってきた一夏が目にしたのは紫電を散らしながらな悪意や敵意、憎悪にも似た負の感情を金属に溶かしたようなドス黒い何かに包まれていくラウラの姿だった。

 

 

 

 

その頃、千冬たち教員のいる管制室では次第に大きな騒ぎとなっていた。

 

「あれは・・・・・・VTシステムか!何故あんなものが・・・・・・ドイツのバカどもは見境いなしか!」

 

「そんなあれは禁止されているはずでは!しかも、あれは織斑先生のでは・・・・・・!?」

 

「くそっ!あれでは中に囚われているボーデヴィッヒが危険だ!山田くん、あそこにいる2人に回線を開いてくれ!」

 

「は、はい!」

 

今、千冬や教員の目の前のスクリーンには、一夏が無謀な突撃を行い、圧倒的な膂力によって吹き飛ばされた場面だった。

自身の能力、零落白夜のせいでシールドエネルギーが少なくなっていた一夏は、ラウラだったものが振り回した剣の勢いを殺しきれずダメージを負う。その影響で白式が耐えきれずに強制収束を行う。

それを見ないうち直ぐに向かおうにも、すぐさま移動した秋磨によって首根っこをつかまれて動こうにも動かない。何かのやりとりをしたあとに一夏が秋磨に頭を下げている。

 

「織斑先生!準備整いました!」

 

「分かった。聞こえるか、織斑、肝属」

 

『はい』

 

『聞こえてる。それで、あれは?』

 

「・・・・・・あれは、VTシステムだ。が、そんな事はどうでもいい。避難は既に生徒会を中心に何名かの生徒に任せてある。あとはお前らだ。教師部隊がすぐに向かうため、お前らもそこから離脱しろ」

 

『・・・・・・それは出来かねます。今、頼まれました(・・・・・・)から。自分も、一夏と同じで我慢なりません』

 

「・・・・・・」

 

今、この場において、千冬の周りは口が出せなかった。基本的には人から話から話しかけられればキョドったり悲鳴を上げる秋磨が、怒っているためかただならぬ雰囲気を醸し出す。それに、この場面で一番歯痒い思いをしているのは千冬なのだ。沈黙の中で聞こえてきた歯ぎしりの音はマイクを通じて秋磨たちにも聞こえていた。

 

『こんな時ぐらい頼ってくれよ、千冬姉』

 

そう言って2人は通信を切った。

 

「大丈夫じゃない?あの2人なら本当になんとかなるかもしれないわよ?」

 

千冬たちの同僚も声を掛ける。当事者ではない彼女らは、今はそれしかできないのだから。けれど、それをするかしないかで結果が変わってくることもある。取り敢えず今は千冬を落ち着かせることが目的だった。

 

「(頼れとは言われたものの、救われているのはいつも私の方だ。・・・・・・死ぬなよ、2人とも」

 

 

 

 

千冬さん、あなたの考えている事は把握しているつもりです。あなたの思いを解っているつもりです。あなたの辛さ理解しているつもりです。それはきっと一夏の方がもっと強くそうなのだと思います。自分は自分が怖いです。最初に感じたことがI()S()を汚したことに対する怒り(・・・・・・・・・・・・)だったことが。

 

「武器さえ動かさなければ向こうも動かない、か・・・・・・舐められてるのか?」

 

「・・・・・・一夏、腕出して」

 

「ん?おう・・・・・・って、なんだそのコード」

 

「自分のシールドエネルギーを白式に供給するためのものかな」

 

「そんなことできんの!?って、そうか元々は宇宙探査用だったな・・・・・・」

 

「そういうことだよ。それで、一夏が言いたいのはお前は大丈夫なのかってこと?」

 

「・・・・・・ああ。俺が言える立場じゃないけどいいのか?」

 

「大丈夫だよ。極限まで調整に調整を重ねたEUPHORIA《シールドエネルギー整波装置》があるからね」

 

「秋磨、お前ホントにやばいな・・・・・・そんなことより分担はどうする」

 

「動きを停止させるのが自分、止めは一夏だね」

 

「俺が・・・・・・?」

 

「そうだよ。あの黒いのはシールドエネルギーの異常発生みたいなものだからね。あれを全てなくすのは大変面倒だから零落白夜が必要ということかな」

 

「なるほど・・・・・・そういうことか。任せとけ。秋磨も、無理はするなよ・・・・・・」

 

そうなればいいけどね、そう心の中で締め括り、白式が完全ではないものの展開したのを一瞥しVTシステムに取り込まれたラウラだったものを見る。それと同時にQBを噴かせる。一瞬にして約900km/hをたたき出し急接近。懐に入った瞬間に腕部武器を展開。左腕に07-MOONLIGHT(レーザーブレード)、右腕にSAMPAGUITA(ショットガン)を一気に具現化。レーザーブレードを振るって、直撃したところをショットガンで動けなくさせることを主目的に置いている。その後は、一夏が零落白夜で切り裂けばいい、シンプル且つ低いダメージで済む。その上、一番勝率の高い戦法だ。

しかし、相手はコピーとはいえども千冬なのだ。I()S()に乗った状態の《・・・・・・・》。

作戦通りレーザーブレードが直撃できるタイミングで振るう。千冬もどき(・・・・・)は、零落白夜を纏ったそれでエネルギー部分を消し去る。一瞬の間隙に反応する化物じみた行動に冷や汗は垂れるものの、これである程度動きは止まるだろうと思って放つショットガン。

 

ドガンッ!!

 

「・・・・・・は?」

 

一瞬の出来事に頭が回らない。今、秋磨は空を見上げたまま打ち上げられていた。

 

「秋磨!」

 

「いち、かぁ・・・・・・っ!?」

 

「お、おい!大丈夫か!?」

 

「ぐっ・・・・・・何が、起きたの?」

 

あの瞬間に自分が何をされたのか週間は理解できていない。ちらりと千冬もどきを視線を向けてようやく理解することができた。突き上げるように放たれた拳。それが太陽の光と重なり、日食を彷彿とさせる。その、嫌な流れができてしまった。

そこからはほんの数分にも関わらず、戦っている本人たちには数十分、または数時間にも感じられるほどの苦しい展開となった。

 

「一夏、とりあえずこれがさいごだね。もう、無理をしないなんて甘い考えは出来ないみたいだよ」

 

「・・・・・・解ってるぜ。そんなこと」

 

「自分と一夏、それにラウラも次が最後。これはよく覚えていて」

 

「は?どういうことだよ、おい」

 

「ラウラ本人に千冬さんと同じ動きができるかどうかで変わってくるけど、それはないと思うよ。予想的にはあと数分で、全身の筋細胞、内蔵とかも機能低下が始まる」

 

「っ!くそぉ!」

 

その言葉を聞いて一夏は救えなかったことを考える。もし救えなかったら、実際に起こり得る現実。良くて一生寝たきり、悪くて死なのだ。

 

「一夏、落ち着いて。無茶をすれば出来るって意味だから。それに、一夏が前から言ってた言葉があるでしょ?無理無茶無謀は専売特許って」

 

秋磨は一夏に前向き言葉を掛けた。普段口にしない(・・・・・・・)ような。それが嬉しかった一夏は気分入れ替える。

 

「じゃあ、頼んだぜ相棒」

 

「任せて」

 

秋磨は短く応えると、両肩に軽量且つ高威力のSAPLA《グレネードキャノン》を展開。目的はもちろん爆炎による目くらましだ。

斉射。2つの榴弾によって爆炎の範囲を広げる。カーソルの位置は先程から変わっていない。この攻撃をVTシステムはただの目くらましと判断。突っ込んでくる攻撃にただただ無言で対処する準備をする。

 

「・・・・・・喰らえっ!」

 

未だ爆炎が広がっている中から飛び出してきた秋磨を予測通り対処するため、手を拡げ、地面に押し付けるように掴む。

 

ドドドヒャア!

 

VTシステムの動きが止まった。

有り得ない。VTシステムに感情があるのだとしたらその一言に尽きただろう。なぜなら、すぐ目の前にあった獲物(秋磨)が突然目の前から消えたのだから。

秋磨を掴もうとしていたその手は所在無げに体の横へと落ち着いた。

しかし、それだけでは終わらなかった。突如背中から激しい衝撃。十数発の弾丸背中に当たり物理的に動きを止められた。そして、そこに追い打ちをかけるようにレーザーブレードで切り裂いて秋磨は手を空いた隙間に突っ込んだ。

 

「一夏、最後だよ!突っ込めぇぇ!」

 

「おおぉぉぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁああああ!」

 

気合いの咆哮を轟かせながら一夏は零落白夜を振り切った。膨大なシールドエネルギーの塊だった。灰色のそれは総て消え去り中からラウラが出てくる。支えを失ったラウラの体は秋磨の突き出していた手によって支えられ地面に落ちることは無かった。

 

 

 

 

これは・・・・・・昔の記憶か?

 

流れるのは、千冬との会話だった。記憶のある風景の中、自身の教官であった千冬との楽しい会話。

 

「忠告だ。あいつらに会うなら心は強く持っておけよ。あれらは未熟者の癖にどうしてか妙に女を刺激する。私も手遅れ気味だがな」

 

そうだ、この時教官は自身の過去のことを思い浮かべ笑っている。素敵な笑顔なのだがどうにもこちらとしてはムッと来てしまったんだった。

その腹いせにこんな意地の悪い質問したのも覚えているぞ。

 

「教官も惚れているのですか?」

 

「弟の方ではないな。あれは普段ビクビクしているくせに好きなことになると途端に夢中になる。切り替えの激しくて苦労も多いが、なかなかだと思うぞ。特にお前と似ている」

 

「私と、ですか・・・・・・?」

 

「あぁ。今のお前と同じだ。自分自身に自信を持てていない。ん?これだと少しダジャレっぽくなってしまったか?」

 

「自身、ですか・・・・・・」

 

「体術なら私と同レベルだろうな。以前は本気を出してギリギリ勝てていたが今はどうなのやら・・・・・・」

 

教官のこの言葉を聞いて空いた口がいっとき閉じなかったことを覚えている。同時に開いた口が塞がらないとはまさにこの事だと感じたのも覚えている。

羨ましかった。教官にこのような顔をさせる2人が。弟として姉の支えであり続ける1人の男。教官が数人のライバルと睨みを利かせているというもう1人の男。どちらも教官に自分がどうやっても嬉しそうで気恥しい顔や自慢げな顔をさせることが出来ないから。

戦って解った。無数にある強さの中でたった幾つかが。

目の前にいるのは、教官の弟だ。

 

『強さっつーんは心の在処。ま、簡単に言えば己の拠り所って感じか?』

 

───そう、なのか?

 

『さぁ?それは人によって変わるんだろ。少なくとも俺はそう思ってるって話だ。その問に答えは人の数だけあると思うぜ』

 

───。

 

『まあ、強くなりたいのであれば今はやりたいことをやればいいさ。俺たちはまだ若い。すべての過ちが許される訳では無いけど、そういうことさえしなければ、好きなように生きたらいい。じゃなきゃ損するぜ』

 

───お前は・・・・・・何かしたい事はあるのか?

 

『愚問だな。とりあえず今は強くなりたい』

 

何を言っているのだろうか。目の前の男は。織斑千冬という絶対的な存在を抜きにしても充分な強さを持っているのに。

 

『俺がさっき言っただろ?強くなりたいから強くなるのさ。俺は強くなったらやりたいことがあるんだ』

 

───それは?

 

『あいつみたいに、秋磨みたいに誰かを守ってみたいんだよ。自分が持ってる力を以て自分の総てを賭してでも。あれ?途中ダジャレっぽくなった?』

 

・・・・・・ああ、やっぱりこいつは教官の弟なのだな。ジョークセンスがあるのかないのか解らないが、言う言葉や仕草、ダジャレを言った時の眉を中心に集める表情も。

 

『そうだな。だから俺はお前も、他の人も護れるように成りたいんだ』

 

その言葉とともに目の前の男は霧散し新たな男が目の前に現れた。いかにも不健康そうな顔色をしている。正直こちらが心配になりそうだ。

 

───なぁ、お前にとって強さとは何だ?

 

『つ、つつ強さ?えっと、あの、その・・・・・・怒らない?』

 

───あぁ。

 

『わ、解らない、かな?』

 

───何故だ?あいつは答えたぞ?

 

『その、えっと、つ、強さっていう概念にはいろいろなものが存在するでしょ?気持ちの強さ、体の強さ、技術面や政治面、そういったいろいろな側面を持っていてどれも一概には答えられないんだ』

 

───。

 

『あっ、でも、これは強いことだと思う。その強さを追い求める道程で自身が揺るがないこと。何があってもそれだけは譲らずに、最終的にはその強さを手にすること。それがどんな力であっても、それは強いことなんだと思う、って言う回答はどうでしょうか・・・・・・』

 

途中までは良かったのだが・・・・・・なぜ気持ちが尻下りなのだ?

 

───これだけは聞かせて欲しい。お前にとってISとは何なのだ?これだけは絶対に知っておきたいんだ。

 

『夢』

 

───夢?

 

「そう。元から自分は宇宙が好きだったんだ。宇宙探査用パワードスーツが完成と聞いた時はとても心踊ったんだ。けど、結局戦争の道具として使われている側面がある。本来の枠組みを通り越し使用される。人のために利用されないで逆の利用のされ方をしているのを見ると、とても気分が悪くなっちゃうんだよね」

 

───そうか・・・・・・済まない。最後に今のお前は自分自身と合うものを持っているのか?

 

『・・・・・・ううん。自分は自分自身のことが分からないんだ。もしかしてボーデヴィッヒさんもなのかな?』

 

───ああ。

 

『じゃあ、仲間だね。あの、さ。お互い自分自身を見つけられるように自分と一緒に探さないかな?あ、いや、その、嫌なら別にいいんだよ!?えと、あの、ほら!こんな汚くてクズでバカでカスな自分なんてあれだし!』

 

仲間、そうはっきり口にしてくれたのはお前が初めてかもしれない。いや、初めてだ。その言葉とともに途中に浮かべたその笑顔は優しく、安心できると同時に、辛くて不安にさせる相反する複雑なものだ。どうしてそんな顔をする。なぜ笑顔なのに悲しみが混ざっているような顔をするんだ?私がお前の支えとなることは出来ないのか?そしてなぜだ?なぜお前のそんな顔を見ると胸が痛むのだ?なぜお前に笑顔でいて欲しいと思うのだろう。

少し考えてみて1つの答えが浮かぶ。知識だけだが知っていた。それは恋なのだと。それは愛なのだと。なるほど、私も1人の女ということか。

それと同時に目の前の男は消えてしまった。ひとりとなった空間。以前は怖かったその空間は、答えを見つけつけてから恐怖心は無くなっていた。

 

───ああ。私もお前の支えとなれるように努力しよう。

 

 

 

 

「ねぇ、秋磨。一夏ってさアレ本気で言ってるんでしょ?」

 

「え!あ、う、うん。だ、だって、い一夏が演技できるほど器用だと思う?」

 

「・・・・・・ごめんね」

 

あ、フォローになってない!ご、ごめんね一夏。でも、仕方ないよ。今回ばかりだと一夏が完全に悪いと思う。だって、箒の純情を踏み躙ったんだからね。周りの鈴たちもため息ついてるし。

まぁ、みぞおち蹴られて沈んだ一夏は置いておいて・・・・・・

 

「と、ととりあえず、その、すすすすす少しのいていただけないでしょうか。へ、へ部屋のお、お風呂にに入りたいんですけど・・・・・・」

 

あれ?なんでこんなことになってるの?えっと、確かそのいつの間にか場所が変わっていて今いるのは医務室のベッドの上。そこまではいい。いや、良くない。目が覚めて最初に目に入った景色が白。『知らない天井・・・・・・?』と本気で言ってしまった。

 

「ダメだよ。まだ安静にしないと」

 

「そうだぞ秋磨。お前は急にぶっ倒れたのだからな。心配するなという方が無理があるだろう」

 

「そうよ。ホントにいきなりだったのよ。IS纏ったままだったし」

 

「・・・・・・でもなんでISを纏ったまま倒れたんだろう。でも、ISはまだ不完全だから・・・・・・?」

 

「あの、もしかしてですけどあの機動では?」

 

セシリアが言う機動というのはVTシステムが反応できずに目の前から秋磨が消えたあの時。

周りのメンバーもあの時の動きを思い出しているようだった。

 

「・・・・・・もしかして、二段QB?」

 

「・・・・・・うん。あの場面では無茶しない他はなかったからね。ラウラの限界時間との勝負もあっていっきに行かないと危険だったから」

 

・・・・・・あ、あれ?なんかみんな怒ってらっしゃる?な、何で?何か悪いことをしたんだろうか。何か不快な思いをさせたんだろうか。と、とととととりあえず謝らなくては!

 

「ご、ごめ「あんたねぇ!そんな無茶して心配かけさせないでよ!」ん・・・・・・?」

 

「全く、なんで怒ってるのか解らないと言いたげな顔ね。あんたが無茶して最悪な自体になったら悲しまないとでも思ってるわけ!?」

 

「・・・・・・」

 

箒は何も口に出さない。一夏も尻だけが浮いた状態で床に沈んだまま聞いていた。その理由を知っているからだ。

 

「全く、1年とちょっとじゃ変わらないんだろうけど・・・・・・これだけは覚えておきなさい。これからは無茶して危険な事をしないこと。解ったら返事!」

 

「は、はいいぃぃぃ!」

 

あぁ・・・・・・こんな自分を心配してくれるだけで充分なのに、何でこんな・・・・・・

 

「えっと・・・・・・用事があって来たんですけど・・・・・・これは一体どういった状況ですか?」

 

ここで山田先生が医務室に入ってきた。なんでも伝えなければならない用事があるようだ。

 

「なんとですね!ついに!ついに織斑くんと肝属くん、それにシャルルくんの3人は大浴場を使えるようになりました!」

 

「本当ですか!?その話は本気と書いてマジですか!?」

 

「はい!」

 

「いやっふぅぅぅ!ということで秋磨、行くぞぉぉ!」

 

「ひあぁぁぁぁぁ!?誰か誰かたす・・・・・・!」

 

一夏に掴まれてすごい勢いのまま引き摺られていく。声も次第に小さくなって行き、最後には聞こえなくなっていた。

 

「はぁ・・・・・・一夏の風呂好きにも困ったものだな」

 

「変わんないわねぇ」

 

以前から一夏のことを知っている2人の話にセシリアたちも混ざる。やれあの時がどうだのそんなことがあったのかだの。

ただ1人、秋磨たち2人が出ていった扉を見続けているシャルロットを除いて。

 

 

 

 

「ふぅ~。めちゃくちゃ気持ちいい。さすがIS学園だぜーっと・・・・・・あ、秋磨どんくらいで上がるんだ?」

 

「・・・・・・ん?あ、えっと、気分かな?少なくともまだ上がらないよ」

 

「そっかぁ・・・・・・気持ちええ。こんなに気持ちよく風呂に入れたのは久しぶりだ。ずっとシャワーばっかだったしな」

 

「個人的にはそっちの方がいいかな。だってここに向かうまで誰とも会わないからね」

 

「お前・・・・・・相変わらずだなぁ」

 

でも、確かにこれは気持ちいい。かれこれ20分は湯船に浸かりっぱなしだしね。

それにしても広い。めちゃくちゃ広い。2人だけしか入らないのに何でこんなに?あれ?ちょっと待って。

 

「い・・・・・・い、いいいい一夏?」

 

「おう?どないしはりました?」

 

「こ、こ、こここ、ここ以外に大浴じょじょじょ場ってなかったよね?」

 

「そーいやそーだなぁ~」

 

あぁ・・・・・・これはもう大浴場に入らないようにしないといけない。だって・・・・・・だってこんなことになるから!

 

大浴場に自分が入る

髪や体を洗っても取れなかった部分があるかもしれない

湯船に浸かる

その汚れが体から離れる

その後女子生徒が入る

その汚れが付く

ついた部分の肌が荒れたり、傷がついたりする

責任は自分

有罪

謝罪だけでは済まされず、社会的に殺される。その上、他の女子生徒たちからも忌み嫌われ、暴力を振るわれ最終的には胃が破壊。

 

い、い、いい、嫌だァァ!すみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみません!お、お詫びとして死ぬしかない、よね。

 

「・・・い・・・・・・だいじょ・・・・・・大丈夫か?」

 

「ひえっ!?」

 

「俺は上がるけどどうする?まだ入ってるか?」

 

「えっ!?あ、うん!じゃ、じゃあまだ入ってるから。また後でね」

 

「おう」

 

そう言って一夏は大浴場から出ていく。今、この静かな大浴場には秋磨1人だけの空間だった。たった数分。そんな短い時間だが、秋磨には特別長く感じる。そして秋磨はそれが好きだった。

しかし、そんな空間はすぐに終わりを告げる。扉が開いた音がしたのだ。風呂場のタイルの上にある水滴に足が当たり跳ねる音がする。足音は一夏ではない。一夏なら今聞こえるような遠慮して近いづいてくるような事はせずに無遠慮に近づいてくるはずだから。

考えようにも、人が来てしまったことともう、隠すことが出来ないことが分かってしまった緊張感により秋磨は動けない。

 

「お、おじゃまします・・・・・・」

 

「しゃ、シャルル・・・・・・」

 

「もう、違うでしょ。今は2人だからシャル・・・・・・えっ?」

 

見られた。シャルロットの今の反応で秋磨は理解した。自分の知られたくないことが知られたのだ。これが箒か千冬なら良かったのだ。このことを知ってるのは篠ノ之一家と織斑姉弟だけだから。

 

「そ、それって・・・・・・」

 

「シャルル」

 

ビクッとシャルロットは体を震わせる。寒かったのだ。ただ、普段の名前で呼ばれただけ。自分の名前ではないにしろ、数週間使用していた名前を呼ばれた。ただ、それだけなのに体の芯から底冷えするような冷たさを放つ雰囲気。そして、その声。

 

「この事は誰にも喋らないで」

 

それだけ。それだけなのだ。隠せるなら隠し通そうとする。例え1人にバレようとその1人を黙らせてしまえばバレない。言外にそう言っている。

ただ、この言葉を聞いてシャルロットは先程から操り人形だった(シャルル)方を呼ばれた時に感じた冷たさの中とは違い、今の言葉には悲しさ、寂しさ、苦しさを感じた。1つ1つが自分が持っていた同じ感情よりも深く、大きかった。

踏み込まないで、秋磨は無言でそう伝えているがシャルロットは直感的に踏み込まないと危険だと警笛が頭の中に響いていた。

だから言えたのだ。だから踏み込めたのだ。

 

「解ったよ。(シャルル)は言わない。けど、僕がシャルロットならいいよね。秋磨のこと、話してくれないかな?」

 

どうして、その一言が秋磨の頭で、心で溢れかえる。どうしてそんなに踏み込んでくるんだ。その思いでいっぱいなのだ。

 

「な、なんで・・・・・・なんで、そん、なにみんなは、ふみ、踏ま込んで込んで、来るの?」

 

自分から離れていかないといけない気がした。あるはずのない自分が象られる(・・・・・・・・・・・・・・)ような感覚がする。ただれそれが怖くて。それから逃げたくて。

背中からチャプンとシャルロットが湯船に浸かる音が聞こえる。そして次の瞬間感じたのは柔らかい何かだった。

 

「大丈夫。大丈夫だから。君の、秋磨の体に何があっても僕は大丈夫」

 

そう言って泣いている。シャルロットが。そして次第に秋磨涙を流していた。

数分してポツポツと秋磨が話し出した。

その日、寝る前に大浴場で秋磨はだかれた時の柔らかさを思い出し、シャルロットは裸の状態で抱きついてしまったことを思い出し、寝たふりをしていながら互いに悶々とし、寝たのは日が登り始める前で遅刻しそうになったのだ。

 

 

 

 

「危なかったぁ・・・・・・」

 

「おはよう。珍しいなこんな時間なんて。しかも隈がひでぇ・・・・・・けど、なんかすっきりした顔してるけどどうかしたのか?」

 

「えっ?いや、うん、何も、うん。何も・・・・・・」

 

「?」

 

一夏が疑問符を頭の上に浮かべながら首を傾げていると予鈴が鳴り、千冬と疲労気味の真耶が教室に入ってきた。

 

「ごめんなさい・・・・・・説明は抜きで。入ってきてくださ~い」

 

投げやりな真耶のそんな様子に、クラスにいる全員が疑問を浮かべる。しかし、すぐにそれは消えて驚愕な顔が面々に浮かぶ。

これに秋磨だけは嫌な予感がして冷や汗が滲み出ている。

 

「失礼します」

 

聞いたことのある声とともに扉が開かれ入ってきたのは本物(シャルロット)だった。

 

「シャルロット・デュノアです。改めてよろしくお願いします」

 

ニコリ、綺麗な笑顔が教壇で咲き誇る。目の下にある隈は少し格好がつくようにと化粧してある。

だが、クラスメイトは重要なことに気がついた。

 

「あ、あれ?確か昨日からは 男子が大浴場使えるようになったよね。確か、織斑くんが肝属くんを引っ張ったまま意気揚々に入っていったのを見たんだけど・・・・・・」

 

「い、一夏あぁぁ!」

 

「いぇっ!?ちょっ、おまっ、違う!俺は知らないぞ!」

 

一夏が大きく言い放ったその言葉は自分は知らないけど秋磨なら知っている。そう言っているのだ。

もちろん、クラスメイトの顔はいっきに秋磨に向くわけで───

 

「・・・・・・ごぶっ」

 

血を吐いた。それも結構な量だ。

疲労に加え貧血も加わりそうな勢いで吐血。しかし、秋磨にはまだ地獄があった。

 

ドゴンッ!   パガンッ!

 

大きな音がるのと同時に、隣の教室から壁を粉砕して入ってきたのは鈴。教室の前の扉から入って来たのは簪。特に鈴はISを展開している。

秋磨に向かって、バカ!と叫んだと同時に鈴のフルパワーの衝撃砲が発射。

 

「(あ、いつの間にか直ったんだ)」

 

短い時間にそれだけを思って死ぬのかと思っていると目に入ってきたのは綺麗な銀色だった。それが何か確認するとラウラの髪であることが判明。

AICを展開し、鈴の衝撃砲から守ったのだ。しかし、秋磨がそれを確認する前に命の危険に晒されることとなった。

いきなりだったのだ。教室内では時が止まった。何故なら───

 

「んっ・・・・・・ぷはぁ・・・・・・お前は私の嫁にする。決定事項だ!異論は認めん!」

 

大きく周りに吠えた。しかし、秋磨というと───

 

「ごぼおっ」

 

それ白目を向いて先とはレベルが違う勢いで口から噴き出して倒れた。まるで噴火のように吐き出した。秋磨の制服は白いところはほぼ無い状態となり、秋磨の周りはこれでもかというレベルで赤に染まった。

流石に今回は過去最高レベルの吐血量であったため、医務室にて入院という形が取られ、結構な量の輸血を行ったのをここに記しておこう。




限りが悪い、そう思って書いていたらいつの間にか約17000字。本当にすんませんでした。
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