「特務任務の説明をする。依頼主はアメリカ・イスラエル共同開発チーム。軍上層部を介しての任務となる。そして、ここからが任務の要となる内容だが・・・・・・」
千冬はそこで一度区切ると自分の手が白くなるほど強く握りしめる。そのことから、本来代表候補生と言えども生徒たちを向かわせたくないという思いがヒシヒシと伝わってくる。
「2時間前、ハワイ沖で試験稼働中にあったアメリカ・イスラエル共同開発の第三世代型の軍用IS
代表候補生及び秋磨と束の顔はより一層厳しい顔つきとなっていた。
「遂に・・・・・・か」
何気なく漏らした束の呟きに疑問を抱いた一夏は彼女らとは違い、未だに深刻さが理解出来ていない・・・・・・いや、理解出来ているのだろうが思考が追いついていないのだろう。
「・・・・・・我々教員たちは学園の訓練機を使用して空域及び海域の封鎖を行う。よって、この作戦は要であるお前たち専用機持ちに担当してもらう。意見があるものはいないか?」
「はい」
質疑の許可を得ていの一番に挙手したのは意外なことにセシリアだった。そのことに対して一夏が驚いている間に会議は進行する。
「目標ISのスペックデータを要求します」
「そのことだけど私が試験段階中にハックして得たのがあるよ。それに、まーくんはもっと正確な情報を保持してるみたいだし」
「・・・・・・肝属、先程調べていたであろう情報を出してくれ。ただし、この場にいる者は決して口外するなよ。お前らが漏洩したのが発覚次第、査問委員会による裁判と最低2年の監視がつくことになるからな」
「分かりました」
返事を聞いた秋磨は直ぐに腕を動かす。空間に投影されたウィンドウをいくつも開いては閉じ、開いては閉じを繰り返すとウィンドウいっぱいに映し出された銀の福音の全体像と機体スペック、弱点、武器性能など様々な様々な情報が載っていた。
「これは・・・・・・」
不謹慎ではあるのだろうが、目を輝かせたのは簪だ。期待によるものなのか、先程の秋磨の見せたハック技術なのかは分からないが。
しかし、そんな彼女をよそにそれぞれが分析していく。
「広域殲滅を目的とした特殊射撃型・・・・・・私のISと同じく、オールレンジ攻撃が可能ですか」
「破壊力、機動力の特化した機体・・・・・・か。これなら秋磨の期待の方が上だけど、暴走状態にあると考えると危険ね」
「特殊武装が曲者過ぎるね。本国から、秋磨のデータを参考にして作った後付け防御パッケージがあるけど・・・・・・連続しての防御は厳しいね」
「・・・・・・腕部・脚部の可動範囲、それに加え加速性能が通常ISより高いな。ふむ・・・・・・教官、偵察は行なえないのですか?」
「無理だな。この期待は超音速飛行で現在も移動している。最高時速は2450km/hを超えている。よっぽどのイレギュラーか向こうがその場にとどまらない限りアプローチは1回だ」
そうなると自ずと答えが導かれてくる。しかし、その当の本人は未だにそのことに気がついていない。
そこでやっと、簪も深く思考を潜らせていた中から意識を戻し一夏、箒以外と顔を見合わせて頷く。
「1度限りのチャンス・・・・・・そうなれば、一撃必殺の攻撃力を持った機体で当たるしかないでしょうね」
麻耶の言葉にその場の全員の視線が集まる。そこでようやく、ことの重大さと自分が今回の作戦の要であることを理解できたようだった。
「ちょっ、ちょっと待ってくれ!どうして俺だけ何だよ!」
慌てて反応しているところを見ると理解出来たとは言えど、受け入れてはいないようだ。
「織斑、覚悟がないならこの作戦を降りても構わない。ただし、ここであった話は総て忘れることだ。口外する事は決して認めん」
「さらに言うならば、一夏の持つ雪片弐型の零落白夜で一撃で鎮めるのが一番効率的且つ迅速に行える。このような純軍事用ISと私たちのISと戦闘を長引かせるとジリ貧なのは目に見えている。そう考えると、一番安全であると考えられる」
千冬の口から放たれた言葉。姉としても教師としても、余り危険場所に送りたくはないのだろう。そして、ラウラの口から淡々と語られる作戦の内容。曖昧な部分はあれど、ほぼ完全に的を射ているその事実に決意したのか顔付きが変わった。
「やります。俺がやって見せます」
千冬はその顔を見て諦めたような、そんな顔を浮かべ一夏の顔から目をそらす。
「よし、それではより具体的な内容へ移る。現在、この専用気持ちの中で最高速度が出せる機体はどれだ?」
「それなら、わたくしのブルー・ティアーズが。ちょうどイギリスから強襲用高機動パッケージの《ストライクガンナー》があります」
そこまで言い終わると、視界の端の方でチョロッと動いたモノがあった。なんだ、と皆そちらの方に目を向けると秋磨が恐る恐ると言った感じで手を挙げていた。
もちろん、見られた時に大きくビクンと震えたのは言わずもがな。
「なんだ?」
「あの、その・・・・・・自分が今日確認していたパッケージがそれに該当します。名前は《
千冬が催促すると若干、吃りながらながらも口を開いた。
しかし、蓋を開けてみればどうしたものか。余りの数字に真耶は女性がしてはいけないような顔をした上に白目を向いている。千冬に至ってたは、普段からは考えられないような惚けた顔を浮かべ、束は余りの速度に開いた口が塞がらないという言葉を体現している。
また、箒や一夏、セシリアたち代表候補生らは思考が固まったようにピクリとも動かない。暫らくすると、秋磨の先に自身のパッケージのことを述べていたセシリアは乾いた笑い声を上げ、簪に至っては目を輝かせ始めた。
「・・・・・・やり過ぎるなと言ったはずなんだが、やはりお前も
千冬は、チラリと束の方を見やると言葉を漏らす。
「しかし、今この場においては最善策・・・・・・か。よし、ならば───」
「ちょっと待つんだよ。流石にまーくんもわかってると思うけど、そのパッケージは直進しか出来ない。何故なら、まーくんのアリーヤ特有の特殊な移動方法である
どういう事だ、そんな表情をしていた千冬や秋磨以外の人に教えるために向き直る。
「第四世代型のISは机上の空論とされているのはわかってるよね?何故ならそれは、『パッケージ換装を必要としない万能機』だから」
相手が答えるのを待たずに口を開く束は、現状が解っているためか。時間が押している中、解りやすくする説明するためには答えを聞いている暇など存在しない。
「いっくんの雪片弐型にも使われている《展開装甲》は使われているのですよ」
「えっ!?」
「因みに、それを元に作ったのが、各部位にチューンを施すことが出来るまーくんのISのシステムってわけだよ。ほぼ、ゲームの再現しているためか通常のコアの容量以上に入れているため、空き容量が少ないために442個のメモリをチューンできるってわけ」
またここで爆弾発言を投下した束。彼女が言うには彼女自身の考案し、発明したそのシステムを各部位に当てはめて強化することが出来るようにしたのが、秋磨のISであるアリーヤ特有のチューンシステムに繋がるというのだ。
そして、彼女の爆弾投下は今まで以上のものとなって投下された。
「それで、2つの前例が上手くいったため創り出したのがこの紅椿。なんと、全身アーマーを展開装甲にしてありまーす。そのため、各分野において最強の座を得ることが出来るのです。それでも、展開装甲を設定してやっと、一部しか強化していないアリーヤにギリギリ勝てる状態なんだけどね?」
ジロリと向けられた目にさっと目を背ける秋磨。しかし、今の説明を完全に理解した時に、周りにいる者たちは束と秋磨に対して信じられないようものを見る目を向けた。
「ぴいっ!?」
多くの国が、自身らの威信や名誉、多額な資金やシステムや部品を開発するための膨大な時間など多くのものを犠牲にしてやっと出来上がった第三世代型ISの開発は、この2人にとっては一瞬の閃きによって解決がもたらされ次世代へのヒントとなるのだ。
そして、そんな多くの努力が無意味なのだ。そんな事実を驚かずに何を驚くというのか。
「───いい加減にしろと言いたいのだが・・・・・・まあ、いい。今この場於いては不問にしてやる」
それはまるで、10年前に起こった《白騎士事件》のようだ。
従来の兵器とは隔絶した性能を持ち、傷一つ付けることすらかなわない。それどころか、当時最新鋭であった様々なモノが無力化されるだけでは留まらず、各国の戦闘機を撃墜して尚人名を奪う事すらしなかった。
それは、絶望的なまでの差しか存在しないという事実なのだから。
そして、今この場には、当時世界が抱いたであろう感情が蘇ったようにも思えた。
まあ、その後は小さかった頃の秋磨にガチギレされて一時期話すことすら出来なくなり、千冬と束は全力で誤り倒し猛反省したのだが。
「ならば結論は出たな。束、紅椿の調整にはどのくらいの時間が掛かる?」
「うーん、多く見積もって7分かなー?ま、余裕で終わっちゃうけどね」
「ならば、本作戦は肝属が織斑運べ。因みに、そのV・O・BとやらはどのくらいのISのシールドエネルギーが減る?」
「えっ、いや、えーっと・・・・・・へ、減りません・・・・・・」
『『『は?』』』
「ひぃ!?」
流石におかしい。そんなことを思ったためか、聞き間違いではなかろうかと思い束でさえも聞き返す。しかし、秋磨は嘘を言っているようにも見えない。
「・・・・・・もう胃が痛いな。帰ったら休みを貰うか」
千冬が、そう漏らしたのは仕方の無いことなのだろう。
既にこの場は動き始めた。
一夏は緊張気味にセシリアに高速戦闘のレクチャーを受ける。
秋磨は淡々とやる事だけに専念しアリーヤを調整すると同時に、簪を筆頭にV・O・Bの調整を済ませる。
箒はやや浮かれ気味に束と共に紅椿の調整を行っている。その際、束の心配そうに見つめる視線に気付く事はなく。
「注意事項としては、超高感度ハイパーセンサーを使う場合にスローモーションのように感じることです。また、もう一つ。一夏さんは
「あとは、通常時より相対速度も速くなりますし、射撃時の初速度も変わってくる事があります。当たりどころが悪いと大変なことになりますから注意しましょうね」
セシリアの説明の補足と言わんばかりに真耶がその場に入ってくる。なるほど、と一夏が今言われたことを脳内で反芻し理解している間に、セシリアは秋磨の手伝いへと向かって行ったようだ。
「何ともしても成功させなければならない、か・・・・・・頑張らないとな」
その呟きは、昼間の青い空と青い海の境界線に呑み込まれるように消えていってしまった。
いや、不調もいいところですね。普段は倍近い文字数で書いてるんですが約5000字ですからね・・・・・・なんとか、前の状態に戻したいと思います。