夢を馳せる少年   作:主任大好き

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明けましておめでとうございます。昨年は良いお年をお過ごしでしたでしょうか?
皆様は今年の抱負などを決めましたか?自分は決めました。それに向かって頑張っていきたい思います。
それでは、今年も批評、批判、評価、感想などがあればどんどん書いてください。いや、本当にお願いします。
それでは、今年初めの投稿です。改めまして、今年もよろしくお願い致します。


23話 作戦失敗

「では、作戦通り。1分ほど早く篠ノ之が出る。その後、肝属は作戦領域に入る前に、超高速移動用パッケージを仕舞え。その頃には同じ距離を進んでいるはずだ。織斑はしっかりと肝属に掴まっておけよ。でなければ、振り落とされてしまうからな。超高速戦闘だ目を回すなよ。・・・・・・よし、篠ノ之、織斑、肝属の3名は準備をしろ」

 

千冬が3人に今作戦の内容を解りやすく繰り返す。それに返事をして進行方向へと向き直る。

すると、箒が2人の方へ向き直り口を開いた。

 

「本来なら、女の私より男のお前たちが後に出るなどプライドが許さないのだが・・・・・・今回は特別だぞ」

 

それは、本来ならば顔を顰めながら嫌そうにいうであろうセリフ。しかし、箒の顔には何処か機嫌がよく、喜色の混じった感情が浮かんでいた。

秋磨と一夏は顔を見合わせる。2人ともそれについて口を出すことは無かったがいい顔はしていない。特に秋磨の場合、人の感情に人一倍敏感であるが故に、完璧とまでは言わずともある程度原因を予想できた。そこで秋磨は束へと目を向ける。そこには、心配そうな眼差しを箒に送る姉の姿があった。

 

「どうした?緊張しているようだが・・・・・・心配するな。私がお前たち道を作ってやろう」

 

口から出るのは、やはりと言うべきか根拠の無い自身を纏った言葉だった。

それに思うところがあったのだろう。千冬は顔を顰めていた。しかし、今から作戦を遅らせてしまうと周辺へ被害が出てしまう。苦渋の決断故に、千冬は口を開いた。

 

「───では、行け!」

 

「了解!」

 

少しの加速時間を要し先端技術の塊故か、ごく微量に抑えられたソニックブームを発しながら出ていった。

すると、そこへ千冬と束が急いで寄ってきた。

 

「・・・・・・いっくん。そして、まーくん。お願い。箒ちゃんをフォローしてあげて。この時期にISを渡した私が言うことではないかもしれないけど、箒ちゃんも反省すると思うから」

 

そういって頭を下げる。普段は傍若無人、勝手放題、そんな言葉が似合うと言わんばかりに、周囲に対して災害を振り撒く彼女も今は、一人の姉として二人の前に立っていた。横には、いつもの厳しくしていた目を緩ませながら友人を見る千冬の姿も見られた。

 

「お前ら2人には済まないが、今のままだと良くないからな。こいつの言った通り、フォローを頼む」

 

「ああ。解ってるぜ」

 

「うん・・・・・・」

 

自身の姉が、普段頼らないことからこのような非常時に頼ってもらい嬉しく思いながらも、気を引き締めて一夏の顔は既に集中力が最高点に達したような顔をしていた。

対して、秋磨の顔は不安に揺られながらなんとか返事をしたような表情だ。

 

「そろそろだな。位置につけ」

 

千冬の言葉に頷き移動を開始する。秋磨は、千冬の横を通り過ぎた時に声をかけられた。

 

「───帰ってこい。必ずだ」

 

「・・・・・・はい」

 

彼の不安に思っていたことも相まって、一気に浮上した。秋磨は理解した。この時点で、秋磨自身と一夏、さらに箒といった3人の内何人かが帰ってこれないのだと。もしかしたらその全員かもしれない。

 

「───3」

 

準備していた彼のIS(アリーヤ)に《V・O・B(ヴァンガード・オーバード・ブースター)》に作動の信号を意識して送る。そして、瞬時に周囲のエネルギーも集め充填し始める。

 

「───2」

 

少しずつ音を立て始めるエンジン音。音が大きくなるにつれて一夏が秋磨にしがみつく力が増す。秋磨はそれを視認すると、自身も一夏を振り落とさないために固定したパッケージを確認する。

 

「───1」

 

全ての確認が終わった。千冬と束はこれからなる莫大なソニックブームによる衝撃波から身を守るために前に身を屈め、耳を抑える。極限までに減らされたとは言うものの、音速の倍以上の速度だ。前方に《QB(クイックブースト)》を吹くと、音速の約3倍だ。一夏にとって未知の世界となるそれは、相当に恐怖を与えるものだろう。

 

「行け!」

 

ふわっと一瞬浮き、前方に通常ブーストを噴く。少しずつ加速しはじめ、ついに最大加速に達した。

ゴウッ!と大きな音を立てると、爆発的な推進力を得、通常ブーストも相まってぐんぐんとペースが上がる。10秒しない内には、ついにその速度は2800km/hを超えた。

流石にこの速度には一夏も目を向く結果になる。それもそうだろう。ゲームの中の存在が、無駄にここまで事細かに再現されるのだから。

 

「お、おい・・・・・・《QB》も多発してくれないか?」

 

「大丈夫。元よりそのつもりだよ。・・・・・・正直、今の箒には不安しか感じないからね」

 

それ以外にも要素はあるけど、そう続けた。しかし、その言葉と同時に発した《QB》の音により遮られた。聞こえなかったその言葉に疑問符を頭の上に浮かべる一夏。しかし、さらに衝撃を感じて思わず速度の数字を見る。すると、そこに書いてあったのは3500km/hを超える意味不明な数字。

 

「ほ、ほわぁぁぁ!?ほ、ホントに超えたぁぁ!?」

 

近くでワーキャー騒ぐ一夏の声を右から左へ聞き流しながら、秋磨は前方の奥へ意識を絞らせる。

すると、前方に赤い点のようなものを見つける。作戦領域と今いる自分たちの場所を確認するためにレーダーの確認できる範囲を広げた。どうやら、あの赤い点の様なものを箒のISだったようだ。レーダーの緑色に灯る反応にぐんぐん近づくとそれに応じて作戦領域も近づいてきている。

 

『よし、《V・O・B》を仕舞え。それと、作戦領域に入ったら固定用パッケージもパージしろ』

 

耳元に流れる千冬のアナウンスを聞き、それと同時に《V・O・B》の作動状態を停止させて仕舞う。その間、一秒にも満たない中で作戦領域へと入り、固定用パッケージのパージへと移る。

 

「サンキュ、秋磨!」

 

一夏は秋磨に声を掛けると、ブーストを噴かしながら2人は箒の横へ並ぶ。

 

「何も無かったぞ。あとは、目の前のあいつを堕とすだけだ」

 

「「・・・・・・」」

 

やはりと言うべきか、つい先程から箒の言葉には些か緊張さの欠片も感じない。一夏はそれを歯痒く思う。

 

「箒、気を引き締めて。これは遊びでも訓練でもない。ましてや、箒はそのIS(紅椿)には今日が初めてなんだよ?」

 

「む?なんだ、今になって怖気付いたか?まあ、見ているだけでいいぞ。私と一夏でやって退けよう」

 

「箒!」

 

流石にこれには堪らずと言ったように秋磨は口を開く。しかし、帰ってくるのは何ら変わらない返答だけだった。これには、一夏も我慢の限界だと言わんばかりに声を荒らげる。

秋磨は、どうにかしてみんなと帰らなければならないと考えて箒の考えを改めるようにするのが不可能だと感じた。それ故に、すぐに反応できた。

 

「レーダーに敵IS反応!銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)を確認しました!戦闘準備に移行します!」

 

『解っている。こちらも確認したからな・・・・・・では、作戦を開始しろ!』

 

「「了解!」」「・・・・・・了解」

 

一夏を先頭に左右の斜め後ろに秋磨と箒が並ぶようにして陣形を作る。

敵機である福音は未だに余裕といった雰囲気を醸しながら、悠然と高速で移動していく。そして、横から《瞬間加速(イグニッション・ブースト)》で強襲するタイミングが来るまで待つ。

 

「───5、4、3」

 

そのタイミングで、白式のスラスターへとエネルギーを回す。溜まっていく数値に目を移す。既に、いつもの数値を超えているようだ。

 

「2、1───」

 

少しずつであり小さくではあるが、先の秋磨の《V・O・B》のように音を鳴らす。既に許容範囲ギリギリのところまで来ており、そこで溜めるのを止める。

一夏はその瞬間に今作戦を終わらせることができるように集中力を高めていく。

 

『「今だ!」』

 

耳元の通信からの千冬の声と、斜め後方からの秋磨の声が重なり合って合図を示す。

 

「っらああああぁぁぁぁ!!」

 

いつもより倍近い数字の速度に振り切られないように、気合を入れながら《零落白夜》を発動。

 

───行ける!

 

一夏がそう確信した時だった。秋磨は直ぐに異変に気づいた。福音の顔面部分が一瞬ではあるが、こちらに向いたのだ。

 

「ッ!?」

 

きゅぃぃぃ・・・・・・ゴウッ!

ドヒャア!

 

秋磨は、一瞬のうちに後部《OB(オーヴァードブースター)》へとエネルギーを回す。そして、爆音に継ぐ爆音を鳴らしたかと思えば、通常の《QB》とは大違いの光量を発しながら前方へ《2段QB》で加速を行った。一瞬のうちに一夏に追いつくと、秋磨は驚きの行動に出たのだ。

 

「ウオッ!?」

 

横から、一夏の腕を掴んで引っ張ったのだ。その瞬間、福音は予測とは違った結果に驚いたのか、焦ったかのようにこちらへと向き直り後退を始めると同時に、迎撃モードへと移行準備に入った。

 

『敵機、3機を確認。迎撃モードへと移行します。銀の福音、稼働開始します』

 

オープンチャンネルから聞こえてきたのは、抑揚の全く感じられない機械音声だった。しかし、それが場にそぐわず異質さを際立てる要素となっており、それも相まって恐怖を増長される要因でもあった。

しかし、既に際は投げられてしまっている。このまま止まろうにも時すでに遅い。それと同時に、先にダメージか何かしら与えることができずとも、相手にペースを渡さなければチャンスはいくらでもある。そう考えると、秋磨の行動は一つだけだった。

 

「いっけぇぇぇ!!」

 

「っマジか!クソッ、届けぇぇぇぇぇぇ!」

 

ブゥン!と言ったようにサイドスローのように横から腕を回して、回転投げのように勢いを付けて後退する福音へと投げた。

しかし、その強襲は意味をなすことなかった。

ぐるん。機体にかかる慣性を制御するための《慣性制御装置(パッシブ・イナーシャル・キャンセラー)》を標準搭載するISでさえ高度な技術を要するそれを暴走状態で(・・・・・)行ったのだ。その行動により、《零落白夜》による刃を数ミリ単位という恐ろしい精度で避けたのだ。

 

「箒、撃て!」

 

「解っている!行け!」

 

流石に、今の一瞬の攻防を見て気を引き締めたのか、既に準備状態にあった右の《雨月》で打突を繰り出し牽制を行う。そして、それを囮に左の《空裂》を数回振るって帯状の攻性エネルギーを回数分放つ。

しかし、それらはひらり、またひらりと避けられてしまう。

 

「面倒だな!あの翼が急加速を可能にしてるのか!?」

 

一夏が吐き捨てるかのようにそう叫ぶ。

しかし、そんな中隙を見て死角から秋磨がタイミングを悟られないようにワンテンポ遅らせながら右手の《MBURUCUYA(ショットガン)》を放つ。

近くで放ったことと、散弾のそれを数発受けた福音は衝撃で一瞬動けなくなる。しかし、秋磨はその一瞬が狙いだったようで、先ほどの《2段QB》に加えて突撃するためにブースターへエネルギを回し、左の《07-MOONLIGHT(レーザーブレード)》起動させてを横に振るった。

 

『ッ!?』

 

福音は、後退できない。それを悟りブースターに無駄にエネルギーを送り、力任せに脱出を試みるがシールドエネルギーを削ることに特化しているため、エネルギーを予定の半分しか送ることが出来ず少ししか後退できなかった。秋磨のレーザーブレードは刃先の方だけ当たり、決定的な一撃を与えることはできなかった。

しかし、次の瞬間驚くことになったのは秋磨の方であった。なぜなら、お返しと言わんばかり装甲の一部を翼を広げるように開いたと思うと、その周囲に纏った高密度のエネルギー弾を幾重に作り出したのだ。

 

「っな!?」

 

「秋磨ぁ、離れろぉ!箒、援護してくれ!」

 

「ああ!」

 

ブレードを振るった直後の一瞬の硬直を狙われて放たれる。当たるかと思われたその瞬間、硬直が解けて後方へ《2段QB》を行い避けるが、弾速が速いためかあまり余裕が無い。

すると、秋磨は箒の放った攻性エネルギーを視界の端に入れた。そのまま、そのエネルギーは福音のエネルギー弾とぶつかり爆発していく。しかし、漏れも存在していたようで秋磨の方へ向かってくるものは未だに存在する。秋磨はそれを見ると、すぐざま両背部の《KAMAL(スラッグガン)》を起動させて片方16発のそれを放つ。32発の散弾はエネルギー弾と反応してまた爆発を連鎖して消えていく。

 

「・・・・・・振り出し、か」

 

その言葉が誰ともなく呟かれる。2人は、自然と秋磨の付近に一度集まる。

 

「くそっ!」

 

「落ち着け。一夏、右は任せる。左は私が受け持とう」

 

「自分は遊撃、か」

 

「解った。箒、無理するなよ!」

 

短い作戦時間は終わりを告げ同じように小休止を終えた福音は、秋磨たち3人へと攻撃を開始。3人も負けじと攻撃を始めた。しかし、福音は回避運動に重きを置いているためかカスリもしない。

秋磨が右の《MBURUCUYA》や両背部の《KAMAL》を放ち、できるだけ2人への攻撃を最小限に抑える。箒は突っ込むと同時に《雨月》と《空裂》を振るい牽制し、一夏が突撃する為の道を作る。一夏は何度も、近付いては離れられることを繰り返しながらも、頭は冴えているのか冷静に観察を行う。

また、福音も負けじと無数とも思えるエネルギー弾を放つと同時に回避行動を行う準備へと移行。回避に加え反撃と、2つの行動を同時進行という高度な技術を惜しげ無く繰り出す。福音の特殊なスラスターは奇抜な外見とは裏腹に数、攻撃性において猛威を振るい、驚愕をばら撒く。

 

「一夏、私が動きを止める!」

 

「任せた!」

 

「箒、自分がエネルギー弾の処理を担当する!」

 

「頼む!」

 

そう返答を返すと同時に、福音の攻撃は再開。秋磨は《KAMAL》を交互に放つ。ボゥン、ボゥン!と連鎖するように減っていく猛威の雨の間を、箒は機動力にものを言わせ急加速を行う。また、展開装甲による自在な方向転換、急加速を行い福音との間を詰めていく。もちろん右の《雨月》、左の《空裂》の連射というおまけ付きだ。

このコンボには、流石の福音は回避だけでは足りなくなり被弾、防御ともに増えてきた。

 

「はああああ!」

 

───やれる!

 

「いっけぇぇぇ!!」

 

左右で綺麗に挟み撃ち。数秒後には叩き斬られ戦闘行動不能、そう判断されるであろう。そんな光景が2人の脳裏を過ぎった直後だった。なにかに気づいた秋磨が危険を知らせるために2人にはなれるように言葉を発した。

 

「っ!?箒、一夏そこを離れて!危ない!」

 

次に2人の目に入ってきたのは、ウイングスラスターの全砲門が開いたのだ。その瞬間、36発。その上、全方位に対しての一斉射撃。

 

「やるな・・・・・・しかし、ここで引くわけにはいかん!」

 

箒は大きな声で、自らを奮い立たせるかのように言葉を放つ。エネルギー弾の雨を躱し、射撃後の隙のできた福音へ接近。

 

「っ!?下方に熱反応!あれは・・・・・・密猟船!?何故こんなところに!」

 

「秋磨、任せろ!俺のが早い!」

 

1発。たった1発だがそれでどれだけの規模の被害が起きるの想像に難くない。悲劇を齎さない為に一夏が下方へ《瞬間加速》を行い《零落白夜》で掻き消した。

 

「何をしている!せっかくのチャンスであっただろう!」

 

一夏の予想外の行動に攻撃の手を休め、隙のある福音から離れた箒はその行動を糾弾する。

その時、機械が電源を落としたような音がその場に響く。何事かと思えば、白式のエネルギー切れだったのだ。

 

「馬鹿者!犯罪者などをかばったがために作戦の要も・・・・・・!そんな奴らは───」

 

「箒ぃ!」

 

一夏が口を開きかけたその時、秋磨が声を荒らげたのだ。

 

「君は何様なんだ!自分の専用機を手に入れたからって何かが変わるわけでもないのに!箒のしていることは銃を与えられて、それを得意げにちらつかせてるだけの行為だよ!君は何の為に剣道を始めたんだ!」

 

「わ、私、は別に・・・・・・そんな」

 

「っ!?くそっ!こんな時に」

 

一夏と秋磨の視界の端に急に変化が訪れた。動揺した箒が、悲痛な顔を浮かべそれを隠そうと顔を手で覆った時に落とした刀が、空中で光の粒子となって消えたのだ。

 

───具現維持限界(リミット・ダウン)

 

それは、本来の意味でのエネルギー切れであるということだ。

そして、もう一つ不幸なことがある。それは学園のアリーナではなく、実戦。それも海上から数百mも上空である。

一夏は、弾かれたように加速した。最後のエネルギーを使っての《瞬間加速》。秋磨の視線の先では福音が一斉射撃モードへ移行。それは、完全に箒を捉えていた。秋磨も遅れながらスタートを切るものの、箒との距離、一夏との距離、福音と2人の間に入るには、何れも時間が足りなかった。

 

「まぁぁぁにぃあえぇぇぇぇぇ!!」

 

一夏が咆哮を上げ、箒との間に割り込んだ。

 

「があああああああ!」

 

箒を抱きしめた瞬間、エネルギー弾が一斉に背中へと集中砲火を浴びた。一夏の骨が軋み、筋肉が、肌が、何もかもが悲鳴を上げた。

落ちていく一夏を呼びながら、悲鳴をあげる箒。そんな光景を見ながら、冷たい感情が秋磨の中を支配した。それと同時に、自分自身に(・・・・・)に落胆した。親しい者が落ちていったのに、感じるのは悲壮感や相手への復讐ではない。ただただ、自分と相対している福音のことだけだからだ。

 

「・・・・・・箒、一夏を拾って帰って。殿は自分がする。早く」

 

「あ、でも・・・・・・お前が───」

 

「いいから!早く行って!」

 

最近、声を荒らげることが多くなってきた。彼自身の過去のこともあって余裕が無いのが本当ではあるが、ここでは自分自身への怒りを隠すことではなく相手への怒りを覚えている、そう捕えられたようだった。

 

「わ、解った・・・・・・」

 

その後、箒は落ちた一夏を救助して旅館の方へ体を向けて進む。

秋磨は、右の《MBURUCUYA》を消して耳元にある通信機へ手を伸ばす。機能をONにして、今からなすことを伝える。

 

「・・・・・・このままでは、攻撃を受けた際に箒は一夏もろとも重症を負う可能性が高いので殿を務めます」

 

『・・・・・・私たちが迎えにいく。死ぬなよ』

 

『そ、そんな!』

 

『山田先生・・・・・・!これ以上は死人が出ます。一番可能性が少ないのはこれだけなんです!』

 

「・・・・・・決まりましたね?では」

 

千冬への返答をせず、返答を聞かず。通信機へと伸ばしていた手を降ろして、再度右に《MBURUCUYA》を展開する。

 

「・・・・・・これだから自分のことが嫌いなんだ」

 

ボソッと呟かれたその言葉は福音の届くことはなかった。

 

福音はスラスターを展開し、エネルギー弾を充填。発射完了の段階まで済ましている。

秋磨は両背部の《KAMAL》を展開。何時でも戦闘開始の準備か整っている。

その時、何の因果か箒か一夏の刀が具現維持限界した時の粒子が福音と秋磨の中間を漂う。そして、それが消えた瞬間。

 

ボボボボボボボボボ!

 

エネルギー弾と《KAMAL》のぶつかり合って連鎖的に爆発する音が、第2Rの鐘の代わりとしてその場に響き渡った。

 

 

 

 

福音と秋磨の両名が2回目の戦闘を開始してから十数分がたった。その様子を離れた旅館のある一室にて、その映像が流れていた。

一段と強い光量が一瞬で数回も煌めく。まるで、完全に相手を手玉に取って猛攻撃で相手を今にも落とさんとする勢いだ。

しかし、そこにいる者たちはまるでその逆。今のうちに削れるだけ削り、短期決戦を望むかのように死地へ向かうが如く火を一極集中させている様に感じていた。

 

「あれは・・・・・・多分、また・・・・・・」

 

「《2段QB》の多用・・・・・・ですわね」

 

「きっと、無理しないとダメ・・・・・・そう判断したんだと思う」

 

「・・・・・・まーくん」

 

映像の中の秋磨の顔───いや、顔だけでなく上半身の前側は真っ赤に染まっていた。また、口から真紅の液体が吹きでる。首を横に振り、辛いのを紛らわすかのように。

 

「織斑先生、織斑くんと篠ノ之さんの安全が確保されました!」

 

「・・・・・・解った。山田くん、肝属の元へは?」

 

「・・・・・・戦闘が激しく、半径3km圏内に入ることは不可能です」

 

「・・・・・・そうか」

 

その事実が、この場の雰囲気を重くする要因にもなっている。

映像の中で秋磨は《2段QB》を多用して前方から突撃したかと思えば、気づけば真後ろを位置を取り続けて両背部のスラッグガンを至近距離から一斉射。32発の内半分は直撃して、着実にシールドエネルギーを削り絶対防御を引き出そうとしている。

 

「今、思うことではないんだろうけど、これがたった3ヶ月乗っただけって考えるとどう?」

 

「異常だな」

 

鈴の言葉に、即答したのはラウラだった。ここにいる者たちは、専用機を持っていることが大前提である。であれば、勿論操縦技術に関するノウハウを長い間叩き込み続けてきたのだ。1、2年、若しくはそれ以上の長い年月を重ねなければならないのだ。

それでも、なれる者となれない者が出てくるのに対して、たったの3ヶ月というのは異常 というのも仕方の無いことだったのだ。

 

『あああああああ!』

 

そんな会話から数分。映像上では、最後の32発を一斉射すると同時に、機体を軽くするために《KAMAL》を粒子化してダメ押しと言わんばかりに右の《MBURUCUYA》を全弾命中させる。そして、遂に秋磨の左腕の《07-MOONLIGHT》が福音を捉えたのだ。

 

「やりましたか!?」

 

しかし、映像上では一時停止したかのようにその場に両名がとどまり続けている。

秋磨の《07-MOONLIGHT》のエネルギーが持つ、圧倒的熱量により接触部分が赤銅化し溶けていた。

 

「ッ!・・・・・・どうし、た・・・・・・!?」

 

「ちーちゃん!急いでまーくんを回収させなきゃ死んじゃう!」

 

その言葉を皮切りに、紫色のエネルギーは消え失せ他と同時に福音にドス黒い深紅がひろがった。数秒後には、秋磨の体はぐらりと傾くと海へ吸い込まれるように数百mの高さからフリーフォールする。

高い水しぶきを上げ、海の中へ沈んでいく様子が映し出されていた。

 

「い、いや、ですわ・・・・・・」

 

「は、ははは・・・・・・何の冗談かしら」

 

この場にいる専用機持ちである鈴、セシリア、シャルロット、ラウラ、簪の5人は自身の身体を抱え込むように震えたり、へたり込むように腰を落としたりと絶望したかのような反応を各々がしていた。

 

「・・・・・・クソッ!」

 

一際大きな声を上げ、机を殴った千冬の手のひらからは血が滴り落ちていた。

そこからは沈黙が続いた。千冬の足元には自身の血液により血溜まりが出来ていた。

 

「・・・・・・作戦は失敗だ。肝属の捜索を教師部隊へ連絡しろ。海上で待機させておけ。開始のタイミングは銀の福音が移動した後だ」

 

虚しく、そんな言葉が響いた。




まさか、苦手な戦闘シーンだけで9,000文字超えるとはなぁ・・・・・・
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