やっと仕事が終わったか。書類関係の仕事を全て終え、ふと視界の端に入った時計に目を向ける。時刻は21時───
「こんな事をしている場合ではない・・・・・・!」
柄にもなく私は焦る。ついつい仕事に没頭しすぎたためか周りには誰もいない。完全に1人の空間で黙々と書類を片付けていたのかと思うと少し悲しくなってきた。そして何故か頭の中で思い出したのは、最後に職員室で会話をしたのは『ああ、今度は休み明けだな』、である。その時の時刻は、窓から見える景色がほぼ黒に近い紫となり掛けていたため、確か18時頃だ。
・・・・・・クソっ!無駄に悲しくなっただけではないか!
「よし、
私の持ち物中にはちゃんと入っている。確認も済ませたし、さっさとあの場へ向かわねばならないな。でないと、もうあいつらがおっぱじめているやもしれん。この私を差し置いて。
「・・・・・・その場合は、あの小娘共をどうしてくれようか」
コツコツと廊下に響く私の足音は、普段より幾分か早く私自身の鼓動の早さを如実に表しているのかもしれない。
「喜んでくれるだろうか・・・・・・」
そんなことを思うが、一切そんなイメージは出て来ない。それどころか、喜ぶことや嬉しがることもせず、驚くだろう。
「くっ・・・・・・それどころか、心配される方が鮮明に思い浮かぶとは・・・・・・!」
自身の普段の行動のせいもあるのだろう、そんな事はわかりきっているのだがなあ・・・・・・。
おっと、門番も大変だな。っと、それは私が言えたことではないか・・・・・・。
「済まない、私で最後だ。少しは休みたまえよ」
「あ、ありがとうございます!」
私は、その門番に対して会釈をしてその場を離れる。モノレールの時間まで間に合う、か・・・・・・まあ、あいつの場所まで20分。そう考えるとまあ近い。22時迄には着くだろう。
・・・・・・むっ、いつの間に私は走っていたのか?もう既に目の前にモノレール駅が・・・・・・。来るまであと3分程か。モノレールが着く頃に私も駅に着くはずだったんだがな。
私はそこで柄にもなく苦笑を漏らす。まあ、あいつのせいにすればいいか。
「千冬さん、遅いわね」
「ホントだね」
「織斑先生、早く来ないと秋磨が暴走しちゃいそうですよー」
ここで今言おうが、千冬本人には残念ながら届かない。
そう。今いるここはなんと、秋磨のマイホーム。そこにいるのは、やはりと言うべきかいつものメンバーの鈴、セシリア、シャルロット、ラウラ、簪、楯無である。
鈴の言葉に反応したシャルロットに楯無につられみんなが秋磨の方へ顔を向けると、そこには彼自身が腕を奮った豪勢と言っても過言ではないレベルで並んでいる料理の前に、千冬の到着を今か今かと待ちわび、目を輝かせる秋磨の姿があった。
「あの様子を見るとまるで子供用だが・・・・・・」
「かわいい」
「ちょっと失礼」
ラウラの言葉に、そう答えを返しながらパシャパシャと自身の端末でその様子を撮る簪に、高性能高画質のビデオカメラを片手に秋磨の様子を撮り続けるセシリアの姿があった。
「セシリア、織斑先生に送る準備できた?」
「今、ISでデータをほz・・・・・・変換してコピーしている最中ですわ」
「むっ、私にも後でくれ」
こちらは、本人のあずかり知らぬところで交渉が始まっていた。
簪とセシリアは撮ったモノを千冬へと送り、早めに着くように促す。すると、モノレールの中らしく直ぐに返信が返ってきた。
『今モノレールの中だ。それと、そのデータを私のパソコンの中へとコピーしてくれ』
『了解しましたわ。簪さんの了承も得ています』
『よくやった』
この場に一夏や箒がいたのならば、『恋は盲目ってほんとなんだなぁ・・・・・・(白目)』となっていたのは間違いないだろう。そして、それを自覚しない彼女らは、きっと秋磨に毒され手遅れになっているのだろう。最初からそうではないはずなのだ。
・・・・・・そうであると信じたい。
「やっと着いた、な・・・・・・」
私は駅から秋磨の、いや、将来私たちの家になるであろう場所に着いていた。走ってきて予定より早いはずなのだが『やっと』なんて言葉が出るくらいには楽しみであり、それほど急いでいたのだと自覚させられる。
今となってはたらればの話ではあるが、あいつと会えて本当に良かった。
「ふぅ・・・・・・」
私は緊張をほぐすために息をついて扉を開けようと手を掛けた。しかし、ここで1つ悩むことになった。
ここはまだ私の家ではない。インターホンを押すべきか押さないべきか。ふむ、押さないで入った場合どうなるか。もし、ここが他人の家ならば・・・・・・他人の家なのか!?ちょっと待て、私の思考はこんな感じではなかっただろう!
「もういい・・・・・・開けるか」
ガチャ、と音がなり中の空間が目に入る。数度この家に入ったことはあるが、正直広すぎて凄い。うん・・・・・・凄いな。
「千冬さん、お疲れ様でーす!」
すると、扉を勢いよく開けてきたのは一夏と秋磨の共通の友人だった鈴だ。少し厳しくしすぎていたせいもあってビクつかれてショックを受けることもあったが、最近は仲良くなれている。
「お疲れ様です、千冬さん。秋磨が気合入れすぎちゃって・・・・・・」
苦笑いを浮かべながら私に声をかけてきたのはシャルロットだ。詳しい話を聞くと、彼女は助けられただけでなく、当時身を置いていた状況に諦めていたのを叱ってくれたのが嬉しかったらしく、それも相まって惚れたらしいのだが、あいつはそんな事し過ぎではなかろうか。
「済まない。できるだけ長くいるために終わらしてきて・・・・・・な」
私は愕然とした。いや、先程から確かにいい匂いがするとは思っていたのだ。しかし、これはどうなんだろうか。メインである大きなチキンやそれに準ずるように並べてある料理。ピザやパスタ、餃子や寿司など多くの国を発祥とするモノが所狭しとあり、ケーキなどもいろいろな種類が存在している。
「これは・・・・・・嬉しい反面、女としてのプライドが」
「びっくりしますよねぇ・・・・・・」
「私たちは女でいいのだろうか・・・・・・」
驚愕と絶望。そんな表情を浮かべながら私の言葉に続けてきたのは楯無もラウラだ。
楯無の場合、普通に話をしていたら惚れていったというように一番普通の恋愛をしている。故に特記事項なし。あぁ、付け加えるならば、家柄故に腹黒い反面わりかし少女思考であるというところだろうか。
ラウラのの場合はVTシステムのあの事件が起きた時に秋磨によって精神的にも助けられた。その上、ラウラという存在を自分に自覚させるために動いたこともあってか、すぐに惚れ性格が何周か周りに回って反対側の方向へと向いていったのは驚いた。
「そう言えば、簪とセシリア今度よろしく頼むぞ」
「OKです」
「任せてくださいませ」
手招きをして、簪とセシリアを呼び耳元でそう呟くと2人ともサムズアップ向けてくる。私はそこで強く頷いた。
簪は最初、秋磨と相部屋だったことから始まった仲で、一夏の機体を組み上げていた連中がストップさせていた打鉄弐式のプログラムの完成を支えた事により想いを自覚した。
セシリアに至っては、自身の親に対する想いを秋磨の言葉と普段の行動を見ていたためか、直ぐに世の中の男が自分が思っていたばかりの存在ではないと思うようになり、またその強さや考え方に惚れた、と。
ふむ、普段はヘタレコミュ症なのだがなぁ・・・・・・。
「あ、千冬さん!お疲れ様です!腕によりをかけて、めちゃくちゃ気合を入れて作りましたよ!」
私の、いや、私たちの前ではこんな顔を見せてくれる秋磨は、きっと私たちを支えてくれるのだろう。共に歩いて行けるのだろう。遥か先を行くはずの秋磨は、私たちのところへ来て共に歩いていってくれるのだ。無理に守ることなどせず、共に居てくれる。
そんな秋磨のことを好きになったのだ。
「まぁ、見たらわかるさ。では、音頭は頼むぞ」
「ひえっ!?」
そこで笑い声が響く。
まあ、悪くないな。
「では、始めましょうか」
「そうだな」
『『『性なる夜は、これから(だ)(よ)!』』』
最後にある通り、R18でこのネタやります。いつになるかわかりませんけど(ボソッ)
あ、R18は銀の福音が終わりしだいです。