舞姫   作:匿名コメは手加減って悪口言われるの前提?

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帰ってきた家出娘と不機嫌な姉の和解はなるの?


尋ね人②

 ①  女神の再臨と依り代の誕生

 

 

 「 私が驚いているのは人見知りするみこがそこまで貴女に気を許している事です 」

 

 そう言うときびす返して私は歩き始め

 

 「 さぁ風歌、王妃様もお待ちですから国王様の元へ参りましょう 」

そう告げるとさすがにみこも諦めたようだった

 

 「 ごめんなさい、勝手に飛び出してご心配をお掛け致しました… 」

 

 勿論、私が言わせた言葉だ

 

 「 でも… まずは、皆様にお引き合わせしたい方が居ます 」

 

 そう言い、みこは祈り始めるとみこの中から何者かが現れ美月のスタッフのユイに語り掛けた

 

 ― 私は豊穣の女神が一人、舞姫の要請により再びこの地にもたらす為に現れました

 

 貴女は私の依り代になる運命を受け入れますか?

 

 そして、司祭の一族の流れをくむ歌の女神の部の民の長たる国王よ… もしこの娘が私を受け入れるのなら西の大公家の再興は出来ませんか? ―

 

 そう聞かれた国王は息子を見ながら

 

 「 勿論、西の大公家は貴女と依り代を守る為に在ったと聞いて居りますが十六夜よ… あの話考え直しても良いが? 」

そう言われた王子が嬉しそうに

 

 「 ほ、本当ですか? 」

 

 「 ユイに女神の依り代になって貰いなさい、そうなればあちらに諦めて頂く十分な理由になる 」

 

 そう言われて十六夜は意を決して

 

 「 豊穣の女神様、僕はユイに恋してるし叶うなら妻に迎えたいとも思ってますがユイを僕の妻とし貴女ごとお守りすると言う我が儘は許されますか? 」

 

 十六夜一世一代の告白に

 

 ― 大公が依り代を妻に迎えるのは珍しい事では無かったから問題有りません、本人がその申し出を受けるなら私がそれに反対する理由はありません ―

 

 そう言われて安心した十六夜は

 

 「 ユイ僕は貴女が初めての… 君が御披露目のドレスを着て僕の目の前に現れた時から惹かれていた

 

 どうか僕の妻になって貴女と豊穣の女神を守る役目を与えて欲しい 」

 

 余りにもの急展開に呆然としているユイに公女は笑いながら

 

 「 十六夜では頼りになりませんか? 」

 

 「 いえ、そんな事は… 」

 

 「 なら命が切り開いて来た運命を貴女も受け入れなさい 」

 

 いつの間にか近寄っていた王妃と目が合ったユイは申し訳無さに苛まれ

 

 「 王妃様… 私は… 」

 

 と救いを求めたが王妃はただ優しく微笑み

 

 「 勿論十六夜のプロポーズを受け入れ私の娘になってくれますね? 」

 

 それでも不安なユイは

 

 「 命様… 私はどうしたら良いのでしょうか? 」

と、すがったが右手の人差し指を頬に当てると

 

 「 ん、んん~ん… みこ子供だから解んない 」

 

 そう言われてガックリ肩を落とすユイだけど予想通り答えだよ?

 

 と、言わざるを得なかったが王妃は王妃で

 

 「 そろそろそう言う事に興味持っても良い頃だとは思いませんか? 」

 

 「 確かにそう思いますがまだまだ先の事だと思います…残念ながら… 」

 

 そう言って溜め息を吐きながら私を見る公女に

 

「 そうでしょううね… 」

 

 苦笑いを浮かべそう答えるしかない私だけど

 

 「 でもね… ユイ、みこは思うんだ

 

 里の皆から疎まれて本当はみこって生きてちゃいけない子なんじやないのかなって思ってたのをそうじゃないよって…

 

 パパやママとまこちゃん以外の人が初めて言ってくれたのは貴女達なんだよ?

 

 今の貴女は自分に自信持てなくて不安かもしれない

 

 でも… 皆がユイを求めてるんだよ? 後はユイが王子様をどう思ってるかなんだ 」

 

 みこにそう言われてハッとしたユイは

 

 「 私もずうっと前から十六夜様に憧れてました… 」

 

 ニコッと笑ってみこは

 

 「 そう、なら迷うことなんか何もないよ… 頑張ってね 」

 

 そう後押しされたユイは

 

 「 女神様私をお導き下さい…

 

 そして十六夜様… 私は貴方ににどうか私を守って下さいってお願いしても良いのでしょうか? 」

やっと喜ぶべき返事を貰えた十六夜は

「 お願いされたい、君の笑顔と女神様を守ることを誓う 」

 

 ニコニコ笑うみこに私は

 

 「 これと貴女の説教は別問題だからね

でも… 今日は顔色の良くないみこに言っても仕方ないからこれからユカさんにお風呂に入れて貰って明るい内に少しでも休んでおきなさい 」

 

 私のその言葉に素直に従い、入浴中にうとうとし始め後の事は全てユカ任せでベッドに運ばれた

 

 

 

 みこが退出した後は、風歌にみことの出会いから風歌が知る限りの事を全て話してもらった

 

 その後で国王が、『 ソナタに礼がしたい、褒美は何が望みか? 』 と聞くと無欲な風歌の答えは

 

 「 このままみこ様の側にいたいからお許し願えますか? 」

 

 「 我が国の騎士になりたいと申すのだな? 」

 

 そう問われた風歌は慌て

 

 「 いえ、滅相もない… 私はその様なツテを持ちませんからその様な分不相応な夢は見ません

 

 ただみこ様の側で、あの方の為に剣を振るえれば良いのだけなのだから… 」

 

 風歌のその答えに

 

 「 だがそれでは食べて行けんぞ? 」

 

 そう聞き返すと

 

 「『女神の祭典迄に封印された場所を特定したいから探すと仰ってますから王都の滞在は短いはずですし序でにみこは薬草を探すから風歌は食べ物を探せば良いよ… 』と、そうみこ様には言われてますのでご心配なく 」

 

 そう言われて溜め息を吐く国王と王妃

 

 「 真琴よ、命には私達に頼ると言う選択肢は無いのか? 」

 

 その国王の嘆きに私も溜め息を吐いて

 

 「 みこはお父様とお母様以外の人に頼る事を知らずに育ちましたから…

 

 だから、風歌の騎士の誓いを受け入れたのが不思議でならないのです… 」

 

 そう私に言われて

 

 「 私も最初は 『 みこに関わらない方が良い 』 とか 『 みこにそんな値打ちはないから放って置いて 』 とか言われました 」

 

 「 でも受け入れられた… 一体どうやって…? 」

 

 苦笑いしながら風歌は

 

 「 私はただ泣いている貴女を… 泣いている子供を放ってはおけないのです… と申しあげただけです 」

 

 そう言われて私は歯を食い縛り

 

 「 風歌は気が付いたんだ… 生まれ落ちた時から一緒に育った私ですら気付いてあげられなかったのに… 」

 

 情けなさに目を落とす私に

 

 「 仕方有りません… 貴女にだけは知られたくない事、祭司長にもどうにもなら無い事で貴女を悲しませたくは無かったのでしょうから… 」

 

 その言葉は私には何の慰めにもならない

 

 結局風歌の待遇はなんの答えも出せぬままに晩餐の時間を迎える事になった

 

 風歌はそのような身分ではないと晩餐の出席を断り

 

 元々その場に居ても料理に手を付けないみこも 『 風歌を置いてはいけない 』 と、そう答えて出席を断ってしまったみこ主従

 

 私とりんの言葉に耳を貸す事なくりんの悲しい目は見ないようにしていた

 

 

 重苦しい空気の晩餐会場に、座る者の無いふたつの空席が寂しそうに見えた

 

 ( ?、又国王に伝令? ) 

 

 侍女が下がるのを待ち

 

 「 国王様、先程から一体彼女達は何と…? 」

 

 「 この前命と踊った男達が帰って来た命に面会したいと言って来てるのだ… 」

「 みこに? 」

 

 「 恋人に会いに来たと言ってな… 」

 

 苦々し顔で吐き捨てる国王…

 

 「 こっ、恋人!? 」

 

 驚く私に

 

 「 本当に王家の姫君なら生まれた時から許嫁が居ても不思議では有りませんから… 」

 

 「 でも何故? 」

 

 暫くの沈黙の後に

 

 「 観月様のあの一言が原因だと思います… 」

 

 公女をチラッと見ながらユイが言うと

 

 「 そう言えば踊っている時に舞姫とは呼ばないでと言っているのを聞きました 」

 

 と、ユカが言えば

 

 「「 私も聞きました 」」

 

 とユウとユミも言ったので訳がわからない私は

 

 「 その一言にどんな意味が有るのですか? 」

と聞いた

 

 「 この国ではある年齢以上の媛君は殿方からは姫とかお嬢様と呼ぶ習わしになってます

 

 だからりんも巫女様と呼ばれるのですし、真琴はお嬢様と呼ばれてましたね? 」

 

 「 十六夜様は出会った時から私の事を真琴と、呼んでいますが? 」

 

 「 観月と違って社交界を嫌ってますからね… 何年振りですか?貴方があの様なパーティーに自主的に出席をしたのは? 」

 

 「 さぁ… 僕にはどうでも良い事だからそんな事を等いちいち覚えてません 」

 

 「 私もこの際には大した問題ではないと思っていますが、それより知らずに言ってしまった命の発言の方が問題です 」

 

 今一つ理解できない私は、深刻な顔の公女に

 

 「 男の人に名前で呼ばせてはいけないのですか? 」

 

 そう聞いて見ると

 

 「 あの場で兄が貴女を真琴と呼び貴方がそれを許している事をあの場に居合わせた他の人達は二人が恋仲だと宣言している…

 

 と、そう受け取りましたし妙なモーションを掛ける者が居なかったのもそれ故です 」

 

 公女のその説明に頬が熱くなるのを感じながら

 

 「 では命がした考え無しの発言で多くの人に勘違いをさせた? 」

 

 「 そう言う事です… ですがあの時の命の発言で宮廷作法に詳しくないと思わないのにも問題が有ると思いますが? 」

 

 呆れ気味な声で言う公女に

 

 「 それが今のこの国の社交界の現状です 」

 

 「 憂慮すべき事態ですね… 」

 

 王妃様の言葉にそう言って溜め息を吐く公女と

 

 「 パーティー会場に支度をさせ命と風歌を行かせ私も食事が済んだから立ち合うとしよう 」

 

 「国王様、私も立ち合っても良いでしょうか?」

 

 私に聞かれた国王様は

 

 「 食事をしっかり摂っても間に合う様なら立ち合いなさい 」

 

 そう仰り如月様も

 

 「 大丈夫、観月や美月のスタッフ達にもその場に立ち会ってもらうから 」

 

 そう言われたのだけど、それでも私が立ち合いたいのだ…

 

 だから呆れる人達の視線も気にせず大急ぎで食事を進めることにした

 

 

 男達の前に現れたみこは、あの晩の… 踊りが始まる前に見せた表情でユカの背中に隠れて様子を伺っている姿を気にするものはなく

 

 多分 [ 他の奴等が居るから緊張してるのであって二人きりになれば… ]

 

 と、思ってるらしかった

 

 「 命、何故黙って行ってしまったのだ? 」

 

 最初に口を開いたのは確か… 国王に次ぐ権力者の国務大臣のご子息の凍夜と言ったか? その人だった

 

 「 みこには時間が無いから… 又明日から女神の祭典迄にその女神様が封印されている所を特定出来ないと封印が解けない… 」 

 

 「 ならばその手伝いをしたら俺の為に時間を割いてくれるのか? 」

 

 どう答えれば良いのか解らないみこは、問い掛ける様に観月の顔を見ると笑って頷いているのを見て

 

 「 そんな事で良いのならどうかみこを助けてください

 

 みこにはしなければならない事が有るのに頭を使うのは苦手だから… でも正直どうしたら良いのか解らなかった… 」

 

 俯いて話すみこに

 

 「 解った、全て俺に任せろ、そう言う訳だから明日サロンをお借りして宜しいですか? 国王陛下、そこに伝承に詳しい者や研究家を集めて検証させようと思うのですが? 」

 

そう言われた国王だけどみこの顔をじっと見ていたがその事に気付き

 

「 どうした命… 泣いたりして、俺はなにか変なこと言ったか? 」

 

「 みこ泣いてないよ? みこはまこちゃんの前では絶対に泣かないで笑っているって決めてあるから 」

 

確かにみこの顔は笑って居るけど涙は止めどなく流れ落ちていた

 

 「 それに変なことじゃないよ? みこには思い付かない凄い方法だってびっくりしてる 」

 

「 ならばせめて明日位は命の笑顔を独り占めにしても良いか? 」

 

「 みこの笑顔を? 凍夜様… みこの笑顔って面白いモノなの? 」

 

沈黙する一同

 

 「 ?、みこ何か変な事言った? 」

 

 「 ちょっとな… 命の笑顔は俺に元気をくれる

だが、そう考えているのは俺だけでは無い筈… 貴公らもそうではないか? 」

 

「 僕には安らぎを与えてくれる気がするんだけど? 」

 

 その二人の言葉を不思議そうに聞いている命の表情には誰も気付かなかった

 

「 それは俺とお前の感性の違いで命の笑顔が特別な事に違いは有るまい? 」

 

 「 確かに…それは言えますが凍夜さん、例え貴方でも命を譲る気は有りませんからね 」 

 

 「 そりゃお互い様だが… 当の命がもう少し大人になってくれんと話にならんな 」

 

 「 確かにそれは僕も思いますが… 気にはならないのですか?命の時間が無いと言ったのを…」

 

 「 気になる… が、今はまだ知らぬ方が良い… そんな気がする 」

 

 「 確かに僕だって堪らなく嫌な予感はする

 

 でも、知るのが遅れれば遅れる程悪い予感は取り返しがつかなくなっていく気がする… 」

 

 その言葉を聞いた凍夜は溜め息を吐き

 

 「 やはりそうか…で、命はどうした? いつの間にか見当たらなくなったが…」

 

 「 命なら貴殿方が話しに夢中になってしまわれたのと精霊の巫女がみえたので精霊の踊りを教え始めてしまって…

 

 俺達じゃあ反応が無くなっちまった… って感じです 」

 

 悔しそうに口元歪める男達に

 

 「で、お前達はどうするのだ? 」

 

 「 もうお邪魔な様だからおいとましようかと話してたとこです 」

 

 「 そうか、俺はもう暫く残るが? 」

 

 その言葉を受けて

 

 「 僕ももう少し残ります 」

 

 と、言って踊っている二人の邪魔にならないよう少し離れた所に腰を下ろした

 

 それを見た凍夜もそれを見習い隣に腰を下ろした

二人以外の男達が退出しようとしたとこに踊りの稽古着に着替えた私を伴った十六夜が戻ってきた

 

 男達二人に黙礼をして立ち去るのを不思議そうに見送り

 

 「 さぁ行っておいで姫君 」

 

 そう私の背中を押すと居残った二人の側に行き

 

 「 何故彼らは帰ってしまったのだろうね? せっかく命が帰ってきたと言うのに不思議そうな顔の如月様の問い掛けに

 

 「 さあ、邪魔にならないようにと気を遣ったのでしょう 」

 

 あまり理解してるとは言えない私がそう答えると

 

 「 僕達は邪魔になら無いのかな? 」

 

 「 そうならないように気を付けてるつもりだが彼らは踊りの練習を始めてしまい自分達の相手をしない命に失望して帰ったのだから気にする必要はない

 

 何より命自身が俺達を気にしないほど稽古に没頭しているが退出は促されていない 」

 

 「 勿体無い話だ… 今どれだけの人が舞姫の踊りを観たがっているのか解っているのだろうか? 」

 

 「彼らにはそう言う雅やかさには興味無いから価値の無いものです 」

 

 「 まぁここに居ない者の話をいてまでもしてても仕方無い… 我々は静かに見よう 」

 

 私達3人が稽古を終えたのは深夜に近い頃だった

 

 「 さすが、精霊の巫女だね… みこが二晩掛かった水の精霊の踊りをこの短時間でほぼマスターしちゃったよ 」

 

 「 私は一月掛かったのに… 」

 

 ショックを隠せずにそう呟いてしまったそんな私の肩を優しく抱いた如月様は

 

 「 夜ももう遅い部屋まで案内する、君達は大公宮の僕の部屋に泊まっていくと良い 」

 

 と言って歩き始めようとしたがりんが立ち止まり

 

 「 あ… あの、命様は? 」

 

 私は首を横に振り

 

 「 みこにとって今この部屋以上に落ち着ける空間は無いから… 」

 

 それまで微動だにしなかった風歌が目を開けると

 

 「 大海原の精の巫女の貴女が水の精霊の踊りを踊ることにより… より濃密な水の精霊の霊気が満ちたこの結界内はみこが恐れ、そして忌み嫌っている夢魔が見せる悪夢… 悲しい未来予知に怯えること無く眠れるかもしれないのだから… 」

 

 「 なら、今夜は僕が見張りに立つから二人は休んでください 」

 

 「 で… でも… 剣斗様にそんな失礼な事お願い出来ないよ 」

 

 「 何故失礼なの? 」

 

 「 だって… 剣斗様は貴族のご子息様でいずれ騎士になられるお方だけどみこはただの踊り子にすぎない…の…だから…」

 

 「 命は身分が恋愛の妨げになると考えるタイプなのかな? 」

 

 臆病なみこに近付くための一言を放つ彼とみこの様子を見てると

 

 「 みこに恋愛は似合わない… 恋愛どころかみこには友達すら居ないのに… 」

 

 私はたまらずに

 

 「 みこ、りんはお友達じゃないの? 」

と聞いたら

 

 「 りんちゃんはみこの命の恩人って言うんだよ?

それに精霊の巫女様に対して失礼だしね… みこなんかがお友達を名乗るのは図々しいと思うよ 」

 

 そう言われたリンが悲しそうな顔でその場を離れるのに気付かないみこをやるせない想いで見詰めていた

 

 そんな私の肩を抱いた如月様のエスコートで私は私達の部屋に戻った

 

 

 

 私達が立ち去って静かになった部屋で暫くは休んでたけど再びおどり始める為に立ち上がったみこ

 

 「 お疲れ様、風歌… みこは未だお稽古するから休んでてね

 

 剣斗様も… 如月様のお部屋で休まれた方が良いよ?」

 

 「 風歌は横になって身体を休めてて良いからね? みこはもう少しお稽古するから… それと剣斗様は如月様のお部屋に行かれた方が良いよ? 」

 

 「 僕が居たら迷惑なのかな…? 」

 

「 そんな事はないけど明日もお仕事なんでしょ? ちゃんと休まなきゃ身体に悪いでしょ… 」

 

 自分の事を棚上げして他人の心配はするみこに呆れながら

 

 「 ならばみこだって休んだ方が良いはず? 」

 

 そう言われたみこが微笑みながら

 

 「 剣斗様は優しい人なんだね…

 

 でも… みこが夜眠らないのは今に始まった事じゃないし明日する事も特に無いからボーッとしてても平気なんだよ…」

 

 「 そう言う意味なら僕は昼過ぎから翌朝迄の当番だから大丈夫

 

 命が嫌でなければ朝までお話ししたいのだけど? 」

 

 「 みこは多分つまらない話しかできないし、朝まで話せる事もないと思うけど良いの? 」

 

 「 気にしなくて良いよ、踊りの合間に付き合ってくれれば良いのだから 」

 

 そう言われて剣斗の前にちょこんと座ると

 

 「 みことどんな話がしたいの? みこは踊りと薬師の知識… ママのお手伝いで習ったお料理しか知らないから剣斗様が面白いって思うような話はできないって思うよ? 」

 

 そう言って始まった二人の会話は、みこの拙い話し方ながらも薬草探しで山歩きした時に巡り有った様々な話をしてくれて

 

 王都とその周辺しか知らず、剣の修行と騎士としての知識や作法を学ぶ以外の経験の無い剣斗には新鮮な驚きに満ち溢れた話だったし

 

 冒険好きな男の子達を虜にするのは間違いない… そう思った剣斗だったそうだ

 

 

 結局明け方近くまで稽古を続けたみこと、時折言葉を交わしながらそれを見守っていた剣斗は夜明け前後の一時だけ眠ることにした

 

 翌朝、みこが目覚めぬのを良いことに風歌を王家の食卓に引っ張り込んでしまった私と公女

 

 最初は申し訳無さから料理に全く手を出そうとしなかった風歌も、料理の温かい湯気と美味しい匂いに空腹の風花は堪えきれず

 

 ついに最初の一口を口にすると、後は堰を切ったように食べ始めた

 

 「 申し訳ないです… まこ様、みこ様に恥を掻かせるような振る舞いをしてしまい恥ずかしい限りです 」

そう言って詫びる風歌に

 

 「 気にしないで… と言うより貴女には苦労させてもう訳無いって思ってるのだから… 」

 

 そう言われた風歌はブンブンと首を振ると

 

 「 そんな事は有りません、命様は… 私がずっと探し求めていた運命なのだから…

 

 だからお側に居られるだけで幸せなのです 」

 

 そんな嬉しい事を言ってくれて有り難かったけど

 

 「 みこはともかく貴女は食べなくては仕方無いでしょう? 」

 

 心配してそう聞いてみたら首を横に振って

 

 「 今日1日凍夜様に命様をお願い出来るのなら私は山に入って食べる物を集めて来ようと思います 」

 

 そうアッサリと言ってのける風歌に思わず

 

 「 だから… 何故みこも貴女も国王様に甘えると言う選択肢が無いの? 」

 

 苛立った私が風歌に聞いたら

 

 「 命様は知りませんが私はこの国の身分制度の枠を越える事の出来る者ではありませんから… そう、例え国王陛下その人であっても私情で変えてはならないものの筈? 」

 

 「 痛いとこを突かれましたね、国王陛下 」

 

 面白そうに言う凍夜に

 

 「 笑い事ではないのだぞ、治安局長!? 」

 

 すると一転して真顔になった凍夜は

 

 「 命と出会う前の私には笑い事だったでしょうが… 剣斗准騎士、貴公の忌憚の無い意見を聞きたい 」

 

 准騎士と言われた剣斗がポカーンとしているのを見て

 

 「 正式発表は本日の午前中に行われるが昨日の午後の評議で賛成19票反対1票で承認された 」

 

 「 そうですか…ですがこれまで剣一筋で生きてきた僕にはその様な政治向きの話は解りません… 」

 

 「准騎士では未だ発言権はないがこの先見る目を養わなければ先々自分の身は守れない」

 

 そして王妃を見て

「 私にひとつ妙案があるのだが宜しいですか? 王妃様と風歌殿… 特に風歌殿には遺憾な事になるのだが… 」

そう聞いた公女は

 

 「 成る程、その手なら評議に掛けなくても叔母様の一存で決められますし… しかも風歌の希望通りに命の専属にする事についてもなんの問題もありませんね 」

 

 何の事やらさっぱり解らない私は

 

 「 そんな魔法みたいな方法、そんなものがあると言うのですか? 」

 

 そう聞くと凍夜は

 

 「 美月のスタッフは護身術を身に付け公女殿下の身辺警護を兼ねていると聞く

 

 なら風歌殿には申し訳無いが、侍女の服を着ていただければ大抵の場所なら付いて回れると思うのだが? 」

 

 凍夜の言葉に複雑な表情で

 

 「 つまり私に侍女になれと…? 「 その返事は明日まで待って 」」

 

 風歌の言葉に被せるようにそう答えたのはいつの間にか目を覚ましたみこは

 

 「 ひとつ試したい事があるから… 」

 

 そう続けると

 

 「 解りました、明日1日待ちます… それで宜しいですね? 」

 

 「 うん、ダメだったら許してね… 風歌 」

 

 「 命、今から私は色々手配せねばならんから何なら今日の午前中に試してみる事は出来んか? 」

 

 「 凍夜様が良いのなら行ってくる 」

 

 そう言い残すと返事も待たず飛び出して行った

 

 みこは自分の前に用意した箱を置き精霊の踊りを踊り始めた

 

 精一杯の笑顔を浮かべて踊ったつもりだけど評価は低かった

 

 みこの期待した額には程遠く風歌の一食分すら賄えそうにも無かった

 

 俯き余りお金の入って無い箱を唇を噛み締めながら見ているみこに大きな足が襲ってきて鳩尾辺りに蹴りが入った

 

 「 こんガキゃあ誰に断ってここで商売してやがんだぁ~っ? 」

 

 顔を苦痛に歪めながらも言われている事の意味を理解出来ずにいると男の一人がみこの箱を取り上げると

 

 「 返して、それは風歌のご飯を買う為のお金だから… お願いだから返してっ! 」

しつこくすがるみこの頬に大きな手が平手打ちして小さなみこの身体は軽く吹き飛ばされた

 

 唇の端から血を流し朦朧としながら

 

 「 返して、みこのお金を返して… 」

 

 と繰り返すみこに唾を吐き掛け立ち去ろうとするところに箱を持つ手を打ち据えるものが居た

 

 「 何しやがんだこのアマぁーっ! 」

 

 「 こんな小さな子からかお銭を掠め取るような屑が凄むんじゃないよ 」

 

 男の手から落ちた箱の中身を見て嫌々と首を振り

 

 「 この方があれだけ熱演したのに入ってる金はたったのこれだけ?

 

 この国が芸処って言われてたのはいつの話なんだろうね… 」

 

 と、言って二人の男の首筋を持って居た扇子で打ち据えると小さなみこの身体を軽々と抱き上げて

 

 その頃になって漸く治安局の局員達がやって来てみこを抱いている女性を詰問した

 

 「 お前達が隠れてこいつらに好き勝手やらせてたのは知ってるよっ! 」

 

 と、啖呵を切ると

下ひた笑いを浮かべ

 

 「 だからなんだ? 」

 

 と、開き直ってその相手に詰め寄ろうとした

 

 それを見てその人は、二人の背後にいる人物に向かって

 

 「 アンタはこの始末どうつけるつもりだい? 」

 

 言われた男は怒りに肩を震わせ一言

 

 「 解らん、コイツら全員素っ首叩き落としてやりたいがそんな事をしても喜ぶ娘じゃない 」

 

 怒りに震えるその声を聞いた治安局員が恐る恐る振り返るとそこに居るのが治安局長の凍夜で有ることに気付き…

 

 必死で言い訳を考えていたが

 

 「 お前達は己の罪の深さを知るまい? 」

 

 「 はぁ? たかがこんな小娘一人が何だと言うのですか? 」

 

 「 そうか、お前達が日常的にコイツらを目溢ししてるのが解った、連行しろ 」

 

 言うが早いか男達の鳩尾に凍夜の拳がバキバキっと鈍い音と共に突き刺さっていた

 

 「 バカな奴等だ… よりにもよって舞姫様に無礼を働く愚か者だったとはな

 

 さすがに今回は厳罰を覚悟しておくんだな 」

 

 男達を連行する局員逹から口々に言われたが後悔既に遅しだったがその場に居合わせながらも見て見ぬふりしていたその他大勢も大差ないしナニよりも

 

 「 アノ咲夜媛に瓜二つな少女がただ者ではないと言う事にも気付けない様じゃこの国の芸の水準は勿論芸を見る目は終わってるねっ! 」

 

 その人がそう吐き捨てる様に言った言葉に反論できる者はなく、皆こそこそとその場を離れていった

 

 

 「 風歌… ゴメンね… みこ… 貴女一人も満足に食べさせてあげられないダメな主で… 」

 

 泣きながらこの場に居ない風歌に謝る命の姿が痛々しかった

 

 「 全く… アンタがこの方にぞっこんだって噂は聞いてたのに惚れた女一人守れないで何やってんのさ!? 」

 

 これだけ一方的に批難されても全く反論出来ない凍夜

 

 「 で、治安局長のアンタがこんなとこで何油売ってるのさ? 」

 

 「 舞姫をそちらの春蘭殿のお母上に会わせたくて探していたのだ 」

 

 それを聞いた女性はフンっと鼻を鳴らすと

 

 「 春蘭、貴女今日は座敷の予約は入ってないかい?」

 

 そう聞かれたその春蘭と言う人は

 

 「 いいえ、今日は太夫のお付きをする日で予約は入らない日ですから有りません 」

 

 そう答えると

 

 「 そう、このヘタレだけじゃ不安だから舞姫様を案内をまかせるから今日は休みなさい、私が許可しますからね 」

 

 そう言って笑い掛けると

 

 「 承知しました… では参りましょうか、凍夜様 」

 

 春蘭がそう声を掛けると、凍夜はみこの身体を受け取り春蘭は箱をみこの鞄にしまうとそれを肩に掛けて凍夜の前に立ち歩き始めた

 

 

 移動中の馬車の中で命の目か覚めた

 

 「 お姉さん誰? 」

 

 「 私は春蘭… 日夜踊りの研鑽に励んでいる者ですよ、舞姫様 」

 

 そう言って頭を下げると

 

 「 みこ… 舞姫と呼ばれてるけどそんなに大した者じゃないって思い知らされたばっかりだから… 」

 

 虚ろな声で言うみこに

 

 「 あれは… 舞姫様の幼い外見から貴女の踊りをろくに見もせずに評価した物に過ぎません 」

 

 春蘭の慰めの言葉はなかった今のにみこの心には響かず

 

 「 それは結局、みこやみこの踊りなんかどうでも良くって舞姫って名前があれば、後はどうでも良いって事なんだって知ったよ

 

 ところで凍夜様… みこ逹はこれから何処に行くの? 」

 

 「 このお姉さんのお母さんに会いに行くとこだ 」

凍夜にそう言われて不思議そうな顔をして

 

 「 お姉さんのお母さんってどう言う人なの? 」

 

 ちょっと困惑気味に春蘭が

 

 「 私の母は舞姫様が興味をを持つ程の者では有りませんよ? 」

 

 「 会えば解るしきっと命が喜ぶに違いない 」

 

 「 うん、良く解らないけど楽しみにしてるね 」

 

 門を潜り抜け玄関前の前に馬車を止めると、3人は玄関前に立ち並んだ

 

 春蘭がドアベルを鳴らすと暫くの後にドアが開き中から一人の女性が現れた

 

 「 春蘭、今日はお休みの予定ではないはず? 」

 

 予定に無い娘の訪問に首をかしげて聞く母親に

 

 「 はい、お客様をご案内する様に太夫から仰せつかりましたから 」

 

 「 お客様… 凍夜様と… まさかこの子は凍夜様の隠し子? 」

 

「 んな訳ねぇだろう? どうやったら19の俺に15の娘が作れるんだよ?

 

 腹違いの妹ならともかく 」

 

 「 あら違いましたか… つまらない 」

 

 と、笑って言う春蘭の母親を見ながら

 

「( んな冗談、ちっともわらえねぇよ… ) 命、自己紹介しなさい 」

 

 内心ムッとしながら声を掛けると

 

 「 司祭の里から来た命、15歳です… 踊りと薬草の研究が大好きです、宜しくお願いします 」

 

 そう言われてみこの顔を改めて見る春蘭の母親

 

 「 司祭の里… 命… ま、まさか咲夜様のお嬢様!? 」

 

 「 ?、ママの事知ってるの? 」

 

 「 そりゃ有名な舞姫咲夜媛を知らぬ者は居ないだろう? 」

 

 二人の会話にそう言って凍夜が割り込むと

 

 「 そう言う意味で知ってる人は今、凍夜様が言った様に咲夜媛と呼ぶ

 

 でも …今、この人は咲夜様と言った 」

 

 「 それにどれ程の意味有ると言うのだ? 」

 

 「 この国に来て二人目なんだ… 王妃様とこの人だけが咲夜媛と呼ばなかったのは 」

 

 自他共に認める賢いには程遠いみこだけど、観察力は優れているからその違いを指摘すると

 

 「 正確には知っているとは言えません、… ただ幼い頃のあの方を遠くから見た事が有るだけです

 

 あの方が次の舞姫になる方だと教えられました… 」

 

 娘の自分が知らない母を垣間見た春蘭が驚くのに構わず

 

 「 里の者でない筈の貴女が何故? 」

 

 みこの呟きに

 

 「 私もまた司祭の里の流れを汲む者、薬師の里の里長の娘でしたから… 」

 

そう聞いたみこが

「薬師の里…」

そう呟くのにも構わずに今度は

 

 「 命、着替えは用意… してこなかったな… 」

凍夜が言うと

 

 「 汚れてますし綻びも… 」

 

 春蘭が困り顔でゆーと

 

 「 末娘の雪華が小さい頃着ていた物で宜しければございますよ? 」

 

 そう言ってどちらかと言えば幼女用のドレスを持ってくると

 

 「 ところで命様に何があったと言うのですか?

 

 左の肩口の… その赤い染みは血の跡じゃ無いのですか?」

 

 そう聞かれた二人はみこを襲った災厄を説明すると

 

 「 こんなに可愛い命様に手をあげるなんて信じられませんが、その様な事を言ったところで命様の傷が言えるわけではありませんね… 」

 

 そう言ってその人はみこの顔を覗き込み

 

 「 痛いとこはございませんか? 」

 

 心配そうに聞かれたみこは暫く考えてから首を横に降って

 

 「 無い、平気 」

 

 そう小さく答えたみこだけど、その言葉を額面通りに受け取ったものは居ない

 

 「 春蘭、ついでに倒れたときに着いた汚れと汗を流していただきなさい 」

 

 そう指示を受け、頷いてシャワーを浴びせる春蘭とされるがままに身を委ねるみこだった

 

 里を出てから少し強くなった? みこは自分の目で見て気を許せるが否かを見極めることが出来るようになっていた

 

 着替えを済ませたみこが春蘭に手を引かれて凍夜の前に連れていくと着ている服の影響もあって

 

 「 そうして三人でいるのを見ると子連れの若夫婦に見えますね? 」

 

 と、面白そうに笑うとそれをきいたみこは複雑な顔付きで

 

 「 みこみたいな疫病神の子を持ったらろくなこと無いよ

 

 実際にお祖父様、パパとママはみこのせいで殺されたんだから… 」

 

 小さい身体を震わせ話すみこの身体はますます小さく見えて今にも消え入りそうに見えたけどそんなみこが

 

 「薬草…香草の良い匂いが薬草のお茶?」

 

 そう誰に聞くともなく呟くと

 

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