舞姫 作:匿名コメは手加減って悪口言われるの前提?
「 母が調合したお茶です、心を落ち着かせてくれますからお飲みください 」
そう言われたみこは
「 薬草のお茶、そうか… だから凍夜様はみこをこの人に会わせてくれたんだね 」
みこの顔が明るい笑顔になり
「 まぁな、王都でこの方以上に薬草の事をご存知の方は居ないからな 」
その不意打ちの様な笑顔に照れた凍夜はみこから視線をそらしたけど、残念ながらそう言った感情には疎くさっぱり気付けない
「 前にパパに聞いたことが有った… 人里で手に入る薬草や香草の研究をしている方が居るって… それが貴女なんですね? お会い出来て嬉しいです 」
( 命の笑顔… 今の俺では未だこの笑顔は引き出せない… )
「?」
( が、まぁ良い… 今はこの笑顔を見れるだけで、他の男共には見せる事なく…俺にみせてくれるだけで良しとするか… )
そう考えて一人納得する凍夜
「 母さん、そろそろお客様にお食事を用意しましょうか?」
「 大丈夫だよ、みこはいつも食べる物持ってるから凍夜様の分だけで良いよ 」
そう言って鞄から取り出した巾着を見せると
「 これですか? 命様… 」
そう言って春蘭が出した物は小さな布袋に干した果実や草の実らしき物が入った物だった
「 そうだよ、みこはそれがあれば一週間は過ごせるからね 」
呆れた眼差しで
「 これが一週間分… 」
「 そうだよ、実際にはその時々に見付かる物を食べるからもっと持つけどね 」
「 咲夜様はその事については何も言わなかったのですか? 」
「 そんな事言えないよ、みこは舞の女神様の依り代にならなくっちゃいけなかったのだから 」
「 何故貴女が… 」
「 さぁ… 祭司長のパパと舞姫だったママにも解らないことだからみこに解るはずないしみこはそれがみこの宿命だって思ってる 」
「 でも… それと食事を摂らない事がどんな関係があると言うのでしょうか? 」
そう問われてぼんやりと天井を眺めながら
「 みこは… 魔導師でも精霊の巫女でも無いただの踊り子なんだよ?
だけど… そんなみこに運命はみこに女神様の依り代になる事を求め、ならなきゃいけなかったから…
魔導師や修道師並みの節制が必要だ… ってお祖父様に言われたけどまこちゃんには内緒の話だったからよく怒られてたな… 大人に、大きくなれないよって 」
苦笑いするみこに
「 命は大人になりたくないのか? 」
そう苦渋の表情で凍夜が聞くと
「 凍夜様の想像する大人のみこってどんな風? みこは… 滅び行く世界で泣きながら救いを求めている姿しか見えないんだ…
だからみこは大きくなりたくない… 大人になんかなりたくなかった… 」
そう、なんの感情もこもらない声で話すみこに
「 誰がそんな事を命に… 」
そうありきたりな質問をする凍夜に
「 みこの有り難くない力… 夢見の占いが教えてくれた 」
重苦しい空気を嫌い春蘭が
「 ところで、命様は何故あの場で大道芸人の真似事をなさってたのですか? 」
話題を変える為の春蘭のその問い掛けには
「 みこの大事な騎士様のご飯くらい主のみこが稼がないと… でも… みこにはあれしか思い付かなかったから… 」
「 何故、国王や王妃に甘えない? 」
寂しく笑い
「 みこは疫病神…恩を仇で返す真似しか出来ない子だからそんな資格はない
凍夜様も剣斗様も、もうみことは関わらない方が良い… みこは禍をばら蒔く呪われた子… 穢れた子なのだから… 」
又しても訪れた沈黙を嫌った春蘭が
「 命様、お金が御入り用でしたら私がお世話しましょうか? 」
春蘭がそう申し出たけど
「 そんな…会ったばかりの人に… 」
「 すいません、言い方が悪かった様ですね…
舞姫様の舞ならば座敷で踊れば稼げますから太夫や女将に頼んでみようかと思いまして 」
春蘭の提案を聞いたみこは
「 そう、考えてみる… 何とかしないと騎士の風歌に侍女の真似事させる事になるから 」
「 命は嫌なのか? 」
「 じゃあ凍夜様が女の子なら侍女になっても良いと思いますか?
みこが風歌なら絶対断る… みこはお屋敷勤めするより野山で薬草探しをしたいから自分がしたくない、そんな事は騎士の風歌にはさせられない 」
( ヤレヤレ、一体どうしたものか… )
そう思い内心溜め息を吐く凍夜だった
「春蘭手伝いなさい 」
そう言って母娘でテーブル一杯の料理を出して
「 美食家で名高い凍夜様のお口に合う自信は御座いませんがどうぞ御召し上がり下さい」
彩り鮮やか料理もみこの気を引くことはなく
( 肉や魚を食べ無いだけでなくそれらで出汁を取った物や穀物も見向きもしない )
「 何だ、命… 何がそんなに嬉しいんだ? 」
「 好きなんだ… 美味しそうな料理を美味しそうに食べる人は 」
「ならお前も食べたら良いだろうが? 」
寂しそうに首を横に振ると
「 みこはこれ迄の修行を無に帰すわけにはいかないから食べてはいけない…」
「 だから何故お前が… 」
「 それがみこの宿命だから… みこがみこでありまこちゃんまこちゃんなのだから
誰かに変わってもらえるものじゃないし凍夜様もそういったものはご存じのはずではありませんか?
ただ、そう強いて言うのであれば運が悪いから… みこの時代でなければ、みこでなければ良かったのに… も、それは言っても仕方の無いこと
間も無く… いいえ、既に闇の浸攻は始まっているのですから猶予はありません 」
そう悲しみを湛えて話すみこの前に瑞々しい果実を乗せた皿がテーブルに出され
「 これなら舞姫様も召し上がれますか? 」
そう言われて差し出されたものを見たみこは小さく微笑み
「 うん 」
と、一言答えて嬉しそうに一切れ摘まむと幸せそうな顔をして食べ始めだけどそのみこの笑顔に凍夜がつられて一切れ食べると
「!、…命、酸っぱくないのか? 」
その酸っぱさに一瞬息が詰まった凍夜がそう聞くと
「 この酸っぱさが身体に良いんだよ、凍夜様 」
と、澄まして答えて三切れ食べていたけど
「 でも、この実は本来こんな酸っぱいものじゃないはず… 」
と、そのみこの呟きに
「 3年前から酸っぱくなり始めて今年はごく一部以外は… 」
あち
そう春蘭が寂しそうに答えると複雑な顔をしながら
( 水の精霊の封印された年だ )
そう考えていると
「 何か心当りがあるのか? みこ… 」
そう問い掛けてきた凍夜に
「 信じられない話かも知れない話だけど… 今から3年とちょっと前にアクエリアス様が封印されて4大精霊の全てが封印されました 」
「 … 」
「 やっば信じられない話ですよね? 」
「 そうだな… お前以外の人間が言えば全く相手にしなかっただろう、女神の依り代の舞姫以外の者から聞いたのならな… 」
「 …初めてだよ… 舞姫と呼ばれて嬉しいのって 」
「 そんなに嫌だったのか? 舞姫と呼ばれるのが… 」
「 里の者達にとって舞姫は仮にも祭司長の娘をアレとかソレとは呼べないから…
パパやママ、まこちゃんの前ではお嬢様、舞姫と呼んでいた
だからみこにとって舞姫とゆー呼び名は、物と同じ扱いを受けていた事の象徴なんだよ
だからみこが生きる事を諦めない為には踊りの稽古と薬の研究は無くてはならないもの…あっ…春蘭さん、みこの鞄貸して」
そう言って渡された鞄の中から一冊のノートを取り出し
「 これ、みこの薬草の研究の成果… 良かったら受け取って 」
そう言って手渡されたノートを開いてみると
( 凄い… 今まで知られてない事が沢山書かれている上に推測ではなく、自分自身で効能を確めているようですね… )
そう思いながらノートを受け取り
「 宜しいのですか?こんな貴重な資料を頂いて… 」
そうきかれたみこは
「 みこにはもう要らない… 研究を進める時間も無いし字も読めないみこが持っても仕方無いから 」
驚いてみこを見る人達に
「 パパに書いて貰ってたんだ… 」
「 教えては貰おうとは思わなかったのか? 」
驚いた凍夜がそう聞くと
「 文字にはね、毒草にも優る毒を持つ事も有るって知ってる? 凍夜様… 知らないままでいれば傷付かないで済むのだから… 」
「それも真琴には内緒の話か?」
「 うん、話しても仕方の無い事だから… それにみこと違ってまこちゃんに涙は似合わない
みこにはまこちゃんの笑顔が無いと明日を迎える勇気はなかったのだからまこちゃんには嫌な真実は知らせないで笑っていて欲しかった 」
( 泣くぞ、その事実を知ってしまったら… )
「 でも、もうみこはまこちゃん離れをしなきゃいけない時が来たのだから… いつまでもみこがまこちゃんを独り占めしてたら如月様に悪いから… 」
( その人に対する気遣いや優しさを、ナゼ自分にも向けられないのだろうか? )
「命…そろそろ帰ってパーティーの支度をしないとな…」
俯き
「 どうしても出なきゃいけないのかな? 」
「 豊穣の女神を連れ帰った命と風歌の労を労うものだからは出ない訳にはゆかんだろう? 」
「 みこは放って置いてくれるのが一番嬉しいんだけどな… 」
「 お前が出なければ剣斗も嘆くぞ? 」
「 ? 」
「 せっかく准騎士に昇格したのに一番祝って欲しい
お前が居ないでは喜びも半減すると言うものだ 」
「 ? 」
「 剣斗はお前に好意を持っているんだぞ? 」
「 ? 」
焦れた凍夜に担がれたが言われた事の意味を理解できないみこは、その意味を懸命に考えていたから状況に全く気付かす身じろぎひとつすらしなかったらしい
全く、みこらしい話だけど誉められた話じゃないのは確かな事で正直あ私ですら頭が痛い
「 命の服はどうする? 」
「 取り敢えず血糊も綺麗に落ちましたし直に乾くとは思いますが…
綻びは思いの外大きく手直しの必要が有ります 」
そう聞いて溜め息を吐き
「 そうすると俺では判断出来る話ではないのだが… 誰かが決めねばならぬのだから俺が決めよう
明日使いの者を取りに寄越すから何処が都合良い? 」
「 明日は朝から稽古が有りますなら店の裏の稽古場が一番都合が良いです 」
「 わかった、そちらに使いの者を寄越すからそれで宜しく頼む 」
「 はい、承知しました 」
「 ああ、姉上にも宜しく伝えてくれ 」
「 宜しいのですか? 」
いわゆるところの妾の娘である太夫を本妻の凍夜の母親が快く思ってない上に息子は自分をバカにして太夫を大切にしているのが更に気に入らない
そんな状態を心配しての発言だけど
「 気にするな、お袋が何と言おうと俺はあの方を姉として敬愛してるし問題は親父の責任で有って姉さんのせいにするのは間違っている 」
そう言って親しい友人にしか見せない笑顔で笑って答える凍夜を見ながら
「それはそうですが… そう考える人の方が稀ですからね… 」
その春蘭の呟きは、既に馬上の人となっている凍夜の耳には届いていなかった
馬に揺られて帰って来た凍夜と命に気付いて駆け寄ってきた風歌に
「 命を頼む 」
命の身体を委ねると、1人の見習い騎士が凍夜に近寄り馬を預かった
みこと別れて一人サロンに赴き
「 どうだ…何か解ったか? 」
凍夜に聞かれた人々は
「 可能性の有る場所は3箇所に絞れましたが… 」
「 わかった、取り敢えずその3箇所の情報をくれ…
早速調査に向かわせるから、それを纏め終えたら謝礼を貰って帰って良い 」
( 取り敢えず3箇所か… )
そう思い大きく息を吐き出した凍夜だった
「 舞姫の命にお願いが有るのですが… 命? 」
目は開いているもののみこの目には何も映って無いかの如く見え王妃の声も届いて無いようだった
「 今宵は見習い騎士剣斗の准騎士任官祝いも兼ねてますからそれを祝って舞姫の貴女に戦の舞を奉納していただきたいのです
これからの国王軍の中枢を担うであろう若者の未来を祝福する為に… 」
そう言われてびくっ… 震えると、へなへなへなっと座り込みいつにもましてその表情は暗い
「 みこ、どうしたの? 王妃様のお話聞こえなかったの? 舞姫の貴女に舞を奉納して欲しいって… 剣斗様の前途をを祝福して欲しいって言われたでしょ? 」
口の中でブツブツ繰り返すみこに
「 どうしたの? みこ… もっと聞こえるようにお返事なさい 」
私がそうゆーと
「 ォドレナイォドレナイォドレナイォドレナイォドレナイォドレナイ… 」
ひたすら呪文の様に踊れないと繰り返すみこ
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馬に揺られて帰って来た凍夜と命に気付いて駆け寄ってきた風歌に
「 命を頼む 」
命の身体を委ねると、1人の見習い騎士が凍夜に近寄り馬を預かった
みこと別れて一人サロンに赴き
「 どうだ…何か解ったか? 」
凍夜に聞かれた人々は
「 可能性の有る場所は3箇所に絞れましたが… 」
「 わかった、取り敢えずその3箇所の情報をくれ…
早速調査に向かわせるから、それを纏め終えたら謝礼を貰って帰って良い 」
( 取り敢えず3箇所か… )
そう思い大きく息を吐き出した凍夜だった
「 舞姫の命にお願いが有るのですが… 命? 」
目は開いているもののみこの目には何も映って無いかの如く見え王妃の声も届いて無いようだった
「 今宵は見習い騎士剣斗の准騎士任官祝いも兼ねてますからそれを祝って舞姫の貴女に戦の舞を奉納していただきたいのです
これからの国王軍の中枢を担うであろう若者の未来を祝福する為に… 」
そう言われてびくっ… 震えると、へなへなへなっと座り込みいつにもましてその表情は暗い
「 みこ、どうしたの? 王妃様のお話聞こえなかったの? 舞姫の貴女に舞を奉納して欲しいって… 剣斗様の前途をを祝福して欲しいって言われたでしょ? 」
口の中でブツブツ繰り返すみこに
「 どうしたの? みこ… もっと聞こえるようにお返事なさい 」
私がそうゆーと
「 ォドレナイォドレナイォドレナイォドレナイォドレナイォドレナイ… 」
ひたすら呪文の様に踊れないと繰り返すみこ
「 みこの舞にそんな値打ちは無い… だからもう2度と人前では踊れない… 踊りたくないっ! 」
そこに現れた凍夜に
「 命、見る目の無い者の評価等忘れろ 」
悔し涙を滲ませながら
「 大漁祈願と水の精霊の踊りを踊ってもこれだけしか集まらなかったんだよ?
みこの踊りにはこれだけの値打ちしかないんだ…
だから… もう踊れ無いし少なくとも人前では踊り踊りたくない
みこは明日の朝早く出ていくけど、まこちゃんをお願いします 」
みこの言葉に凍夜が慌てて
「 何故命が出ていく必要がある? 」
そうみこに訴えたら
「 みこが居る必要はもっと無いし居なくても誰も困らな「 みこ… そんな事本気で言って無いよね? 貴女が私を置いて行くなんてしないよね? 」」
みこの言葉を遮って信じたくない言葉を取り消してほしかったのに
「大丈夫だよ、まこちゃんには如月様が居るからみこの事はすぐ忘れるし忘れて良いから 」
私の願いはみこには届いてないから
「 私がみこの事を忘れる訳無いっ! 」
そう叫ぶと
「 わかった… 命、明日から歌の女神が封印されてる可能性のある場所を案内させよう
だからその代わりと言っては何だが剣斗の為に今夜は舞ってやってくれ
エスコートもダンスの最初と最後のパートナーも務めてやってくれ 」
そう頼まれたみこは
「 うん、それにどれ程の価値が有るかはわからないけど歌の女神様の救出はみこの… 舞の女神の依り代たるみこの使命だから… 凍夜様お願いします 」
そう言って支度のため一旦退出することになった
「 では… 命様着替えて下さい、風歌さんは客分騎士の正装で宜しいですね? 着替えて下さい 」
そんな舞台裏の一幕を知らない剣斗にとっては一世一代の晴れ舞台だった
みこをエスコートして会場入りして、その舞姫のみこが自分を祝福する舞を舞っている…
その舞が間も無く終わろうとする頃になり事態は急変した
舞っていたみこの様子がおかしくなったのだ… 急激に顔色が悪くなり脂汗を流し始め何とか踊りきったけどもう立ち上がる力を無くしていた
剣斗がパーティーを中止するよう申し出るのを止めたみこは…
「 ごめんなさい、一緒に踊れなくて… 准騎士昇格おめでとうございます… 」
そこでみこの意識は途切れた
控え室に運ばれたみこは医者に見て貰ったがお腹にかなりのダメージを…
それこそ内臓が破裂しててもおかしくないような重大なダメージを受けていると言われてそれを聞いた凍夜は噛み締める唇から血が出ていた
「 済まない、王妃… 俺が命から目を離してしまったからだ…
いや、あんな奴等がこの王都にのさばっている事に気付けなかった無能な治安局長のせいだ… 」
重苦しい雰囲気の中
「 命様は私が見ていますから皆様はパーティー会場にお戻り下さい 」
ユカの勧めで会場に戻ったけど私には出来なかった
王族の一員でも国の中枢を担う重鎮でもない私には何事も無かった様には振る舞え無い
パーティーは無事終えることが出来たけどその夜みこはまたしても私達の前から姿を消した
そう、唯一の騎士であるはずの風歌にすら何も告げずに姿をくらまし… そのせいで彼女もまた失意のうちに私達の前からその姿を消した