舞姫 作:匿名コメは手加減って悪口言われるの前提?
それが私の見た命様のご様子です
但し真琴様…貴女に真実を伏せ様に指示したのは凍夜様の判断ですから命様を叱らないでやって下さい」
私を心配そうに見詰めるユウの様子を見て、私は溜め息を吐き
「 みこに連絡する、なんて発想は有りませんからその事については何も言いませんと、言うか言っても仕方有りませんから… 」
私の顔を見たユウが
「 切ない、ですね… 貴女がこんなにも心配してるのに… 私も今回命様の声を聞いてません…
あの方はただただ、踊り続けるのみでしたからね 」
私は首を横に振り
「 みこが何かに集中し始めると、その事以外は意識から全て排除してしまうから…
もう少し、私達が心配してる事に気付いて欲しいものですが… 」
私達の会話に、溜め息を吐きながら近付いてきた王妃は
「 今は風歌だけでなくあの娘に恋する二人のナイトも守って居るのだから3人を信じなさい
それよりも、今の私には貴女達の為のパーティーを楽しんでいない事の方が問題です 」
と、言って公女と二人で如月様を睨んでいた
「 さぁ、真琴… 踊る気分にはならないだろうから飲物を持って夜風に当たりに行かないか?
ここは少しばかり暑すぎるからね… 」
二人に睨まれる如月様は居心地悪そうにして、私にそう囁いた
でも… 確かに今の私には踊りたい気分でも、この場の雰囲気に馴染む気分でも無かった
だから私は余り冷たくないお水の入ったグラスを貰い如月様はアルコールの弱いカクテルを持ってテラスへ出た
月明かりの下、溜め息を吐く如月様は私を見詰めながら
「女神の依り代か… 君が遠くに行ってしまった気がするよ…」
と、そう言って持っていたグラスを一気に空けてしまったのを見て如月様がお酒に弱いことを知っている私は心配して
「 如月様… 私はここに… 貴方の直ぐ側に居ますから… その様な無茶な飲み方は身体に宜しく有りませんからお止めくださいませんか? 」
と、言って彼の手を握り目を見詰めたけど如月様は
「 そう、確かに君のうつしみは僕の手の届く所に居る…
だが… 君の霊 ( たましい ) は… 女神様の元に行ってしまった… 」
その如月様の愚痴を、いつの間にか私達の側に来た公女は呆れ顔で
「 ならばその様にグチグチ言ってないで貴方も高まれば良いだけの事です… 私達にも司祭の里の血は流れてますから不可能では有りませんっ! 」
少し苛立ち気味にそう言って、如月様の背中を叩いた公女は心強いのだけど…
久し振りに如月様との二人きりの時を邪魔された私はふてくされ二人に背を向けたがそんな私に公女は
「( 凍夜から )伝令が来ましたが聞かなくても良いのですか? 」
と、痛い所を突かれ
「 如月様ごめんなさい、みこの事が気になりますから一旦中に戻ります… 」
そう告げて、渋々戻ることにした
私は気付かなかったけど、再び背中を叩かれた如月様は私に寄り添う様に中へと戻っていった
私達がパーティー会場内に戻ると伝令の使者が丁度入って来たところだった
使者は国王と王妃に一礼し
「我が主凍夜様からの伝令です」
と前置きをし
「 今夜は交替で舞姫様をお守りし… 明日の早朝、舞姫様と騎士風歌及び舞姫様の世話係りとして美月のスタッフのユカ3名
二個小隊を護衛に付け、湯治場に風歌殿が案内するとの事で……これは歌の女神様の勧めであるとも聞いております」
一礼し下がろうする使者に
「 承知しましたが、貴方はこれからどうするのですか?」
との王妃の問いに対して
「 明日本隊を率いて帰還する主人を出迎える支度をしに屋敷に戻りますので、これにて失礼致します」
そう言って退出していった
使者の後ろ姿を見送った王妃が私の方に向き直り
「 真琴… 貴女はどうしますか? 」
そう聞いてきたけど
「 寂しいけど、ちゃんと護衛の方達が付いているのですから帰って来るのを待つしかないのではありませんか?」
私はそう答えたが王妃は私に
「 貴女も祭典お疲れ様の意味で、命の行くであろう湯治場に行きませんかと聞いているのですよ?」
その思いもよらない話に、どう返事すれば良いのか解らずに居る私に代わり公女が
「 ユウを世話係りに付け… 巫女の皆様はどうしますか?」
と、3人を見ると3人は顔を見合せ
「 私は明日から畑仕事の手伝いが… 」
と、葵が言えば
「 私も未だ見習い中の身ですから、そのような贅沢をしては… 」
と、碧も言い
「 私はそろそろ留学先に戻る支度をせねばなりませんから… 」
と、3人とも断ろうとしたが公女は
「わかりました、私が都合を着けたら真琴について行ってくれますね? 」
と、言われて困惑した3人に私は
「 そんな事いきなり言われても困りますよね? 観月様は押しが強いからはっきりお断りしないと押し切られますよ? 」
と、言ったけど公女は全く気にする風でもなく
「 王家から女神の巫女達への正式な依頼であってもですか? 」
再び顔を見合せ代表して碧が口を開いた
「 それはどう言う意味なのでしょうか? 」
と、訪ねると公女は
「 休養と貴女達の女神の依り代と巫女のお披露目をしてはどうかと思ったのですが… 」
と、言って顔を曇らせたが
「 そう言う事ならお引き受けします、兄弟達が畑仕事を手伝いしてる中遊びに行くのは心苦しいと思いお断りしようと思いましたから… 」
と、葵が言えば碧も
「私も巫女としての務めを果たすのであれば女神様の御心に叶う事、是非とも真琴様のお供を致したいです 」
と、答え
「 間違っていたらごめんなさい、もしかして貴女の留学先って美月では有りませんか? 」
と、話し掛けたのはユウで茜はその声の主の顔を改めて見て少し驚いた様に
「 貴女はもしかして美月のデザイナーのユウ様? 」
と上擦る声で聞いてみた
「 ユウ様と呼ばれる程の者では有りませんが… 確かに美月でデザインのを仕事をしてますし貴女を研修室に居るところを見掛けたのを思い出しました 」
と言うユウの言葉に公女は言った
「 やはりそうでしたか… 私も何処かで会ったような気はしていたのですが… 」
ユウは首を横に振り
「 仕方有りません、二年前にワイマール前男爵婦人が観月様の世話役を隠居なされて…
ようやく落ち着きを取り戻したばかりなのですから…
もし真琴様と命様の訪れがもう少し早ければもしかしたら今年も祭典には欠席してたのかもしれないのですからね 」
そう言われて深い溜め息を吐いた公女
「 確かに… いつもいつも口煩いと思ってましたが彼女一人いないだけで暫くは何事も遅々として捗りませんでしたからね 」
ユウは小さく頷き
「 私やユカ、ユイだけでは人手が足りずに観月様自らも走り回って指揮せねばなりませんでしたから… ところで茜さん… 貴女の専門は? 」
いきなりの問い掛けに戸惑う茜は
「 私が作りたいのはユウ様の作られる様な…
今観月様や王妃様がお召しになっているドレスはユウ様のデザインなされた物ですよね?
私もそんなドレスを作れる様になりたいのです 」
そう答える茜に
「 ならば、今日よりユウは女神様の依り代になった真琴の専属を務めて貰います
ですから貴女は、真琴に同行すると共にユウにデザイナーの弟子入りしては如何ですか? 」
虚を突かれて驚く茜
「 ですがそれではユウ様の負担ばかりが増えてしまいますが?/」
と、困惑の表情で言う茜に
「 それなら心配要りませんよ? 観月様、もし差し支えなければユウ様のお手伝いを私にさせて頂けませんか? 」
そう言いながら私を見て
「 真琴様のお世話をお手伝いさせて頂きたいのですが宜しいでしょうか? 真琴様… 」
と、聞いてきた
「 それなら私も真琴様にお仕えしたいし… 美月のスタッフであるユウ様から学ぶ事は沢山有りますからもし宜しければ色々とご指導お願い出来ないでしょうか? 」
と、二人で茜に微笑み掛けたので
「 それなら私も女神様の依り代になられた真琴様にお仕えするのは女神様の希望でもありますからファッションだけでなく色々な事を学びたいです 」
微笑みながら公女は
「 ユウ… 巫女達を事は任せましたよ、宜しいですね? 」
公女にそう言われて頷き
「 後輩を導くのも務めだと、そう美月で教わった事ですからお任せ下さい 」
( 後輩… )
「 私達は教え子ではなく、後輩で宜しいのでしょうか? 」
と、碧が三人を代表して聞くと
「 私達も未々未熟者なのですから、貴女達に教えながら改めて勉強し直す機会と捉えますからね
しっかりついて来なさい、宜しいですね?」
「はいっ!」
と、力強い返事と共に頷く三人に
「 あのぉ~、私にお仕えしたいしって私は王侯貴族の者では無いのですが… 」
と、言っても気にするどころかかえって王妃に
「 神に選ばれし女神の依り代になられた貴女の方が尊存在なのですよ?」
そう言われたところで理解私は
「 そのような事をいきなり言われても納得出来ませんっ! 」
と語気を荒げたが王妃は
「 貴女が納得出来ようが出来まいがそんな事は関係有りません
それが事実であり真実なのですから貴女は受け入れるべきなのです 」
そう言われて「 はい 」 とは言えない私は頑固者なのだろうか?
でも、無理なモノは無理で理屈なんかじゃ無いと思うのだけど…
が…、そんな私の気持ちは置き去りにされて皆の話し合いは進んでいった
翌朝、いつもの様に早く起きた私は堀に繋がる池の畔に有る東屋で唄のお稽古をしていた
夜明けには程遠い時間だけど、この静寂に満ちた時間が私は好きだ
こうして唄のお稽古をしながら、山に薬草取りに行っているお父様とみこが帰って寝る来るのを楽しみ待つこの一時がとても好きだった
今だって目を開けたら篭を背負ったみこが手を振りながら帰って来たら…
その後にあの穏やかな笑顔でお父様が、 『 ただいま 』って言ってくれたらどんなに嬉しいことか…
でも… この世にお父様とお母様はもう居ないのは私にもはっきり感じ取れる
認めたくない事実なのだけど、お父様とお母様の気配はもう何処にもないと言う事を…
そんな事をぼんやり考えながら唄っていたから、私は自分が涙を流していることにも気付かずにいた
「 真琴様… 大丈夫ですか? 」
碧にそう声を掛けられて私は意味が解らず
「 ?… 別に何とも有りませんが…? 」
と、私はそう答えたけど彼女は私の顔をじっと見詰め
「 では何故涙を流されているのですか? 」
そう言われて、やっと我に返った私はその事に気付いた
「 大した理由はありません… ほんの少し前の… 里に居た頃の事を思い出していただけなのですから… 」
話を続けてと言う表情をされ
「 こうして唄のお稽古をしながら山で薬草取りに行っていたお父様とみこを待っていたの頃のを思い出したのです…
消息不明のお父様とお母様の事を思い出していただけですから… 」
その言葉に茜が
「 大公領とは一切連絡が取れなくなっているそうですね? 」
と言って葵と碧に話した
「 みこはお父様とお母様は殺されたと言ったけど私は信じたくはなかった… きっと何処かに囚われて居るだけなんだって… 」
顔を歪め
「 私も… お世話になった方達の消息か知りたいですが… 」
と言い淀み
「 観月様だって気になっている筈なのにね… 」
私は疑問を口にしたが答えられる者は居なかった
「 ところで皆さんお揃いででうしたのですか? 」
そう私が聞くと葵が
「 ユウ様に朝の稽古を真琴様と一緒にしてきなさい
と、言われてこの場所を教えて頂きました 」
二人が頷き取り敢えず声を揃えて今朝のお稽古をした
朝食後に公女からの発表が行われる事になり
「 具体的な場所は治安局局長の凍夜様がお戻りになってからの報告を確認次第ですが… 」
と言って私と王妃の顔を見て
「 真琴に同行するのは女神の巫女の3人とユウと護衛の二個小隊の13人です 」
と、告げると
「 貴女は同行しないのですか? 観月… 」
との王妃の問い掛けに
「 私は十六夜とユイの婚礼の儀を取り仕切る為、当日までにせねばならない事が色々支度が有りますからここを離れる訳には参りません 」
そう毅然と答えたが、公女の右手は固く握り締められていた
「 今からユウに貴女達の部屋へ案内させ、これからの生活について大間かな説明をさせます 」
ユウが進み出て3人は私達の部屋に案内される事になった
「 この調度からすると国賓クラスの客室では? 」
との碧の声に
「 元から真琴様と命様は、司祭の里の祭司長の娘にして王妃様の血筋の者なのですよ?
ましてや命様は、天才の呼び声の高かった前舞姫の咲夜様すら凌ぐと言われる舞の女神の依り代の命様をお泊めするのですからね? 」
そう言われて反って緊張する3人に笑いながら
「 あんしんなさい、私達3人と同じ中にある従者用の部屋が有りますからそこなら大丈夫でしょ? 」
そう言われてホッと息を吐き
「 そうですね… このクラスの客室なら従者用の部屋が備え付けて在るのは当然で… そこなら私達も緊張する事なく過ごせそうですね 」
と、碧は言ったが葵は
「 私はそこでもちょっと緊張するかも… 」
と苦笑いを浮かべた
「 それは慣れるしか有りませんね 」
そう言って、預かっていた手荷物を各人に渡し
「 貴女達の着替えなど持ってきて貰った荷物を持ってついて来なさい 」
そう言われてユウに続いて室内に入る三人
「 ここが私とユカ、ユミ、風歌の部屋で従者用の部屋は他に三部屋有りますがこの部屋で足りますから貴女方もこの部屋で良いですね? 」
頷く三人を見て
「 先に進みます 」
そう言って、さらに奥に進むと突き当たりのドアの両サイドにドアの無い小部屋があった
ドアに向かって右手の小部屋に入るユウに続いて入る三人
ここは私達従者用のクローゼットで20人分有りますがベッドは16台しか有りませんから残りは予備の服入れに使ってます」
そう言って、下がっているメイド服を見せ
「 メイド服に抵抗がなければ合うサイズの物を二着持っていきなさい
後… 下の引き出しに肌着類が有りますが…
申請後の支給と、ちょっと面倒ですが遠慮せずいつでも言って来なさい
ここまで解らないことは? 」
顔を見合せ碧が
「 これはメイド服なのに、美月のスタッフであるユウ様が着ているのは何故でしょうか? 」
三人が息を呑んでユウの答えを待っていると
「 とても機能的で、仕事をするのに楽だしこの服なら一目で大公家の者だと解りますからね 」
そう聞いて成る程とは思った物の茜が
「 私達は大公家の者… と言う訳ではありませんけど宜しいのでしょうか? 」
そう聞いてきたので、ユウは三人に
「 形式的には、あなた達の身分は公女宮の侍女になり… 観月様のご指示で、歌の女神の依り代様にお仕えすると言う形になりますから問題有りません
勿論、お給料も支払われますから楽しみになさいね 」
そう言われて驚いた葵が
「 そ、そんな… お給料迄頂いたらバチが当たります… 」
と言ったがユウは
「 観月様はシビアな方ですから、貴女達にその資格が無ければそもそも今のこの状態にはなってません
それでも心配なら、頑張って恥ずかしくないようになれば良いだけの事 」
と、事も無げに言われてしまった三人
「 後、他に質問が無ければ奥の部屋に進みます 」
そう言って突き当たりのドアを開けると三人を奥の部屋に案内した
「 この部屋は客室用の応接間で、右手にバストイレ有り… 左手には簡易のキッチンが在ります
最後になりますが、この奥に在るのが観月様、真琴様、命様、りん様が休まれる寝室になってます
一応個室になってますが間仕切りを開けば大部屋としても使えます
ですが… 命様は真琴様か、ユカのどちらかのベッドに潜り込んでましたから…
滞在中に、ご自分用のベッドはお使いになられた事は一度も有りませんでした… 」
と、そう言って溜め息を吐いたユウ
その後、個人の服を各々に割り当てられたクローゼットにしまってメイド服に着替えを済ませてから私達の前に戻って来た
ただ… 三人の以外に似合っているメイド服姿にボーッと見とれている如月様に腹が立った私は思いきり足を踏みつけ
「 ユウさん、『 後の支度はユミに手伝わせ、貴女は至急王妃様の執務室に来るように 』と、 言付かってます 」
と、伝え私の荷物を受け取り…
踞る如月様を置いて、私は三人を伴い馬車で支度をしているユミさんの元に向かった
勿論、如月様は痛む足を引き摺りながら私について来たのだが私は一度も振り返ることはしなかった
私達が支度をしているところに、戻って来たばかりの凍夜様を連れて王妃と公女が来た
勿論、供の中にユウの顔が有るのは確認済みだ
「 凍夜様、みこが向かったと言う湯治ばかりのとは… 」
気ばかりが焦る私に凍夜は静かに微笑みながら
「 貴女に説明をしたところで、地理に明るい訳ではあるまい?
焦らずとも当たった騎士には申し訳無いが、その場所に同行する二個小隊に支度をさせているからお待ちなさい 」
そう言って笑った
確かに言われてる事に間違いないのだけど、と憮然とする私の肩に手を置こうとしたが睨まれて慌てその手を引っ込めた如月様
癇癪を起こしていた私は気付かなかったが、公女がその様子を面白そうに眺め三人から話を聞いたようだ
「 成る程、馬鹿な兄貴だ事… 」
そう言って鼻を鳴らすと
「 良い薬ですから暫く放って置きなさいと三人には言った様だった 」
既に上の空の私には、何も言わずにユウに指示を与える公女と王妃
そして運の悪い騎士 ( 戦士達は幸運と思ってくれていたみたい ) が私に挨拶に来た
騎士は私に王族の… 身分の高い女性にする礼儀でもって挨拶してきた
「 女神の依り代、真琴様の護衛と言う栄誉ある大役を仰せ付けられた者です… どうぞ宜しくお願い申し上げます 」
と、言って頂き私も
「 女神様の依り代と言っても昨日なったばかりの不馴れな者… 騎士様達のお世話になります
私を妹… 命の元に連れて行って下さい 」
と、そう言って深く頭を下げた
「 さぁ真琴と巫女達、馬車に乗りなさい 」
そう公女に乗車を促された私は、騎士様の手を借りて馬車に乗り込んだ
手を差し伸べたそうな如月様は、あえて無視して
「 バカ兄貴っ! 真琴に早く謝りなさいねっ! でないと後悔しても知りませんよ?
しっかりしているように見えても、未々あの娘は子供なのだから… 」
小声で話しているけど、残念ながら私の耳にははっきり聞こえていたから
「 私もう子供じゃ有りません 」
馬車から顔を出してそう叫んでしまった
私が顔を引っ込めると、公女に背中を叩かれて馬車に乗り込んで来た如月様に対してあからさまに顔を背ける私
呆れ顔のユミと三人の巫女達と、困り顔の如月様に私達の様子に戸惑う二人の護衛の戦士達
思いきり気まずい空気の中で走り始めた馬車は、気まずい雰囲気漂わせながら走り出した
「観月様…あれは?確かあの二人は恋仲だったと思っていたのだが…」
馬車が見えなくなったのを確かめた凍夜様は公女に聞いた
「真琴の前で三人の巫女達に見とれているバカ兄貴が悪いのです」
その公女の後ろから王妃が
「確かに面白くない事でしょうがいつまでも…」
溜め息を吐いた公女は
「だから子供だと言ったし真琴にとっては恐らく初恋…そんな兄を許せる余裕は無いと思いますよ?」
更に凍夜様が
「今はただでさえ命の事が心配で、不安定な心理状態なのだろうからな…
確かに公子殿が悪いし不用意過ぎると言わざるを得ないだろうな…」
と言って首を横に振った
「 山里で歌と踊りの稽古に明け暮れて、何ひとつ不自由なく育ったと本人から聞いている真琴
祭司長の娘で何を言うにも未だ15歳になったばかりなのですからね…」
そう言われ溜め息を吐く一同だった
子供と言われた私は憤慨し目を閉じ心を閉ざしていた
私の顔色を伺うおどおどした如月様の視線が堪らなく嫌だったからで…
正直に言えば私自身如月様どうして欲しいのか良く解らなかったが…
そんな私に助け船を出してくれたのはユウさんだった
かなりの荒療治ではあったのだけど護衛の戦士とユウの会話が聞こえてきたのだ…
「う…嘘…みこの身にそんな事が有って言い分けない…
みこが右目を失ったなんて信じたくない…」
私は絶望から意識を失った
私の身体を支えてくれていたのは如月様だと言うのは意識の無い私でも何と無く解っていた
私が欲しかった物だったからかも知れないそれを感じたのだから…
意識を取り戻した私は目の前に居る如月様の身体にしがみついた
今の私が平静を保つにはそれしかないと本能的に悟ったのかも知れない…
だがその急激な変化についていけず戸惑う如月様の耳元に囁いた
「ごめんなさい如月様…
私の子供じみた妬きもちで貴方を困らせてしまった私を許してください
私はきっと怖かったと思うんです
真実を…みこの身に起こった事を知る事が…」
私は如月様の身体に回した手に力を入れ唇を噛み締めるとそれっきり黙り込んだ
私の震える肩を抱き締めた如月様の手と顔を埋める如月様の胸が私に落ち着きを取り戻させてくれた
「済まない、浮かれてる場合じゃ無いのを忘れていた…
君の力になりたくてついてきたのに…全く情けない男だよ…」
その時になって馬車が止まっている事と馬車の中は私と如月様の二人きりだと気付いた
「他の人はどうしたのですか?何故馬車は止まってるのでしょうか?」
私はその疑問を如月様に聞いた
「皆は休憩している…僕達に気を使ってね」
ほーっと息を吐き出し
「もう如月様は私みたいな妬きもち妬きの…癇癪持ちの乱暴な女の子なんか懲り懲りですよね?」
私は泣き出したいのを堪えて一番気になっていた事を思い切って聞いてみた…
如月様の目をじっと見詰めて…
私の目に映る彼の瞳は優しく笑っていて…私は瞳を閉じ…彼の顔が近付いて来るのを感じていた
「ん、んっ!」
咳払いをして馬車の扉を開けたユウと顔を赤くして離れる私達
「言った筈ですよ?如月様…真琴様の意識が戻ったら呼んでくださいっ!と…真琴様、ご気分は如何ですか?」
そんな事答えるまでもなくせっかくの良い雰囲気を邪魔されていい気分な分けないでしょ!?
そう叫びたかったがその台詞をグッと飲み込んで
「大分落ち着きました…皆さんご心配お掛けした様で…申し訳ありません」
と言い頭を下げた
「真琴様のご気分が良くなられて安心しました
今日は出発が遅かったので今夜は峠の簡易宿泊所で泊まりますがそれで宜しいですね?真琴様」
ユウに任せるしかない私にはユウにそう答えるしかなかった
「ユウさんにお任せします」としか…
「痛い…」
抑揚感の無い言葉ながら久し振りに発せられたみこの言葉
「未だ生きてたんだ…痛いって感じるって事は…」
ゆっくり首を廻らすと背後にユカがいてみこの身体を洗ってくれている
風歌も湯が傷口に滲みるらしく表情を歪めながら身体の疲れを癒していた
「ここ温泉なんだね…」
改めて見る自分の身体は爪痕や切り傷等の痕が無数に刻まれていた
「これもう消えそうにないね…でも平気かな?みこは泳げないから水着にならないもん…」
傷に障らぬよう気遣いながらみこの身体を洗うユカが
「命様は泳げないのですか?」
と不思議そうに聞くと
「みこの場合それ以前の問題で底が見えない海や川には怖くて近付けないんだよね…トラウマって言うんだって、そう言うの…」
驚いたユカは
「では幼い頃に溺れた事がお有りなんですか?」
言ってからしまったと思ったがみこは
「大丈夫だよ…みこは覚えてないから話をしてるだけなら何ともないからね…
ただ…海や川を前にすると身体がすくんで動けなくなっちゃうだけで…」
その言葉通りにみこにはなんの気負いも感じられなかった
「ユカ…もう平気だから目を覆っている包帯を外して…」
だがそれは無理な注文と言うもので私が頼まれたって聞いてあげる訳にはいかない頼みだろう…
中々動こうとしないユカに焦れたみこは
「大丈夫だよ、傷自体はもう治ってるって舞の女神様が言ってるから…
ただ…傷痕までは消せないらしいけど潰れた眼球だってちゃんと…」
と言い淀み
「もう何も見えないけど一応体裁だけは整えてあるって女神様が言ってる」
みこをじっと見詰めたユカは
「わかりましたお風呂上がりに包帯を換えなくてはとは思ってましたからその時判断して宜しいですね?命様」
やっと主張が受け入れられてホッとしたみこは
「 お金どうしようか… どうしたら良いのかな?みこには解らない…)」
深刻な顔でポツリと漏らすみこに
「それに関しては私ではなく観月様や王妃様にご相談すべき事ですよ?としか私には申せませんしこの度のお働きに何ら酬いない薄情な方達ではありませんよ?」
難しい顔をしたみこは
「みこは舞の女神様の依り代としてのお務めを果たしただけで…
そんな事お願い出来る義理はない…」
と小さな声で呟いたがユカの耳には届いてはいない位に小さな声だった
「さあ、石鹸をきれいに洗い流してゆっくり疲れを癒して下さいね」
そう言ってみこの身体を洗い流すユカ
海や川と言ってたけど時折温泉を見ては緊張の色が走るみこの様子を見逃すユカではない
湯の中ではみこの隣に座りその身体を抱き寄せて安心させるように心掛け
てくれていた
湯上りの身体を拭き濡れた包帯を取るとみこの言う通り傷痕は痣になって残ってはいるもののすっかり癒えている様だった
そして瞳は…ダークブルーの宝石が埋め込まれているかの如く暗い輝きを放っていた
そのまま見詰めていると吸い込まれそうな錯覚を覚えたユカは慌て視線を反らすと大きな深呼吸の後激しく頭を振った
「どうしたの?ユカ…」
そのユカの行動を不思議に思ったみこが聞いたが
「この痣なんとか消えないのかと考えてただけです…」
その答えになんだそんな事か…と言う表情で
「メイクで誤魔化せるし…
里でもそうだったけどみこの顔をマトモに見てくれる人なんて居ないからそんな心配要らないよ」
みこの生い立ちを知らとしてない人が聞いたら誰一人信じられない事実にユカは
「里の方達には会った事は有りませんから存じませんがこの国の殿方達はそんな事有りませんよ?」
言われてる意味が一瞬理解出来なかったが
「そんな事無いよ…凍夜様や剣斗様だってみこの顔を正面から見ようとしないよ?」
寂しく呟くみこに
「知らないのは命様だけで貴女に見詰められると女の私でさえドキッとする時が有るんですよ?」
今度は全く理解出来ないためみこはしきりに瞬きを繰り返しながら
「そんなこと言われても信じられない
みこの目を見てちゃんとお話ししてくれたのはパパとママとまこちゃんだけだったんだから…」
その言葉にユカは
「今はそんな事有りませんよ?
王妃様と観月様がいらっしゃいますからね」
ユカはみこにそう答ながら微笑んだがみこは
「ユカは見てくれないの?」
と聞かれ
「私も命様の目を見てお話ししてますでしょ?
ですが私では何のお力にもなれませんから数には入れません…」
そう言って貰っただけじゃ安心出来ないみこは
「じゃあユカはみこのこと好き?」
「勿論真琴様に負けない位好きなつもりですよ」
と言って貰い嬉しそうに
「うん、今のまこちゃんには如月様が居るもんね」
と笑って言った
入浴後の午睡をするみこと風歌を剣斗に任せ食料の買い出しリストの作成と夜の食事の支度を始めた
急速な回復の反動で二人はピクリともしない深い眠りに落ちていたがユカの声で目を覚ました
「命様、風歌さんそろそろ起きて食事になさいませんか?」
その一言で目をパチッと明け目覚めた風歌と精気が無くボーッとした表情のみこが対照的だった
「命様は暫くはお召し上がりになりそうにありませんから風歌さんは先に召し上がって下さい」
そう言われて最初は渋っていたが
「そうですね…一人で命様をお守りしていた時にはよく食事中に襲われてましたからどうしても不安になってしまいましたが…
今は一人では無いんでしたね…」
と苦笑いしながら食卓に着く風歌に
「戦闘では何のお役にも立てませんが日常的事はお手伝いしますからご安心下さい」
そう言われて食卓を見ると並んで居る料理はちゃんと料理が並んでおり…
久し振りの料理らしい料理を楽しみ再び眠りに就いた
「命様そろそろお食事になさいませんか?」
風歌が眠りに就いても未だにボンヤリしているみこに声を掛けたユカ
みこの反応は未だ無く…みこの顔に近付き瞳をじっと見た
「えっ…ユカ…どうしたの?何か有ったの?」
未だ何処か心ここに在らずと言った表情を見せるみこに不安を感じながらも
「命様…お腹は空いてませんか?」
そう聞いてみたがみこの返事は無く
「命様お食事ちゃんと摂りませんと元気が出ませんよ?」
と言われてやっと呼び掛けに気付き
「余り食欲無いから要らない…」
そう答え頭を振るみこにユカは
「私がお手伝いしますから少しで良いのでお腹に入れて下さい」
そう頼んだ
「ん…うん…でも…」
と渋るみこに期待するのを諦めたユカは
微笑みながらみこに呼び掛けた
「命様お口開けて下さいね」
と…言われたみこは何も考える事無く口を開くとユカはその口にお粥の入ったサジを入れたのだ
「さぁ良く噛んでくださいね…命様」
抗う事無く逆らう事無く口に入った物を咀嚼し飲み下した
「美味しい…」
その微かな呟きを聞いたユカは微笑み更にみこの口にお粥を運んだ
食欲が無いなりにユカの勧めるままに食べたみこも食べ終えると眠りに就いた
その様子を見て再び二人を剣斗に任せみこの為の服作りを始めた
余り服を持っていないみこの為に…
一夜明け…
「だからここに居る筈の人に会いに来たのだから邪魔しないで中に入れて
僕達は雑兵に用は無いんだけど?」
雑兵と言われて気色ばみ
「失敬なっ!僕は一応准騎士にして舞姫様の騎士なのだけどね?」
と言い返したが逆に
「准騎士ね…貫禄無いからてっきり見習い騎士だと思ってたんだ…
でも…舞姫の騎士は女戦士が一人と聞いていたのだけど?」
と痛い所を突っ込み入れられてしまった
そこに眠そうな顔をしたユカが現れ二人の来訪者を代わる代わる見て
「貴女方が何者かは存じませんが私の主人が夕べ高熱を出して未だ臥せって居るので静かにしていただけませんか?」
と声を掛けた
「貴女は?」
細身の少女がユカに訪ねた?
「人に物を尋ねるのなら先ず自分から名乗るのが筋では有りませんか?
ですが…私の名はユカ
公女観月様の命により舞姫様にお仕えするものです」
「公女観月…ユカ…もしや貴女は美月のスタッフの…
失礼しました、私の名は…」
そう小柄な少女が名乗ろうとした時だった
「来てくださったのですね?ライ様と蛍様」
上気した顔のみこがその名を告げた
「命様未だ熱が下がって無いのですから休んでませんと…」
トロンと焦点の定まらぬ目をしたみこが風歌に抱かれて奥の部屋から出て来た
「これをお二人にお渡ししたらまた寝ます
さぁ、雷精と火の粉の精の巫女様達…これをお受け取りください」
そう言うと巾着から取り出した赤と翠の霊玉を二人の前に差し出した
「これは?」
二人がそれを受け取りみこに聞いた
「赤い霊玉は火の精霊への奉納の舞で産まれた火の精霊の霊力を宿した霊玉
翠の霊玉は風の精霊の霊力を宿した霊玉…
それらを使い貴女達の精霊の進化を促してください
力の無いみことまこちゃんに霊力(ちから)を貸して下さい魔王の復活を止める為に…」
そう告げると意識を失ったみこを抱いたまま風歌は
「ユカさん、命様を寝台にお連れしておきますから後からで良いのでお願いします」
そう言って頭を下げ奥の部屋に戻った
「風歌さん…噂は本当だったんだ…」
細身が呟き小柄なもう一人の少女が頷いた
「知り合いなのですか?」
と聞かれた二人は揃って首を横に振り
「いいえ、知り合いと言うほどではありません」
「私達より少し年上のあの人は私達に気付きませんでしたから…同じ街の生まれです」
「何か解らないことがあった時は遠慮しないで聞いてください
貴女達…荷物は?」
と聞かれた二人は大きめのリュックをそれぞれに下ろすと
「荷物はこれだけですが実際には…」
と言いリュックの中身を出し始めた
リュックの中から小さな鞄を出して着替え等を詰め替え残りをユカに渡し
「これをどうするのかまでは聞いてませんが干した薬草が入ってますから命様にお渡し下さい」
リュックを預かり
「もし貴女が嫌でなければ貴女達のドレスをデザインさせて頂けますか?」
そうユカに言われた二人は顔を見合わせ
「貴女達は精霊の巫女と言うだけでパーティーに出ていただく理由になりますし命様をお守りしたいのならパーティー会場にも入って頂く事になりますよ?」
再び顔を見合わせて
「いきなりドレスをと言われても…
差し支えなければ貴女の着ているのと同じ服を頂きたいのですが?」
ユカは公女宮から支給されている侍女の制服をつまんでみせ
「この侍女の制服を…ですか?」
と聞くと
「はい、私達はドレスを着てそれに相応しい立ち居振舞いは出来ませんし向いているとも思えません」
「それに私達は舞姫様を守りたい…お側でお仕えしたいのですからね」
二人の申し入れを聞いて
「解りました、その旨のことを私から観月様にご報告し貴女達の制服を用意して頂きますね」
そう言って立ち上がると建物から出て護衛の騎士達を招き入れると
「この御方達は精霊の巫女
舞姫命様の御力になりたいと来てくださった御方達です
皆様からも宜しくお願いして下さいね」
と頭を下げると
「僕はライ、風属性の雷精様の導きを受ける者」
「私は蛍、火の粉の精様に導かれる者です
未々修行中の身ではありますが少しでも舞姫様のお役に立てばとやって来ました
どうぞ宜しくお願いします」
剣斗が二人の前で方膝を着き
「僕は准騎士の…」
「剣斗お坊っちゃま
貴方と治安局局長の凍夜様が舞姫様にベタ惚れなのは三才の子でも知ってる話ですからね」
そうからかわれ顔を真っ赤にし
「放っておいてください、僕が誰を好きになろうとも貴女達には関係の無い話しのはず?」
兵士達にまで笑われてますます不愉快な顔の剣斗
それを見て溜め息を吐き
「剣斗様、そんな事では敵に付け入られる隙になりますよ?」
呆れ声のユカに言われ落ち込んでしまった
「取り敢えず貴女達も私と風歌さん同様に命様の部屋で寝起きしていただきます、宜しいですね」
そう一同に宣言したが誰からも異論は無かったが言わせぬ迫力が有ったのも事実だ
上の空で馬車に乗り込む真琴を心配そうに見守る王妃
「ユウ、葵、碧、茜…真琴と現地に居る命を宜しくお願いしますね」
「貴女達にお委せしますからくれぐれも宜しくお願いしますね」
と観月と王妃が4人に頼んだ
「はい、あちらでユカと相談しながらお二人の為になるように致します
では…葵、碧、茜行きますよ、宜しくお願いします」
馭者を務める兵士にそう頼むと兵士は黙って頷き馬車を走らせるともう一台の馬車と二騎の騎士が馬を走らせ始めた
「真琴様…道中一泊し明日の昼過ぎには命様が居られる湯治場に着きますが宜しいですね?」
ユウの声を遠くに聞きながら私は頷いた
とにかくみこの事が気になって仕方無かったからだ
私はぼんやり過ごしながらみこが好きでよく歌ってあげていた泉の女神の唄を口ずさんでいた
心を落ち着かせたかったから
途中何度かの休憩を挟み今夜の宿が決まったのは日暮れ間近い時間になってからの事だった
一部屋にベッドが8台有る部屋を借り…
私とユカ三人の巫女達と如月様と騎士と准騎士がベッドで眠ることにし…
残りの兵士達が交替で見張りをしてくれるそうだ
途中かなりの食料を買い込み予定通りに昼過ぎに湯治場に着いた
私の見たみこは未だ熱が高く上気した顔焦点の定まらない目をしていた
それにもかかわらず私の顔を見た途端に起き上がろうともがきユカに叱られた
「お解りになりましたか?命様…
貴女は自分で起き上がれない位に身体が弱ってるんですよ?
少しで良いですから召し上がって頂きませんといつまでも元気になれませんよ?」
そう言われても弱々しい笑みを浮かべながら
「 真琴様と命様に申し上げます… これは私からの提案なのですが明日の朝、薬師の隠れ里の入り口に近くにある湯の街に向かいませんか?
歌姫様と舞姫様のお披露目に相応しい舞台であると思うのですが…
勿論、滞在費については費用に関しては陛下や観月様に甘えるわけではありませんからご安心ください」
ユウがそう言いユカも頷いて私達を見たので
「 みこの体調の方ももかなり良くなってきてますからねひとつの区切りとして…
今夜は、兵士の皆さんにお礼と感謝の気持ちを込めて歌と踊りと料理を楽しんで貰おう… と、そう思うのだけどユウさんとユカさんも手伝ってくれるよね?」
私は二人にそう聞いたのは勿論、手伝ってくれる事を前提の予定だから
「 ではその代わりに、真琴様は久し振りに如月様を構って差し上げて頂けますか?
最近すっかり悄気てますからね… 真琴様に相手にしてもらえなくて
いい年してとは思うのですがあの落ち込み用はさすがに不憫と申しますか… 正直に申し上げて見ていて鬱陶しいので何とかしていただきたい、と言うのが本音です」
そう言われて、忙しさにかまけて如月様の事をすっかり忘れていた自分に気付いたけど
「命様の事は私達にお任せいただいて、今宵真琴様は如月様に甘えていてくだされば良いのですからね」
ユウがそう言い、巫女達のクスクス笑う声が気になったけど素直になれない私は照れ隠しに
「 私が如月様を甘えさせてあげるんです 」
と強がってみせた
その夜私達は私と巫女達の作った料理 ( かなりのところをユカとユウに手伝って貰った ) で護衛の兵士達に感謝の気持ちを伝えたかったから
こんな何も無い所で、私達のお守りをさせられてる彼らに申し訳ないからだ
みこの踊りを観て貰い、私達の唄を聴いて頂きその後宴会を楽しんで頂いた
食事が始まると、ユカとユウは今夜の当番兵以外の兵と騎士様にお酒を勧めた
勿論、美人の二人から勧められるのを見て当番の兵士達が羨んだが運の問題だしユカに今日で最後ではないのだから今夜はお務め頑張って下さい 」
と、頼まれみこにもそう言われて嫌とは言える筈もなかったし
「その様にお気遣いいただいて光栄ですっ!」
と、言ってもらって面映ゆい私達
勿論その後私と如月様は二人きりになり初めて如月様にお酌して呑んでいただいた
時はゆっくりと流れ… 二人で寄り添い満点のま星空を眺めながら…
そうして私達の初めての宴の夜は静かに更けていった
今だけは全てを忘れて…
過去の痛みも悲しみもこれから襲ってくる恐怖と苦しみの全てを… 今夜だけは…せめて今この時だけは忘れさせて…
いよいよ圧縮を終えコンパクトに収まります