舞姫 作:匿名コメは手加減って悪口言われるの前提?
さて、と… この眼下に拡がる温泉宿の町が当分私達の踊りと唄の舞台になるのですね…
私はそう思いみこを見るとみこも同じ事を考えてたようで私に向かい微笑み掛けてくれた
「 まこちゃん… そー言えばお金どうするの? みこ達お金持って無いのに? 」
と、我が妹ながら何をそんな今更な事を
言ってるんだろうか…
相変わらずなみこだ… と、そう思って呆れて見ていると
「 お二人の唄と踊り次第ですが私達が交渉しますからお任せください 」
ユカとしてはみこを安心させるつもりだったのだろうけど逆効果だった
「 まこちゃんの唄なら… きっとお客様も喜ぶのだろうけどみこの踊りは… 」
顔を曇らせるみこに
「 命の踊りの素晴らしさなら僕達がよく知っているから大丈夫さ 」
残念ながら剣斗准騎士のその言葉は逆効果で、反って今にも泣き出しそうな顔のみこは
「 有り難う… やっぱり剣斗様は優しいんだね…
でもね、みこの踊りはこの国の人には評価低かったのは事実なんだよ? 」
その一言を理解出来る者はこの場には一人も居なかった… 勿論、私も含めてなんだけど
その事実を知っていたのは凍夜様と公女の二人 ( 私の知る限りでは
)だけだったからだ
「 貴女達に話すつもりだったのが… みこの失踪騒ぎで話すタイミングを逃しそのまま忘れ去られていた 」
後日、みこに会いに来た凍夜様から聞いた事なのでこの時の私達が知るはずの無い事だ
「 まこちゃんよりは遥かに劣るお姉さんでも… みこよりずっとお金貰ってたんだからね? でも、みこは… 」
そう言ったっきり口を開く事は無くなってしまった
こうなってしまうと誰の言葉も聞こうとはしなくなってしまうみこ…
そう、お母様の言葉すら心を開く事は出来ず
「お義父の声だけだったのよ、こんな命に呼び掛ける事の出来たのは…」
そうお母様がこぼしていたのを思い出した
( お祖父様… 何故かみこははっきり覚えている方…
私達の三歳の誕生日を前に亡くなった方なのに… )
やはりみこには謎が多い… と、改めて気付かざるを得なかった…
私達は火の粉の精の巫女、蛍の兄が推薦し紹介状を渡してくれた宿屋の前に着き降り立つところだった
女将らしき人が出迎えに現れ、ユカとユウが交渉を始めた
「 部屋は空いていますから一度お客様に見て頂いてから決めませんか? 」
それが女将の答えだった
私達は一旦控え室に通され、支度を整え出番を待つこと待つ事になり…
私達の紹介がなされ、先ずはみこの水の精霊の奉納の踊りと地の精霊への奉納の踊りと踊り私達と交代
私達は讃美歌を歌い客達の反応をし静かに待った
その静か過ぎる客達の反応に、みこの顔色は真っ青になりもう目も開けていられなくなりユカの胸に顔を埋めて震えている姿が舞台の袖に見えた
私達の唄が終わり静寂が訪れ私達の緊張はピークに達した…
既にこの時点でみこは泣いていたらしいが、一瞬の静寂の後客達の喝采で私達は我に返った
みこ以外は… で、みこは事態が全く飲み込めず再登場を望む客達の声が理解出来ずに居た
仕方無いから私がみこの手を引いて舞台の中央に引っ張り出さなければいつまでも袖に立ち尽くしていただろうみこの左の瞳は不安の色がありありと出ていたのだから
「 ま… まこちゃん… これ…… 」
私の背中にしがみつき、隠れるみこの身体は震えていた
微笑みながら花束を抱えた女将と如月様と剣斗准騎士…
そして、精霊の巫女達が舞台に上がり私達を祝福してくれた
「 舞姫様と歌姫様… そして巫女様達がこの舞台を選んでいただいた幸運をなんと喜べば良いのか解りません 」
そう言って客席を見ると
「 姫様達は暫く滞在して舞台に立って頂けるとの事ですから、皆様の又のお越しをお待ち致して居ります 」
そう言うと幕が降り始めた
舞台袖からユカとユウが私達を迎えに来て、この事態が全く信じられない出来事…と、いった表情のみこを連れて控え室に戻った
ユウが私の耳元にそっと囁いた
「 宿代がただの外にギャラも出るそうですが… まぁ、私達や兵士達の宿代もただにして貰いますから然程は出ませんけども命様もそれなら安心なさるでしょうね 」
そう教えてくれた
そして、何も知らない女将が何気無く言った一言がみこの顔をひきつらせた
「 宴会場に席を用意してますから皆様もお召し上がり下さい 」
と、言っただけなのだがみこにとってはそれは途方もない試練なのだ…
何故なら、みこはあの宴会場に居た人の数が多すぎるからだ
「 み… みこは… お腹… 空いてないから… 皆行ってきて………………… 」
そう言うのが精一杯のみこだったから仕方無しに私は事情を知らぬ人達に説明する事に
「 色々事情も有りますが対人恐怖症… 特に見知らぬ男性に対する拒否反応が酷い子なのです 」
溜め息を吐き
「 僕も初めて会ったときは側にも近寄れなかったと言うか逃げられちゃったくらいだからね… 」
剣斗准騎士の目が丸くなりみこを見たけどそれはそうだろう、剣斗が初めての王室のパーティー出席で緊張してたみこはすっかり忘れていたのだから…
パーティー会場に居るのが、みこにとっつぬこき知らない人ばかりなのだと言うことに全く気付いていなかったのだから私は苦笑いを浮かべその事も皆に話した
「 私が命様を見てますから皆さんはお食事に行って下さい 」
お腹も空いているし、口も渇いている私はそのユカの勧めに従い食事に行くことにしてライと蛍の二人も説得して連れていく事にした
お母様の居ない今、私でもああなってしまったみこを怯える恐怖から解放してあげることはできない
「 ユカさん… みこを頼みますね 」
私はそう言い残して控え室を出た
でも… みこは直ぐに連れてこなかったのは正解だった事を思い知ることになった
客席の人達は私達が宴会場に入った途端に、料理やら兵士達に酒やらを持ってやって来て勧めるのだ
明日の朝の当番兵も、過ぎなければ良いと言う正騎士の許しが出て彼らも楽しむ事に…
私は女将に当番の兵達の食事も頼んだが出来上がったそれは葵達が
「これは私達が持って行きますから真琴様は… 」
と、意味ありげにウインクされ如月様が赤くなっていたけど何で?
解らなかったのは私だけで、それ以外の人は皆解っていたらしいと言う状況が面白くなかった
それで剥れている私を見て如月様がちょっと笑ったのに気付き
「 何がおかしいんですかっ!? 」
私は声を荒げてしまったと思ったが
如月様は更に笑いだし
「 ゴメンゴメン… 僕の可愛いお姫様 」
そう言って私の額にそっと口付けをしたのだけど、その明らかに子供扱いしてるのが解りムッとする私
「 なんの真似ですか? 」
私は腹を立て再び如月様を問い詰めたけど、如月様は大人の余裕で優しい眼差しで私を見詰めている
その目で見詰められて、私は頬が熱くなるのを感じながら認めようとはせずに
「 明日からの舞台の事を相談しておくのを忘れていました 」
何とか話題を逸らそうとしたけど
「 既に女将とその辺りも決めてあるからご心配には及びません 」
そんな風にユウに笑いながら言われてしまった
「 明日の朝は取り敢えず、蛍の兄の炎君と薬師の一族の者と会うのだろ? 君と命ちゃんは? 」
確かにその通りなのだけど、その噛んで含めるようなその言い方は完全に子供扱いで私は完璧にむくれさせていた
周りの人達に笑われていることにも気付けずに…だ
ただ私は少しだけ冷静さを取り戻した心の片隅で考えた…
結局如月様にとって、私って一体どんな存在なんだろうかって…
最近私は不安で仕方無いのだ…
もし妹みたいだなんて言われたらどうしようって…
でもそれを聞く勇気は今の私には欠片すら持ち合わせてはいなかったのだけども…
こうして私達の北の街の初舞台の夜は更けて言った…
私とみこと、そして巫女達にとっての新し日々の始まりだ
早朝に私が目を覚ますといつから練習しているのか解らないみこが踊っていた
「 さぁ、みこ… 出掛ける前に汗を流しておきましょう 」
私はみこを連れて人気の無い温泉に向かった
勿論、私達のその動きに気付かないユカとユウ、風歌の3人ではなくユカと風歌の二人がついて来ることになった
勿論、残ったユウは出掛ける支度を準備して待っている
「 さぁ行きましょう 」
そうみこを促し黙って歩く私達
私達は余り大きくない露天風呂に入ることにした
みこの肌は目を閉じて触れればきめの細かいまるで疵ひとつ無い物に思えるのに目を開けると無数と思える程の傷痕がある
勿論、似たような傷痕は風歌の身体にも有ったが何とか綺麗にとはいかないまでもみこに比べたら目立たない程度には消えてくれたようだ
それを私もみこもとても喜んでいるけど本人はみこの痣を見ては自分を責めている
お互いに使命を果たし、生きて再会出来たことを喜び合う私達は何度も気にしてはいけない
と、そう言ったが堅物の彼女はそれを由としなかった…
だから今も、お湯が傷跡に染みて顔を苦痛に歪めるみこをまともに見ることが出来ずにいる
だけど、そんな風歌にみこは何度目かの同じ質問をした
「 風歌…未だ疵が痛むの? 」
心配顔で聞くみこに
( 命様、傷は貴女の方が深かったのですよ )
ユカの顔はそう言ってるが私は気付かない振りをした
風歌にこれ以上自分を責めて欲しくないからだ
そもそも考えなしに行動するみこがイケないのだからね
「 それでも 『 命様の騎士 』を名乗って居るのだからお守りするのが騎士の使命 」
そう言って私達の慰めにも全く耳を貸さない… それが今の風歌の状態なのだ
本当に… 主人 ( みこ ) が主人なら、それに付き従う従者 ( 風歌 ) も従者で本当に困った主従だ
私のそんな思いに、気付かない二人を見ながら私は色々なこと考えていた
「 みこ… 自分の事を要らない子だなんて思わないで…
風歌、余り自分を責めないで… そんな事をしてもみこは喜ばないよ? 」
言ってしまえばそんな事なんだろうけど、それを受け入れない二人なのだ…
私達が部屋に戻ると着ていく服などが用意されていて目を覚ました巫女達が待っていた
「 さぁ真琴様、命様、出掛ける支度を致しましょう
剣斗准騎士にも支度を終えて待たせてありますからお急ぎ下さい 」
私達はそう言って支度を急かされた
馬車一台に私、みこ、ユカ、蛍に如月様と護衛の兵士が3人が乗り…
馭者の風歌と自分の愛馬に跨がる准騎士剣斗の総勢10名が蛍の兄が薬師の一族と会う場所に向かうことにした
行きは何を思ったのか、愛馬に跨がり支度が終わるのを待つ剣斗の足元に黙って立つみこ
「 どうしたのですか? 命様… 早く馬車に乗って頂きませんと…
と、声を掛けるユウには見向きもせず剣斗に
「 乗せて 」
と、一言だけ言って剣斗を見詰めるみことそれを聞いて私とユカに許しを乞うような眼差しで
「 命はこう言ってるけど許されるのだろうか? 」
そう言って、私達の許しを乞うのを聞いたみこは
「 みこが剣斗様に 『 乗せて 』 ってお願いしてるのに何でユカとまこちゃんにそんなこと聞くの? 」
不機嫌そうにみこが言ったので溜め息を吐いたユカは私に同意を求め
「 命様をお願いしますね、剣斗准騎士様 」
とユカに言われて嬉しそうな顔で
「 私にお任せ下さい真琴様、ユカさん
さぁ命… 僕の手に 」
そう言って、左手を差し出す剣斗准騎士とその手を嬉しそうに取る命
そんな訳で准騎士剣斗と馬で移動する事になったと言っても馬に揺られて四半時といった距離では有るが…
馭者席の風歌の隣に座っている蛍の声を聞いて目を覚ました私は、いつの間にか如月様にもたれて眠ってしまってたらしい
寝起きでぼんやりする私は、眠い目を擦りながらその声に注意を向けた
「 炎ぁ~っ! 」
そう蛍は叫んでいた
暫くすると幌の架かっている荷馬車が止まっていてその前に一人の少年が立っていた
どうやら彼が蛍の兄の炎と言う人らしく、その炎の前で馬車と馬を止め私が代表して名乗ることにした
「 私は真琴… 司祭の里から来た真琴と言います、宜しくお願いします 」
と、手を差し出したが彼の目は剣斗の背中に隠れるように立つみこを見ていた
「 あの方が舞姫様? 」
「 そうだよ炎、あの方が私達の主人… 舞の女神様の依り代の命様
そしてこの方は、命様のお姉さんで歌の女神様の依り代… 歌姫の真琴様だよ 」
私が答えるより先に蛍が答えた
「 妹の蛍がお世話になって居るようで感謝しますが、がさつな奴ですからご迷惑になってませんか? 」
顔色を変えた蛍が何かを言うより先に
「 蛍もライも優しい人だよっ!
嫌われ者のみこにだって、ちゃんと優しい言葉を掛けてくれるんだからねっ! 」
その一言には、さすがのユカや剣斗もみこを慌てて見たがそれ以外の人達は誰一人としてマトモに信じはしなかった
私だって今にして思えば… と気付いた事を他国の
ましてや事実を知らぬ人達には理解しろと言うのが無理な話ではあるのだけど…
「 来たようです 」
「 行ってしまわれましたね、命様… 」
その声で我に返った私とユカは、炎を見送りいつまでもみこ逹の去った方を見ている蛍と剣斗准騎士を馬車に乗るように促した
( 凄い… 初めて見る薬草が一杯有る… )
風歌に背負われながら、あちこちを見るみこの目には初めて見るものばかりで興奮しっぱなしだった
やがて、里の入り口で立ち止まる三人の前に現れた門の前に立つ門番
「 長に舞姫様が面会希望だと伝えて欲しい 」
男は門番にそう告げると
門番は頷き門の中にその旨を伝えた
暫くすると長い白髪と白く長い髭を蓄えた男が現れてみこを見た
「 貴女が舞姫か… 成る程咲夜姫の幼い頃にそっくりだ…名は何と申すのだ 」
頻りに瞬きを繰返しながら
「みこの名は命様じゃなくて命だよおじさん 」
相手の瞳を真っ直ぐ見ながらみこはそう言って
「 おじさんがパパの言ってた凄い薬師様なの?
今の里長は私など足元にも及ばぬ天才薬師だって言ってた」
みこのその言葉に笑いながら
「 私は天才薬師では… この里の長ではないが取り敢えず長は貴女に会うための支度をして居るからもらもう少しだけ待ちなさい 」
不思議そうに小首を傾げながら
「 貴方はみこのせいで死んだお祖父様を思い出すような、とても聡明な方に見えたからてっきり長様だと思ったのだけど…」
男は穏やかな笑みを浮かべ
「 ワシなどは未々色々学ぶべき事ばかりの愚者ですよ」
そう言うと
「 凄い… みこなんか興味の無い事はちっとも覚えようとしない… ってよく叱られてるのに… 」
と目を丸くして言うと
「 で… 命ちゃんの興味の有る事は何かね? 」
そう聞かれたみこは
「 踊りと薬草と薬の研究だよっ♪ 里に居た時にはパパに色んな事を教えて貰ってたんだよ… 」
急にみこの声のトーンが落ち、それきり黙り込んでしまった
「 入ります 」
と、穏やかな女性の声がして戸が開くと中に入ってきた女性の顔を見たみこは
「 あっ… 何故貴方がここに? 確か、薬師の一族の方もごく一部の人以外は外に出れない… って聞いてたのに…」
そう聞くともなく呟いたみこに
「 貴女は私の妹にも会っているのですね? あの子は元気にしてましたか? 」
事態についていけないみこは
「 妹… あの子? 」
首を捻るみこに長は穏やかな笑みを浮かべ
「 私に妹が居てはいけませんか? それにいくつになっても私にとり妹は妹なのですからきっと貴女のお姉さんも同じだと思いますよ? 」
「…………………そう… なのかな? みこには解らない… 常に 『 死ね死ねっ! 』 と言われている視線で見られてきたみこには大人になるまで生きられるとは思えなかったし…大人になった自分の姿なんか想像もつかない )
私の大人になってもみこと一緒に居たいと言う私の願いも知らずにみこはそんな事をずっと考えていたらしい
「 大丈夫だよ… 優しい人だったよ、一度会った事が有るだけなんだけどお腹痛いみこにとっても優しくしてくれたから 」
それを聞いた風歌が顔を青ざめさせ
「 一体あの日何があったのですか? 」
小首を傾げてみこは
「 あの日って? 」
と聞いたものだから風歌は声を荒げて
「 命様がお城を抜け出したあの日の夜の事ですっ! 」
そう叫ぶと
「 あの日? あの日はん~と確か… 公園で踊ってたらお腹を蹴られて… 痛い痛いってお腹抱えてたら凍夜様が知り合いのお姉さん達二人と春蘭さんって人のお家に連れて行って貰ったの 」
記憶を手繰りながら答えたみこ
「 お腹を蹴られた? 何故凍様が側に居ながらそんな事をさせたのですか? 」
風歌の声は震えていた
「 ん~と確かご用が有るから暫く一人になるが大丈夫かってどっか行って居なかったから仕方無いよ 」
まるっきり他人事の様にいうみこに
「 だから私もお供させてくださいとお願いしたのです 」
と怒る風歌に
「 運が悪かっただけだよぉ~っ 」
と首を横に振りアッケラカンと言って風歌を脱力させた
「 ではそこが長様の妹さんの家? 」
と言われたみこは
「 うん、長様そっくりな方がいて春蘭って言うお姉さんが母さんって呼んでたし凍夜様は王都で一番薬や薬草に詳しい人ってゆってたよ? 」
「 春蘭… 確かに妹の娘の名 」
と呟く長に風歌は呟いた
「 春蘭… 確か、前市長のお嬢様の名前が春蘭と言った筈? 」
と…
「あ…そー言えば凍夜様がそんな事言ってたよこちら前市長夫人だってねっ♪あははっ!すっかり忘れてたよ」
と笑うみこに
「笑い事では有りませんよ…」
と言って深い溜め息を吐く風歌だった
「命様、今日こちらにお邪魔した理由を長様に話さなくて良いのですか?」
何とか気持ちを切り替えた風歌がみこにそう話し掛けると思い出したみこは
「長様にお願いしたのいですけどここに来る途中に生えてた薬草の研究したいけど良い?」
その意外な申し出に
「舞姫の貴女が薬草の研究を?経験は有りますか?」
そうみこに聞いたが言われたみこは鞄の中のから巾着袋を出してそのまま長に渡して
「これがみこの研究の成果だよ…痛み止の薬」
巾着袋から薬を取り出すと匂いを嗅ぎ
「貴女の作った物…何と無く司祭の里の薬師らしくないとは感じてましたが…
成る程、これで合点がいきました
わかりました…私達もお手伝い致しますから何でも仰ってくださいね」
里の滞在について長の了解を得たみこ
こうしてみこの薬師の里の滞在は許される事になった
そのお陰で私は私で二人の精霊の巫女達に豊作祈願の躍りを教えることになったのだけど…
でも仕方無いよ…里を出てから私は一度も見てないみこの笑顔を取り戻させたったのだから…
みこが本当に好きな薬草に触れられたらきっと…
お父様もみこの才能と言うか薬草に対する感覚とでも言うのか?それを非常に高くかっていた
その指導ぶりは父のそれではなく完全に師のそれになっていてとても厳しいものだったけどみこは歯を食い縛りついていった
私が言われた事の無い様なきつい叱責を受けるのも一度や二度じゃ無かったけど踊りの稽古を疎かにする事なく薬の研究に勤しんでいたみこ
そんな二人の姿に私やお母様がちょっぴり妬き持ちを妬くほどでお洒落に全く興味を示さないみこは諦め私をモデルに服やアクセサリー作り楽しんでいたのだ
お父様にだけ見せていたみこの笑顔
勿論私にだけ見せてくれる笑顔、お母様にだけ見せていた笑顔も有る
でも…里を出て以来本当の笑顔を見せなくなってしまっていたみこ
それを薬師の里で薬師達との触れ合いや薬草を扱えば或いは…
元気を取り戻したら私にもいつか私だけの笑顔を又見せてくれるかも知れない
そう期待したから私はみこを送り出す事にしたのだ
昼間は歌と踊りの稽古
巫女達はそれぞれに歌と踊りの稽古とそれぞれにデザインや行儀見習いに費やし…
夜は舞台で歌や踊りを披露するそんな暮らしがしばらく続いた
みこはみこで昼は山を駆け巡り薬草を集め夕方に踊りを披露して夜中は薬の研究に勤しむ日々を楽しんだ
「命様ぁ~っ!」
みこと一緒に薬草探しをする少女がみこを呼んだ
が薬草探しに夢中のみこからの返事は無い
「もう、命様っ!」
もう一度…今度は更に大きな声でみこの名を呼んでみた
今度は流石に気付いたみこがさも面倒臭そうに返事した
「美輝ぃ~っ!呼んだぁ~っ!?」
その声に気付いた風歌がみこを迎えに走った
「命様、そろそろお食事にしましょう
少しで良いからちゃんと食べる約束でお連れしてるんですよ?約束は守って下さいね」
そう言われてみこは面倒臭そうな顔を隠そうともせずに
「そうだったね…仕方無い…そう約束したし美輝に余り心配掛けさせても可哀想だからね」
そう言うと風歌と共に心配顔の美輝と呼ばれる少女の元に向かった
美輝と呼ばれる少女は死んだ前の長…
今の長の兄の娘で兄と兄嫁が相次いで不慮の死を遂げた為長が引き取って育ている子で…
里の周りの地理に明るくないみこの案内役を買って出た娘だ
人懐っこい子で人見知りするみこが珍しく然程時間を掛けずに親しくなれた子でもある
「あのね美輝…命様は止めてってお願いしてるよ?
みこそんな偉い人じゃないし今は里の皆にお世話になってるんだからね?」
と懇願するみこに
「では私も皆のように舞姫様とお呼びしましょうか?」
みこが舞姫と呼ばれるのを余り好まないのを知っていて敢えて言ったのだがそう言われて嫌な顔をして
「みこお姫様じゃないし…」
と言ったが
「確かに命様は王家のお姫様では有りません
ですが司祭の里で認められた舞姫であり女神様の依り代たる命様は何処の王家のお姫様よりも貴きお方なのだと聞いてます」
そう美輝に言われ風歌に
「そうなの?」
と聞いたが風歌は穏やかな笑みを浮かべ頷くだけだった
「そんなものなのかなぁ~っ?」
不思議そうに呟くみこに
「そう言うものですっ!
逆に私達には何故命様ご自身がそれをご理解できないのかが不思議でなりません」
と言って首を傾げたが無理の無い話だろう
ずーっと側に居た筈の私だって気付いてあげられなかった事をみこの生い立ちを知らぬ人達に理解しろと言うのが無理な話しなんだからね…
そう言って薬麦と呼ばれる薬師の里近辺でのみ栽培されている独特の麦を使ったパンを切り分けて貰うと三人で仲良く昼食の時間にする事にした
みこと美輝はぱんと干した木の実を…風歌はパンと干した肉をそれぞれ用意して貰っておりそれらをそれぞれに食べた
厳しい日差しが照りつける日向を避けてのんびり過ごす三人
普通なら未だお昼にはまだ程遠い時間だが朝早くから薬草取りをする三人は暑くなる前に昼寝をする為に食事を早目に済ませるのだ
勿論騎士の風歌はいくら朝が早いとはいえ昼寝の必要は無く眠る二人の護衛をすると言うかその為にこそ二人についてきているのだが…
そんなみこの目によって色鮮やかな草の実が見付けられた
人の目に付きにくく直ぐに獣逹に食い尽くされるその実は薬師逹にすらも幻の草の実と言われている物だった
もっともみこは薬草以外の事は余り詳しくないし…
風歌は余り関心の有る事っはなかった
しかし美輝が目を輝かせてているのを見てじゃあ採ろうかと言う事になったのだ
小さな鞄に一杯になった時にはもう余り残って無かったので後は獣逹に残して置こうと言う事になった
「美輝、今日はこれで帰ろう」
みこがそう声を掛けた
「そうですね、この草の実は早めに持ち帰った方が良いのでしょう?大丈夫です命様は私が抱いて連れ帰るから心配いりません」
そう二人に言ってもらい美輝は嬉々として里に戻った
勿論喜んだのは里の子供逹も同じで皆の今日のおやつになる事となった
みこが里に戻って昼寝する事になり午後の一時がぽっかり空いた風歌は長に誘われてお茶を一緒に呑むことになった
その席で長は司祭の里や大公領の悪い噂についての話をした
しかし命達ですら魔王が復活したらしい事と二人の母親が命の代わりに生け贄にされたらしいとしか解ってない状況では真相を知る事は難しそうだった
何しろもうあの島に近付く事は誰にも出来ないのだから…
その夜の踊りの最中みこの身体に異変が起こった
みこの身体が突然光だしその優しい光に包まれたのだ
光に包まれ踊るみこは神々しく見え長が
「遂に舞の女神の依り代として真の力に目覚め始めたようです」
誰に言うともなく話す長
「命様は舞姫としてその真の使命を果たすべき時を迎えたのかもしれません…」
「ですが…」
風歌は辛そうに
「それは命様が試練の時を迎えたのだとも言えるのでは有りませんか?」
「しっかりお助けしなさい…私にはそうとしか言えませんが…
命様が差し支え無ければ美輝をお供に連れて行っていただこうと思います」
奉納の踊りを終えたみこがそれを聞き美輝に抱き付き
「美輝、一緒に来てくれるの?」
そう言われた美輝も嬉しそうに
「叔母様、私…命様についていって良いんですか!?」
長に聞くと
「舞姫様はついて来て欲しいと思ってますよ?だから後は貴女自身どうしたいのかをハッキリしなさい」
そう言われた美輝はみこを見て
「私…命様についていって良いの?口煩い私が…」
涙を流す美輝に
「一緒に来てっ!美輝が好きだからっ!
口煩いけどそんな美輝も好きだから…
美輝が口煩いのはまこちゃんや風歌とおんなしでみこが好きでみこをちゃんと見てくれてるからなんだよね?
だから一緒にきて…みこの数少ない大切な人になって…」
そう言って美輝に抱き付くみこ
そしていつしか泣きながら抱き合う二人
その二人を見て貰い泣きする里の人達
みこの薬師の里で過ごす最後の夜は静かに更けていった
いよいよ明日の朝みこは私達の元に帰ってくる…
何日かぶりのみこは私に笑顔を見せてくれるのかな?
私は期待と不安を胸になかなか寝付けずにいた…
だからそんな私に気付いたユウがお茶をいれて持ってきてくれた
「いよいよ明日なんですね」
私が寝付けない理由は解ってるから敢えてその事には直接触れないユウの気遣いが有り難かった
険しい山肌の道なき道を下って来る二つの影
小さな影がみこでその素早さはすっかり傷が癒えたことが解る
みこの笑顔が見え始め最後の大岩の上から私の方にフワッと翔んだ
そうフワッとゆー表現に相応しく私に抱き付いてきたみこは体重を全く感じ無いほどに軽かった
その驚いてる私のすぐ側に静かに降り立つ風歌が抱いていた見知らぬ子を私の前に下ろすと
「まこちゃん、みこのお友達の美輝
美輝、みこのお姉ちゃんのまこちゃんとお兄ちゃんの如月様だよ
まこちゃん、美輝はしっかり者でちゃんとみこの事叱ってくれる人だからこれからはお兄ちゃんの事もっと構ってあげてね」
そう言われて顔を赤くする私と如月様を見てクスクス笑う巫女様達
「それはまぁ、確かにみこと美輝の二人を見ていればどちらがお姉さんか解りませんからまこ様は二人のお姉さんになったつもりでみこの世話をする美輝を見守れば良いと思いますよ?」
そう言って貴女達も居ますしね…そう言ってる視線を受けたユカも静かに頷いてた
「それから精霊の巫女様のりん様、蛍様、ライ様
歌の女神様の巫女様達で碧様、葵様、茜様だよ…そんでね」
そう言ってユカを見て
「みこ達の一番おっきいお姉ちゃんのユカとユウ…はお留守番?
その二人のお姉ちゃん達の影の支配者の観月様ってとってもおっかない人もいてお兄ちゃんなんか観月様には頭上がらないんだよ?」
その発言にはさすがの一同も…如月様以外は大爆笑で
「みこちゃん…」
と情けない声を出す如月様に
「みこで良いんだよ?それともまこちゃんは好きだけどみこのお兄ちゃんになるのはイヤ?
みこみたくおバカな子はキライ?」
その悲しそうな顔をするみこに如月様は優しい笑顔で
「そんな事ないよ、みこは皆の可愛い妹さ、十四夜兄さんや十六夜だってそうおもってる
まぁさすがに伯父上や伯母上が妹と言うのは苦しいけど娘の様に可愛いと思ってるはず」
そう言われてしきりに目をしばたかせるみこは悲しそうに…
「そんな筈無いよ…みこは呪われた子なんだよ?もし依り代としての使命を蔑ろにするようなみこだったらとっくに生きるのを諦めてる
でも…みこにはお祖父様との約束があるから…最後まで諦めないで使命を全うするって…宿命に殉じて生きるって
だからごめんなさい…これからも皆に一杯迷惑掛ける…もう皆をみこの宿命に巻き込んじゃったのだからみこには謝るしかできない…」
みこは泣きながら何度も何度も謝ってた
地面に額を擦り付け辛そうに泣きながら…
いつもはボーッとしてて感情の起伏の乏しいみこが時々こうして発作のように自分を責め死にたいと口にする
だから私は風歌に向かい
「宿に戻りましょう、余り遅いとユウさんが心配しますから…
風歌がみこを抱いて馬車に乗ってください
騎士の貴女には遺憾でしょうがみこが安心するようにしっかり抱き締めてあげてください
私は如月様の後ろにのせて貰いますから皆さんはみこの事お願いしますね」
そう言って私達は宿に戻ることにした
宿に着く頃には落ち着いた寝息をたてるみこを布団に寝かせ風歌と美輝に任せて私達は各々の日課のお稽古をすることにした
その夜みこが久し振りに舞台に立ち顔をひきつらせながらではあるけど舞台がはねた後の客席での食事会に参加する事にした
それもみこ自身が
「そうした方が良いしそうすべきだから慣れる…」
そう言ってくれたからだ
苦手な事でも舞姫であり女神の依り代としての責務と考えてるみたい
幸い今夜の客層は平均年齢が高くみこを驚かせる人は居らず幸先の良いスタートになった
日に日に観客達との距離をちぢめるみこ、そして互いの距離を縮める私と如月様
ユカとユウの計らいで閨を共にする私達が結ばれるのに時間は必要なかった…
私の短い一生のなかで唯一の至福の一時だった
そして至福の時も終わりを告げる時が来た
国交の途絶えていた月影の国から一方的に宣戦布告がなされ王宮が混乱していると女神様を通じてユイさんから報せを受けた私達
事情を話し事態が落ち着いたら再び訪れる事を約束して立ち去った私達だけど恐らくこの約束が果たされない予感
勿論そんな事はおくびにも出さず笑顔で別れを告げたけど走り出した馬車の中の私達は暫くはだれ一人として口を開く者は無かった
王宮に戻った私達は月影の国から話し合いの交渉に応じる気配がないとの芳しくない結果を聞かされ
「みこが行く、月影の国の女王陛下の御前で奉納の踊りを舞ったみこはあの御方と面識が有るからみこが使者に立つ
風歌一緒に行ってくれるよね?」
みこのその言葉に
「当然私も同行します」
とみこに向かって発言したらみこは悲しそうな顔をして
「それはダメ、王妃様や観月様も気付いてるよね?まこちゃんの身体の事…」
みこがそう言うとやはりと言った表情で頷き
「お兄ちゃんおめでとう、性別は未だ解らないけど二人はパパとママになるんだよ
だからまこちゃん守ってあげて…巫女様達も二人をお願いします」
その言葉にさすがの巫女様達も気色ばんだけどただ一人りんだけは悲しい顔をしてみこを見ていた
未刊ですが悲しい未来しかないためここで一旦終了となりますがこちらを読まれたのでしたら逆行世界の闇と影もよろしくお願いいたしますm(._.)m