一応色んな人と絡ませてく予定。
主人公がアイドルになるかどうかは不明。
Prologue
────桜舞う季節、春。
卒業や退社など今までの生活から一線引く季節であり、慣れ親しんだ友人との別れに涙を流す季節。
入学や入社など新しい生活が始まる季節であり、全く縁の無かった人達との出会いに歓喜する季節。
それは日本全国共通で、地方から都市へ、都市から地方へといったふうに人々は移り住む。特に都市近辺へと移り住む人は多い。
進学するから、会社で配属されたのがそこだから、それぞれに理由があり目的がある。
中でもやはり目立つのは学生ではないだろうか。東京は日本の首都であり、海外からの情報や各学会の重鎮も多数いるのではないかと思う。勉学を励みたい者がそれぞれの分野においての最先端を学びたいと思うのは当然であり、
東京ではなくとも首都圏には一流、二流の国立大学が数多くあるため、都市部へと移る若者は多い。
勉強面以外でも、親の転勤による転校、スポーツによる推薦入学
その
最近では東北での震災の影響もあり、そういった理由の移住者が多いのではないかと思う。
地元の広島でも自然災害があった為に、そちらの方を優先して考えてしまうが、ボランティア活動を無償でしてくれる人は本当にいい人たちだと思う。
だからこそだろうか、見た目が厳ついからとか、髪を染めていているから、と言った
髪を染めているからどうしたのだろうか?
耳に穴を開けているから何だって言うのだろうか?
彼らは確かに今までに悪い事をしてきたのかも知れない。
だからと言って良い行いが出来ない訳では無い。
自分を加護する訳では無いが、不良のようになってしまった人間よりも、そうでない人間の方がえげつないことをしていると思う。
それらの違いは
尤も、私が子供だからこそ思っているのかもしれない。
でも、経験上では、常に周りのゴキゲンを伺い汚いことをする奴らよりも、仲間意識の強い不良達の方がよっぽど好きになれる。
────まあ、自分も不良と呼ばれてるからなのかもしれないけど
話は逸れてしまったが、この春に私も東京へと移り住む事になった。
父を早くに亡くしていた我家は母が長年の間、私を一人で育て上げてくれていたのだが、その母がこの春に病で倒れ、この世を去ってしまった。
その影響で東京に住む大して仲が良いわけでもない親戚に親権が移り、急遽私も東京で住むことになったのだ。親のいない子どもなんてのは煙たがられるのも無理はないのかもしれないのだから文句は無い。
ただ、東京には住むことになったのだがその親戚とは別々に住んでいる。何かあった時のために近くに、という理由で産まれて十六年間寄り添ってきた友や、仲良くなった友人と別れることになってしまった。
幸いにも母の影響で音楽関連に長けていた私は、今までの功績もあり高校にも資金的にもあまり困ることは無かった。
それでもやはり悲しいものは悲しいので、ここ最近は布団にもぐる度に涙が止まらない。
大好きだった母との死別に友との別れ。母とは違い友達とは永遠の別れという訳では無いのだが、広島と東京では少々距離がある。
まあそれでも母の墓参りの為に月一回は必ず地元に帰るつもりなのだが。
そんな訳で、少なからずも新しい生活に期待を抱いていたのだが、現状困った状況に陥っていた────
◆ ◆ ◆
「で?何だって?」
「いえ、アイドルに興味はありませんか、と」
今どきの若者らしく髪を染めていた小麦色の肌をした少女は、ガタイの良い男に話しかけられていた。
ただ、少女の方は染めている色が金であり、目立つピアスなんかも付けていたりするため
「私がアイドルに?無いよ。これっぽっちも」
そんな少女は手にしていた地図らしきものを折りたたみ、面ではなく薄っぺらい厚みを見せながら言い放った。
そんな言の葉に、ガタイの良い男は首に手を当てながら顔をしかめた、ような気がする。
「そう、ですか。ではうちの事務所に見学だけでも来ませんか」
興味が無いものに見学をしないか、とはなかなか酷なことを言う。
今度は少女が面倒くさそうに顔を歪めた。そんな気がするだけではなくて確実に。
「いや、遠慮しとくよ。悪いけどアイドルとかそんな気分じゃないんだ。そっちもやる気がないやついても迷惑なだけでしょ?」
それに、と口を開きかけた時だった。
ガタイが良く顔が厳つい男がまだ若い女性にからんでいたからか、ドラマでよく見るような格好をした男から声をかけられた────君達何している?────と。
別にやましいことをしているわけでもないし訳が分からなかったのだが、ガタイの良い男の方を見ると、何やら焦っているようだった。その時に初めて顔を良く見たのだが少女はそれで察した。
「別に、ただこの人に道を聞いてただけだよ。文句ある?」
後から来た男に手にしていた地図を掲げて少々強めに言うと、たじろぎながらも小声で「ガキが」と呟き去って行った。
「まったく迷惑な話だよ。何かあったらこっちから声あげるっつーの」
「すいません、ありがとうございます」
「あんたも気を付けなよ。良い身体してんだし顔だって彫りが深いんだから、私みたいなガキに声かけてちゃいつか捕まるよ」
いつか捕まる、というのに再度首に手を当て、今度は確かに顔をしかめた。
「え?何?もしかしてもう捕まったことあんの?」
「…お恥ずかしながら」
その身体の大きさに似合わず、小声で話す男に少女は思わず吹き出してしまった。
「あはは!あんた面白いね。いいよ、うん。アイドルに、ってのは無理だろうけど見学ぐらいだったら行ってあげる」
それに、と先程言いそびれた続きに付け足しを加えながら最初に貰った名刺に目を落とし口にした。
「私も346プロってとこに用があったんだ。どうせ同じとこに行くんだからその時にでも顔を出させてもらうよ」
「346プロに用、ですか?」
「そうそう。私、東京出てきたばっかでさ、こっちに親戚がいるんだけどお呼びがかかってたわけ。その人が346プロにいるんだ」
「はぁ」
男の方は良くわかっていない様子だったが、荷物をまとめ、立ち上がりながらも気にせず少女は続けた。
「まあ、そういうわけだからその時は宜しくね、えーっと、武内さん」
最後に目に掛けていたサングラスを外し、正面から男──武内を見上げて口を開いた。
「私の名前は桜。美城桜」
そういった少女──桜は悪戯な笑みを浮かべると、再度サングラスをかけその場から去り、後に残された武内は聞きなれた苗字と芸能界でプロデューサーなんてものをしていると必ずと言っていいほど耳にした事があるであろう
────とんでもない人に声をかけてしまった、と。