ただ、名前は個人の好みもあるため決めるつもりは無いです。
アイドル達も同様で、学年等明らかになっていない部分は独自設定となります。
「美嘉ちゃーん!おはよー!この間のライブ最高だったよー!」
「うん、ありがとー☆」
年度が変わり、新学期新学年が始まる日である今日は普段アイドルの仕事によってなかなか通えない学校に初日ぐらいは、という理由で事務所に許可を貰い、春の訪れを祝うかのように満開に咲いた桜並木の先にある学校へと足を運んでいた。
久しぶりの校舎に、辺りを見回しながらクラスを確認しに行き、自分の名前を見つけるとそのクラスへと足を向ける。
ふと頬を撫でた風が暖かく、良いことが起きる気がして、城ヶ崎美嘉は心を躍らせながら高校生活三年目の第一歩を歩み進めた。
◆ ◆ ◆
「やっべ、寝過ごした」
現在、時刻は8時55分。
都内某所にあるマンションの一室、そこに桜は住んでいた。そのマンションから転入先の高校まで歩いて約20分。走れば大体10分ぐらいはかかる。急いで支度してプラスの10分。いや、もうちょっとかかるかもしれないから盛って計25分。現時刻と足せば9時20分。完全に遅刻である。
────そもそも既に遅刻しているというのはご愛敬だ。
「あー、怒られるかなー」
取り敢えず布団から飛び出して諸々の支度に取り掛かった。
元の原因と言えば環境の変化に慣れていないのである。
桜は母の血を強く受け継いでおり、容姿や性格、趣味までもそっくりさんになっていたのだが、体が弱いという点も引き継いでいた。
それに加え地方のド田舎で不良紛いの事をしていた少女が、人、人、人、とにかく人で溢れかえっている地に投げ出されれば────
「うぇっ。ま゙だぎも゙ぢわ゙り゙ぃ゙」
こうなるわけである。
普段陸にいる人間が船に乗り海に出れば船酔いとなり、逆に普段船に乗っている人が陸に上がれば陸酔いとなる。
ならば今回の場合は差し詰め“人酔い”と言ったところだろうか。
その後も桜は何度か奇声を上げ、ようやく支度がすむと等身大の鏡の前に立ち上から下まで確認し、両手で頬を叩いて自身に活を入れた。
「よし、程よく頑張ろう」
────鏡の上にある時計を見れば9時30分を回っていた。
家を出て人の波に呑まれつつ、学校に着く頃には二限目が終わる時刻となっていた。今日は初日のため午前だけで終わるので、もういっそ行かなくてもいいんじゃないかとか考えながら門をくぐると、そこには教師であろう人と、上京して一度挨拶に行った人物がいた。
「げっ」
桜は思わず体を反転させて来た道を引き返す。
「おい」
だが、あちらにも見つかってしまったようで声をかけられた。
このまま逃げ出すことは出来るだろうが、そんなことをしてしまえば余計に面倒な事になってしまう。
「な、何でしょうか?」
「初日から遅刻とはいいご身分ではないか桜。おかけで私はここに呼び出されてしまった」
「え、えっと、何のことかさっぱ────いでっ」
とぼけようとした桜の前まで来た彼女──
それを見たもう一人の女性が後ろで目を丸くしている。
「私は時間にルーズな奴が嫌いだ」
「うっ。…ごめん」
一度しか顔を合わせたことのない人だが、その一度で彼女の人柄は大体に理解出来ているつもりである。
故に、言葉とは裏腹に桜の事を心配していたのだということも理解出来てしまっていた。
彼女はこれまでニューヨークへと渡っていたのだが、桜の父──彼女の
「────だが無事で良かった」
桜が感じていたことは確かのものであったようで、叔母に抱きしめられた。
普段の
「お、叔母さん?」
「あまり心配をかけないでくれないか。私にも仕事というものがある」
「…うん」
こうして美城常務は桜によってアラフォー目前にして立派なツンデレへと育て上げられるのだが、それはまた別の話────では無くこれが本筋の話だったりする。
◆ ◆ ◆
「寝坊してしまって遅れちゃいました。すいません」
桜が来たことで、美城常務は抜けてきた仕事へと戻っていった。
その場に残ったのは桜と、桜のクラスの担任となる女性教師だけである。
「いえ、お体のこともありますし、あまり無理はしないで下さいね」
でも以後は気を付けるように、と注意をした後に桜についてくるように言った。
かなりの遅生まれである桜は東京についてから歳を一つとり十七歳となったため、今年は高校三年生となる。
三年生のクラスは四階。一年生二階で二年生が三階、一階は主に食堂や職員室等、全学年が共通して使う部屋ばかりだ。
四階、辛いよ。
「もうすぐ休憩時間に入りますから、その時にクラスメイトの皆さんに挨拶しましょう」
そう言って通されたのは職員室に備え付けられている給湯室。
そこで桜の所属することとなる組、転校手続きの際に記入した個人情報の確認、一人暮らしをしている事も説明し自らの携帯電話の番号と叔母の携帯電話、固定電話の両方の番号を知らせておいた。
それと桜が
担任の先生は概ね理解してくれたようで、フォロー等も任せてくれとまで言ってくれた。どうやら担任には恵まれたようだ。
その後はプライベートな話に花を咲かせ、時間が来るまで会話をはずませた。
趣味だとか、桜が以前住んでいた広島について、この学校についてや学校近辺の店やレジャー施設、先生の地元のことに家族構成などなど。その間に堅苦しかった話し方も砕け、まるで昔からの知り合いのように仲良くなっていった。
ただ、女が複数人集まれば話は自然と
「先生は彼氏とかいないの?」
とな。
因みに桜は
「うーん。教師やってたらなかなかね」
「えー、勿体ないね。先生可愛いのに」
「可愛いって、ねぇ。本当にそうだったら苦労しないのよ」
「それは男の見る目が無いだけだよ。私だったらほっとかないなー」
詰まるところ周りにいる全員が恋愛対象になり得るために無意識に口説きにかかっていることもある、という事だ。
「そう?なら美城さんにお相手をお願いしちゃおうかな」
だからむやみやたらにこう言ったセリフを言ってしまえば桜は迷わず喰いにかかる。
「ほんと?私でいいなら立候補しちゃうよ」
────ね、先生?
「あ、あはは。冗談よ、冗談」
「あら残念」
テーブルを挟んで対面に座っていたにも関わらず、ずいっと顔を近づけ耳元で
その様子を見てからかわれたのだと思い更に顔を赤くするが、再度口を開かれ発せられた