仮面ライダードラゴンナイトStrikerS   作:龍牙

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第四話『悲しみの瞳』

この世界での住民登録の手続きと、相手に問題があった為に不問にされた強盗事件の事情聴取が終わった後、食堂に案内され遅めの夕食を食べた後、仮眠室に案内された統夜は天井を見上げながら考え込んでいた。

 

「記憶にないよな…やっぱり。」

 

一通り考えた後、そう呟く。

 

10年も前の忘れていた記憶の断片をひっくり返しても、精々が彼女達がクラスメイトで有ったという程度の記憶だけ。それも、顔を知っていると言う程度の関係だったのだから、統夜が『忘れていた』と言った時に浮かべたフェイトの悲しげな表情の理由には絶対に結びつかないだろう。

 

「ったく。…なんだって言うんだよ…。」

 

何も思い出せない苛立ちからそう呟き、さっさと寝てしまうことに決める統夜だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝

 

「ん~…久しぶりに廃墟の床以外の所で寝たから、よく眠れたな~。ああ、暫く衣・食・住に困らないで生活できる。」

 

目を覚ました統夜は伸びをしながら妙な感動を感じつつ、色と細部こそ違うが共に龍の顔を象った紋章の刻まれた二つのカードデッキ…ドラゴンナイトとオニキスのデッキをポケットの中から取り出し、それぞれ別の場所に仕舞い直す。

 

(…オニキスのデッキのことは暫く伏せといた方が良いな。)

 

彼女達を信じていない訳ではないが、それでも警戒しておいた方が良いだろうと言う判断の元での行動である。存在を知られない限り、オニキスのデッキの存在はいい手札(カード)になる。そんな作業を終えてふと時計を見るとそろそろ十時になろうとしていた。

 

(…寝すぎたな…結構疲れてたんだな…。)

 

時間を見てそんな感想を持ってしまう。思えば、ゼイビアックスの変身したアビスと戦ってからアビスを追ってこの世界に渡り、この世界に来てから連戦に次ぐ連戦だったのだから、そう思ってしまうのにも無理は無いだろう。

 

「統夜さ~ん、いい加減に起きてくださいです~!」

 

そこに扉が開いて“小さな”人形の様な女の子がいた。

 

「………。まだ、疲れてるのか、それとも、まだ寝てるのか? 妖精の幻覚が見えるなんて…。」

 

思わず直視しつつそんな事を呟いてしまう。

 

「むむぅ~! リインは幻覚でも妖精でもありません!!!」

 

この『リイン』と名乗った少女から話を聞くとこの少女は『リインフォースⅡ(ツヴァイ)』と言ってはやてのユニゾンデバイスで有り、中々起きてこない統夜をはやてに頼まれて呼びに来たようだ。

 

「…何でも有りだな、この世界。」

 

思わずそう呟いてしまう統夜だが、相手にしてみればその言葉はそのまま返したくなる事だろう。

 

さて、リインから詳しい話を聞くと何でも隊長室に来てほしい様であり、仮眠室を出ると部隊長室まで向かう事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「八神隊長、おはようございます。」

 

そう言って統夜は先日も案内された部隊長室に入る。

 

「もう、おはようって、時間やないで。それに、そんなにかしこまらんでもええで、統夜くん。」

 

「ああ。最近、戦い続きの上、野宿だったからな。」

 

そう言った後、苦笑を浮かべ、

 

「それと、オレは協力者とは言っても八神は上司だからな。まあ、気楽でいいなら、気楽にさせてもらうけどな。高町もおはよう。」

 

「うん、おはよう、統夜くん。私の事はなのはでいいのに。」

 

隊長室に居たなのはにも手を振りながらそうあいさつをかける統夜に彼女はそう言葉を返す。

 

「いや、名前で呼ぶほど親しくないだろう? それで昨日協力する事になったけど…改めて、確認させてもらう。オレは飽く迄ゼイビアックスを優先して行動させて貰って良いんだな?」

 

「うん。統夜くんにしか対応できない相手だから、私達からもお願いしたいの。」

 

「了解。で、そっちはオレの衣・食・住の確保とこっちでの生活の保障をしてくれる事。あとは、オレはゼイビアックス意外じゃ、高町達の任務に協力すれば良いんだな?」

 

「うん。任務の途中でもゼイビアックスの部下が動いている様やったら、そっちの方に回って貰ってもええ。ごめんな、統夜くんが戦っとるちゅうエイリアンの相手だけでも大変そうやのに。」

 

はやてから謝られるが、思わず苦笑を浮かべてしまう。

 

「まあ、それは気にしなくてもいい、オレも助かるからな。まあ、食事と寝る場所を提供してくれる見返りって事でな。それで、協力って先ずは何をすればいいんだ?」

 

「うん。じゃあ、協力者として前線メンバーに挨拶してくれるかな。みんなも、昨日助けて貰ったお礼が言いたいと思うから。」

 

「OK。」

 

そして、四人は起動六課のロビーへと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

起動六課 ロビー

 

そこには先日ディスパイダーから助けたなのは率いるスターズ分隊に所属しているスバルとティアナの他に、ここに向かうヘリで一緒だったライトニング分隊に所属している赤髪の少年『エリオ・モンディアル』と桃色の髪の少女『キャロ・ル・ルシエ』と彼女の龍『フリード』、両隊の副隊長である『ヴィータ』と『シグナム』、そして、ライトニング分隊の隊長であるフェイトが揃って居た。

 

そこに、なのはとはやてに連れられて統夜が入ってくる。

 

「みんな、今日から私達の部隊に民間協力者として、機動六課で働くことになった辰輝統夜さんです。では、統夜さん、一言お願いします。」

 

そう言われて統夜ははやての隣に立つ。色んな意思のこもった視線が突き刺さる中、やはりフェイトだけはどこか悲しそうな視線で統夜を見つめていた。

 

「まあ、正式な局員って訳じゃないけど、今日から一緒に働く事になった辰輝統夜だ。まあ、何人かは昨日会っただろうけど、改めて、初めましてだな。そう言う訳でこれから、どうぞよろしくお願いします。」

 

そう言って頭を下げる。

 

「ありがとうございました。みんなはまだ知らないと思いますが、統夜さんは先日助けて頂いた赤い仮面の騎士です。戦闘では遊撃を担当してもらいます。コールサインは…。」

 

「…『ドラゴンナイト』で頼む。一番分かり易いしな。」

 

その時、統夜はまだ気付かなかった。はやての紹介で一部の人間の目が輝いたのを。

 

そんな形で統夜の自己紹介が終わると、スバル、ティアナ、エリオ、キャロの四人が自己紹介をする。

 

「あたし、スバル・ナカジマって言います。統夜さん、よろしくお願いします! あの、昨日は助けて頂いてありがとうございました!」

 

「私はティアナ・ランスターです。助けていただき、ありがとうございます。」

 

「ああ。別に礼なんていいさ。オレはオレ達の不始末を片づけただけだしな。あと、オレは局員じゃないから、もっと気楽にしてくれて構わないぜ。」

 

スバルとティアナの言葉に苦笑を浮かべながらそう返す。実際、モンスターの事も、ゼイビアックスの事も完全に倒しきれなかった自分達の不始末なのだから。

 

「エリオ・モンディアルと言います。よろしくお願いします。」

 

「えっと、キャロ・ル・ルシエです。あ、この子はフリードリヒって言います。フリードって呼んであげてください。」

 

「きゅい。」

 

「ああ。よろしくな二人とも。」

 

年少組二人+一匹(ドラゴンを従えている為か何故かフリードには妙に懐かれた。)にそう挨拶する。

 

「あの、統夜さん。…貴方は私達がリニアで見た鮫の仮面の男と、何か関係があるんですか? あの赤い仮面の姿とも似ている感じでしたし。」

 

そうティアナから問いかけられる。

 

「…そうだな…。関係なら大いにあるさ。奴(アビス)はオレが…オレ達が完全に倒せなかった…敵なんだからな。」

 

そう答える。完全に倒せなかった敵であり、一年前から続く因縁の相手。それがゼイビアックス…アビスなのだ。

 

ゼイビアックスの事については彼女達には多くを話す気はない。下手にゼイビアックスの事を話しても余計な混乱を招く可能性もあるし、そもそも、なのは達にゼイビアックスについて自分の知っている事は全部話しているのだから、あとは彼女達の判断に任せてしまえばいい。

 

どうでも良い事だが、統夜としては対して気にもしていないが、以前はウイングナイトであるレンに対して向けていた敵意は再び現れた今となっては全体的に自分に降りかかっている様にも感じられる。

 

(…それにしても、オレと同じ歳で部隊率いていたり、こんな子供まで前線に出してたり…どこまで人材不足なんだよ…この組織は?)

 

ゼイビアックスについて考えている事をやめると、スバル達に挨拶しながら本気でそう思ってしまう。同時にベンタラの他のライダー達が聞いたらなんと思うかとも、本気で考えてしまうのだった。

 

実際、その年齢で戦う事を選んでいるのだから、その意思は肯定しても子供を戦わせるというのは、やはり間違っていると思えてくる。

 

だが、そんな事を言ってしまえば、学生と同時にゼイビアックスとの戦いを続けていた自分はどうなるのだ?とも思ってしまう。

 

(協力する事決めたの…少し早まったか?)

 

それはないとも考えながら、いつの間にかロビーからフェイトが立ち去っている事に気がついた。

 

「…なあ、高町…ハラウオンはどうかしたのか? 妙にオレを見る目が悲しそうなのが気になるんだけどな。」

 

「うん。それは私も気になってたんだけど。ただ…。」

 

「ただ?」

 

「フェイトちゃん、昨日、統夜くんに会ってから、泣いてたみたい。」

 

「へ?」

 

はっきり言って理由(いみ)が分からない。…彼女達とクラスメイトだったのは、小学三年の頃までで、フェイトとは一年にも満たない関わりでしか無い上に、四年の頃には母の仕事の都合でアメリカに渡ってしまい、一度も日本には戻っていない。一番付き合いの長いなのはにしても、精々が顔を知っていると言う程度の関係でしかないのだから。

 

そんな相手が自分が原因で泣いていたと言われても困惑するしかない。

 

「…嘘だろう…?」

 

「そんな嘘は言わないよ! ねえ、統夜くん、フェイトちゃんに何したの?」

 

「………。」

 

心外だとばかりに怒るなのはからの問いに暫く無言で考え込み。

 

「…特に何もしてないし、心当たりもないな。ただ、本当に自分達の事を忘れていたのかって聞かれたから、オレは忘れていたって答えただけだ。」

 

そう答えるしかなかった。

 

「ああ、統夜くん、ちょっとええ?」

 

「ああ。」

 

暫く考え込んでいると、今度ははやてに話しかけられる。

 

「実はな、統夜くんの実力が詳しく知りたいから、あとで模擬戦をしてもらいたいんやけど。」

 

「それなら、別にかまわない。ただ、ある程度、相手は強い方が有りがたいな。」

 

「なんでや?」

 

「アビスに魔法が効かなかった原因が分かるかも知れない。そう思っただけだ。」

 

原因さえ分かれば対処も可能だろう。もっとも、それがカードデッキ全体ではなく、ゼイビアックスが作り上げたコピーに限定されるのならば、原因ははっきりとは分からない事になるが、それなら最悪はゼイビアックスの配下の悪のライダーをベントしてでもコピーされたデッキを回収すれば良い事である。

 

(…なんとかして、ユーブロンに連絡を取れれば対策も執り易いんだろうけどな。)

 

そう考えながらなのは達へと視線を向けると、『無理だな』と心の中で結論付ける。ユーブロンやベンタラの事は時空管理局には伝えない方が良いと考えられる。下手をすれば態々第二のゼイビアックスになるかもしれない連中に自分達の弱点を教える様な物なのだから。

 

「そうなんだ。」

 

「じゃあ、相手は誰にお願いしようかな~?」

 

そんな事を考えながら、誰に統夜の模擬戦相手を頼むか話し合っているなのはとはやてを横目に見ていると、

 

 

キィィィィィィィィン!

 

 

モンスターの出現を告げる耳鳴りの様な音が聞こえてくる。

 

「っ!?」

 

ドラグレッダーとドラグブラッカーが護衛している現状で統夜にモンスターの出現が伝えられると言う事は間違いなく、相手は雑兵…レッドミニオンレベルではない相手と言う事になる。

 

「悪い、モンスターが出たみたいだ! ちょっと出てくる!」

 

「あっ! 統夜くん!」

 

ポケットの中からドラゴンナイトのカードデッキを取り出しながら、呼び止める声を無視して飛び出していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(場所は…この建物の中…態々オレの居る所に出てくるとなんてな…。)

 

モンスターの出現を告げる音を頼りに走っている訳だが、改めて考えてみるとさっさと変身するべきかとも今更ながら思う。

 

そんな事を考えながら走り回っていると、視界の中にフェイトの姿が映る。そして、彼女の近くの窓が水面に波紋が広がる様な現象が起こる。

 

「…統夜くん…酷いよ…。」

 

「ハラウオン、危ない!!!」

 

「え?」

 

統夜の叫び声に気が付いて彼の居る方へと振り向くが、それが悪かった。鏡面の中から現れた異形の腕…それが彼女を引きずり込んでいく。

 

助けを求める様に伸ばされた彼女の手を掴もうと統夜も手を伸ばすが、後一歩の所でその手は空を切る。

 

「今のは…。」

 

明らかに彼女を連れ去ったあの異形の腕はモンスターではなく、自分達ライダーの物だった。

 

「早速、新しいライダーのお出ましか…。そんな事より…。」

 

何故態々自分の居る場所でそんな行動を起こしたのか、何故戦闘力の高い彼女を狙ったのかは分からない。だが、考える事は何故ゼイビアックス側のライダーが彼女を狙ったかではなく、

 

また自分へと向けられた悲しげな瞳の意味…。

 

「…どうしてオレをそんな眼で見る…。」

 

そこまで気にするほど親しい相手でもないはずだった。だが、何度もあんな瞳を向けられている。何故と言う疑問と苛立ちを覚えながら、ドラゴンナイトのカードデッキを砕けんばかりの力を込めて握り締める。

 

今までも連れ去られた事は何度も有ったはず。だが…今回は特別に苛立ちを覚えてしまう。

 

「お前とオレに何が有るって言うんだよ!? いい加減、教えてもらうぞ!!! KAMEN RIDER!」

 

そう叫びながら、仮面ライダードラゴンナイトへと変身し、統夜は鏡の向こうの世界へと飛び込んでいく。

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