話の大筋は新約十巻まで出来上がっているので、どこかの海底神殿のタコから毒電波を受信したりしない限りは失踪しません。
捻れ狂う世界流転論
両親の不手際で産まれた子だった。
貧しい家に痩せた土地。そこでは日夜数えきれないほどの人間が死んでいき、50年も生きれば信仰の対象になるくらいの最悪な場所。
少年が生を受けたのはそんな掃き溜め。人生の希望なんて生まれた時から思い抱くことすらできない。
そんな地域の倫理観や衛生状態は非常に拙く、殺菌処理も無しに泥水を飲み干し、自分の子どもが気に入らないことをすれば殴り殺す。
人が死ぬのは日常茶飯事だ。
街に出れば人攫いに襲われ、住処で暮らしていても暴漢が乗り込んでくる。運が悪ければ病気に罹り、対応する術の無い住民たちは連鎖的にこの世を後にする。
それなのに人が存在し続けるのは、それを上回る速度で人が産まれているから。両親が快楽を得るついでに産まれた子は珍しくない。
少年は幼いながらにして思った。
生まれてこなければよかった、と。
天上に輝く星々は地上の人々を嘲笑い、それでも人間は争いをする。拙い言葉に幼稚な思考であっても、そこに辿り着くのは容易だった。
結局、少年はともすればあっさりと命を落とす。
極度の栄養失調に流行り病、精神の摩耗と父親の暴行。幼い少年が死んでしまうのには十分過ぎる理由があった。
死の間際、少年は漆黒の空を見上げた。
看取る人間は居らず、精神と身体の両方を削り取られながら死に逝く彼が最後に想ったのは、世界への憎悪である。
この世は不平等だ。
幸福なことなんて一度もない。
ただただ不幸不条理理不尽が積み重なり、このことも知らないで幸運な人間は日常を嘆く。
少年が最後に何を想ったのかは、彼自身にしか分かり得ないし知り得ないことだ。
少数の人間が得た幸福と幸運のツケは、どこか遠くの誰も知らない名も無き少年に押し付けられた。
彼に物語の役者となる資格は無く、ただただその一生を搾取されるがままに幕を閉ざした。
きっと、この世界は穢れ続ける。
悪意を撒き散らし、糞尿を垂れ流す人類がいる限り。
〝この世界は間違っている〟
―――誰かがそう言った。
「……上終くん?」
意識を引き戻したのはその一言。
手放しに漂っていた自我が脳に収まり、上終はようやく現状を把握することに成功する。
両眼の奥に杭を打ち込まれるような鋭い痛みが骨に響く。視界にいくつもの白い斑点が浮かんでは消えていき、夢と現の間をさまよう。
それらの感覚が、つい数瞬前に見ていた物語が現実であることを確信させた。
どこまでも救われない話だった。
少年の身に降りかかるのは災難ばかりで、彼自身はそれをどうすることもできない。
刹那に過ぎた少年の人生は短いながらも、そこに詰め込まれた『不幸』は限りなく濃密だ。
もし、あの惨状が『上終 神理』というピースが世界を崩した結果であるのなら―――
「ふぐっ!?」
書類の束で頭を小突かれる。すっかり考え事に集中しきっていた上終がそれを躱すことはできなかった。
面を上げると、そこには見慣れた顔の白衣の男。カエルをモチーフにしたマスコットが印刷されたマグカップを両手に持っている。
彼は片方のマグカップを上終の前に置くと、向かいの席に腰掛けた。
「それで、進捗のほどはどうかな?」
「この本に関してなら大体終わっている」
そう言って指差すのは一冊の参考書。生後数ヶ月間もない上終が行っていたのは、看護師の勉強だった。
ホームレスから執事になり、執事からホームレスに戻りかけた迷える子羊に示された道こそが看護師。カエル医者の温情によって、病院勤めを許された上終の唯一の希望である。
とはいえ、学園都市のゲストIDも無ければ生活費も無い上終に職を与えるだけでも高い壁だ。
いくら凄腕のカエル医者でも、学園都市の上層部にいくらかのコネを要する事案。疑問に思っていた上終は素直にその言葉を口に出した。
「
「うん?」
「だからといって看護師は少し違うだろう!? 事務員という選択肢もあったはずだ!」
一刻も早くレイヴィニアたちと逢って、死ななければならない彼は短い時間すら待ち遠しい。
しかし自殺願望なんて知っても目の前の医者なら止めようとするだろうし、明かす気は皆無に等しかった。
ここで上終の論に違和感を抱かないのは、この背景を知っている者でしかありえない。そのはずが、白衣の医者は穏やかな表情を浮かべて口唇を緩ませる。
それは単に違和を感じなかった、からではなく、どこか稚児を見守る父親のような気色を含んでいた。
「どうやら君は精神的に幼いみたいだね? 一度何かに集中すれば他のことに目が行かず、好奇心旺盛で隠し事が下手……本人の性質による所も大きいだろうけどね?」
ギクリ、と肩が震え上がる。
彼の言ったことは少なからず的中しており、上終が反応したのも自覚しているからに他ならないだろう。
以前、アナスタシアの話を聞くのに熱中して、レイヴィニアからの呼び付けを忘れていた経験がそれを助長した。
〝これは神理の負けだな。彼もお前を取って食おうという訳じゃないんだから、いいじゃないか〟
『神の理』がなだめてくる。
靄がかかった胸中の複雑な感情のやり場に、置かれたマグカップを選ぶ。何の気無しに注がれている液体を嚥下した途端、強い苦味が口内を席巻した。
その味に上終は顔をしかめ、
「……前のはもっと甘かったと思うのだが」
おまけに色も黒々としている。上終の記憶している限りでは、泥水のような色をした甘い液体だったはずだ。
愛好者に彼の印象を伝えれば間違いなく罵倒をくらうだろうが、0歳児の貧困な想像力ではそれが限界だった。
「大人の味ってやつさ。君には早かったかな?」
得意気な笑みをこぼす。
精神が未熟なのはこっちの医者の方ではないのだろうか、という考えが脳裏をよぎる。
しかしながら、上終はここで食い下がる男ではない。執事時代に雇い主からいびられてきた反骨心が顔を覗かせる。
「ひとつ言わせてもらうが―――」
と、反論を切り出そうとしたところ、携帯電話のコール音に似た高い音がそれを遮った。
音源は白衣の腰ポケットに収められていた無線通信器だ。主に病院内で人員を呼び出すのに使われ、手の平ですっぽりと覆えてしまうほどの大きさである。
カエル顔の医者は通信機器を耳の近くまで持っていく。
『せ、先生! お昼だって言うのにとんでもないのが来ました!』
「あの」
『こっちはまだご飯も食べてないんですよ!? とにかく、早く来てさっさと治してください!!!』
口を挟む間もなく、通話は切られてしまったようだ。受付からの通話だったが、焦り様からしてよほどの患者なのだろう。
「……君も来るかい?」
八月十八日。
学園都市でもやっぱり医者は忙しい。
ギコギコ、とノコギリで硬質のモノを削るような異音が、その部屋いっぱいに充満していた。
何度も繰り返されるリズムは時々早まったり、逆に極端に遅くなる時がある。
その音が連続して響く様はどこか不穏で病的な含みを持っており、同様に暗く重たい雰囲気を蔓延させた。
何度目かでようやく止まった音の後に、まるで鎖で繋がれた猛獣を解き放つかのような緊張感。それは間違いなく先程まで続いていた音に関わることであり、ある少女には次に起こる事態を容易に察することができた。
「不幸だああああああっ!!!」
学園都市全土に響き渡りそうな絶叫。
上条はウニのような頭に白いタオルを巻きつけ、右手にノコギリと傍らに工具箱を置いた日曜大工スタイルをしている。
うずくまり、頭を抱えて叫んだ彼の前で屹立するのは数十本の鎖。何を隠そう、
床と天井から数十本の鎖が伸びている光景は、二流デザイナーが片手間で作ったような違和感を放っている。
「ち、ちくせう、傷一つつけられないってどんなトンデモ現代アートですか!!?」
鎖に傷をつけるどころか、削ろうとするノコギリの刃の方が欠けてしまいそうなほどに硬い。
アウレオルスが上条を捕えようと錬成した鎖は、上終が右手の力で止めたことで『絶対非干渉』が付与されたのだ。故にノコギリ程度では傷つけられず、撤去できないという仕組みだ。
もっとも、上条がそれを知る術は無いのだが。
仰向けに転がって虚ろな表情で虚空を見上げていると、視界の端を小さな影が横切った。
「……?」
影が消えていった方向を目で追う。といっても、そこに影の正体であろうモノは無い。代わりに視界に映るのは見慣れた少女の足だ。
「なあ、何か通り過ぎなかったか?」
「う、ううん。何も? 妖精でも見たんじゃないかな?」
妙に慌てた様子で応対するインデックス。イギリスでは妖精信仰が広まっていることから端を発した発言なのかもしれない。
しかし、上条はあまり神様や悪魔の存在を信じていない。神様にお祈りするのは急な腹痛といった不幸な事態にしかしないのである。
「インデックスさん、ここは学園都市デスヨ? どうせどっかの研究所から逃げ出してきた白いカブトムシみたいな……」
そんな調子で話していると、あることに気づく。
大きい。
どこが、とははっきり言えないが、悪くてまな板良くて平原だったはずのあそこが大きい。
即座に魔術を疑った上条だが、とある声が彼の推論を打ち消した。ソレは人の声ではなく、もっと野性的な『にゃーん』という鳴き声だった。
「にゃーん?」
上条が聞き返す。
「にゃーん」
インデックスの胸が返事をする。
……しばらくの静寂が彼らの精神状態を如実に表していた。それからして、両腕で抱き込むようにしていた胸から何かが飛び出した。
あの影と同程度の大きさをした三毛猫。上条は絶対零度の視線を投げかけつつ、忠告するように言う。
「捨ててきなさい」
「な……っ!? 血も涙もないのかなとうまは!!」
「そんなモンはこの前食っちまったよ。動物を飼うのは命に責任を取れるようになってからにしなさい」
オカンのように言い聞かせる。なるべくお金の消費を抑えたい考えが見え見えである。
しかしこうなったインデックスはてこでも動かないだろう。いい加減にそれを理解していた上条は、どう言いくるめるか頭をひねった。
インデックスは依然臨戦態勢であり、上条が行動を間違えれば確実に噛み付きが飛んでくるだろう。
西部劇でよく見るガンマン同士の撃ち合いのような雰囲気になった二人の間に、またもや静寂が訪れる。
睨み合いを終結させたのは、とある電子音。発信源は上条の携帯電話であり、呼び出したのは小萌先生だ。
(嫌な予感しかしねぇ!!)
通話を開始するよりも先に行っていたのは、心当たりの模索だった。
何しろ、上条にとって不意に掛けられてくる電話ほど怖いモノはない。それ即ち、予測不可能の『
恐る恐る通話に出る。
「え、ええと、何のご用件で?」
『はい。つかぬことを伺いますが、ちゃーんと答えてほしいのですよ』
明らかに不穏な言葉だった。
すぐそばにある現代アートに目を向ける。
もしや、これがバレたのでは――、と言いようのない不安が胸を満たした。この現代アートについて問われれば、彼は言い逃れできない。
家に錬金術師が押しかけてきてオブジェを造りました、なんて言われても馬鹿にしていると勘違いされるのがオチだ。
『それがですねー。数日前の監視カメラに
「……あっ」
かちーん、と全身が石化する。
血まみれの男と赤髪神父―――思いつく人物はそれぞれ一人しかいなかった。
上終 神理にステイル=マグヌス。上条風に言い換えれば、よく分からないヤツと喫煙魔術師である。
そしてそんな状況を創り上げたのは例のロリコン錬金術師。なるべくして疑われたと言えよう。
複雑な思考は必要なかった。これから訪れるであろう不幸の元凶はあの三人だ!
『事が事なので、上条ちゃんには至急登校をお願いしたいのですよ』
返答の間もなく通話が切られた。どうやは拒否権はないらしい。
それとなくインデックスの方向を見ると、何やら興奮した様子で、
「いってらっしゃい、とうま! 大丈夫、スフィンクスは私が責任持って面倒見るから!!」
眩いばかりの笑顔が上条に突き刺さる。
インデックスの腕に抱かれた三毛猫が鳴く。
上条家にもう一匹の居候が加入した瞬間だった。
「……医者の見解から訊きたいのだが」
「……うん」
「……これは緊急手術じゃないのか」
上終たちの前にいたのは、いつか見た茶髪の男子高校生と見るに堪えない惨状の少女。
少女の衣服は血に染まっており、左腕が歪に曲がっている。厚手の長袖から覗く白い肌には、擦り傷と切り傷の数々が刻まれている。
だと言うのに、少女は顔色ひとつ変えず立ち尽くしていた。これが日常であると示しているかのように。
年頃はちょうどレイヴィニアと同程度だろう。痛々しい傷と共にそのことを認識した上終の頭の奥で、突き刺すような痛みが走った。
歯を食いしばり、痛みを表情に出さないよう努力する。
「どうしてきみがここにいるんだい?」
大急ぎで駆け出していく医師たちを見送りながら、上里 翔流は呟くように訊いた。
「借金を返済するために看護師見習いと仮事務員をやっているんだ。れっきとした従業員だぞ」
と言うと、上里の表情が一気に豹変する。まるで雨の日に、段ボール箱に捨てられた子猫を見るかのような同情した表情だ。
視線をひしひしと感じつつ、上終は話を別の方向に持っていくことにした。
「いや、俺のことはどうでもいい。あの女の子に一体何があった?」
「ぼくも全部知ってるわけじゃないが、あの娘が言うには『
「む、そうか。だから救急車を呼ばなかったのか」
それにしても、と上終は思う。
傷を負った少女に一度とはいえ共闘した上里の存在。この組み合わせで事件が起きないなんて楽観視はできなかった。
そうなるとまた、いつものような重傷を負うかもしれない。否、それだけは自信を持って断言できる。
(……また、か。嫌な予感がするな)
窓に切り取られた空は青い。
忘れてはいけない。この青空も自分が歪めたモノであることを。
脳裏に響く無数の声。男性と女性、老人と子供の声音を切り分け、貼り付けたような奇妙な声だった。
〝この世界は腐蝕している〟
――誰かがそう言った。
夕暮れが街を染め上げる。
朱と黒の複雑なコントラスト。美麗に光を跳ね返す噴水。人々は帰路に着き、その気色はそれぞれ違っていた。
蒸し暑さもいくばくかは鳴りを潜め、地上を照らしていた太陽が遠くで沈みゆく。
これより、光の届かぬ闇の時間。
常識人の理論なんて通用しない。
偽善者の説得なんて意に介さない。
そんなドス黒い闇。学園都市の深淵で蠢く毒蛇の如き暗黒が、今ここに執行されようとしていた。
とあるマンションの一室。
その部屋の至る場所がおぞましく、まだ乾ききっていない赤黒い血で塗り潰されている。
放射状に広がる血の池の中心にひとりの人間と、ひとつのモノがあった。
色が抜け落ちた病的な白髪。肌もこの季節には場違い甚だしいほどに白い。
ただひとつ、血液の結晶をはめ込んだかのような真紅の瞳だけが、この惨状を物語っている。
眼下に落ち伏せるのはつい数瞬まで殺し合いを演じていた人間だ。いや、殺し合いというのは語弊があるだろう。
それは、虐殺だった。
彼らの戦いは『戦い』の領域には到達せず、ただ腕を振るえば相手が吹き飛び、脚を振るえば臓物が飛び散る『蹂躙』と化していた。
ビグン、と半ば痙攣するカタチでソレは動く。
四肢の四分の三は毟り取られ、内臓系の半分以上は潰したというのにソレはもがいている。
ただ単純な生への執念か、はたまた筋肉的な蠕動か。明確な理由付けは無くとも、何らかの理屈を介して動作していることは確かだ。
少年はその様を数秒だけ眺めると、残りの四肢である左腕を千切る。些末に腕を投げ捨てると、足の爪先をソレの後頭部に押し当てた。
ばぢゅっ、と高所からトマトでも落としたみたいに、頭が文字通りバラバラに弾け飛ぶ。
「実験終了……ッてかァ?」
つまらなそうに言い捨てる。
所詮、人間なんてモノはこの程度だ。
この世のどの生物より頭が良く、数億年前から叡智を研ぎ澄ましていたとしても、『個』として見ればそれは貧弱。
人間だからといって尊いとは限らないし、存在的に上位に存在するとも限らないのだから。
要するに、命の価値なんてそう大差ない。
少なくとも少年はそう思っている。そうではなくては、人殺しなど到底意義を見出だせないモノなのだ。
(……違うな。コイツらは――)
例えば、ボタンひとつで人間を造れるとして。その人間があるひとりの人間と全く同じ容姿を持っていたとする。
果たしてソレは、人間と呼べるのか?
元来、人間とは人の間に産まれる生物だ。この世に全くの同個体が在るのなら、ソレはもはや人間ではなく、
「――タダのモノだ。一体辺り約十八万円だっけか? 随分とお安い生命じゃねェか」
愉快そうに、それでいて不快そうに吐き捨てる白い少年はさっさと背を向ける。
ドアを開け放てば、目の前には茶髪の少女。それが十人。全員が完全に同一の見た目をしていた。
うやうやしく会釈する茶髪の少女を視界から外し、縁に手を掛けて一息に飛び降りる。
地上七階のマンションから固いアスファルトへ飛び込む、というのは紛うことなく自殺行為に等しい。
だが、まるで衝撃など元から無いように少年は着地していた。
中でも超能力者は学園都市全土において、たったの七人しか存在しない非常に稀な人材だ。
彼はその超能力者の第一位。
この世界のありとあらゆる『
それこそが少年の
(最強……ハッ、くだらねェ)
最強とは一番強大であること。
故に最強は二人も存在することは許されず、個体としての強さを突き詰めた究極の個。そして、この学園都市で最強であるのなら、一方通行に世界で勝てる者はいないのだろう。
彼が下らないと罵ったのはそのことだ。
いくら比類なきチカラを手に入れたとしても、最強なんて肩書きはその程度でしかない。
「……チッ」
現に最強の肩書きを奪おうとしている連中が、彼を取り囲んでいた。
実際はこんなモノ。最強なんて称号は、弱者に下剋上の希望を与えるだけの障害物に過ぎない。
周囲を見回せば、金属バットやスタンガン、ナイフを持った挑戦者たちが大声を発している。
一方通行は己の能力で以って音を遮断し、大きくため息をつくと真っ直ぐ歩き出した。
襲い掛かる数多の斬撃打撃の雨あられ。だがしかし、どれもが一方通行を傷つけることなく、攻撃が跳ね返っていく。
『向き』変換。これを反射に設定すれば、あらゆるエネルギー・物体は進行方向の真反対に飛ばされる。
つまるところ、一方通行がすることは変わらなかった。
ただ歩く。それだけで良い。
それだけで勝手に敵は自滅するのだから、これ以上何かをするのは無粋と言える。
(これで終わりかァ?)
その時だった。
極端に言ってしまえば、この世の全てを反射してしまえる彼を、その手の持ち主は触っていた。
思わず振り向く。
その先にいたのは、黒と茶混じりの所々の髪がはねた少年だった。どことなく眠たそうな顔をしている。
――世界はまたねじ曲がる。それが予期しないモノだとしても、神様の言うとおりに。
セロリさんです。愛しのていとくんキラーでもありますが、改心後は魅力的でかっこいいですよね。この時期はかなり見解が分かれるので、ビクビクしながら内面に踏み込んでいます。
それでは、次回もお会いしましょう!!