永遠の煩悩者   作:煩悩のふむふむ

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15禁注意です。


第十四話 日常編その2 さらば、愛する息子よ!

「パパって凄いんだよ!」

 

「そんなの何よ! ヨコシマ様なんてもっと凄いんだよ!!」

 

「ええと……どっちもカッコイイと思うの」

 

 日も傾き始めたころ、赤い髪をツインテールで纏めた少女と、青い髪をポニーテールで纏めた少女が激しく言い争っていた。

 その間で青い髪のおかっぱ頭の少女が右往左往。

 オルファとネリーとシアーだ。

 ネリーとオルファは喧嘩友達と言うやつで、よく喧嘩をしている。

 別に仲が悪いわけではない。仲が良くて、性格がかみ合いすぎるのが原因だ。

 そして仲裁役として、シアーが間に入るのがいつものこと。

 

 子供というものは元気なものである。

 つい先ほどまで、朝昼の厳しい訓練を終えてふらふらになっていたのだが、時間的に30分もしない間に回復してしまったようだ。大人たちは哨戒任務や町への買出しなどで動いている時間である。子供たちは詰め所に帰ってお留守番なわけだ。

 詰め所に帰る途中、オルファとネリーの他愛ない会話が始まって、いつの間にか口喧嘩になってしまった。

 今回の口喧嘩の原因は、悠人と横島のどちらが良いのか、それが議題である。

 別にオルファは横島のことが嫌いなわけでもなく、ネリーも悠人のことが嫌いなわけではない。むしろ大好きである。ただ、お互いに同じ事を言っちゃだめ、という子供らしい意地があった。

 ネリーとオルファの口喧嘩はますますヒートアップしていく。

 どちらが面白いだのかっこいいだの、二人は思いつくまま言い続け、話は身体的特徴にまで及び始めた。

 

「パパについてる物体Ⅹなんてとっても大きいんだから!」

 

「何それ? シアーは知ってる?」

 

「ううん、知らない」

 

 ネリーとシアーが顔を見合わせるのを見て、オルファがにや~と笑う。

 

「ひょっとしたらネリーとシアーって、ヨコシマ様と一緒にお風呂入ったことないでしょ!」

 

 びしりとオルファに指を突きつけられ、ネリーとシアーはその場で固まった。

 その通りだったからだ。

 ネリーやシアーは何度か横島と一緒にお風呂に入ろうとしたことがあるのだが、そのたびにセリアやヒミカが止めるのである。一緒に風呂に入ろうと、横島に直接お願いをした事もあるのだが、疲れるからと言われてダメだった。セリアやヒミカが入っているときは風呂を覗こうとしているというのに。

 そのことを横島に言ったら、大人になったら一緒に入ろう、と言われた。ちなみに、大人の基準は最低でもこれぐらい胸が大きくなったらと、その場にいたヒミカの胸をニギニギして一騒動あったりもしたのだが、ここでは割愛する。

 実はヒミカの胸とシアーの胸は、たいして差がなかったりもするのだが……

 とにかく、ネリーとシアーは横島と一緒にお風呂に入ってはいないのである。

 

「は、入ったことあるもん! ネリーだって!!」

 

 ネリーは嘘を付いた。女ながらの意地というものか。

 

「じゃあ、オルファ達とパパやヨコシマ様の体の違う部分が分かる?」

 

 そう言われて、ネリーとシアーは顔を見合わせる。

 ごしょごしょと話し合い、二人は自信満々で答えた。

 

「胸の大きさでしょ!」

 

「ぶー! はずれー!!」

 

「えー! なんでよ~」

 

 この会話が、この話の幕開け。

 惨劇の始まり。

 

 横島に最大の危機が訪れようとしていた。

 

 

 永遠の煩悩者日常編その2。

 

 さらば、愛する息子よ!

 

 

「ふう、はあ、悠人の奴ずいぶんと頑張りやがって……」

 

 いつもの訓練が終わり、息も絶え絶えな横島がよろよろと第二詰め所に戻ってきた。

 もう何時始まってもおかしくないダーツィとの戦い。その戦いに備えて、訓練はかなり過酷なものになっていた。

 アセリア達は確実にレベルアップをしているし、横島も幾つかの神剣魔法の習得に成功している。

 その中でも、成長著しいのは悠人だった。愚直に剣術を学んでいる悠人は、確実に強くなっている。実を言うと、横島だけは訓練時間の予定を1時間ほどオーバーしていた。

 あの悠人が、横島との戦いで粘りに粘りまくったのだ。結局、横島に一太刀も浴びせられなかったが、相も変わらずやる気と粘り強さだけは横島の比ではない。

 剣筋はまだまだ粗いと言えるが、才能と持ち前の頑固さというか諦めの悪さ、さらには強力な神剣を使いこなし始め、悠人は着実に前進している。それでも、横島や他のスピリット達にはまだまだ及ばないのだが、差が詰まってきているのは間違いなかった。

 

「このままだと悠人のやつに追いつかれちまうな。くっ、女の子にもてるための獲物のはずなのに」

 

『悠人はレベル1でこの世界に来たのだろうが、主はレベル50でこの世界に来たようなものだからな。差が詰められるのは仕方ないことだろう。レベルアップに必要な経験値の桁が違うのだからな。』

 

「うっせーぞ。つーか、何だその例えは」

 

 『天秤』とそんな無駄話をしながら、第二詰め所前にたどり着く。

 

「ヨコシマ様お帰りなさい!」

「お帰りなさい~」

 

 出迎えてくれたのは青の姉妹。横島は手を上げてそれに答える。

 疲労していた事もあり、横島の目は自然と疲労回復の為に美女達を探した。

 だが、そこには美女の気配も匂いも無い。

 

「町に買い物に行ったり、哨戒任務に行ったりとかでいないんだ」

 

「くっ、そうなのか」

 

 疲れた体を女の子達と戯れる……つまりセクハラによって回復させようと考えていたのだが、そうはいかないらしい。

 煩悩魔人である横島にとってこの女の園は楽園と言えたが、相手が子供では煩悩は生まれない。

 

「……そうだ! ヨコシマ様、今お風呂が沸いたんだ。ヨコシマ様ずいぶんと汗臭いから先に入ったほうがいいよ」

 

「おお、気が利くな!」

 

 ちょうど訓練を終えたところだったので、体を流したい横島は風呂に入ることを決めた。

 嬉々として風呂に向かう横島。だから気づかなかったのだろう。

 ネリーとシアーが怪しげな笑みを浮かべていたことに。

 

 もうもうと立つ湯気の中に、全裸のバンダナ少年の姿があった。

 

「ふう、い~い湯だなっと」

 

 肩までゆったりとお湯に浸かり、横島は至福の表情を浮かべていた。

 5,6人が入ってもまだは入れそうな大きい風呂。木で出来た風呂桶は金属製よりも匂いがいい。

 手足を伸ばし、気持ちよさそうにのびをする。

 

(この風呂でセリア達が体を洗ってるんだよな~。ぐふ、ぐふふ~~!)

 

『気色の悪い笑い方を……涎を落すな!!』

 

 霊力がグングン回復しているのを感じる。

 この詰め所にいる男は、『天秤』を除くと横島ただ一人。事実は違うが、ハーレムの主となった感覚に横島は浸っていた。

 

「これで、女の子でもいてくれたらなあ」

 

 ハリオン達と風呂に入っている自分の姿を夢想する。それだけで、息子も自分もムクムクと元気になっていく。風呂と妄想の組み合わせは、体を回復させるのに最高の力を発揮していた。お手軽といえば、お手軽な男である。

 そんな横島に『天秤』はやれやれと呆れていたが、ふと妙な音に気づき、本人的にはニヒルな声で出した。

 

『ふっ、主よ。その願いは叶いそうだぞ』

 

 脱衣所のほうから何か聞こえてくる。

 じっと耳を澄ますと、その音は衣ずれの音に違いなかった。

 ――――まさか

 嬉し恥ずかしの風呂場でばったり遭遇イベント。

 

「来たー!! 来たぞーー!! そう、そう、そうだろ! 一つ屋根の下なんだ。これで何も起こらなかった嘘ってもんだぜ!! お風呂ばったりはちあわせイベント。これを無くして何が一つ屋根の下って言うんだ。うっひょろえ~~!!」

 

 お約束イベントが発動した事により、横島は狂った。

 普段なら覗きに行っても、炎やら稲妻やら氷やらで撃退されるだけだが、今回はそうは行かない。なぜなら、始めに入っていたのはこちらなのだ。正義は我にあり、なのである。

 

 ガラリと、扉が開く。

 横島は期待に胸を高鳴らせて、誰が入ってきたのか、血走った目で見つめる。

 まあこれは、言うまでも無く――――――お約束イベントであった。

 

 ほとんど平らな胸。

 胸、腰、尻に高低差がほとんどない寸胴な体系。

 毛すら生えていない、つるつるの筋。

 

「なあ『天秤』。これは詐欺とちゃうか?」

 

『むうっ……もう少し慌てるとか、喜ぶとかはないのか?』

 

「んなことを言われてもなあ……前ぐらい隠せよ、お前ら」

 

「なんで?」

 

 裸で無邪気によってくるネリーとシアーは、不思議そうに答えた。

 

 ガキだ。

 男だとか女だとかまるで理解していない。

 羞恥心など「なにそれ? 食えるの?」そんなレベルなのだ。

 一応、とある事情からこいつらは18歳以上なのは間違いない。間違いないったら間違いない。確かに一年の周期が240日だから、多少若くてもいいのかも知れないが、それでも肉体も精神も若すぎる。

 横島としては『俺はロリじゃないんだー!!』と、お約束をやりたいところなのだが、全裸を見て食指の一つも動かないのでは、流石につまらない。タイミング的にも外してしまった。

 

『好都合ではないか。羞恥心などなければ、相手の裸など簡単に見られるだろう。それに、快楽を味わうだけなら不可能ではないと思うが』

 

「お前は本当に馬鹿だな。お前はあれか? 洋物ポルノみたいな丸出しが好みなのか」

 

『……よく分からんが、衣服は性興奮の妨げや、性行為を行うのに邪魔なだけだろう』

 

「最悪だな。お前みたいなのが俺の神剣だなんて……父ちゃん情けなくて涙がでらぁ」

 

『だれが父ちゃんだ!!』

 

 萌えやロマンといったものを何一つ理解していない『天秤』に、横島は深い悲しみを感じた。だが、同時に微笑ましさを感じる事もできる。

 男とか女とかを意識しなかった純粋な子供時代。

 女湯に入っても何一つ感じなかったころの清い心を、『天秤』から感じ取れた。

 もっとも、言っている事は何気に外道っぽいのだが。

 

「おら、体洗ったらさっさとお湯に入るぞ」

 

「は~い」

 

 もはや横島のカテゴリーでは、ネリーとシアーは女ではなく、子供とカテゴリーされた。子供相手に欲情も何も起こりはしない。

 実際、どう考えても劣情を引き出せる体をしていなかった。せめて恥じらいでもしてくれたら、心の琴線に触れたかもしれないが、それすらもないのではどうしようもない。

 二人は余りにも子供すぎた。確かに可愛いが、言動も雰囲気も、微笑ましいという以外にない。

 がっかりと気を落し、溜息を出そうとした横島だったが、そうはいかなかった。

 

「えいえい!!」

 

 いきなりネリーが横島の顔に勢い良くお湯を飛ばしてきたのだ。

 顔に熱いお湯を掛けられた横島は思わずたじろぐ。その間にシアーは横島の後ろに回りこみ、手ですくったお湯をゆっくりと横島に掛ける。

 

(こ、こいつら!)

 

 こうなるから横島はネリー達と一緒にお風呂に入るのは嫌だったのだ。一緒に入れば間違いなく騒がしくなり、ゆっくりと疲れを取るなどできなくなってしまう。

 それでも、本気で止めろと一喝すれば止める事はできそうだが、横島という男は遊び好きで子供好きだった。

 

「ふっ、甘いぞ!」

 

「わぷっ!!」

 

 横島の組まれた掌から、お湯が勢いよく飛び出る。水鉄砲だ。

 

「やったな~!」

 

 ネリーも負けじと掌でお湯をすくって横島に浴びせようとするが、

 

「そのやり方はくーるじゃないぞ!」

 

 そう言って横島はネリーの手を掴む。そして、お湯の中で両手を特殊な形に組ませる。ネリーはその様子を、目をパチクリさせながら黙って見ていた。

 

「よし、手をギュッとやってみろ」

 

 ネリーは横島に言われた通りに組まれた手をギュッとした。すると、大きなお湯の塊が勢い良く発射される。発射されるお湯の量と、手に程よく残る余韻に、ネリーは歓声を上げて何度も何度も繰り返した。

 次に横島はシアーの方に向き直る。

 人差し指を立ててお湯の中に入れる。そして、指をグルグルと回転させた。

 すると、お湯が渦を巻き始めた。

 

「グールグル!」

 

 現われた渦を、シアーは目を輝かせてじっと見つめた。実に子供っぽい。

 横島自身も、子供なネリーとシアーに呆れながらも、口元は緩んでいる。風呂場で遊ぶなんて何年振りだろうか。悪くない。疲れる事は疲れるが、たまにはいいだろう。

 目を渦巻きにしてふらふらになっているシアーを、横島は優しい顔で見つめていたが、またしても多量のお湯が顔面を襲う。

 

「フフ~ン! 水鉄砲は完全に極めたよ! ヨコシマ様、覚悟~~!!」

 

 悪戯っぽく笑いながら、水鉄砲で襲い掛かってくるネリー。

 

「ふん、極めただと……笑止! 極めるとはこういうことを言うのだ!!」

 

 向かってくるお湯の塊を、右手でのみで噴出させたお湯で迎撃する。同時に左手でお湯を発射してネリーを攻撃した。

 

「に、二刀流! 片手だけで水鉄砲~!?」

 

「ふっ、これが俺の実力よ! 大人しく我が軍門に下ってニャンニャンされるが良い!」

 

 じりじりと迫ってくる横島に、ネリーは少しずつ押されて行く。途中、ネリーは水鉄砲で抵抗を試みるが、二倍の火力の差は如何ともしがたい。このままニャンニャンされてしまうのか。そう思われたとき、援軍が現われる。

 

「え~い!」

 

 後ろからのんびりとした声が聞こえたかと思うと、横島の後頭部にお湯が炸裂する。シアーだ。

 

「シアー! よ~し、挟み撃ちでヨコシマ様をやっつけるよ!!」

 

「お~」

 

「くっ! だが、その程度で!!」

 

 その光景は、兄と歳の離れた妹が風呂場でふざけ合っているようにしか見えない。

 誰が見てもそう感じられる事だろう。色事関係は皆無であった。

 バシャバシャとお湯を掛け合って遊ぶ姿は、家族や幸福といった、温かい言葉を連想させる。

 しかし、この物語がそんな良い話で終わるわけがない。

 主役が横島という時点で、そして15禁表記の時点で、それは明らかだった。

 

(あれ……ネリーの奴がいない……)

 

 いつの間にかネリーの姿が無くなっていた。

 脱衣所へのドアは開かなかったので、まだ風呂にいるはずなのだが。

 一体どこにいったのかと考えていたとき、その衝撃はやってきた。

 

「はうっ!」

 

 全身に電流が流れたような感覚が伝わってきた。

 その電流が発信された場所……湯船の中の息子を恐る恐る見てみる。

 そこには、湯の中でネリーが息子を捕まえている姿があった。

 

「なっ……ななななあっ!!」

 

 尻尾をつかまれた戦闘民族のように、横島は完全に硬直した。一体何がどうしてこうなっているのか、頭がショートしてしまったようで何も考えられない。

 戦士として、男として、致命的な隙が生まれる。

 その隙を突いて、自称『く~る』な女の子は、始めてみる物体に目を輝かせた。

 

(へ~、これがオルファの言ってた物体Xなんだ。……なんか変な形してるけど、うん、色々やってみよう!)

 

 何も知らない子供の純粋な手が、欲望の化身に襲いかかった。

 引っ張ったり、伸ばしたり、曲げたり、絞ったり。

 非常に拙い動きながら、俗に言う手コキだ。

 

 冗談ではないと、急いでネリーを引きずりだそうとした横島だったが、何故か体が上手く動かない。

 快感の為、動かないわけではない。単純に動かない。

 その裏には一つの神剣が暗躍していた。

 

(ふっ、面白くなったものだ)

 

(こら! 止めなさい『天秤』!)

 

(くっくっくっ、貴様は大人しく恋人が子供に手を出す様を見ているのだな)

 

 そんな会話が己の内側でなされている事を、横島は知らない。

 

(あれ……なんだか少し……)

 

 ネリーは自分が握っているモノの感触が少しだけ変わったような気がした。

 息子、血流増加中。

 

(なにやってんじゃーー!! 息子ーー!!!)

 

 意思に逆らい、成長を始めようと息子に檄を飛ばす。

 

(俺はお前をそんな風に育てた覚えはねーぞ!!)

 

 と、とうさん。そんな事は言われたって、この長い禁欲生活でもう僕はいっぱいいっぱいで……この前だって隙を見つけられなくて、夜にパンツを洗う羽目になっちゃったし……

 

 息子からの返事に、横島は歯噛みした。この環境はある意味地獄であった。周りの全員が美女美少女。それも、本気で手を出そうとすればヤレル環境にいるのだ。ある意味ハーレムなのだが、エロの無いハーレムと言う天国に似た地獄。

 煩悩青年横島も、人知れずそれなりの苦労をしているのである。

 

(負けんじゃねえ! 俺にだってプライドがあるんだ)

 

 異世界にて記念すべきエロ。それが、こんな形で行われている事に、横島は天を恨んだ。

 同時に、こんな事で反応しようとする息子に抗議する。

 

 そんなこと言われても……気持ちいいものは、

 

(ざけんな!! お前は俺の息子だろう……だったら子供なんかにやられるな!!)

 

 !! 分かったよ……僕は負けない!

 

 息子と横島の意思は一つとなった。

 ネリーは、自分がどういう意味の行動をしているのか、まるで理解していないのだろう。例としてあげるには微妙だが、息子にバターか何かを塗って犬に舐めさせているも同然なのだ。こういったシチュエーションが燃える、という変態もいそうだが、真面目で清く正しく、ノーマルな変態である横島には屈辱でしかない。

 

 誇りある変態として、こんな、無知で、ガキで、テクニックも何もなく、遊びでやっているやつに、神聖で純なる息子がおっきしてはいけないのである!!

 

(手コキを遊びでやる奴に、負けるわけいかないんだよー!)

 

 女みたいな名前のNTの少年の台詞をパクって、士気を高める。

 

(あれ。何でだろ、何か起きるような気がしたのに)

 

 いつまでたってもぐったりしている息子に、何らかの反応を期待していたネリーは少々不満なようだ。

 

 精神が肉体を超えたのだ。

 息子はネリーの手コキを耐え切った。

 

 勝った。

 

 横島は勝利を確信した。

 だが、横島は忘れていた。

 敵はネリーだけじゃないと言うことを。

 

「えへへ」

 

 ぺタッ

 

 横島の背中にシアーが寄り添い、胸を押し付けた。

 

(うわ~~!! 背中に二つのふにゃってとした感触が~~!!)

 

 楽しそうに笑いながら、胸を押し付けてくるシアー。

 シアーはとても楽しそうだが、横島としてはたまったものではない。

 ぺったんこなネリーと違い、シアーはそれなりに胸がある。男にとって、やはりおっぱいの存在は大きい。女性を感じられる部分として、象徴として……

 ガキから女の子に、少しだけシアーの認識が変わる。

 

 よこしまの ほうそくが みだれる!

 

 父さん! なにやってるの!! このままじゃ……

(分かってる!!)

 

 冗談じゃないと、横島は血が出るくらい唇を強く噛んで、感覚を鈍くする。それに僅かに動く首を振ったりして、少しでも快楽に抵抗した。

 だが、それでもこれほどの責められては……

 

『ふむ。こういう状況の事をどう表せばいいのか。

 くやしい、でも、感じちゃう。ビクビク(棒読み)

 こんな感じだろうか……』

 

(人の頭ん中でなにクリムゾンな事を言ってやがる!)

 

『エニに負けぬよう、私も色々と勉強しているのでな。まあ意味はよく分からないが……せっかくだから俺はこのロリを選ぶぜ! それともこんな感じか?』

 

(それは色々違うだろ!!)

 

 頭の中に響いてくる『天秤』の声に、横島は気が変になりそうだった。

 前門のネリーに、後門のシアー。そして獅子身中の虫である『天秤』

 横島の戦いは孤独だった。

 

(お願いヨコシマ! そんな子供の貧乳なんかで……あっ、でも私とそんなに変わらないかも……くぅ! 怒っていいの!? それとも喜ぶべきなのかしら!?)

 

 唯一の仲間であるルシオラは、勝手に妄想して混乱していた。まるで役に立たない。

 さらに、ネリーの方にも動きがあった。

 

(あっ、何か変なものが二つ付いてる)

 

 息子の生涯のパートナーにして、ルシオラ生産工場である二つのお玉。それがネリーに発見されてしまった。

 右手で横島の息子を苛めつつ、左手に二つのお玉を手に乗せた。

 

(ぶよぶよしてる~)

 

 右手で息子を扱きつつ、左手でタマタマを弄ぶ。拙い動きであっても、それは横島に衝撃を与えた。

 

 父さん! 僕の相棒が……あいぼーが……AIBOOOO!!

 

(ええい、落ち着け! ルシオラの元は強い! こんなガキにいい様にやられるなんて事は……ない!)

 

 その意思の力は、悠人に負けず劣らずの強固なもの。

 アダルトなお姉さんを追いかけて18年。

 ここで子供の反応するようなことがあっては、今までの自分に顔向けできない。

 タイガーやピートといった男の全裸を思い浮かべ、必死に自分を萎えさせる。彼らも、まさか自分達の出番が、これが最初で最後だとは思うまい。

 

「う……ん? ふぅ、はぁ!」

 

 ぞくりとするような、どこか色気の混じった吐息が横島の耳元をくすぐった。心臓が意図せず跳ねる。

 一体何事だと、僅かに動く首を後ろに動かす。そこには、シアーが横島の背にもたれかかるようにしていて、体を戸惑うように少しずつ揺すって胸を擦りつけていた。

 背中に少し意識を集中すると、先ほどとは感触が違う。二つの、なんだか小さくてコリッとしたものが増えている。

 

(こ、こいつ一丁前に感じて――――!!)

 

 ガキから女の子へ。そして女性に―――――

 

(んなわけあるか! こんなちっちゃい奴に……なんで体が動かねえんだよ!)

 

『上の口はそんなことを言っても、下の口は素直だぞ……これでOKか?』

 

(どんだけ間違ってんだ! 良く分からんなら使うな!!)

 

(小さい方が感度が良いって事よね!? ビバ貧乳ライフ!!)

 

(ルシオラおばちゃんよ、自分を慰めるのは楽しいか?)

 

 父さん! 血管が膨張しようと……負けないで!

 

(分かってる! プライドなんて殆どねえけど……これだけは譲れねえ!!)

 

『横島ハードだな』

 

(てめえはもう喋んな!!)

 

(エロスはほどほどにね! でも、お母さんになるなら未来の巨乳、シアーで決まりよ!!)

 

(必死だな、ルシオラおばちゃん。まあ、スピリットには生殖機能が備わってないから無駄だがな)

 

 混乱に次ぐ混乱。さらに、ここで新たな介入者が出てくる。

 

 ああ、あの役目が私であったなら、3秒で逝かせることができますのに……

 

(何か変な声が聞こえた~!)

 

『今のはテムオ……違う! あの方がこんなことを言うはずが!?』

 

(あの幼女婆さんの中に、ヨコシマの息子が入らないと思うけど……広がるのかな)

 

(『法皇』様で何を妄想している!! この痴れ者め!!)

 

 へえっ、このボウヤが……苛めがいがありそうじゃないか! 犬よりもいいかもねぇ!!

 

 中々鍛えられた体をしている……流石、奴がライバルと言うだけあるな。

 

 誘惑に弱そうですね。これならトトカルチョに勝てそうです。

 

 グルッ! クュガアアアアッ!!

 

(ひいいっ! 変な声がいっぱい聞こえるーー!!)

 

(『法皇』様達は何をしているのだ……まったく、記憶を操る方の身にもなってください)

 

 パニックであった。

 そこに常識人など存在しない。混沌と混乱。それが全て。

 いや、唯一まともなのは、横島であっただろう。もし横島がこの空気に流されたら、事態はある意味収束する。エロの一点に。

 それが分かっていたから、横島は耐えた。耐えて耐えて耐え続けた。

 時間にして数分だったのだろうが、横島には数時間にも感じられた地獄は、ようやく終わりを迎える。

 

「ぷはっ!」

 

 息が切れて、ようやくネリーがお湯の中から出てきた。それに伴ってシアーも横島から体を離す。結局、息子が膨張する事は無かった。多少、硬くなったが、それは恐怖によるものだったと、後に息子は自伝にて語っている。

 ともあれ、横島と息子は勝利したのである。

 出てきた二人に、横島は右手を振り上げる。

 男の尊厳を破壊して、心を無視して、息子を苛めたこの二人にお咎めなしなんてありえない。教育的指導が必要だ。

 

「デコピン!!」

 

「アウッ!!」

 

「シッペ!!」

 

「キャッ!!」

 

 お湯から出てきたネリーと、後ろにいたシアーに日本伝統のお仕置きを加える。

 デコピンとシッペを食らった部分が、真っ赤になっている所を見ると、かなり本気だったらしい。

 

「何するの! ヨコシマ様!!」

 

 なんで叩かれたか分からないネリー達はぷんぷんと抗議するが、

 

「ふざけんじゃねえ!! このガキが~~~!!!!」

 

 珍しく本気で横島はネリー達を怒る。

 今まで自分が行ってきたセクハラが、如何に女の子たちに嫌われる要因になっていたのか、自分の身を通して理解した。望まない快楽は、痛みなどよりもはるかに性質が悪い。少しは自重しようかなと、やられる側になった横島は考えた。

 

 怒られたネリーとシアーは、始めポカンと呆けた顔をしたが、横島が本気で怒っていると分かると途端に慌て始めた。

 

「ど、どうしたの?」

 

「の、の~~?」

 

「どうしたもこうしたもあるか~! このクソ餓鬼ど……も」

 

 語気を荒くして怒っていた横島だが、その怒りは二人を見て急速に萎み始めた。

 二人は訳が分からないといった顔で困惑して、ただ自分達が本気で怒られている事が分かり、プルプルと震えていたのだ。まだ男女のそれが良く理解できないのだろう。

 震える二人に、横島は怒りすぎたと後悔した。横島の怒りは正当なものだ。世の中、女が男にセクハラされる事ばかり強調されるが、逆だってあるのだ。

 しかし、相手は何も分からない子供。何に対して怒られているのか分からない状況で説教しても仕方がない。

 躾や、勉強を教えるのに重要な点は、一体何処が問題なのかを明確にする事だ。問題点を把握させないと、怒っても諭しても意味は無く、返ってマイナスになることもある。

 

「ネリー、シアー、ここは男にとって大切な部分なんだ。ここ弄くられると……弄くられるとな……くそっ! どう言えばいいんだよ!?」

 

 子供に一番聞かれたくない質問とは、『赤ちゃんってどこからくるの?』というものだ。これに関しては、コウノトリや、結婚して仲良くすると、などという曖昧な返答もできる。

 しかし、今回はそうはいかない。質問は、

「なんで、息子を弄くっちゃいけないの?」なのだから。

 痛いとか、気持ち悪いとかも何だか違う。

 気持ちいいけど辛い。こんな事を言っても理解されるはずも無い。

 横島は頭を抱えた。

 

「なあ『天秤』、良い言い方ってないか」

 

『しらん』

 

 投げやりな『天秤』の返答。心底くだらないと思っている様だ。

 

「お前は本当に使えないな」

 

 先ほどから微塵も役に立たない『天秤』に、横島は少々呆れてそう言った。

 使い物にならない。その言葉は、『天秤』には見過ごす事ができないものだった。

 

『雄しべと雌しべが!!』

 

「分かった分かった! すまん、聞いた俺が悪かった」

 

 横島は素直に詫びた。こんな子供触手ロリ神剣に、この手の話題で良き案が出せるわけが無い。というか、『天秤』だって子供なのだから。

 

「とにかく! もう風呂に入ってくんな。後数年もすれば意味が分かるはずだから」

 

 上手い言い方が見つからなかった横島は逃げに走った。

 大人になれば分かる。この言い方は正しく正解であり、非常にシンプルだ。

 尤も、言われた方は煙に巻かれたも同然で、不満がある答えでもある。

 

「……やだ」

「……だ~」

 

 ネリーもシアーも納得できなかった。

 

「わがまま言うんじゃ――――」

「いやだ! ヨコシマ様と一緒にお風呂に入りたい!」

 

 怒りと悲しみが篭った言葉が、逃げに入った横島に叩きつけられる。

 

「オルファはユート様と一緒にお風呂に入って、裸で楽しく遊んでるって言ってた。アセリアお姉ちゃんもユート様とお風呂に入ってるって言ってたし、エスペリアお姉ちゃんもお風呂で遊んだって!! なのに! なんでネリー達はダメなの!? ヨコシマ様は……ネリーの事が……きら……ぃ」

 

 曇りの無い透明感ある青き目から、ポロポロと零れる雫。

 それは嫉妬と、自分が愛されていないのでは、という不安からでた言葉だった。ただ楽しみたいだけで一緒に入ろうと言ったのではない。愛されているという実感がほしかったのだ。

 

 とりあえず悠人は殺す。それだけは確定させておいて、深くネリーとシアーについて考えた。面倒くさい事なら、横島は斜に構えて受け流す。だが、仲間であり美少女であるネリーとシアー、特にネリーの事なら真正面から受け止めようという気になっていた。

本気の訴えには、本気で返すしかない。

 先ほど、一緒に風呂に入らないと言ったのは、自分の為だ。碌な事にならない目に見えているし、煩悩が湧かなければ霊力も回復しない。メリットが無いのだ。

 セリアやヒミカは絶対に反対して、嫌われる事になるだろう。風紀が乱れると怒られ、獣かと白い目で見られる事は間違いない。また、今日のような面倒事になるのも覚悟しなければいけない。

 まったくもって、デメリットばかりだ。

 

 ―――――そんなの関係ねえじゃん。

 

 だからどうしたと、横島は何かに向かって言った。メリットやデメリットがどうとかいう話じゃない。ただ、ネリー達と一緒に風呂に入って遊びたいかどうかの問題じゃないか。そんなの悩むことではない。

 一体、何時からこんなに理屈っぽくなったのか。感情の赴くままでいいではないか。セリアやヒミカに白い目で見られる? そんないつもの事ではないか! 

 煩悩が湧かない子供とはいえ、可愛い女の子たちが慕ってくれているのだ。考える必要など無い。

 ―――――それに、光源氏という例もある!

 何故か『天秤』が舌打ちをした。横島は少し勝ち誇った顔をして、ネリー達に向き直る。

 

「よし、一緒に風呂に入って遊ぶか! めっちゃ楽しそうだしな!!」

 

「やった~~~!!」

 

 泣いたカラスがもう笑った。

 あの涙は一体何処に行ったのやら、ネリーとシアーは満面の笑みでハイタッチしている。

 嘘泣きだったのではないかと勘ぐったが、目尻に涙の跡がくっきりと残っているところを見ると、そうでもないらしい。

 本当に子供だな、と横島は少々を呆れながら、笑みを深くする。その笑みには、この笑顔が見られただけでも十分メリットがあった、などと考えてしまう、自分のフェミニストっぷりに対する笑いも加わっていた。

 

「シアーも、お風呂で遊べそうな遊び道具を教えてやるから」

 

「わ~い!」

 

 無邪気に手を叩いて喜ぶシアー。

 それを見て微笑む横島だったが、突然その顔がガラリと変わった。

 

「ただし!!」

 

 声を荒げ、鋭い目つきでネリー達を睨む。

 いきなりの豹変に、ひっ、と小さく悲鳴を上げたネリー達は、息を呑みながら続く言葉を待った。

 

「ちゃんとタオルを体に巻いておく事!」

 

「へ?」

 

「これは一応良い子の小説だから、全年齢対応版にしておかないといけないんだ。まあ、今回の話はR15用になったけど」

 

 タオルや水着があるかないかによって、年齢制限は大きく変わる。少なくとも全裸はいけない。

 

「あと、お前らを一人前の女にしてやる」

 

 聞き方によっては危険な台詞に聞こえるが、この横島が言うと変な意味には聞こえない。安心感抜群の『変態紳士』横島であった。

 

「このままじゃ、お前らの将来が不安で、やばい事になりそうだしな」

 

 横島は不安であった。このままでは、悪いロリコンにでも騙されて連れ去られるのではないかと。それにもう少し慎み深くなってもらいたい所もあった。

 俺がしっかりと女として教育してやろう。

 そう思う。花も恥らう乙女になるよう、兄として、父親として、魅力的な女性に育ててやる。これも一つのロマンだ。

 

「え~ネリーは大人の女だよ!『く~る』だもん!!」

 

 誇らしげに腰に手を当てて踏ん反り返るネリーに、一体どの辺が誇れるのか一度聞いてみたい。隣でネリーの真似をしているシアーは視界に入れないようにした。ロリ巨乳は扱いが難しくて困る。

 まあ、何はともあれ一段落着いたと、横島は安心したのだが――――

 

「あっ、そうだ! ヨコシマ様、知ってた?」

 

 ネリーはパッと横島の手を掴む。

 

「ヨコシマ様のここと、ネリー達のここって違うんだよ」

 

 そして、横島の手を自分の秘部に持っていこうと―――

 

「どわああああああ!!」

 

 横島は悲鳴を上げながらネリーの手を強引に振りほどき、脱兎の如く風呂から逃げ出した。

 後ろから「何で逃げるのー」という声が聞こえてくるが、完全に無視する。

 神速で走り、出口のドアを開け、同時に体を滑り込ませて脱衣所に逃げ込む。

 

「はあ……まったく、酷い目にあった」

 

『実はおいしい、とでも考えているのではないか?』

 

「アホか! そんなわけな……おお!?」

 

「えっ?」

 

 それはまったくの偶然だった。脱衣所には先客がいた。

 目の前でセリアが服を脱いでいる真っ最中。

しかも既にブラジャーも脱ぎ捨て、パンツに手をかけているところだった。形の良いおっぱいに、横島の目は、自身の意思とは関係なくおっぱいを凝視する。

 

 あまりにも突然の事で、横島はポカンと大きく口を開けた。

 セリアも突然現れた全裸の横島に呆けた顔をする。

 互いに、脳が情報を処理しきれないようだ。でも、目はおっぱいに釘付けだ。

 

 時が凍った世界。

 だが、そんな世界で唯一動いた存在があった。

 息子だ。

 

 息子がどう動いたかというと、

 

 ↓

 

 →

 

 ↑

 

 である。

 何のことだか分からない人は恐らく15歳以下だと思うので、ここで戻って欲しい。

 

 ここで息子に「この節操無しが!」と怒るのは簡単であるが、息子を責めてはいけない。

 彼は限界までがんばったのだし、これは一つ屋根の下暮らしているのならば起こりうる幸運な……いや、不幸な事故なのだ。

 

 そして、時は動き出す。

 

「いやああああああ!!!」

 

 絹をつんざくような絶叫が、第二詰め所全体に響き渡った。

 

 

「何!? 今の悲鳴は!」

 

 居間でゆっくりとお茶を飲んで、訓練の疲れを癒していたヒミカだったが、突然聞こえてきた悲鳴に体を硬直させる。

 

 また、あの人が何かやったのではないか……いや、間違いない!

 ヒミカの脳裏に、スケベそうな横島の顔が浮かぶ。胃が少しだけ、きりきりと痛んだような気がした。

 

「こ、この~~!!」

 

「ぎゃあ、うぎゃああ!」

 

 もう聞きなれてしまったヨコシマ様の悲鳴と、セリアの怒鳴り声が聞こえてきた。

 また、ヨコシマ様が馬鹿なことをして、セリアを怒らせて逃げ惑っているのだろう。

 そうヒミカは推測した。その推測までは正しかった。

 だが、

 

「この変態隊長~~!!」

 

「誤解だーー! 頼む、パンツぐらいはかしてくれ~~!!」

 

 扉をぶっ壊し、目の前に現れた横島とセリアの状態は、ヒミカの推測を一つも二つも超えていた。

 あのセリアが、パンツ一丁で裸の横島に襲いかかっている。

 これを推測するのはどこかの名探偵でも難しいだろう。

 

「あ……えと……止めなさい、二人とも! とにかく落ち着いて、服を着て!!」

 

 怒声とも悲鳴とも取れそうなヒミカの声だったが、二人は止まらない。

 裸の青年と、パンツしか履いていない少女は大活劇を繰り広げる。

 イスが飛ぶ。窓が割れる。カーテンが裂ける。息子は踊る。

 この世のものとは思えない光景に、歴戦の戦士であるヒミカも頭を抱えるしかない。

 

「ああ、どうしたらいいの!?」

 

「ヒミカ~」

 

 その場でヨガをしていたハリオンがヒミカを呼ぶ。

 

「何! この騒ぎを鎮めるいい方法でも考えた!?」

 

「ヨコシマ様の息子って~とっても大きいですね~」

 

 何の解決にもならないのに、どこか真剣なハリオンの声。

 その声がきっかけで、つい目に入らないようにしていた部分を見つめてしまった。

 ぶるんぶるんと躍動する息子を。

 

「いやあー! いやあー! いやああーーー!!!」

 

 ぶるんぶるんとヒミカは混乱した。

 この時点でもうこの騒ぎを収拾できる人物はいない。ナナルゥは興味深そうに横島の股間を見つめているだけで、特に止めようとは動かない。エニは演劇でも見ているかのように目を輝かせて見守っている。

 比較的常識人であるヘリオンは、横島の覚醒息子と自分の股間を見比べて気絶してしまった。恋する少女の想像力は無限大である。つまりは、そういうことだ。

 もはやこのカオスが収まるには、カオスである横島とセリアが自発的に止まるしかない。

 だが、暴走は止まるどころか大きくなるばかりだ。

 

「いい加減! 観念! しなさい!」

 

 必死の形相で、横島の息子に踊りかかるセリア。もはや普段のセリアなど何処にもいなかった。いるのは横島と出会った所為で、自分のキャラを破壊された哀れなブルースピリットだけ。

 永遠神剣『熱病』を振りかざし、音速の斬撃を打ち込む。

 『天秤』を使っていない横島では、到底防ぐ事ができない攻撃の嵐。だが、横島はその攻撃に対応する。栄光の手とサイキックソーサーを駆使して紙一重で攻撃を避け続ける。

 横島が攻撃を避け続けられる理由。それは簡単だった。

 おっぱい丸出しで攻撃。右におっぱい左におっぱい上下におっぱい。

 そのおっぱい運動は横島に無限のおっぱい力を与えてくれる。おっぱい力は、横島の霊力と息子を数倍の大きさにまで引き上げ、ぎゅおおおお~んと暴走させていた。

 ちなみに、暴走であって暴発ではない。ここ重要。ここ重要。

 

「貴方の弱点はここよ!!」

 

 セリアは剣だけでなく、体術も駆使し始めた。神剣をフェイントに使い、横島の体制が崩れた隙を狙って放たれたパンチが、色々な意味でむき出しの息子に唸りを上げて襲い掛かる。

 直接、手が息子に触れることになるのだがそんなことお構い無しだ。

 横島は栄光の手と、サイキックソーサーを駆使して防御していたが、その一撃は表面積が増大している息子では避けられなかった。

 セリアの拳は、見事に横島の息子に突き刺さり、鉄を殴ったかのような鈍い音が響き渡る。

 

「痛った!!」

 

 叫び声を上げたのはセリアのほうだ。

 一体何が起こったのかと、セリアは息子を凝視する。

 そこには燦然と輝く息子の姿があった。

 

 へへ、ぼくを甘く見たみたいだね。これでもサイキックソーサーぐらいできるんだよ!

 

「流石だ、息子! 父としてナニが……じゃなくて、鼻が高いぞ!!」

 

 間違ってないけどね!

 

 右手に光る剣を。

 左手に輝く盾を。

 真ん中には発光する棒を。

 

 男として、生物として、行き着くところまで逝ってしまった姿だった。

 

 プツン。

 

 セリアの中で、何かが切れる。

 

「ふふ……息子! いえ、生涯のライバルよ! 貴方との決着、ここで付けてあげるわ!!」

 

 もう、自分が何を言っているのか分っていないのかもしれない。

 横島と長く一緒に居たことによって、セリアは完全におかしくなっていた。セリアは神剣を構えて、完全な攻撃態勢を取る。

 

「凍りつきなさい!!」

 

 青色の魔法陣が前方に出現する。

 同時に部屋の温度が急激に下がり始めた。

 

「おい! そりゃちょっと洒落になんねーぞ!!」

 

 ただ側にいるだけで刺すような冷気が、その場に渦巻いている。

 こんなものを直接当てられたら、完璧に凍り付いてしまうだろう。

 

「『天秤』早く出て来い! 本気で抵抗せんとまずい!!」

 

『断る。面倒だ。いっそ切られてこい』

 

「てんびーーーん!!!」

 

 相棒の裏切りに横島が叫ぶ。

 だが、こんな馬鹿騒ぎに参加したくない彼の気持ちは良く分かる。

 

 父さん! 避けて!!

 

 息子からの警告が飛ぶ。その警告に従い、横島は必死に飛んでくる冷気を避けようとしたが、

 

「うぎゃあ!!」

 

 避けることは出来なかった。

 冷気の塊は、見事横島の股間に命中する。

 

 寒い……寒いよ、父さん。

 

「息子!」

 

 横島の下半身は、息子を含めて完全に凍りついた。

 もはや身動きできない。

 

「終わり時よ! 息子!!」

 

 動けなくなった息子に、セリアの神剣、『熱病』が振り下ろされる。

 その軌道は完全に息子を捕らえていた。洒落にならない太刀筋に横島の顔が凍る。

 

「悪かった! マジで不可抗力だったんだ!! 頼む、許し―――」

 

 必死の弁明も虚しく、無慈悲なる『熱病』の刃は容赦なく振り下ろされる。

 何かが、ぶちんと、終わった。

 

 

 全員が上を見上げ、『それ』を見ていた。

 

 『それ』は空中でくるくるくると回転している。

 『それ』は縦長で、肌色で、今は凍り付いている。

 『それ』は横島から決して離れてはいけないものだった。

 

 そう、空中にあったのは氷付けになった息子……つい先ほどまで、横島の一部分であり、同時に本体とも言えた存在だ。

 『熱病』の刃は見事に、残酷に、完璧に、息子の命を絶ったのである。

 

「あ……あああ!!」

 

 横島が絶望の吐息を漏らす。

 氷結させられていたせいか、痛みもなかったし、血も出ていない。

 だが、そんなことは何の慰めにもならなかった。

 つい先ほどまで、そこにあるのが当然だったものが無い。

 横島息子の消失。

 横島はただ、一体自分に何が起こったのかを考えるので精一杯だった。

 その間にゆっくりと、息子は地面に落下を始める。

 

「息子!!」

 

 必死に足を動かし、落ちてくる息子を受け止めようとする。

 しかし、凍りついた足は無常にも動いてくれない。

 だが、それでも横島は足を無理やり動かし、息子を助けようと手を伸ばす。

しかし、その手は息子を掴むことが出来ず、床と息子はぶつかり合い、

 パリンと、まるでガラス細工を床に落したかのように、息子はあっけなく砕けた。

 

「息子……息子ぉぉぉぉ―――!!!!」

 

 横島の頭の中に、息子との思い出の日々が走馬灯のように駆け巡る。

 ナンパに100回連続で失敗したときも。バレンタインでチョコが手に入らなかったときも。

 どんなときでも側にいてくれた唯一無二の息子。

 

 永遠に側にいてくれるものだと、そう信じていた。

 しかし、永遠なんてなかったのだ。

 目の前で砕け散った息子を前に、横島はそれを思い知らされた。

 

「何で……どうして!!」

 

 生れ落ちて18年。

 余りにも早くて、余りにも唐突すぎる別れだった。

 

「死ぬな……死なないでくれ!!」

 

 氷漬けでばらばらになってしまった息子を、横島は必死に激励する。

 生きて、生きてくれと。

 

 ごめん……僕はもうだめみたいだ。

 

 死期を悟ったかのような息子の声に、横島は頭を振る。

 

「そんな……そんな悲しいこと言うなよ! ……だってお前はまだ一度も!!」

 

 まだ一度も本懐を遂げていない。

 一度たりとも本当の使い方をしていないのだ。

 こんなの悲しすぎる。

 

 ううん、いいんだよ。父さんは僕のことを休まずに使ってくれた。大切に毎日、毎日休まずに……夢の中でも……だから、もういいんだ。

 

「そんな……嘘だ! 嘘だ! 嘘だ!!」

 

 もう、全てを受け入れようとしている息子を前に、横島はみっともなくただ喚き、泣きつづける。死を前にした息子に何一つできない無力感と、絶望感に、横島はただ泣くことしかできない。

 息子はそんな横島を見て、自分が本当に愛されていたことを、必要とされていたことに気づいた。

 親よりも先に死ぬ子供は地獄に落ちると言う。

 賽の河原で石積みをする自分の姿を、息子は思い浮かべた。

 

 ごめんなさい……もうお迎えみたいだ

 

 その言葉と共に、ばらばらになり氷漬けだった息子が、金色のマナに変わっていく。

 最後の時が来たのだ。

 

「逝くな! 逝かないでくれ!!」

 

 悲痛な横島の叫び。

 聞くだけで涙を誘われるような、それほど愛と悲しみに満ちた声。

 男なら、自分の息子との別れを悲しまないわけが無い。それもこんな形で別れるなど。

 

 大丈夫……僕たち、何もなくしてないから。

 

 息子は最後まで穏やかに笑いながら、金色のマナの粒子となって、この世から消えた。

 横島は最後まで消えていく息子を手に掴もうとしたが、叶わぬことであった。

 

「うああああああ!! 息子ーー!!!」

 

 絶望、悲しみ、悔恨、その他もろもろの感情が、心の海より湧き上がる。

 ああしてやれば良かった。こうしてやれば良かった。

 もう少し自分に勇気があれば、夜這いでも何でもしてやったというのに。

 失われたものは戻らない。横島はただ、悔恨と絶望に震え、泣きじゃくった。

 

「ヨ、ヨコシマ様……あの、その」

 

 顔面蒼白なセリアが横島に話しかける。

 とんでもないことをしてしまった。

 そんな思いがセリアの中に渦巻いていた。いくらなんでもこれはやりすぎたと、理解したのだ。

 

「すいません! ここまでするつもりじゃなかったんです。ただ……ただ私は……ヨコシマ様!?」

 

 目の前の光景に、セリアは目を剥いて驚いた。

 横島が金色のマナに変わっていく。

 それが指し示す意味は一つ。

 横島は……今正に、消えようとしているのだ。

 

「……もう、終わりだ」

 

 息子という自分の半身を失った。

 もう横島は、この世界に色を見出すことが出来なくなっていた。

 何もかもが灰色にしか見えない。

 生きる活力を、意味を、魂を、全て失った横島は、息子の後を追う事を選んだ。

 

『ちょっと待て! 主、しっかりと心を保つのだ!!』

 

 まさかこんなところで消えられては堪らないと、『天秤』は必死に横島を激励する。

 だが、横島はまったく反応しない。半身を失った悲しみは、もう癒える事はないのだ。

 

(おいルシオラ! 貴様からも何か言え!! このままではお前の恋人が死んでしまうぞ。貴様の声を横島に届くようにしてやる。早くこの場をなんとかしろ!)

 

(……うふふ、私もう転生できないのね。今思うと、息子は私にとってなにより重要な存在だったと言うわけか。失ってから気づくなんて……私ってダメな女ね)

 

(貴様も混乱するなーー!!)

 

 どこぞの鬼や、覗きの神様ぐらい役に立たないルシオラだった。

 

「……『天秤』、エニをしっかりと幸せにするんだぞ。皆も元気でな」

 

 いつに無く優しい声の横島に、全員が悟った。

 これが今生の別れになる事を。

 

「生まれ変わっても、また息子と共に……」

 

 スピリット達の悲痛な叫びの中で、横島は静かに最期を迎えた。蛍のような淡い金色のマナとなって。

 後には、『天秤』という神剣だけがその場に残されていた。

 

 

 

 こうして、この物語は終わりを迎える。

 これから先のラキオス王国についてだが、特に特筆すべきものはない。

 大陸に流れた戦乱という名の激流に、ラキオス王国は飲まれていった……それだけである。

 

 

 

           永遠の煩悩者   完

 

 

 

 

 

 

 んなこたぁない。

 

 

 

 ――――なさい。

 

 女性の悲しげな声が聞こえる。

 

 ――――ごめ……なさい。

 

 何度も何度も謝っている。

 どうしてそんなに謝るのか。それに、これは一体誰の声か?

 その事が気になった横島は、ゆっくりと目を開けた。

 

「ヨコシマ様!?」

 

 目に飛び込んできたのは青いポニーテール。セリアだった。

 目を開けた横島に安心したのか、胸を撫で下ろしている。

 周りを見渡すと、そこは自室だった。窓から見える景色は、もう真っ暗で、時刻が深夜だということを教えてくれる。どうやらずっと看病していてくれたらしい。

 

「良かった……本当に良かった」

 

 目を赤くして、掌を握ったり開いたりして喜びを表現するセリアだったが、横島はそこには目をやらず、不思議そうに自分の体を眺めていた。

 

「俺は死んだんじゃあ……」

 

「はい、エニが蘇生魔法、リヴァイブでマナの霧になったヨコシマ様を再構成してくれたのです」

 

 蘇生魔法は難易度が高い神剣魔法だ。ハリオンにはまだ使えず、使用できるのはエスペリアだけだったはずだ。

 

「エニは凄まじい潜在能力を秘めているようです。……それだけではないようですが……」

 

 いくら潜在能力があろうとも、練習したことすらない技を使えるのは変だ。それに、魔法を詠唱している時のエニは普段とは様子が違くて、何かに操られているように見えた。神剣に操られていた場合なら、ハイロゥが黒く染まるはずだが、それもない。普通とは違うが、何がどうとは言えなかった。

 

 まあ、エニの事は今はいい。重要なのはヨコシマ様だと、セリアは横島に向き直る。

 

「あの……その、ヨコシマ様……え~と」

 

 珍しく歯切れの悪いセリアに、生気の無い目を横島は向けた。 

 

「この度の事は本当に何と言ってよいのか……申し訳ありません。全て私がいけなかったのです。申し訳ありません!!」

 

 ただひたすら謝罪の言葉を繰り返し、頭を下げる。その謝罪が本気のものである事はすぐに分かった。こんなにも、青い顔で申し訳なさそうなセリアの表情は見たことが無い――――――だからどうした、とも思うが。

 何の感情も湧いてこない。

 怒りも、悲しみも、恨みも、何もない。あるのは空虚な喪失感だけ。

 

「俺は……何のために生きているんだろう」

 

 どこぞのヒロインの言葉を抜き出して、横島はぽつりと言った。

 だが、そこにお笑いの影は見えない。本当に、横島は自分の存在意義を見失っていた。煩悩者たる自分が、その煩悩印を失ってしまった。起たない変態は、ただの変態だ。

 

「あ……その、大丈夫です」

 

 そう言うセリアに、横島は眉を顰めた。

 一体何が大丈夫だというのか。もう、取り返しがつかないというのに。

 

「あ、ええと……その、お確かめください」

 

 目で下半身を見てと促す。横島は、息子が消え去った下半身など見たくなかったが、しぶしぶと目を向けた。

 

 やあ。

 

 そこには、いつもと変わらぬ、息子の返事がそこにあった。

 

「あ? ああ!? あああ!! 生きてる……息子が生きてる!!」

 

 股間に感じるその存在。色、艶、形、躍動感。命の輝き。

 息子だ。

 息子が生きている!!

 

「お……おおおおぉぉぉぉ!!」

 

 目から涙を流し、歓喜の咆哮を上げながら息子を強く握り締める。

 

 痛いよ、父さん。

 

 恥ずかしそうに、だが、嬉しそうに言う息子。

 間違いなく、今まで生きてきた息子だった。涙して息子との再会を喜ぶ横島。

 そんな二人の様子を、どういう顔をして見ればいいのか分からないセリアは、色々と困った表情で二人を見て、そしてもう一度深く頭を下げた。

 

「申し訳ありませんでした!! 今度の騒ぎは、ヨコシマ様に何の不手際も無かったというのに!!」

 

 大抵の騒ぎは横島が馬鹿をやることにより発生する。

 しかし今回の騒ぎに関しては、横島は純粋に被害者だ。いつもは野獣の如く飛び掛り、変態的な行動を取ろうとして殴られる。ここに同情すべき余地はない。

 だが今回は違った。本当に事故だったのだ。

 

「ふざけんなー!! ごめんなさいで済んだら、警察も弁護士もいらんのじゃー!!

 

 流石の横島も頭にきていた。

 確かにセリアの半裸を見るという特典はあった。

 しかし、流石に息子とでは比較にならない。

命を懸けて女体に挑むのが横島という男だが、命を掛ける事が出来ても息子を掛ける事は出来なかった。

 

「責任とって貰うぞ、おんどりゃー!!」

 

「……はい」

 

 さすがに笑って許してもらえるとは考えていなかった。実際、やりすぎであった。

 処刑されて当然と言えるほどの不敬を働いてしまったのである。いや、不敬などと言うレベルは疾うに越えている。大抵の悪ふざけなら横島は笑って流せる度量――――というか芸人根性を持ち合わせていたが、今回ばかりはその限界を超えてしまった。

 強烈なまでに輝いた目の横島に、処刑という、最大の処罰もあると覚悟する。神妙にしながら、横島の下す裁定を待つ。

 縮こまって、畏まっているセリアに、横島はふんと鼻を鳴らすと、右手を近づけていく。

 叩かれる。そう思ったセリアは思わず目を瞑って歯を食いしばる。だが、訪れた衝撃は、セリアの予想していたものと違っていた。

 

 ぐにん!

 

「きゃあ!」

 

 想像していた衝撃とは違う種類の衝撃に、セリアは痛みで上げる悲鳴とはまた別種の悲鳴を口から洩らす。

 臀部中心に、痛みと甘く痺れるような感覚が全身に広がる。

 一体何事かと見てみれば、横島の手がセリアのお尻を深く握っていた。

 

「いきなり何を!」

 

 突然のセクハラにセリアは右手を振り上げる。そして、横島に向かって振り下ろそうとしたのだが、

 

「ふん! なんだそりゃ。 俺の裁定を受けるんじゃなかったのか。さっきの言葉は嘘か」

 

 ピタリと、セリアの手が止まる。

 言った。確かに言った。

 大人しくヨコシマ様の裁定を受けると。

 そうだった。こういう人だった!

 これからの事を想像し、血の気が引いていくのをセリアは感じた。

 

「こ、こういう事をするのなら、ご命令を下されば!!」

 

 スピリットは命令には逆らえない。命令されれば嫌々でも体を動かすことが出来る。セリアにとってはその方が楽だった。心と体を切りはなす事ができるから。

 そんな考えを見抜いたのか、横島は白けた目でセリアを見つめる。

 

「こういうお詫びってものは、命令とかそんなんじゃないと思うけどな~俺はそう思うよ」

 

 悪魔を思わせる笑いで、横島は正論を吐く。言っている事は正しいとセリアも感じたが、嫌らしさと醜悪さを感じて、背筋を寒くした。

 

「誠意が感じられんよなー」

 

 くっ、と唇を噛む。もう逃げられない。

 それに確かに悪かったのは自分なのだ。これは罰。贖罪なのだ。

 

「わ、私の体を好きにして……どうか怒りを沈めてください……ううぅ」

 

「へっへっへ、そこまで言われちゃあ仕方ないな~」

 

 横島の手の動きは素早かった。

 右手で臀部を満遍なく触り、左手を背中に這わせる。

 

「あ~やっぱり柔らかいな……いや、少し硬……もう少し力を抜けよ」

 

「そんなこと言われても……いゃ」

 

 セリアの表情を硬化させて、手や肩は本当に僅かに震えている。お尻や背中だけじゃなく、太股やお腹に手を這わせると、ガチガチに緊張していて硬くなっていた。

 セリアは必死に横島に触れられる事への悪寒に耐えていたのだ。

 

(そんなに嫌がらなくなっていいじゃないかよ!)

 

 嫌がる女性を無理やり、と言うのは横島の趣味ではない。ラブラブで濃厚なのが横島の趣味である。こうまで嫌がられると少しだけ心が萎えてくる。

 しかし、横島と言う男は並みのスケベではないし、そんな理性だけで動ける男でもない。自分だけではない。息子だって怒っているのだ。このチャンスを逃すわけにはいかない。

 

 胸に手を当てて、優しく揉みほぐす。ハリオンやナナルゥのように大きくはないが、それでも十分な感触があった。その心地よい感触に、もっと触りたいと、胸元のボタンに手を伸ばす。そこで、横島は何となくセリアの顔を見てしまった。

 青白い。まるで病人のような顔だ。唯一赤みがあるのは目ぐらいだ。

 

 思わず、胸元に伸ばした手を引っ込めてしまう。

 横島は確かに並みのスケベでは無いが、母親に叩き込まれた倫理観と、彼自身の優しさもある。

 どうしたものかと思いながら、手だけはセリアの体の上を走らせる。だが、それは胸や股間ではなく、肩や頬などスキンシップ程度のものだ。

 それでも、手が体ををなぞるたびに端正な顔が歪む。歯も食いしばっているようで、口も真一文字で結ばれていた。

 

(ふざけんな! そんなに俺が嫌いなのか!!)

 

 どうしてそこまで嫌がるのかと、罪悪感と同時に怒りが湧いてくる。

 その嫌そうにしている顔を、いやらしく乱れさせてやろうと、乱暴に服の中に手を突っ込んだ。

 

「ひやぁ! あ……いや、やぁ……うぁ……」

 

 セリアの表情が変わる。嫌そうな表情が消えた。そこにあるのは怒りでも恥辱でもない。

 ―――――恐怖。

 

 これから先、どのような凌辱が待つのか。

 自分の体がどのように弄ばれるのか、それを想像し、心から恐怖していた。

 そこで、横島は何となく気づいた。セリア・ブルースピリットは、それほど強い心を持ってはいない。ただ、いつもの強気な態度はその弱さを隠す仮面なのではないかと。

 逆らえず、恐怖しかしていない美女の体をこねくり回す。

 ―――――違う。これは望んでいた行為ではない。

 

 横島の怒りが、ここで爆発した。

 

「な、なんだよ! そんなに辛そうな顔しなくてもいいじゃん!! 息子殺しかけたくせに…………俺だって結構頑張って仕事してんのに! そんな俺の嫌いか、この無愛想ポニテツンデレ!!」

 

 横島は涙目で感情をぶちまけた。本当ならもっとエッチな雰囲気にでもなって、嫌も嫌よも好きのうち、そんな感じになる予定だったのだ。

 しかし、本気で嫌がられて、延々と苦しそうな表情を見せられ、横島は切れてしまった。

 切れられたセリアは暫し唖然として、次にここまで身を差し出しているのに怒られるという理不尽さに激怒する。

 

「なんですかそれ! どうして私が文句を言われなきゃいけないんです!?」

 

「うるさい! ツンデレならいい加減、デレを見せろ!!」

 

「そんなの知るかー!」

 

 馬鹿らしい言い合いが始まる。横島が「そんな無愛想じゃ嫁の貰い手も無い」と罵れば。セリアは「ヨコシマ様で無ければ獣でも構わない」などと返す。

 それに腹を立てた横島はグイッとセリアのポニーテールを引っ張った。グッと首を後ろに曲げられ、間抜けで笑える姿のセリアを横島が笑う。

 笑う横島に、セリアはお返しとばかりにバンダナで力いっぱい額を締め上げた。

 

 夫婦喧嘩は犬も食わない。そんな諺を思い出すような、なんともくだらない喧嘩であった。セリアは子供の時ですらこんな馬鹿なことはしたことが無い。童心に戻ったような二人に、それを内から眺める二人には色々と厳しかった。

 

「ああもういい!! キスしろ! それで今回の事は終わりにする」

 

 急に条件が軽くなった。だが、ここで安心してはいけない。

 

「だたし!!」

 

 ほら来たぞ、とセリアはどんな難題が出るのか身構える。

 

「新婚みたく愛の篭った台詞で俺を誘惑してキスを強請る事! もちろん、キスするときに辛い顔はしないように!!」

 

 そんな要望に、セリアは何を言っているのかよく分からず、困惑しながら横島を見つめた。何をどうしたらいいのか、良くわからないのだ。

 

「ええと……それはどうすれば」

 

「ちっ、全く無知だな。まあいいさ、良し! ここは思いっきりベタでいくぞ。結局は、ベタこそが最強だからな!!」

 

 セリアに何を言うべきか耳打ちする。何を言うか聞き終えたセリアは、そんな事は言えないと顔を赤くして抗議したが、それじゃあ体中を触らせてもらうぞ、と言われては従うしかなかった。

 

「……あなた、ご飯にする? お風呂にする? それとも、わ……た……言えないわよー! こんなの~~!!」

 

 いやいやと首を横に振りながら座りこむセリア。顔を赤くして、恥ずかしさのあまり足腰が立たないようだ。

 そんなセリアを呆然と見ていた横島だったが、ややあってはっと気を取り戻した。

 

「やべえ! 可愛い!! 可愛すぎる!!」

 

 ギャップ萌。

 それは、普段見せない表情を見れたときに感じるもの。クールで強気なセリアが、恥ずかしさで顔を赤くして座り込んでしまうというのは、正にその典型だ。

 

「うるさいわよ……この変態……ばかぁ」

 

 蚊の鳴く様な声とはこういうものを言うのだろう。言ってしまった恥ずかしい台詞と、縁遠いはずだった可愛いという褒め言葉。このままでは恥ずかしさで死んでしまうと、セリアは本気で思っていた。

 横島にとっては、この言葉が止めとなった。

 セリアの肩と腰に腕を廻し、グイッと引き寄せる。あと少し力を込めれば、痛いと言わせてしまう様な、そんな力強さが込められていた。それは、強い意志の表れ。

 

「目を閉じろ」

 

 生気を漲らせた強い表情と有無を言わせぬような力の有る言葉に、セリアは素直に従った。逆らえないほどの力で抱き寄せられたのか、それとも逆らう気が起きないのか、どちらかは分からない。ただ、その顔には嫌悪感が消えていた。

 体から力を抜く。横島の腕がセリアの体を支えた。男性の鍛えた二の腕の感触に、セリアは感じたことの無い安心感を得た。体の奥が熱くなる。唇を、僅かに突き出した。

 

「んっ……」

 

 唇を置くだけの優しいキス。

 

 横島にとっては数回目のキス。

 そして彼女――――ナナルゥ・レッドスピリットにとっては始めてのキスだった……ただし、鼻の頭であったが。

 

「あれ?」

 

「……どうしました。ヨコシマ様?」

 

 相も変わらず無表情なナナルゥ。互いの息が唇にかかるほど顔が近いと言うのに、眉一つ動かさない。また、これだけ至近距離でナナルゥの顔を見ても、肌に一つの染みも無い。

 燃えるような赤い髪と雪のように白い肌。鼻も高く、唇も薄い。一分の隙もないナナルゥの美貌に、横島はただ見惚れて―――驚いた。

 驚いた拍子に手から力を抜いてしまい、ゴツンという音と、女性の悲鳴が聞こえたような気がしたが、それは目の前に現れたナナルゥに比べればどうでもいいことだった。

 

「ナナルゥ!?」

 

「はい」

 

「何が!?」

 

「申し訳ありません。言いたい事が分かりません」

 

 パニックになる横島とは反対に、いつも通りナナルゥは冷静だ。

 そんなナナルゥの顔を見て、横島も少しずつ落ち着いていく。

 何が起こったのかというと、横島とセリアがキスする寸前に、どこからか現われたナナルゥが間に顔を入れて横島の唇を鼻で阻止したのである。

 どうしていつも良い所で横槍が入るのかあと少しでキスが出来て、あわよくばその流れでいんぐりもんぐりと考えていたのに。

 残念がる横島だったが、ここで発想を切り替える。

 

 ナナルゥは間違いなく美女。

 こんな美人とキスして怒るなんておかしいだろう。

 むしろ、これは喜ぶべきことではないか。別にセリアよりもナナルゥの方が好きと言うわけではない。

 だが、ある種の期待が横島の中に生まれていた。

 

「ナナルゥ……なんで」

 

「ヨコシマ様とセリアをキスさせないためです」

 

(エンディングが見えたーー!!)

 

 横島は神と化した。

 遂に俺の時代が来たのだと。

 これからの展開に期待に胸を躍らせる。

 これから訪れるだろう、ラブリー濃厚どろりエッチィシーンに。

 15禁表記のギリギリに挑戦しようと。横島は決意していた。

 

 これはなに?

 

 セリアは茫然と目の前の光景を見ていた。

 目を閉じて待っていても、唇には何も当たってこなくて、一体どうしたんだろうと思っていたら、体を支えていてくれた手がなくなり、後頭部を思い切り床に打ちつけた。

 一体何事だと起き上がって前を見ると、目の前ではいきなり現れたナナルゥが、ヨコシマ様とキスをして、なんだか楽しそうに喋っている。

 別にキスできなかったことは残念ではない。むしろ嬉しい。助かった。本当に嬉しい。きっと嬉しいはず!

 口の中で助かった、嬉しいと何度も噛み砕く。嘘ではない。『喜び』と『残念』の気持ちなど両立するわけないのだから、と。

 

「どうしたのです、セリア」

 

 本当にいつも通り、ナナルゥがセリアに向かって問いかける。

 意味の分からない怒りが、セリアの胸中を駆け抜けた。

 

「ちょっとナナルゥ! 貴女は一体何を考えてるの!!」

 

「セリアはヨコシマ様とキスしたくないのでしょう?」

 

「当然よ! 誰がこんな人と!!」

 

「こ、こんな人って」

 

 こんな人呼ばわりに、横島は体育座りをしてしくしくと涙を流す。

 もう少し扱いを良くして欲しい。横島18歳の異世界であった。

 セリアの質問に、ナナルゥはコホンと咳払いをして、二人に向き直る。

 

「キスというのは、お詫びなどでするようなものではありません。互いに相手を想いあい、その結果として生まれるものです。愛のないキスなどしてはいけません。ましてや、強要されてするキスなど、可哀想なだけです」

 

 まるで用意されたスピーチの読むように、淀みなくナナルゥは言った。思いもしなかった長台詞に、横島もセリアも呆気に取られる。

 あのナナルゥがこんなことを言い出すなんて、第二詰め所のメンバーなら誰でも驚くだろう。

 しかも、言っている事は何気に正しい。

 何か変だと二人は感じていた。随分とロマンチストな事を言っているのに、言葉に熱がこもっていない。

 その時、ナナルゥからごとんと何かが落ちる音が聞こえた。落ちたのは一冊の本。

 

『愛・そして生きるために死ねますか?』

 

 そんな題名の本を手にとって見ると、そこにはナナルゥが言った台詞がそのまま書いてあった。

 ナナルゥはただ本の中の言葉を抜き出したに過ぎなかったのだ。

 白い目でナナルゥを見つめる二人。そんな二人に、ナナルゥはバツの悪そうな顔をした。

 

「私は、まだ『愛』とはなにか、答えを出せていません」

 

 項垂れるように訥々と喋るナナルゥに、なんだか苛めているような気分になってしまうのはどういうことか。

 

「ですが……」

 

 何か戸惑いが込められた声で、ナナルゥは二人を見つめる。

 

「ヨコシマ様とセリアがキスしようとしている所を見て……そうですね、イライラしたのだと思います。恐らくは嫉妬かと……だから、邪魔をしました」

 

 本当に淡々と言うナナルゥだが、自分が凄い事を言っていることに気づいているのだろうか。愛の告白とまではいかないが、それに近い事を堂々と言っているのだ。それに、本の中身の言葉を抜き出したときよりも、感情というものが感じられた。

 そんなナナルゥを見て、横島も覚悟を決める。

 幸い、15禁まではOKなのだ。この機会にやれるだけの事をやってしまおうと、横島は決意した。

 具体的な性描写が無ければ、ある程度の事はオッケーのはずだ。

 ぐへへと笑いながら、横島はナナルゥに手を伸ばし、

 

「セリアがキスされなくて良かったです」

 

 ピタリと伸ばした手が止まった。

 

「おい! ちょっと待てナナルゥ。それって、俺がキスするのは嫌じゃなくて、セリアがキスするのが嫌だったって事か!?」

 

「はい」

 

 この瞬間、横島は自分自身に対して妙な希薄感を感じた。言うなれば、先ほどまではスポットライトに照らされて主役を演じていたはずなのに、今は森の動物役のような、そんな感じだ。

 ナナルゥはゆっくりとセリアの方に向き直る。ナナルゥのルビーのような赤い双眸にから、まるで熱いビームが発射され、射抜かれたかのようにセリアは感じた。

 

「セリアは私とキスするのは嫌ですか?」

 

 何この超展開? 神様は私に何をさせたいの?

 

 思わず天を仰ぐ。

 何故こんな事になってしまったのか。これから自分はどうすればいいのか。これから自分はどうなるのか。

 まったく先が分からない――――にもかかわらず、何で嫌な予感が止まらないのだろう。

 そのときだった。

 

 ごとり。

 またもやナナルゥから本が落ちる。

 それに目をやったセリアは、一瞬世界が止まったかと思った。

 その本には、セリアに似ているブルースピリットとナナルゥに似ているレッドスピリットが絡み合っていた。性的な意味で。

 よく本とかを見て、その登場人物に自分を重ねる人がいる。ひょっとしたらナナルゥは、その本の登場人物に自分とセリアを重ねているのかも知れない。

 

「さあ、セリ……いえ、セフィー、一緒に愛を始めましょう」

 

「駄目! 私にはアセリアが……って、何言ってるの私はーー!! それにセフィーって誰よー!!」

 

 もう、自分が何を言っているのか分かっていないのかもしれない。

 それでも、セリアの否定の言葉を口にした。だが、それにも関わらず、ナナルゥは不気味な笑みを浮かべる。

 

「へっへっへっ、あんな女のことなんか忘れさせてあげましょう……こんな感じでよろしいでしょうか、ヨコシマ様」

 

「あ……ああ。良いんじゃないか?」

 

 何が良いのか正直横島にも分からなかったが、とりあえず良しとした。

 これがギャグや冗談ならともかく、ナナルゥは本当に真面目に『愛』を理解しようとしているから無下には扱えない。

 それに、ナナルゥの不可思議さと、変態チックな笑い方に横島自身もかなり引いてしまっていて、どうしたらいいのか分からないと言うのも本音でもある。

 これは素なのだろうかと、本気で疑いたくもなる。

 

「ありがとうございます。では、いただきます」

 

「いやーー!!」

 

「愛とは、追いかけるものです」

 

 居間のほうに逃げ出すセリアと、それを追うナナルゥ。

 次に聞こえてくるは破壊音と悲鳴。

 

 愛。

 少々くさい物言いだが、愛は素晴らしいものだろう。

 それを探しているナナルゥは悪いわけではなく、むしろ素晴らしいと言える。

 しかし、愛にも色々あるのだ。その形は千差万別。

 

「ちょっとナナルゥ!! いい加減に……やあっ……そこ……んぁ! これも全てヨコシマ様の……っぁ! 耳元に息を吹きかけないで、やぁ!!」

 

「じたばたしないでください……いえ、もっとじたばたしてください。愛とは抵抗されるものです」

 

 バタバタと暴れるセリアを、ナナルゥは羽交い絞めにして押さえつける。単純な力ならセリアの方が上なのだが、ナナルゥは巧みな指使いでセリアの弱点を弱く、強く、緩急をつけて攻めて抵抗を許さない。

 そんな二人の百合っぷりを、ハリオン様はにこやかに見ていた。無敵である。

 

「こら! 何暴れてるの!!」

 

「ヒミカフィー……申し訳ありません。貴方との関係は遊びだったのです」

 

「えっ!? そ、そんな……あの激しい夜を忘れるなんて、私には……って! 何を言わせんのこら!! それに、ヒミカフィーって語呂が悪くない!?」

 

「愛って~素晴らしいですね~」

 

「えっ? 何? 愛ってこういうもの!? というかハリオン! 見てないでなんとかして!!」

 

「いやですねぇ~ハリフィーって呼んでください~」

 

「ハリオン! 貴女はどこまで無敵なのよーー!!」

 

 居間からヒミカの悲鳴が聞こえてきた。

 壊れない常識人は可哀想だなと、横島はぼんやりとした頭で思う。

 というか、無理やりはいけないとか言っておきながら、指技を使って籠絡させていくのはいいのだろうか。そもそも愛とは何だ。宇宙とは、そして命とは!!

 なんだか思考がやばい方向に行きつつある横島だが、ただ一つ、ナナルゥに切実な気持ちで願うことがあった。

 

 ボーイズラブにだけは目覚めないでくれ、と。

 

 さてさて、今回の話で一番の被害者であると同時に、ピエロは誰であろうか。考えるまでも無い。

 息子と横島だ。

 

「なあ、息子。俺って……俺って!!」

 

 何も言わないで、父さん。僕が付いてるから!! だから今夜は二人で。

 

「ああ、そうだな……なあ息子、もし生まれ変わっても俺の息子でいてくれるか?」

 

 生まれ変わっても、ずっと一緒だよ、父さん……

 

 横島と息子はナナルゥが落としたレズ本を手に取り、ベッドに向かった。

 慰めあう親子の夜がこれから始まるのだから……

 

 こうして、この物語は終わる。

 これは、一人の男が息子との友情を確かめ合う、愛と勇気の物語。

 

「嘘つくんじゃねえ! どこが愛と勇気じゃボケ~~!! ちくしょ~~! でも……でも!!」

 

 ぐっと拳を握り締め、涙に濡れた瞳で空を睨む。

 

「ど~せこんなこったろーと思ったよ~~!!!!」

 

 何にしても、今日も今日とて第二詰め所はにぎやかだったとさ。

 

 めでたし、めでたし。

 

 

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