インフィニット・ストラトス TS少女の過ごし方 作:kaitolian
俺は
………泣いた。
そうこうしている内に下を見ながら歩いていると全く見知らぬ場所に来たらしい。
随分と寂しい所に来てしまった。
人は誰もいなければ、動物もおらず、音も遠くからかすかにしか聞こえない。
というか、夕日のせいで不気味さが際立っている。
そういえば駅をはさんで自宅の向こう側はもうじいさんばあさん達か空き家ばかりの一軒家が広がっていたなぁ、などと思い出しながら車一台が通るのがやっとぐらいの大きさの道路を歩き、十字路に出て直進する。
「はぁ~ぁ、帰り道わかんね~ まあてきとうにすすめばいっか」
「っ……っ……、たすけっ」
音こえの出た方向—左—を見ようと振り返るとなにかが突っ込んでくるのが見えた。
—ドンッ
「ぐがっ、あ゛ぁ」
まるでカエルがつぶれた時に出る音こえだと感じる。
それが自分の声だと認識すると同時に胸が熱くなり、痛みが襲う。
その痛みにより俺の体は動きを止め間髪をいれずに再び痛みが襲う。
ここにきてやっと今の状況を認識する—刺されたのだ。
その直後にぶい銀色が見え、俺は何も考えられずしかし体の防衛本能は働き相手を遠ざけようと手が伸びる。
だがその伸ばされる手は相手にとっては無意味なほど遅く、無視できるほど弱く、無価値なほど場違いだった。
当然な結果として後ろに倒れながら刺され再び動きを止める。
—ザクッ、ザクッ
「い゛ぃ、あ゛ぁ」
2回ほど刺し相手が離れる。
痛みにより体がこわばり、恐怖により目がにじみ、傷により血が抜ける。
相手を見ようとして涙でにじんだ視界によって黒っぽい男が右手に包丁を持っていることがわかる。
5か所も胸と腹を刺されもうじき死ぬであろうことも。
もう助からないとわかるといろいろな思いが浮かぶ。男への怒り、片隅に見える女への心配、友達との思い出への懐かしさ、好きな女性への恋慕、家にいる家族への思い。
「死にたくない」
自然と出た言葉だった。
死ぬとわかっていても死にたくなかった。
友達ともっとそれこそいい歳になっても遊んで、ふざけて、話したかった。
振られるのだとしてもちゃんと女性すきなひとに告白したかった。
家族ともっと一緒にいたかった。
様々な願いが浮かんでくる。
そして現実は無慈悲で、非情で、残酷であった。
じわじわと体に力が入らなくなる。
どんどんと視界が狭くなる。
だんだんと思考が途切れ途切れになる。
そうして死に向かっていく、落ちていく、沈んでいく。
しかし次に目に入った光景がそのすべてを吹き飛ばす。
笑っていた、男が笑っていた、見下すように笑っていた。
—ザケンナ、テメエなにワラッテんだ
男が笑う理由などどうでもよかった、女がどうなろうと興味なかった、ほかの思いも塗りつぶされた。
俺が死ぬのに殺した男が笑うことが、立っていることが、目の前にいることが我慢できなっかた。
—つぶす
男に対する怒り一色に染まった。
もう何もできないのはわかっていた。
重力が何十倍にもなったんじゃないかと思うくらい体が重かった。
サングラスを重ねたんじゃないかと思うくらい目が見えなかった。
水中にいるんじゃなかと思うくらい息が苦しかった。
けれど男に対する怒りは変わらずに渦巻いて
—手が砕けてもいい… 腕がちぎれてもいい…
—だから、男くそやろうをぶん殴れるだけの力をっ!
そう体のてっぺんからつまさきまで心の底から望んだ時、それはあらわれた。
扉があった。実際にはないのだろうけどそうとしか表現できなかった。
そしてそれを開けてくぐったら“もし“とか“だろう“とかは入る余地もなく確実に終わると確信できた。
それも数秒で。
その上で開いた。
「ぃ、っ、ぁ……!」
目は変わらずほとんど見えない
―けれど男の位置はわかる
呼吸も変わらずくるしくてつらい
―けれど数秒なら気にするほどではない
体は驚くほどに軽く、思うがままに動ける
―それこそ筋肉の繊維が感じられるほどに
故に迷いなどなく拳を振りかぶる。
「おお…」
男は驚いたのか動かない。
故に結果は必然で
「おおおっらぁ!」
拳は男の腹にあたる。
男は吹き飛び、ブロック塀と空き家を巻き込みながら止まる。
その光景とつぶれた拳と折れた腕を見て
「ざ、まぁ ……みろ……」
俺は死んだ。
………
……………
…………………あれ?
俺、意識あんの?
♦ ♦♦♦
意識が戻って?時間が過ぎた。
どうやら俺の居る場所は暗闇のようだ。
意識があるのなら天国か地獄に行くのかと思っていたがなにもない。
しばらく時間は過ぎた気がしたがなにも起こらない。
閻魔様にも神様にも一向に会わない。
いつまでこのままなのだろうか。
………
……………
…………………
………………………暇だ
本当ーーーに暇だ。
いくつかここについてわかったことがある。
というよりわからないということがわかったというべきか…
ここにはなにもない。
空気も光も物体も。
自分がどうなっているのかもわからない。
前に歩いている気がする。
体がない気がする。
暗闇自体が俺な気がする。
わからない………
………
……………
…………………
………………………
もしかしてここがじごくなのかもしれない
あのおとこ しんでそう
ずっとここにいることでせいしんをこわす
たしかにじごく なっとく
………
……………
…………………
………………………
くらい、こわい、くらい、くらい、くらい、くらい、くらい、くらい、いやだ、くらい、くらい、くらい、くらい、くらい、たすけて、くらい、くらい、くらい、くらい、クライ、くらい、くらい、ごめんなさい、くらい、クライ、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、タスケテ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ…………………………
………
……………
…………………
………………………
タ ス ケ テ
♦ ♦♦♦
「l,@plhn.up@k,yuj..yyt::」
「:・@。;・@。3-3@;45^-p:・:」
「おんぎゃ、おんぎゃ、おんぎゃ」
ウ マ レ タ
「l,@plhn.up@k,yuj..yyt::」
「:・@。;・@。3-3@;45^-p:・:」
この部分は主人公が赤ん坊なのでまだ聞き取れないけど一応音としてきこえるということです。
わかりにくくて申し訳ありません。