インフィニット・ストラトス TS少女の過ごし方 作:kaitolian
あの時から一週間が経ち、今は放課後。
試合前に準備し、それぞれに胸に思いを抱く。
—俺のISいつになったら届くんだよ!? 初戦じゃなくてよかった~ てかまだIS乗ってないんだけど?
1人は準備不足故の不安を抱き
—機体に関するデータは見つからずじまいですけどいつも通りにするだけですわ!
1人はこれまでの努力故の自信を持ち
—いや~ キレたけど 村八分にされなくてよかった~
1人は自信故の余裕をまとい
2機のISがアリーナへと出てくる。
「ふふっ、この対戦を楽しみにしてましたわ。
まあメインディシュと前菜の順番が逆になりますけど。」
蒼き淑女は気品と優雅さでもって相対する。
「あなたは奇妙な心配をするんだな。というか見苦しいぞ、それは。
代表候補生たる者、嘘をつくのは関心しないぞ」
灰色の戦士は気概と冷静さでもって相対する。
『それではクラス代表決定戦第1試合
「踊りなさい、イギリス代表候補生セシリア・オルコットとブルー・ティアーズの奏でるワルツで」
「鳴けよ、アメリカ代表候補生イリナ・ロペスとグレイ・ファントムの歌うレクイエムでな」
――――開始!』
戦いの火蓋はきって落とされた。
♦ ♦♦♦
互いに構えたのは巨大なライフル1丁とごつく通常より1回り大きいサブマシンガン2丁。
そして開始と同時に発射されたレーザーと弾丸は互いに掠りもせずにそのまま2射、3射と連続する。
それも互いに相手をとらえずに終わる。
セシリアは遠距離に、イリナは中距離に、互いに自分の武器が得意な位置を取ろうと、そうしたやり取りが3分ほど続く。互いに掠りはあってもクリチィカルはない、そんなやり取り。
そうしてお互いの技量を把握する。
「ふふっ」
「ははっ」
射撃の技術は若干セシリアが上なもののイリナの機体の機動力が1段上回ることにより拮抗する。射撃戦で大体同じ。互いにライバルに対する笑みが自然と浮かぶ。
互いに動きを封じるために壁際に追い詰めようとし自然と壁に近い位置で戦闘が繰り広げられる。
イリナが動きを変え、アリーナの壁により、
「はっ」
—ドン!
思いっきり蹴ることにより、一瞬のみ加速する。それと同時に瞬時加速をしさらに加速する。
轟音が響き渡る。と同時に両者の距離がゼロになり
「っ……」
1歩速く大剣を取り出したイリナが斬りつける。連続で斬ろうとし、その直後4条のビームが襲い掛かる。
「くっ……」
とっさに右に出ることにより2条を浴びるだけで済むがすぐにミサイルが腰に固定されてるビットから出てくるのを確認し、即座にサブマシンガンで撃ち抜く。そして2人の中間で爆発し互いにわずかにダメージを受ける。
その衝撃により両者の距離が離れる。
—準備は整いました ダメージは少ないけれどまあいいですわ
セシリアは待っていた。多少のダメージを与えたあとにビットを安全に中距離で展開できるその時を。
セシリアには弱点がある。ビットの制御時に他の武器を使えない。
故に4基のビットをメインに使い、ライフルを補助に使うことにした。
補助といってもやることは相手の行動の妨害のみ。
そうきっぱりと決めることで選択の迷いを、動きの無駄を、思考の雑念を可能な限り減らすことに成功した。
「さあ、ここからが本番ですわ!」
「やっとか、飽きる所だった。」
状況はセシリアが若干押していた。
ビット4基とライフルによる圧力は凄まじい。
相変わらずライフルは警戒しているのか当たらないがビットでの攻撃は直撃はないものの掠りはする。
イリナも反撃する。たまに掠る。
互いに射撃戦で拮抗して上手いのでなかなかダメージが入らない。
掠ることでシールドエネルギーが減っていく。
「そろそろ落ちてくださいまし!」
「あんたがな!」
そうしていくらか経ち観客に飽きが見え始めシールドエネルギーが互いに6割になったとき状況は変化する。
—データ収集、完了 これより殲滅する
―わらった?
反撃が来るのかと気を引き締める。
そう、セシリアには落ち度はなかった。
4基のビットをメインに使い、反撃されそうなときのみ制御を放棄しライフルで攻撃するのは
ビットを破壊されるのを防ぐにも
ビットの制御時に他の武器を使えないという弱点を隠すのにも
相手にライフルでいつも狙われているとプレッシャーを与えることもできる現状最適な作戦だ。
1度嵌れば同格ならば確実に立ち直るまでに少なくないダメージを与えただろう。
故に相手が悪かった。それだけだ。
変化は些細だった。
当たると確信したレーザーが当たらない。
掠るはずのレーザーが避けられる。
連携したレーザーで体勢が崩れない。
「当たらない!?」
気が付いたときには遅かった、なにもかもが避けられた。
「がぁっ」
そして衝撃が襲う。弾丸だった。だが先ほどより重かった、速かった、痛かった。
—しまっ
気がついたら距離を詰められて大剣を握っているのが見えた。
その場で高速に計5回斬りつけられ、ミサイルを放とうとするもビットから出た直後に後退しつつ破壊。
その結果、爆風により自分のみがダメージを受ける。
衝撃で飛んだ先にはサブマシンガン2丁の弾幕が広がっていた。
それらは1つも牽制や外れはなくすべてが多角的に連続で連鎖的に当たっていく。
それら1連の動作は流れるようにきれいで当事者であっても見入ってしまう、
セシリアはそう感じてしまった。
そうすると自然と考えが出てしまう。
—ああ、負けるのですね
弾幕に当たりながらそう考えた。
剣を振るう連撃も武器の切り替える速度も弾幕の精度も。
なにもかもが違っていた。
先ほどまでと違っていた。
すべてのキレが違っていた。
—まあこんなものか
弾幕に当たるオルコットをみてそう思った。
サブマシンガンをレールガンとしてこの試合で初めて使用した。
その後は寄り、斬り、避け、撃つ。それをただ本気でやっただけ。
ただそれだけでなにも特別な技術は使っていない。
そしてオルコットの目に絶望が広がるのが見えて落胆しつつも納得する。
そうして勝者と敗者が決定する………はずだった。
セシリアは見た、イリナがわずかに落胆したことを。
そうして思った。
本気を出していなかったことを責めるわけではなく、
自分の力不足を嘆きながら勝利を諦めるわけでもなく、
貴族の誇りを傷つけられ怒り狂うわけでもない。
悲しかった。ライバルと宣言しておきながら落胆と共に敗北するのが。
様々なことを教えてくれたいつか超える師ではなく、
己につき、従ってくれる導くべき従者でもなく、
いつも数歩前にいる尊敬すべき先達でもなく、
切磋琢磨して日進月歩共に歩んでゆくライバルでありたかった。
セシリアがイリナをライバルにした理由なんてものはない、言ってしまえばただの勘。それに尽きる。
共にありたかった、そう願った。
だからこれから起こるのは奇跡でも偶然でもご都合主義でもなく、為るべくして為っただけ。
言うなればいつもライフルを磨いて点検しオーバーホールも自分でするという自分でできるブルー・ティアーズへの礼となる行為は時間がかかってもちゃんと自分でやるという並外れた努力と感謝と愛情の賜物。
—こ こ に い る
声が聞こえた。
空耳でも幻聴でも妄想の産物でもない。
何故かそう確信できた。
ブルー・ティアーズの声が聞こえた。
いろいろな音が響きあうアリーナで、はっきりと耳に届いた。
そして同時に己の馬鹿さ加減に呆れてしまう。
—なんて滑稽なことをしていたんだろう
共にワルツを奏でると言っておいて実際はブルー・ティアーズをただの家と貴族の誇りを守るための道具として認識していた。
根本的な考えは自分1人で踊っているのに奏でるとは道化以外の何者でもないだろう。
ならばブルー・ティアーズにかける言葉は決まっていた。
—2人で奏でましょう ブルー・ティアーズ
問いかけるなんてことはしない。
もう相手の意思は、思いは、決意は、一言に詰められていたから。
全てを自分1人で背負っていた少女がいつも背中を預けていた友を今見つけた。
1人で戦っていた者が2人で共に歩むことを決意した。
同じように静かに変化が訪れる。
誰もがイリナが勝つと確信していた。
ビットは全て避けられ、ライフルは最初から1度も当たっていない、ミサイルも逆に利用された。
この状況でどう逆転できようか。
イリナは勝負を決めようと接近しとうとする。
最後の悪あがきと言わんばかりにビットが迎えうつ。
すぐに抜けられる、そう誰もが思っていた。
「くっ……」
—なにが起きた!?
すぐに抜けられるはずだった。
1発1発は先ほどと変わらない、攻撃力は重視せずプレッシャーを与え、攻撃が当たった時に発生する衝撃で相手の動きを1瞬封じるというものだ。気にせずに当たらないようにすればよいものだ。
そしてオルコットは
オルコットの攻撃は最適な避けにくい、くらいやすい、反応しにくい、場所に流れで撃つので実行は苦労するが読みやすいそんな攻撃だった。
しかし現実は同時にいくつも撃つ。ましてビットとライフルも。
セシリアが強くなったわけではない。
機体の性能が良くなったわけでもない。
ましてワンオフ・アビリティーが発現したわけでもない。
ただブルー・ティアーズがビットの移動のさいの計算やらなんやらをやっているだけだ。
セシリアはビットを同時には撃てない。しかしそれはランクが足りないとか適正がないとかではない。ただ計算やらなんやらやることが多すぎてできないだけなのだ。
故に誰か手伝ってくれる人がいればビットは移動しながら射撃できビットとライフルを同時に扱うことさえ不可能ではない。
まあ、それでもビットとライフルを同時に扱うことは脳に多大な負担をかけるのだが。
そしてセシリアは共に歩む者がいる。ここにきて頭が痛いと弱音は決して吐かないしそれにより乱れることもないだろう。
情けない姿はイリナにもブルー・ティアーズにも見せたくないから。
そうして試合の天秤は傾く。一方的でセシリアの圧倒的優勢であった。
どこに居ようとビット4基とライフルのタイムラグゼロの連携攻撃が襲う。
イリナは知らないが唯一の救いは機体の経験不足によりまだビームの軌道を操ることができないことである。
仮にできていたならセシリアの心境の変化から1分持たずに落とされていたであろう。
ではなぜ5分経っても落とされていないか。
それはウイングスラスターが中型でx型に4基あり大きさに対し性能がいいからだ。
大型ならば大きすぎて即座に的になり使用不能になっただろう。
小型ならばいくらついてても瞬発力が出ずにレーザーが届いていただろう。
性能が低ければやはり瞬発力が出ずにレーザーが届いていただろう。
「っ………っ……!」
イリナは1秒たりとも気が抜けず必死であった。
なぜならシールドエネルギーの残量など関係なしに1発の当たりがそのまま敗北につながるのだ。
どのレーザーが当たっても少なからず衝撃が発生し1瞬1秒以下の時間動きが鈍る。
今のオルコットならばそんな隙は決して見逃さない。
必ずその次に来るレーザーは当たる。
そうなったら最期、シールドエネルギーが切れるまで永遠とお手玉にされるであろう。
それでも精神が諦めずにビットとライフルから回避の道を探し、体が1ミリのずれもなく正確に実行するのは入学1日目の記憶があるからだろう。
♦ ♦♦♦
IS学園 1日目
「―――――ってことになったんだけどどうすればいい、お母さん?」
「イリナの好きにしてもいいぞ。ああ、けど織斑一夏と戦え。」
「そ、そうじゃなくてぇ」
「わかっている。大剣とサブマシンガンで、あとは記録セットNo5をいれておけ。できる限り詳細にしろよ。
あと事前にデータを集めるのは禁止するからな。」
「え!?」
「どうせこちらのデータは調べられないだろう。
どうせならどちらの開発した機体が有用か、対等な条件で比べてみたいじゃないか」
「うん、わかった絶対に勝つ!」
「当たり前だ。負けるのは許さん。それとあのシステムは使うなよ。
使ったら即刻調べられて取り上げられる。」
「うん、わかったよお母さん!」
♦ ♦♦♦
既に包囲網は完成していた。イリナを中心にして球の表面をなぞるようにビットが常に不規則に飛び回る。
ビットのエネルギーも球の外側にいるセシリアが一瞬接触することで即座に補給が完了する。
イリナに2条のレーザーが迫りくる。ウイングスラスターの1つのみを全開にし避けようとする。
しかしその空間にレーザーが向かうのをハイパーセンサーが捉える。
PICをフルに使い、なんとか回避、する途中にレーザーが迫りくる。
それが終わりが見えずに永遠と続く。
後は時間の問題だ。まだ当たってはいない。
しかし衝撃が発生しないほどかすかにけれど確実に掠り始めてる。
それにより少しずつ本当に少しずつシールドエネルギーが減ってゆく。
1ミリ単位で回避の道からずれていく。
「ぃ――――ゃ――――」
精神がすり減って、だけど負けはありえなくて
—お母さんが勝てっていったんだあああああ!!!
口にはしない。それだけ体力が減るし喋ればその分意識が散漫になる。
その分、心で、魂で叫ぶ。そうすることでなくなる直前だった気力が無限に湧き上がる。
気力で精神を抑えつけ、思考を回す
気力で疲れを吹き飛ばし、肉体を操る。
気力で敗北を打ち消し、勝利を目指す。
けれど失ったシールドエネルギーはどうにもならない。
—まずいですわね あと3分
頭が痛くて根をあげたわけではない。
ただ脳が負担に耐え切れずシャットダウンしようとし始めようとしている。
けれど1度動きが悪くなったあと持ち直したのは本当に予想外だった。
なめているわけではない。
他人から見たらイリヤの勝利などもう文字通り不可能なのに。
けれどそれはライバルの強さの証明で、
自分がピンチになろうとしているのに嬉しくなった。
だから1番いい動きが保てる30秒以内に終わらそう。
そう自然と考えた。
イリナは2割5分、セシリアは3割、それが残されたシールドエネルギー。
残量はわからなくとも互いに絶対防御を発動させれば勝てるのはわかっていた。
相手がそろそろ同じことを狙ってくるであろうことも。
セシリアはイリナが敗北を待っているわけではないと確信してるから。
イリナは回避の道がわずかに大きくなったから。
そうして戦いは終幕へと進む。
イリナは地面とアリーナの壁が接する位置に追いやられ、
セシリアはアリーナの上空制限ぎりぎりの位置にいる。
仕掛けたのはセシリアだ。
当然だ、イリナはセシリアが仕掛けた直後にしか攻撃のタイミングが許されていないのだから。
ミサイルビットからミサイルが出され直後にPICで止められる。それが2回、計4本出される。
PICで止めること自体は簡単だ。いつも自分にやっているのだから。
そうして軌道修正を入れてからPICを解除する。
ミサイルは初速が遅い。故に戦闘速度が速いISの戦闘では使いにくい。
では十分に加速し、退路がない状況ならば?
それは十分に脅威で、容易に必殺となりうる。
ミサイルをエンジンで、位置エネルギーで、PICで、全てを余すところなく使い、加速させる。
それを必殺とするためにぎりぎりまで加速させ、爆発範囲に入る直前に離脱する。
イリナにもその光景は見えていた。
しかしいままで以上にきつくなった5条のレーザーにより全力で避けることしかできなかった。
—前へ!
全神経をミサイルに注ぎ最適の道を瞬時に探す。
もし、少ないダメージが入るがミサイルは避けられるここでの逃げを選んだら、まだレーザーを出していない自爆寸前のビットが自爆し、その衝撃により動きが止まりミサイル全てに当たっていただろう。
—無理 なら!
制限された空間でミサイル4つ全てを避けるのは不可能。
なれば当たっても勝つ道を模索する。
―みつけた!
ひし形状に並んでいる一番下のミサイルの頭身を踏む。
爆発までコンマ1秒
―瞬時加速!
このままではミサイルを抜け切る前に爆発する。それは避けられない。
故に右足の装甲パーツをミサイルの後方に置いた。
そうすることでコンマ数秒その上に爆発が届くのが遅れる。
―ドカァァァンッ!
誘爆までには抜けられるはずだった。
爆風により押し上げられ、抜ける直前に頭上にミサイルが迫る!
そのことによりセシリアへ1直線の軌道が僅かにずれる。
「くっ!?」
左腕の装甲パーツ越しにミサイルに触れ、軌道修正。
距離が近すぎるので爆風がもろに届く。
シールドバリアが左腕に発動。
爆発は遅らしたが爆風は防げない。
その衝撃によりむき出しの左腕の関節がありえない方向にへし折れる。
「っ!」
それでも前に出て、爆発が後方に、加速の手助けをする。
そうして互いの距離が近くなり
—速い!? なら!!!
—つく!!!
「はああああああああああああああああああああああ」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
ISの全面支援を受けたセシリアのインターセプターと
瞬時加速と爆風により超加速を得たイリナの大剣が激突する!!!
『試合終了。勝者―――――』
最後の衝突を制したのは
ISとのシンクロでもなく
加速による速さでもなく
ましてや運でもなく
『――――イリナ・ロペス』
使用者の身体技能が勝敗を分けた。
と同時に観客が、クラスも学年も専攻も関係なく
セシリアのビットとライフルの操作技術に
イリナの航空技術に
そして2人の熱き戦いに
拍手と歓声とその他様々を挙げた。
そして当事者達は
「ねえ、私のこと、セシリアって呼んでくださらない。」
先ほどの1戦などなかったように穏やかに問いかける。
「それには1つ条件がある。」
こちらは楽しそうに答える。
「え!?」
条件など付けられるとは思わず大きな声を上げる。
「私のことはイリナと呼んでくれ。セシリア」
いたずらが成功した子供のように笑い
「ええ、イリナ」
年相応の無邪気に笑う。
こうして少女達の笑顔で第1戦は幕を閉じた。
いやー、セシリア主人公じゃねこれ
ガンダム種死 シン イリナ
キラ セシリア あっ(察し
というのは冗談でなんか戦闘シーンが…
自分の書いた中では最高なんですけど
展開(逆転)が早すぎる?
あと次からは文字数2000~3000に戻ります