インフィニット・ストラトス TS少女の過ごし方   作:kaitolian

5 / 8
第5話

 

 試合後のピットにて

 

「お疲れー、いやー2人ともすごかったねー。」

 

「うんうん、イッリーもセシリーもすごかったよ~。」

 

「ほんと、ほんと」

「すごすぎ~」

「流石、代表候補生」

 

 ふらふらと帰ってきた俺達を相川と布仏やクラスメイト達が迎えてくれる。

 そういえばセシリアが実はクラスの女子達に無礼な発言をしたと謝っていたらしい。

 2日目に優雅に日本人の生徒達と喋っていて驚かされた。

 まあ、ここに来たのは俺達をねぎらうとかいたわるとか褒めるというより次の試合までの時間つぶしとおしゃべりの意味合いのほうが強いとは思うが。

 

「おほほって、痛っ」

 

 セシリアが頭を押さえて苦しそうにする。

 

「セ、セシリア!?」

 

「いたた…。心配しないでくださいまし。ただ無茶な操作で疲労が来ただ、っつう」

 

「ふむ、オルコットはできそうにない、か。

 ではどうする、ロペスはやるか?

 やるとしたら最低限の治療とルール通りにエネルギー補充と弾薬補充のみになるが」

 

 千冬が来て、イリナに参加の是非を問う。

 

「やります」

 

 

 

 ♦      ♦♦♦

 

 

 

「なあ、イリナまた今度にしないか?」

 

 それは純粋に心配から出た提案。

 相手を舐めているとかではなく純粋な心配。

 

「いや、だめだな。」

 

 それに対する回答は冷徹な返答。

 

「なんで!! ボロボロじゃないか!?」

 

 そう。本来試合をできる状態ではない。

 右足と左腕の装甲はすべてなくバランスを取るのにさえ気をつかう。

 掠ったレーザーと4基のミサイルの爆発の影響でウイングスラスターも故障ぎみ。

 その上左腕の関節は壊れており、固定されている。

 そしてなによりセシリアとの試合で消耗しすぎている。

 

「そうだ、セシリアに代わってもらえばいいじゃないか!」

 

 一夏は理不尽や暴力や弱者に敏感だ。

 姉に苦労を掛けたから。

 姉と比べられることがあったから。

 なにもできない立場になったことがあるから。

 そしてそれを目にしたときは全力でなくそうとするのも彼の魅力の1つだろう。

 まあ代わりにプラスな感情には鈍感なのだが。

 それ故にボロボロな女の子と戦うことには抵抗があるのあろう。

 

「無理だ。セシリアはしばらく動けない。

 それにさっきの試合はこのためのものだ。」

 

「………」

 

 それでも納得できないのだろう。黙ってしまう。

 

 -ありがとよ お前の気持ち

 

 前世が男だからわかる。

 女と、ボロボロの女と戦うことへの躊躇い。

 男は友を、女を、家族を守るために強くなる。

 故にこの状況はやりにくいなんてものじゃない。俺だったら逃げる。

 だから背中を押す。

 

「あー なにを悩んでるか知らんが意味ないぞそれ。

 どうせ作戦があっても私は勝つ。

 それに気にしないぞ、どんな方針をとっても。

 たとえ観客が否定をしても私は肯定しよう―――それが戦いなんだと。

 たとえダメな作戦でも私は付き合おう―――お前が貫き通す内は。

 たとえ誰もが呆れても私はお前の前に立っていよう―――エネルギーが尽きるまで。」

 

 織斑をしっかりと見て、挑発するように言う。

 

「さあ、女の私がここまで言ったんだ、お前はどう返すんだ、織斑 一夏」

 

 織斑はゆっくりと目を閉じ、再び開けたときには覚悟を決めていた。

 

「家族を、友達を、身の回りの人達を俺は守りたい。

 守られるだけなんていやなんだ。」

 

 いつも千冬姉が守ってくれた。

 

「悲しい涙はもう見たくない。」

 

 箒が、鈴が悲しくて泣いているのは絶対に2度と見たくない。

 

「なにもできないなんてもうこりごりだ。」

 

 ドイツでさらわれたとき千冬姉を待つことしかできなかった。

 

 

「だからイリナ、お前を倒して強くなる!」

 

 

『第2試合――――――――開始』

 

 

 先に動いたのは意外にもイリナだった。

 

 織斑は口ではああ言っても実際に行動するとなると無意識下で手加減してしまう。

 

 —ならぶん殴ってでも戦わせる

 

 理屈になってない。そんなのはわかってる。

 けれど織斑は誠意を見せ、理解できたなら真剣に返事するだろう。

 

 故に瞬時加速を用いて1瞬で接近し、

 

「オォらあぁ!」

 

 ()()()()()()

 このままでは装甲にぶつかる。そしたらダメージを受けるだろう。

 よってシールドが展開され、そのまま一夏を吹き飛ばす。

 

 それは完全に自爆な攻撃。

 素手で殴った程度の威力ではシールドがあっても意味を為さない。

 ただこちらのシールドエネルギーが一方的に減るだけ。

 当然衝撃は伝わり、関節は痛い。本当に痛い。

 けれどやせ我慢をして、織斑に発破をかける。

 

「さあ、このまま殴られて終わらせるかァ、織斑ァ!」

 

「わかった、ああわかったよ 全力で行ってやる!」

 

 —速い!

 

 スピードが俺より速い。高機動型か。

 織斑は俺に接近し左側に回り込む。

 射撃戦に持ち込まないのは正解だ。

 止まって撃っても難しいのに動きながら射撃なんて素人には不可能だ。

 そもそも今の状態では大剣は扱えない。

 正確には使えなくはないが………

 故に近距離では無防備なのだ。

 勿論わざわざ不利になりたくないので逃げながらサブマシンガンを撃つ。

 

 —すこし 当たりにくいな

 

 しかし俺が扱うのは本来2丁。

 1丁でコースを制限し、もう1丁で当てる。

 そういう撃ち方なので1丁だと命中率がどっと下がる。

 セシリアのような1流ならば話は違うが今の俺ではそれが限界なのだ。

 それに加えて先のセシリア戦でレーザーが掠りすぎたのかレールガンの機構が1丁は壊れ、1丁は不調気味である。

 暴発なんて目も当てられないので当然、レールガンは使えない。

 まあそれでも織斑の動きは単純で素人特有の動きなので当てやいのだが。

 

 —くそ やっぱ逃げるか

 

 逃げたということは考えた通り、大剣は使えないようだ。

 又、生身ではISの武器は使えないから左側は右側より必然的に無防備。

 なら徹底的に左側から攻める。

 

「いくぜ!」

 

「かかってこい」

 

 この戦いには勿論する意味がある。

 お母さんがやれと言ったから。

 それならば腕が折れようと、装甲がなくなろうとウイングスラスターが壊れ気味でも関係ない。

 

 それに前世が男の俺とて織斑に思う所がない訳ではない。

 織斑はこれから様々な困難に出会うだろう。

 それこそ日常の小さいことから世界が関わる大きなことまで。

 だからその前に織斑の性質を知っておきたいのだ。

 織斑の性質を知っておけばアメリカへの引き抜きも可能性が一応増える。

 そして人の性質が明らかになることの1つは戦いだ。

 そう、試合ではなく戦いだ。

 確実な安全が保証されてる試合ではなく、

 負けてもどうにでもなる試合ではなく、

 限界を下回る実力で行う試合ではなく、

 危険を感じる戦いだ。

 次などない戦いだ。

 限界の1つや2つ、超える戦いだ。

 そして問題なことにこのままでは試合で終わる。

 

「はあ、やるしかないか」

 

 左足の装甲を解除し、地面に降りた。

 確かにそうすれば地面に立つことができる。

 そうすれば踏ん張りは効く。

 使わないPICは大剣を持つことに使用できる。

 しかしそれは同時に胸部装甲と腰回りの装甲を除けば右腕のみ装備したもので体に攻撃が当たれば絶対防御がほぼ発動する。

 

「ああ、安心しろ。勝負を捨てたわけじゃない。

 むしろ勝つためにこうしたんだ。

 防御が下がろうがお前のシールドエネルギーをゼロにすればいい。

 なら攻撃力を上げる。妥当な判断だ。」

 

 大剣を地面に突き刺し、仁王立ちになり、気迫に満ちた姿で言う。

 

「さあ、ここからが本番だ。」

 

 ウイングスラスターはフルには使えない。

 ISによるパワーアシストもない

 セシリア戦でほとんどの力を使い果たしている

 そう、上空から攻撃し続ければおそらく勝てる。

 

 —イリナだって言ったじゃないか 肯定してやるって

 

 

 けど、それで得た強さって意味あんのかな

 

 

「意味ねえよ。強さ、経験、勝敗、知るかどうでもいい。」

 

「代表候補生ってほんとスゲーよ。

 だからこんなこと言うなんてどんだけ身の程知らずだって思う。

 けど、そんな風に言われたら正面からしか行けねえよ。

 いや、正面から行きたい。

 勝てるかもしれないから上空から行く――――お断りだ、そんなもん。

 俺がいやだ、そんなつまんない勝利いらねえ。

 そんなの勝利じゃねえ、敗北だ、敗走だ、負け犬だ。」

 

 ああ、なんでだろう。

 正面から来られたらISの詳細なデータは取れないのに、

 ISは空中で最も性能を発揮するから。

 アメリカへの引き抜きだって難しいとわかったのに、

 織斑は心に芯がある。そういう奴は流されにくい。

 なのに、なんで――――

 

「ハッハッハ 織斑、お前が世界初の男性操縦士でよかった。

 本当にそう心から思わせてくれよ!」

 

 

 こんなにも嬉しいのだろうか?

 

 

 織斑がロングブレードを持ち、こちらへと接近し――――

 

「ならさっさと、俺に負けてくれぇえ!」

 

 織斑のロングブレードと俺の大剣が交差し――――

 

「それは無理な相談だぁあ!」

 

 音を、衝撃を、火花をあげて、ぶつかる。

 

 そうしてつばぜり合いして数秒、互いに離れる。

 その0秒前、イリナが瞬時加速を使い前へと出て一夏へとたたみかける。

 

「はっ!」

 

「なっ」

 

 仕切り直しだと思った一夏は息もつかない追撃に反応できずに斬撃を受ける。

 たまらず一夏が反撃しようとする前にイリナが大剣の叩き付ける。

 なんとかロングブレードを間に挟み直撃をまぬがれるがその衝撃により体勢が崩れる。

 すかさずその隙を見逃さんとイリナがたたみかける。

 

「くっ、このっ!」

 

「逃がさん」

 

 一夏が選んだ地上戦は一見愚かに見えるが実は1番BESTな選択であった。

 仮に上空からの攻撃を選んでいたらイリナが危なげなく勝利していたであろう。

 上空からロングブレードでの攻撃は未来予測、急停止、攻撃の直後に相手の攻撃範囲外へ急上昇の3つが最低限勝つために必要だ。

 未来予測は相手が動く場合必要で機動力が高いIS戦では必須だ。

 これは天性の才能がない限り、経験が全てで一定のラインを越えればできるようになるがある一定以下だと毛ほどの価値もない。

 急停止もしっかりとした斬撃を目標に叩き込むために必要でシールドがあるIS戦では必須だ。

 これが言うほど簡単ではなく初心者は大抵止まるのが早過ぎたり遅すぎたりしてタイミングがずれ反撃を食らい攻撃が失敗する。

 急上昇は簡単だ。

 つまり素人にとって上空からロングブレードでの攻撃は一夏が思っているより難易度が高く、実行していたならば上手くできずに一方的にやられていただろう。

 それに比べて地上戦は動作自体は簡単だ。加えてイリナは大剣のみを装備しサブマシンガンを出すようなこともしないだろう。結果、攻撃難易度は下がる。

 つまり一夏は試合での勝利より勝負での勝利をつかむ意思により勝利への道に手をかけているのだ。

 

「こうなったら」

 

「くそっ」

 

 一夏がダメージ覚悟で突っ込み、イリナを離したことにより戦況は傾く。

 いくら一夏が素人であろうと、

 いくら地上で体術が効こうと、

 いくらイリナが上手くても、

 部分展開と全体展開では圧倒的に力も、速さも、耐久性も全てが違う。

 これが上空からの攻撃ならば対応できたがスペック差が大きく関わる地上戦ならばどうしようもない。

 

「ぐっ」

 

「がっ」

 

 されど代表候補生の意地でシールドバリアー発動に伴い破られる前に避けるか反撃するかして絶対防御発動をなんとか回避する。

 斬る、斬られる、斬り返す、回避する、突っ込む、いなす………

 そうして10分ほど過ぎ、互いにシールドエネルギーが3割を切る。

 イリナが絶対防御発動で決めようとし、一夏も対応する形で決めにかかる。

 

「うおおおおおおおおお」

 

「はあああああああああ」

 

 2人がぶつかる直前に白式が白い光に包まれ―――

 

「!?」

 

「なんだ!?」

 

 光がなくなり見えた先には―――騎士がいた。

 今までの無骨さは消え、荘厳さが付き

 機械のかくばりは、滑らかな形に

 工業製品の無機質性は、機能美を求めたものに

 

「これは…」

 

「おいおい、まさか初期設定だったのかよ。

 ハッハッハ 織斑、ますます楽しませてくれるじゃないか!」

 

「俺は世界で最高の姉さんを持ったよ。

 俺も俺の家族を守る。

 とりあえずは千冬姉の名前を守るさ。

 だから、イリナ、お前を倒す!」

 

「はやっ」

 

 予想外に白式が速かった。

 前のセシリア戦で限界だった。

 勝つ必要はなかった。

 理由は上げれば様々あるがそれらのどれもこの瞬間には意味などなく、

 一夏の光剣、雪片弐型がワン・オフ・アビリティーを発動し――――

 

「おおおおっ!」

 

「あっ」

 

 

 ただ1つの結果のみが現れる。

 

 

『試合終了。勝者――――織斑一夏』

 

 

 予感はしていても予想は出来なかった結果に観客は多いに盛り上がる。

 

 

「あーあ、負けた。」

 

「ありがとな、戦ってくれてよ。」

 

 イリナは溜息をつきながら笑い、一夏は無邪気に笑う。

 

「これで勝ってたら最高だったけどな。」

 

 イリナが変わらない調子で笑いながら言う。

 

「そこは譲れないな。」

 

 一夏は胸を張り、イリナの試合中の熱意に応えるためにはっきりと言う。

 

「いい笑顔すぎてなにも言えないな、こりゃ。

 それにしても女の子の柔肌に刀向けるなんてひどーい、織斑くん~」

 

「うっ、それは…。

 で、でもいい笑顔して素手でIS殴る奴には言われたくねーぞ。」

 

「あははは。言うじゃないか、織斑。いや、一夏」

 

「あっ」

 

「ダメだったか?」

 

「いいや、そういえばイリナから初めて名前で呼ばれたから驚いただけ。

 これからもよろしく、イリナ」

 

「ああ、こちらこそ、一夏」

 

 こうして友情が結ばれ代表決定戦の幕は閉じた。

 

 

 




私の考えた設定ではパワーアシストについて
装甲>>(千冬とか最強ボクサーとかなら越えられる壁)>>肉体≧ISスーツ
違ったらすいません。この小説ではそうだと考えて下さい。
殴り合ったら友情できた、恋じゃないよ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。