インフィニット・ストラトス TS少女の過ごし方   作:kaitolian

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皆さん 本当にありがとうございます。
長くなっても失踪はしないつもりなのでよろしくお願いします。


第7話

 

クラス対抗戦初日の第1戦が始まる少し前の観客席。

 

「そういえば、イリナはピットに行かないのー」

 

「いや、行かんよ。一夏に教えたのは結局勉強だけで実技はなにもしてない。

 それに試合直前の集中している最中にピットに大人数で押しかけるのは迷惑だろうしな。

 どうせ着いて来るつもりだったんだろう?」

 

「ちぇえー、ばれててたかー」

 

 さほど悔しくなさそうに笑う。行ければラッキーと考えていたのだろう。

 

「その位私でもわかる。なんなら清香だけでも行けばよかったのに。」

 

「うぅぅ、恥ずかしいよー

 そ、そんなことよりイリナはどっちが勝つと思う?」

 

「………鈴だな」

 

 少し考え込んだ後、一片の迷いもなく言い切る。

 

「ありゃー てっきり仮にもイリナを倒した織村君だと思っていたんだけどー。」

 

「あの試合の負けに関しては本当に完敗だったよ」

 

 俺はあの時一夏に気持ちで負けた。

 そして気持ちで決まるような試合になったこと自体で代表候補生として負けた。

 最後は競り敗れイリナ個人として負けた。

 つまり俺はあの試合、全てにおいて負けている。

 試合に負けて、勝負で負けている。つまり完敗だ。

 

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「え?」

 

 まるで意味がわからないという顔をしている。実際わからないのだろう。

 他人に説明するとなると楽しくなってくる。

 

「鈴の性格で友達がいないということはないだろう。

 そして優勝商品もあるからわざわざ負けさせることもないだろう。

 なら誰かが鈴に映像を見せるだろう。

 こちらが知るのに相手は知らないなんて公平じゃないなどと言って最初は見ないかもしれない。

 しかし代表候補生を倒したと聞けば?

 そしたら必然、代表候補生としてあの試合の映像を見ざるをえない。

 それで武器、機体特性、動かし方などは大雑把には把握できる。」

 

「あっ」

 

「それに加え、一夏の倒し方も致命的だ。ぜ「絶対防御」 そう、絶対防御だ。」

 

 驚いた、清香がシールドバリアーと絶対防御を見分けられるなんて。

 ズームされた映像越しではなく生だと一瞬見ただけでは案外素人にはわからない。

 あの雰囲気にのまれずにしっかりと観察していたことにIS学園に来てから無意識下で緩んでいた意識を引き締め直す。

 

「1回とはいえほぼ初めての試合で絶対防御を発動させた。

 偶然だとしても絶対防御を発動させる武器か技術が最低限は必要になる。 

 どちらにしても知ったら余裕こそあれ油断はなくなる。

 そして知られて油断も慢心もなければもう結果は明らかだ。」

 

 実際は零落白夜という単一仕様能力によるものなのだが勝手に許可を取らずに言いふらすのは良くないだろう。

 まあ、試合が進めばわかるだろうし言わなくていいだろう。

 ちなみに俺は放課後補習のときに相談されたときに教えてもらった。

 

「まあ、一夏も事前に情報はある程度調べているだろうから条件は5分だろ。」

 

 零落白夜があればいつでも逆転可能なので情報があれば実際は一方的な試合にはならないだろう。

 

 調べてたよな?

 

 ………あ、これヤバい奴だ。

 

 ♦      ♦♦♦

 

 

「一夏、今謝るなら少しくらいぼこぼこにするレベルを下げてあげても良いわよ?」

 

「いらねえよ、手加減されたら逆にやりにくい。全力でいくぞ。」

 

『それでは両者、試合を開始して下さい』

 

「おりゃっ」

「はっ」

 

 試合開始を告げるブザーが鳴り響くと同時に両者が距離を詰め、

 

 ―ガンッ

 

 鈴の巨大な青竜刀と一夏の光剣が火花をあげて衝突する。

 ハイパワー型の鈴と高機動型の一夏。

 当たり前に一夏が押し負け、体勢が崩れ両手が弾かれ胴が無防備な所に鈴が追撃をかける。

 

「くっ」

 

 一夏が立体機動を駆使し青竜刀が入るのと反対方向へ後ろ斜めに回転回避をし鈴の正面に立つ。

 

「へぇ~、初撃を防ぐなんてやるじゃない。

 じゃあ、こっからは飛ばすわよ!」

 

 鈴が青竜刀を連結しバトンのように扱い振り回す。

 それにより巨大な青竜刀による重さ、遠心力によりかかる力、パワー型ISによる補助、全てが合わさり上から叩き付けることにより先程を大きく上回る1撃を繰り出す。

 

「ぐっ」

 

 対して一夏は後ろに逃げつつ雪片弐型でガードすることにより少し吹き飛ばされ雪片弐型が弾かれるも防御に成功する。

 しかし鈴が繰り出したのは連撃。

 1撃目よりは軽いが最初より重い連撃にガードが乱れ雪片弐型の振り戻しがぎりぎりになってくる。

 堪らず一夏が思いっきり雪片弐型を振り、青竜刀を弾いたと同時に離脱する直後――――

 

「――――甘い!」

 

 鈴の肩アーマーが開き、中心の球体が光り、一夏が衝撃をモロにくらう。

 そんな一夏を見下ろしてはっきりと言う。

 

「今のはジャブだからね。」

 

 一夏に2つの空気の砲身が迫る。

 一夏はそれをなんとか避け、両者の距離が広がる。

 連続して放たれた砲撃を一夏は逃げるようにして避ける。

 そうして近距離戦から中距離機動戦へと移行する。

 

 

 

 

 中距離機動戦が始まり2分後。

 

 

 ―ドンッ、ド、ドンッ

 

 衝撃が3度、一夏に向かう。

 それを白式は上下左右に3次元機動をしつつなんとか回避する。

 

「くっ」

 

「よくかわすじゃない。衝撃砲は砲身も砲弾も目に見えないのに。

 まあ、反撃してこないなら遠慮なく押し切らせてもらうわよ!」

 

 その声を皮切りに衝撃砲が威力よりも連射性を重視した撃ち方に変化する。

 

 ―チィ、随分と粘るわね

 

 鈴にとってここまで一夏が粘るのは予想外であった。

 映像は見たがただ速いだけの機体だった。

 どこが第3世代の兵器なのかわからない位。

 

 状況は圧倒的に鈴の優勢であった。

 鈴は中距離で高い攻撃力、速いスピード、長い持続性、3つを兼ね備えた衝撃砲を持っている。

 対する一夏は雪片弐型の1本のみ。

 火を見るより明らかでいまだに戦っていられる方が不思議だ。

 いくらハイパーセンサーで空間の歪みと大気の流れにより放たれた砲身が見えようとも、そんなものは自分が銃で狙われているのをしっかりと確認した上で避けるようなものだ。

 ISならば可能なように思えるかもしれない。

 訓練を積んだものならば経験により推察し、避けることも可能であろう。

 洞察力が鋭く思考を読むのが得意なら視線を読み、避けることも可能であろう。

 天性の才能があればもしかしたら、避けることも可能であろう。

 しかし、織村はいずれにも当てはまらない。

 いずれは当てはまるかもしれないが今この試合においてはそこまで育っていない。

 ではなぜ避け続けられているのかというと、偏に機体のおかげだ。

 白式は確かに第3世代型ISであり武器は雪片弐型のみだ。

 しかし、第3世代型ISで武器1つで拡張領域が埋まり後付装備が出来ないのはあり得ないのだ。

 いくら一撃必殺の攻撃力があろうとその中核が単一仕様能力であるのであと1つは搭載できるはずなのだ。

 けれど実際は何もない。答えは簡単だ。

 

 ()()()()()()()()()()()

 

 イメージ・インターフェイスというものがある。

 正確に説明しようとするとかなり長くなるのでここでは省略し、機能だけを説明しよう。

 率直に言うと考えると全く同時に行動するというものだ。

 普通はどんな行動をしても考えてから実行するまで数秒のラグがある。

 落としたものを拾うときも、走るときも、誰かを殴るときも。

 習慣や訓練により限りなく減らすことは可能だが全く同時というのはあり得ない。

 しかしイメージ・インターフェイスによりその不可能が可能になるのだ。

 勿論その際の計算などはしないといけないのでかなり不安定になるのだが…。

 白式はその機能の大半を挙動に割いているのだ。

 しかも束の手が加えられたものなので計算もほとんどしなくてもよい。

 要するに素人でも簡単に思い通りに動けるのだ、しかも考えたと同時に。

 もしその機能がなかったらあのときのイリナにすら負けていたであろう。

 もしその機能がなかったら訓練で吸収したことが今の1割以下になっていただろう。

 もしその機能がなかったら見てから避けるなんて成功率は良くて3割だろう。

 そしてその機能により拡張領域が埋まっているのだ。

 何より仮定など意味なく事実として一夏は避けている。

 

 しかし、連射性を重視した撃ち方により避けるのが困難になりエネルギーに余裕がある内に決めることを決意する。

 

「鈴、本気でいくからな。」

 

「はっ、元よりこっちもそのつもりよ。」

 

 直後、白式がスピードに緩急をつけコントロールもせずでたらめな高機動をとり、鈴に隙ができた一瞬、この試合初めての瞬時加速を用いて一気に接近して零落白夜を起動させようとしたそのとき―――

 

 ―ズドオオオン

 

 突然大きな衝撃がアリーナ全体に響き渡る。

 そしてそれは本物の戦闘開始の合図であった。

 

 

 ♦      ♦♦♦

 

 

「いけるか?」

 

「はい、一時的に第2への遮断シールドをレベル2まで下げることが可能です。

 シールドバリアを発動させながら突入すればラファール換算でシールドエネルギーの2割損失、専用機と打鉄ですと1割強の損失で遮断シールドを突破し第2アリーナへ侵入可能です。」

 

 その声を聞きながら突入部隊の面々が最終チェックに入る。

 

 —ふむ、行かせるしかないか

 

 千冬は元々無理には突入させるつもりはなかった。

 そもそもIS学園におそらくはデータ取りのためだけにISを1機使い、その突入と同時にシステムをハッキングしようとし、実行できる者など彼女の友である束だけだ。

 束は倫理感や道徳心とか思いやりなどは一切持ち合わせていないがその代わり理解可能な範囲で己の大切な者達に嫌われるようなことはしないし約束は破らないし傷つけるようなことはしない。

 まあ、天災の理解可能な範囲というのが非常にネックなのだが…。

 少なくとも一夏が傷つくようなことにはならないし他の生徒が巻き込まれることもないだろう。 

 だが準備ができたなら行かせるしかないだろう。

 しかし予想外な出来事の連続であるのに不謹慎だが千冬は嬉しかった。

 だって教え子達と同僚が力を合わせ束の姿が影だろうが見える位置まで来たのだから。

 ―おそらくは束が手を抜きすぎたのだろうが

 だって弟の一夏を必死になって助けようとしているのだから。

 ―希望的観測だが手抜きであっても天才が10人いようと確固たる思いがなければ負けるだろうから

 だって一夏が皆のために頑張っているのだから。

 ―自分が危機の中、他人のために奮闘する奴は好ましく立派だから

 

 故にこれから起こることは運が悪かった。そうとしか言えない。

 

 もし、千冬が現場指揮を考えずに突入部隊に入っていれば、

 もし、束が他のことに気を取られずシステムを作っていれば、

 もし、整備課の面々が限界以上の実力を発揮しなければ、

 

 なまじ全員が優秀すぎた。あえて指摘する所があるとすればただそれだけ。

 

 

 

 ♦      ♦♦♦

 

 

「ふふふ、対話者も現れたし適合者も確認できた。

 それになんと言っても今年はいっくんと箒ちゃんがIS学園に入学した。

 もー、テンション上がりぱなしだよ☆♪」

 

 もし対話者が現れなかったら、もし適合者が確認できなければ、

 もし一夏と箒が入学したのが今年でなければ、

 どれか1つでも欠けていたら、今から起こることは決して起こらなかっただろう。

 彼女の親友である織村千冬は 人 が死ぬことを嫌うから

 きっと死人が出たら決して自分を許さない

 それはダメだ。普段ならそう思い留まることができた。事実、今までそうしてきた。

 しかし今回は違った。

 

「はーあぁ? なに勝手に入ってきてんの、この奴ら(石ころ)は?

 対話者と適合者もいないし意味ないじゃん。」

 

 本来束は他人に対して怒らない。

 優しいという訳では勿論ない。

 ただ他人に希望も期待も何もかも一切抱いていないだけだ。

 その束が激しく怒っている。

 

こいつ等(石ころ)にはこれでいいや。あとシステムもこうしてそうしてぽいと。

 あーあ、折角の気分が台無しだよ、こいつらは完全自律でいいや。

 くーちゃーん、あーそーぼー。」

 

 天災は欲望のままに過ごす。

 己がしたことについて何も考えずに………

 

 

 

 ♦      ♦♦♦

 

 

「織村君、鈴さん、先生が来たのでもう安心していいですよ。」

 

 一夏が真耶の声に振り向く。

 

「ちぇえ、会長はお偉いさんがたの護衛かよ。」

「お先どうぞッス、先輩」

「あなたたち、こんなときぐらいシャキッとしなさい!」

「そーですよ。普段が適当過ぎるんだからこんなときぐらい真面目にしてくださいー」

 

 こんなときでも緊張などせずそれどころか冗談も日常のように言い合っている。

 そんな様子を見てもう大丈夫だ、そう思い真耶達の方に合流しようとした。

 その直後――――

 

 ―ドオーーーーン

 

「なっ」

 

「新手!?」

 

 一夏と鈴、教師3機と専用機2機、それぞれの中間に新たな2機のISが並び立つ。

 一機はガトリングガンを肩に直接2基、非固定浮遊部位に2基を搭載している。

 正面から相対すればガトリングによる雨が降り注ぐだろう。

 一機はミサイルポットを非固定浮遊部位に4基を搭載している。

 同時に発射されればミサイルの弾幕が張られるだろう。

 最初に来た1機は巨大な両腕と両手首に砲口が1つずつあるのが特徴だ。

 掴まれた後にゼロ距離で攻撃されたらすぐに墜ちるだろう。

 

 ヒューーーン

 

 力が抜けるような音がした。電車が駅に停まる時のような

 まるで 通っていたエネルギーが尽きたように

 一瞬誰もが理解出来なかった。いや、理解したくなかった。

 

「しゃ、遮断シールドが切れた?」

 

 ガガガガガガ

 

 変化は終わらない。

 観客席を堅く守っていた銃弾程度ではびくともしない装甲シャッターが14枚中2枚開く。

 観客席は来賓用に1つ、そこから左右に生徒用の席が広がり合計3つに分かれている。

 そして生徒用の席の左側の中央が大きく開き内部が丸見えになる。当然中央の最も大きい出口に固まっていた多くの生徒も丸見えになる。

 シールドも装甲シャッターもない生身の人間ならIS用ガトリング弾が一発でも当たれば、ミサイルが近くに着弾すれば、戦闘中のISにぶつかれば、当然死ぬ。運が良くて致命傷。少なくとも何もなくそのまま、という訳はない。

 誰もがあまりの事態に動くことが出来ず――――

 

「織村君、鈴さんはそのままの相手を、決して勝とうとせず落ちずに。

 榊原さんはガトリング装備ISの機動制限とダメージを。

 ダリルさんとフォルテさんはガトリング弾の処理を。

 フランシィさんはミサイル搭載ISの機動制限とダメージを。

 私はミサイル処理と全体のカバーをします。」

 

 この中で最も速く理解し、観察眼が優れ、状況判断能力が高い真耶が誰かが絶望に染まる前にすべきことを指し示す。

 

「了解」

「おう」

「わかったッス」

「ええ」

 

 それぞれ4人がノータイムで指示を実行するため即座に動き出す。

 

 ――――まるで考えることを拒否するに

 

「ぼさっとするな、一夏!」

「お、おう」

 

 遅れて2人も動き出す。

 

 迎え撃つように多少のダメージを受けた1機と無傷の2機が相対する。

 

 そして闘いの幕はもう下がらない。

 




チートは実は2つだよってオチ。
いや実際、実質の軍事学校で各国の代表予備に元一般人が勝つってこれでもまだ足りない位じゃね?
あと、イメージ・インターフェイスってのが調べてもよくわからなかったので勝手に設定しました。
もし、ちゃんとした設定があるのなら教えてくれると幸いです。
あと、イリナのキャラがちょっとぶれてる気がする。
冗談を言うときのノリと普段の落ち着いてる感が…
ま、そういうキャラでいっか。そっちの方が描き易いし。
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