フレデリカ中毒   作:あめや

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1話目


第1話

「ねぇねぇプロデューサー」

 

フレデリカがいつものようにそう呼んだ。

なんとも言えない高さの声に、わずかそれだけの発言にも聞き惚れる。

時間にして、など言う必要もない程少しの間、俺は恍惚の表情を浮かべた。

 

「・・・何だ? フレデリカ」

「あ、やっと反応してくれたー。もー、フレちゃん無視されてるかと思って肺に穴が空きそうだったよ」

「胃じゃないならまだ動けるな。頑張れ」

「あれれ、プロデューサーってサディスト? 流石のアタシもこれには困惑しちゃうよ」

 

でもダイジョブ、と何故か彼女は見得を切る。

 

「フレちゃん、頑張ってプロデューサーの欲望にも応えちゃうよ。健気に、でも肩を震わせながら獣慾に飲まれて・・・」

「お前は俺を何だと思ってるんだ?」

 

やっぱりいつもの、フレデリカだった。

そんな昼下がり。

 

 

 

いつもより早く仕事が終わったので俺とフレデリカは事務所でダラダラと時間を潰していた。

時計の針が1を指してから全く動いていないように感じる。

時が止まったようにも感じた。そんな昼下がり。

 

「プロデューサー、アタシ暇だよ? 暇を持て余してるよ?」

「奇遇だな、俺もなんだ。何もすることがなくて困ってる」

 

事務所には俺たちの他に誰もいない。皆出払っていた。

それもそうだ。ウチのアイドル達は今や飛ぶ鳥どころか戦闘機を墜とす勢いである。

プロデュースしておきながら何だが、ここまで忙しくなるとは思っていなかった。

本当に手のかからない優秀な娘ばかりだ。

大学を出た後、サークルのコネで小さい芸能事務所に滑り込んだ頃はこうなると微塵も思っていなかった。

そもそも自分は人付き合いの苦手なタイプだと思っていたし、誰かを誰かに売り込むような仕事をするなどと。

だが現に今こうである。

ちょっとだけ周りよりズル賢いだけだったのに。口八丁手八丁、適当にかましていたらこうなった。

 

「・・・済まんな、みんな」

「え? 何?」

 

思わず声に出てしまった。思考のタガが緩んでいる。あと口も。

そんな昼下がり。

 

 

 

「じゃーあー、いつもの、やる?」

 

急に来客用のソファーから起き上がると、フレデリカは俺に近づいてそう囁いた。

ぐい、と椅子を引っ張るもんだから体勢を崩しかける。

彼女の唇がわずかに耳に触れた。

 

「そうだな。やるか」

「オッケー! フレちゃん、今回は自信あります!」

「はい、宮本フレデリカ選手、今回の競技は?」

 

いつもの、とは。

暇を持て余した俺とフレデリカが作り出したくだらない遊びだ。

そもそも飛ぶ鳥を落とす勢いの芸能事務所において何故フレデリカだけが暇を持て余しているかというと。

別に仕事がないとか、ファンが少ないとかいう訳ではなく。

意図的に、こういった時間がとれるように俺がスケジュールを調整しているだけのことだ。

じゃあ何故、と次から次に説明しなければいけなくなるので先に要点だけ説明しておこう。

俺とフレデリカは交際している。

いつから、と訊かれれば彼女が事務所に入る前から。

アイドルになる前から。元から知り合いだった。

結構前からだ。馴れ初めは割愛する。

別に恋愛禁止という訳でもないし、止める人間もいない。公表もしていないが。

だが、アイドルなんてそんなもんだ。ウチには他にも数人、彼氏持ちがいる。

アイドルも人間なんだから勘弁してやってほしい。ファン的にはイヤな気持ちになるのはもっともだと思うが。

だから公表なんてしない。

と、まぁ交際しているからイチャついても良いだろう、しかし時間がない、どうしようといった体で。

この遊びが生まれた。

他に誰もいない時に、お互いがドキドキするような行為に勤しむ。

ただそれだけの遊びだ。

性交渉するのは駄目だ。TPOは弁えたい。

だから、ちょっとだけ、ドキドキする、アブナイことをしよう、と。

彼女が提案したのだ。

 

「フフーン、ふ・と・も・も」

「ふともも? ふとももがどうしたよ」

「ふとももを自由にして良いよ、プロデューサー」

 

こんな、遊びだ。

 

 

 

「じゃあ、さっそく」

言うが早いか、俺はフレデリカのふとももに触れた。

タイツは履いていないので生足の感覚が指に伝わる。

体温が伝わる。

 

「ウッヒャ」

「・・・猿デリカだな」

「うっきっきー・・・プロデューサー、指ちべたい」

「すまん。冷え症なんだ」

「今は夏だよ? どうしてこんな冷たいの? 冷徹人間?」

「それを言うなら冷血だろ・・・もっと触るぞ」

 

あ、と微かに息が漏れる。

髪の毛で吐息を感じるほど近くに。もっと近くに。

普段はおちゃらけた彼女が珍しくしおらしい。

と言うか、イヤラシイ。

俺の指が肌をなぞると甘い息を漏らす。

なんだか本当に甘さを感じるような吐息だった。

 

「・・・プロデューサー」

「なんだ」

「えっち」

「・・・そういう遊びだろ?」

「うるさいえっちマン」

「その名前気に入った。今後は余のことをそう呼べ」

「さりげなく自分の身分を上げていくスタイル・・・油断ならないわ、えっちマン」

 

そう、おどけながらもしっかりと彼女のふとももを堪能する。

柔らかいのは言うまでもなく、白くてスベスベしている。

魔性のふとももだった。

ふと、匂いを嗅いでみようという気になる。

 

「フレデリカ」

「なに? えっち大総統」

「先に謝っておく。すまん」

 

そのまま顔を埋めた。

両の脚の間に。

花のような香りと、彼女の汗の匂いが鼻をくすぐる。

もう、正気を失いそうな匂いだった。

 

「きゃー、きゃー」

「思ったより抵抗しないんだな。いいのか?」

「じ、自由にしていいって言ったのはアタシだからね。フレちゃん武士だから」

「二言はないのか、潔し」

 

そのまま舐めた。

ぺろ。

 

「なにさらしとんじゃボケー!」

「あぶねぇ!」

 

フレデリカの長い脚が暴れる。スタイルが良い。

爪先が危うく顔面にクリーンヒットするところだった。

 

「テメ、二言はねぇんじゃなかったのか!」

「お嫁にいけなくなるでしょー?! 舐めるのはアウト!」

 

フレデリカ基準がよく分からない。

と言うか。

 

「俺のところに来るから良いじゃねぇか」

「あ、う」

 

珍しく赤面した。

 

「それとこれとは別でショ・・・?」

「そうかよ」

 

予想だにしないギャップに押し倒したくなる衝動を抑えながら、再び顔を埋めようとしたところで。

 

『ただいまー!』

 

事務所の入り口で声が聞こえた。

 

「・・・ウチのキッズたちのお帰りだ」

「みたいだね、フレちゃん的にはこのまま保健体育の授業しても良いんだよ?」

「馬鹿言えよ。帰ってからだ」

「・・・ウフフ。帰ってから、ね」

 

そんな昼下がり




フレデリカ可愛い
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