17 遊びに行こう
日曜日の朝は、学生ならばみんな寝坊するものだ。それは、凛も例外ではない。
「遊びに行く……? 今から?」
寝惚け眼どころか、布団からたった今起きたばかりで、ドアの前で立っている遼太と潤也を見上げる。
「お前、今日補習とか言ってなかった?」
「サボった!」
「あ、そう」
「外で待ってるからね」
「……ん」
一緒に住んでいるとはいえ、着替えを見るようなことはしない。二人は、早々に部屋を出ていった。
凛はすぐに身支度を終えると、居間に降りる。
「変な人に会ってもついていっちゃダメですからね」
「大丈夫だよ……何歳だと思ってるの……」
「ついこの間のこともありますから」
そういえば、つい最近潤也が勝手に、知らない人についていっていた。しかも、不思議な髪型をした変な人に。
集合場所に行けば、京子にハル、ランボたちといった、随分たくさんの人がいた。さすがに、その人数でずっと一緒に行くというわけにもいかず、ランボとツナがのどが渇いたと自販機に行くと、イーピンも飲みたくなったのか、京子にせがみ始め、二人もツナたちを追いかけていった
「……ゲーセンいくなら、先、なんか食べてきていい?」
駄菓子を奪っては来たものの、さすがに黒曜までくるとは思っていなかった。朝から飲まず食わずで、このままゲーセンで遊んだら、さすがに辛い。
「んじゃ、俺もいくぞ」
肩に乗ってくるリボーンと共に、コーヒーショップに入って、注文する。料金はリボーンが払ってくれた。
「今度、返すよ」
「別にこれくらい気にすん……いや、ファミリーになるなら構わねぇぞ」
「うん。いくらだっけ?」
はっきりとお断りすれば、奢りだとシナモンロールをいれていた頬をつつかれ、いや、拳を突きつけられる。赤ん坊の指では、あまり押せないのはわかるが、拳はどうなのだろうか。
噛みにくいし、間違えて噛んで口内炎になりそうだ。
「地味な嫌がらせだな……あいかわらず」
「かわいい嫌がらせの間違いだ――どうした?」
肩に乗っていた分、一瞬震えた凛に、拳を離せば、凛もよくわからなそうな表情で外を見ていた。そして、数秒後、そこが爆発した。
「うわ……なにごと」
「とりあえず、外に出るぞ」
外に出た瞬間に聞こえてくる、先程の爆発音よりも大きな声。
「う゛ぉぉぉおおい!!!」
「うるさっ!?」
「あいつは……凛。京子たち連れて、先に並森に帰ってろ」
「え?」
「凛! 生きてる?」
「無事か!?」
「ちょうどいい。おめーら、女子供の避難頼むぞ」
「お、おう。ツナたちは?」
「あとから、追いかける。ここにいたら、危険だ。凛、早くいけ」
一度、頬をなでると、凛から降り、綱吉たちの元へ行ってしまった。
「とりあえず、避難しよう。ツナたちは、リボーンがついてるみたいだし」
潤也の言葉で、京子たちも避難し始めた。
「なんだったんでしょう……」
「さぁ?」
「ランボさん、遊び足りないもんね!」
「っていってもなぁ……キャッチボールでいいなら、河原で付き合うけど」
「ぐぴゃっ!?」
トラウマスイッチが入ったのか、ランボが京子に抱きついて震えるが、あれは遼太ではない。山本のせいだ。
だが、言葉にはしないものの、ハルや京子もせっかく遊びに行ったのに、少し物足りないような気はしていた。
「落ち着いたら、また行けばいいんじゃない? 警察も来てたし、すぐに原因も突き止められるって」
「それもそうだね!」
それから、数日。並森山では爆発音が響いていた。
「はひーーーッ!!!」
特徴的すぎる悲鳴に、なにかと思えば、ハルが罠に引っかかって、木に吊り上げられたままスカートを必死に抑えていた。
「へ、ヘルプミーですぅッ!!!」
「だから危ないっていったのに」
潤也が下ろせば、恥ずかしそうにスカートを抑え、
「つ、ツナさん、知りませんか? この辺で修行してるって聞いたんですけど」
「ツナなら、この先に崖にいるよ。案内しようか?」
「お、お願いします……」
さすがにこりたのか、素直に案内を頼んだ。
「そういえば、凛ちゃん、いないんですか?」
「凛は、妙に最近人が出入りするから、もっと奥に引きこもってるよ」
了平や獄寺、綱吉と並森山には、未だかつてないほど人がいる。
「そういえば前の、爆発水道管が破裂したんだって。もう修復したから、デパートも開業してるよ」
「そうなんですか? じゃあ、ランボちゃんたちも誘って、遊びにいこうかなぁ……」
「そうしてあげたら? 最近、お菓子買いに来るたびに、遊べなかったって愚痴っててさ」
「確かに、ほとんど遊べなかったですもんね……」
潤也とハルが山の奥へ、進んでいる頃、駄菓子屋には、常連の子供たちと、中年の男がいた。
中年の男たちは、縁側に座りながら、子供たちがお菓子を選ぶ姿を、笑顔を崩さずに眺めていたが、小声で話している内容は、決して明るいものではない。
「もう届いたのか……早いな」
「さすがは、というところですかね。まだ動きはないようですよ」
「そうか……」
「ただいまー」
遼太の目にすぐに入った、中年の男と店長の姿に、少しだけ眉を歪めた。
「あ、ランボさんの部下! やぁっと帰ってきたんだもんね!」
「ランボ? なんだよ。また来たのか? 毎日来ても、ハンコはやらないぞ?」
しかし、ランボが指を指してくるのに、笑い返して、フゥ太やイーピンたちも選ぶ、駄菓子のところへ歩いていく。
「いえ、脱獄のことがあって以来、随分と警戒するようになってですね。あの子も、なかなか見極める目はいいようですし」
「……そうか。あいつは、あんまり関係ないのか?」
「重要な部分は知りませんね。加担こそしていますが、無自覚ですし、それでも気にしてしまっている程の子ですよ」
「それは……いや、そうか。もう一人は?」
「もう一人といいますと?」
知っているというのに、聞き返すキドニーに、家光は目を細めながら言った。
「ベルフェゴールと接触したことがある方だ。変わった様子はないか?」
「なにも。少なくとも、今は」
「何かあれば、すぐ知らせてくれ」
「わかりました」
何を言っているかは聞き取れないが、横目に遼太は複雑な表情で二人の様子を伺っていた。
ヴァリアー編開始です。
原作のところは、基本的にカットしていきます。