笑って、群れて、失った    作:こっここーまん

19 / 50
18 歪み

 ここ最近、恭弥がディーノと屋上で戦っているそうで、潤也は風紀委員の手伝いに毎日のように行っていて、遼太は山本が野球部に来ないことを心配して下手な嘘をついて、なにやら色々キドニーの周りを嗅ぎ回っていた。キドニーどころか、潤也や凛にもバレバレなのだが。

 夜の人気のない並森の町を走る影が四つあった。

 

「こちら、01。二時の方向に幼児を含む、子供三名を確認」

「こちら、02。十二時の方向に、女一名を確認……気づかれたか……いや、気づかれてはいない。目標に接近する」

 

 通信が飛び交う中、女は一度足を止め、携帯を取り出すと電話にでた。

 

「もしもし? あ、二人共、帰ってきてたんだ……は? だって、最近お前ら遅いから、夕飯遅くてもいいかな? とか思うじゃん」

 

 電話に出ると、歩きだし女を追いかける影は、向こうに見えるもう一つの影に気がついた。

 

「え? 探すの? まぁ、別にいいけ――」

「凛姉ぇ!!」

「……うん。聞こえたならよかった」

 

 抱きついてくるフゥ太を、捕まえながら電話を持ち直し、

 

「山の帰り。うん。よろしく。ツナん家まで送ればいいの? わかった」

「ありがとう! 凛姉――後ろッ!!」

 

 フゥ太の叫びと共に響いてきたのは、金属音。一瞬にして、凛は三人の目の前から身を翻すと、その男の脇腹に蹴りをいれ、ナイフで男の首を切り裂いた。

 吹き出してくる血に目もくれず、男の持っていたレイピアを流れるように奪い取り、フゥ太たちの後ろに立っていた男へ投げる。

 

「ぐぁッ……!」

 

 男の目にレイピアが突き刺さった。

 

「……邪魔」

 

 一瞬、目を携帯にやると投げ捨て、ナイフを一度振ると、痛みに悶えている男の首を切り裂いた。

 もうその場には、四人しかいなかったが、足元のそれが目に入らないかのように、凛はどこかをじっと見ていた。

 幸い、この場にいた全員が、裏社会を知っている。今起きた殺人に、今更叫び声を上げる人はいなかった。それどころか、今まで危険をかいくぐってきたフゥ太の行動は早かった。投げ捨てられた凛の携帯を拾うと、

 

「凛姉ェ!」

 

 その手を引いた。

 一人が屋根から四人を見つけた時、目の前で爆発が起きた。

 

「ったく……なんでアホ牛がリングを……」

「凛! 無事か!?」

「……」

 

 獄寺たちが来てくれた。潤也と先程電話していたのだから、それをすぐに全員に場所を連絡したのだろう。遼太が、慌てて近づいてくれば、鼻についたその臭い。潤也も、薄々、電話先の声で気がついてはいた。

 

「血……? ケガしたのか!?」

「してない。別に、何もなかったし」

「でも……」

 

 暗くて見にくいが、右腕に血がついていた。潤也だけは、どうするかとじっと凛の様子を伺っていた。

 ちょうど、その時、綱吉もやってきて、リボーンもその臭いに凛を見つめたが、近づいてくる殺気に、そちらに目をやる。

 

「お前がやったのか?」

 

 現れた大男は、凛を見下ろすが、凛は眉をひそめ、

 

「知らないよ。勘違いしてない? さっきの奴なら、そこの人がやった」

 

 通信ではっきりと、女に攻撃をかけると言った後に、通信が途絶えたのだ。もし、戦って負けたということならば、リングはあの獄寺に指を指している女が持っているはずだ。

 

「……む?」

 

 しかし、ランボの頭に光るリングを見つけると、少し目を見開いたあと、背中に刺さった傘へ手をやる。標的は、リングを持つ人間だ。その殺気に、全員が身構えるが、聞き覚えのある大声でそれは遮られた。

 同時に現れたのは、六つの影。

 

「よくも騙してくれたなぁ。カスども!」

 

 そこには、つい先日、黒曜で会った男もいた。

 遼太に庇われるように後ろにいる凛をじっと見つめる金髪の男に、潤也は凛を一度見るが、ザンザスと呼ばれた男の手から溢れる光と殺気に、動けなくなる。

 

「待て、ザンザス。そこまでだ」

 

 つるはしがザンザスの足元の地面に刺さった。投げた男は、綱吉の父である、家光だった。

 

「と、父さん!?」

 

 綱吉の驚きと疑問を答えたのは、リボーンだった。ボンゴレファミリーの門外顧問である家光は、次期ボスに渡される、ハーフボンゴレリングを綱吉に渡し、九代目は目の前の男、ザンザスに渡した。

 ハーフボンゴレリングは、二つをそろえ、完全な形にしてこそ、後継者として認められるものであり、門外顧問とボスが別々の人物に、それを与えることはほとんどない。

 しかし、今回、別々の人物の手に、ハーフボンゴレリングが渡った。そこで、無益な戦いや血を流さないためにも、同じリングを持つ同士での、一対一の勝負を行うことにした。

 そのための審判を務めるという、チェルベッロ機関の二人組の女も現れ、一方的に確認を取る。

 

「場所は深夜の並森中学校。詳しくは追って説明いたします」

「え!? 並中でやるの?」

 

 そんなことをしたら、明らかに怒る人がいる。

 

「それでは、明晩十一時。並森中でお待ちしております」

「さよなら」

「本当に言うだけ言って帰ったね……ジュン?」

「だ、大丈夫かな……?」

 

 その心配は、最もだ。ディーノに、どうにかしてもらうしかない。

 ザンザスたちも去ろうとした踵を返した時、金髪の男だけ少し前に出てくると、

 

「りぃ~ん」

 

 名前を呼んだ。それには、リボーンも家光も慎重にその様子をうかがい、ヴァリアーも思い出したように足を止めていた。

 

「しししっさっき、お前の家に行ってやったのにさ、いねーから探したんだぜ?」

「そうなの? ごめん……?」

 

 話しかけられた本人が、一番リラックスしていた。

 

「知り合いなのかよ!?」

「……うーん、知ってるような気はするんだけど……」

「は? 王子のこと忘れたとかいうわけ?」

「あー……王子。あ、そっか。お父さんたち探しに来た……あぁ、そっか」

 

 微かに雰囲気が変わった凛に、男はなおさら口端を上げると、

 

「俺がいない間に、ふぬけてたらどうしよっかって思ってたけど、さっきの見て安心したぜ。うししっ」

「さっきの……? なんかあったっけ?」

 

 本当に訳が分からないという顔をした凛に、男は驚いたように口を開けた。

 

「あ? あーそっか。凛は確か、殺しじゃなくて“いなくなった”って言うんだっけ?」

 

 ぞわりと、背筋に嫌なものが走ったのは、遼太だった。

 

「ま、いーや。ほら」

 

 投げられた白いそれ。凛の手に収まったのは、一輪のカサブランカの花だった。

 

「じゃあ、彼女なんだ。ベルが探してたっていうのは」

「まーな。ししっ」

 

 手の中に収まる、カサブランカの花を見つめる凛の表情は、誰がどう見ても見間違いようのない、やわらかい笑顔だった。

 ヴァリアーがいなくなったあと、遼太はじっと凛の手元を見つめる。そこには、血のような赤黒い染み。

 

「……凛」

 

 異様にのどが乾いた。聞くのが恐ろしかった。だが、聞かないわけには、いかなかった。

 言葉にしていいものか、迷ったが、それでも口を開き、絶え絶えに言葉を紡ぐ。

 

「お前、親、って……」

 

 遼太の両親は、いない。物心ついた時からいなかった。親代わりの施設の婆ちゃんは、施設の子供がよく買い物に来る駄菓子屋だし、顔もよく見せている。それに、一種の社会勉強だと。だから、居候を許してくれている。

 潤也の両親は、もちろんいるが、家のことは恭弥が取り仕切っているため、あまり表に出てこない。たまに帰ることもあって、居候をしていても、何も言ってこない。

 なら、凛は? 彼女は、親について、何と言っていた? 見ず知らずの男の店にいても、なぜ両親は何も言ってこない? 確かに、昔はいたはずだ。だが、ある時、居候を始めた頃から、気になって聞いたことがあった。その時、必ず同じ言葉を返してきた。

 

「“いなくなった”って……知ってるだろ?」

 

 やはり、同じ言葉が帰ってきた。





ぶっちゃけると、この話にR15部分は、ほぼ全部凛が原因じゃないかと思ってます(笑)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。