笑って、群れて、失った    作:こっここーまん

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21 知りたくない。知らねばならぬ。

 雷のリングの戦いは、恐れていたことが起きてしまった。レヴィアタンとランボの戦い。圧倒的に不利かと思われたランボは、十年後バズーカで二十年後のランボと代わり戦ったが、時間が足りなかった。

 レヴィに焼かれそうになった、ランボを綱吉が間に入り、助けたが、代わりに綱吉の持つ大空のリングと雷のリングがヴァリアーに渡ることとなった。

 

「……」

 

 青い顔で病院のベッドに眠るランボを見つめるのは、遼太だった。昨夜、奈々に頼みはしたが、ずっと任せているのは悪いと、奈々が休んでいる間、遼太が病室にいた。京子やハルも、あとで様子を見に来ると言っていた。

 

「リョウ兄?」

「フゥ太? イーピンも……」

「大丈夫? 顔色悪いよ……?」

 

 大丈夫と、反射的に言葉にはしていたが、まったく大丈夫ではなかった。それは、二人も分かっているようで、不安そうな目がじっと、遼太を見つめている。

 前に、嘘が下手すぎると、友人たちに言われたが、本当にそうらしい。

 

「……フゥ太もイーピンも、こういうこと、慣れてるのか?」

 

 誰かが死にかけたり、殺し合いをしたり。喧嘩こそ、遼太もするが、命まで取ろうとは思わない。

 

「ううん。慣れないよ……友達が傷つくのは、慣れない。でも、分けられるようには、なった……」

 

 自分を守るために、敵が殺されるところを見ても、悪いとは思うが、後悔はしなくなった。そうでなければ、自分が死んでいたかもしれないのだから。

 

「なんで、こんなことするんだよ……勝負なら、ここまでしなくったっていいだろ」

 

 ランボがなぶり殺しにされそうになった時、怖くて動けなかった。

 キドニーのところで、そういった人たちを襲ったことはある。だが、大抵は死角からバットで殴って、気絶させるだけ。

 

「……」

「あのね、変なことだってわかってるけど、僕、凛姉に感謝してるんだ」

「え……?」

「本当にたまたまだったけど、あの時、助けてもらってうれしかったんだ」

「助けてもらった? 凛に?」

「あ、そっか。リョウ兄が来る前に、二人に襲われてて……」

 

 ぞわりと、背中に何かが這いずるような感覚。

 

『ケガしたのか!?』

『してない。別に、何もなかったし』

 

 それは、ランボたちと同流してすぐのこと。少しだけ裾についていた血を心配した時に、返された言葉。

 並森山に行っていたことは知っていたし、罠のことを考えれば、たまに血がついていても珍しいとは思うが、おかしいとは思わない。動物なら相手ならよくある話だ。

 

『お前がやったのか?』

『知らないよ』

 

 レヴィに聞かれた時も、そう返していた。

 イーピンが何かフゥ太に、言いづらそうに何かを言うと、

 

「あ! そ、そっか! ごめん! リョウ兄! 凛姉、たぶん、みんなに心配かけないように、何もないっていってたんだよね!? 今の、聞かなかったことにして! お願い!」

 

 慌てたように手を合わせるフゥ太。きっと、あの時、駆けつけてくれた人たちに心配をかけないように嘘をついたんだと、二人は勘違いしていた。なによりも、遼太の表情を見れば、今のが失言だということくらい、子供でもわかった。

 それなりに長い間、友人として一緒に居候しているのだ。凛の性格くらい遼太は分かっている。

 だからこそ、そんな気遣い、凛がするはずがない。あいつなら「遅い」の悪態のひとつはつく。

 

「……あぁ。わかった」

 

 それ以上の言葉を出すのは、怖かった。だが、聞かなければ、きっと先には進めない。

 

「なぁ、フゥ太」

 

 返ってくる言葉は、予想がついた。できれば、外れていた欲しい予想。

 俺は頭が悪いのだから、きっと外れる。そう願って、どうにかその言葉を切り出した。

 

「その時、そいつら、殺されたのか……?」

 

 

***

 

 

「そういえば、あのベルフェゴールって人、近衛さんと知り合いなんだよね?」

 

 前に声をかけていたのだから、おそらく間違いない。

 

「近衛さんって、色々謎な人だけど、ヴァリアーと知り合いって……」

 

 だが、マフィアなどに関わっている感じはなかった。

 しかし、ある意味、潤也よりも、謎が多いかもしれない。

 

「ですが、キドニー殿の護衛をしていると聞いたことがあります」

「キドニー?」

「駄菓子屋の店長だ」

「えぇぇええ!? あの人、木戸さんじゃないの!?」

 

 駄菓子屋の店長と呼んでいたため、名前なんて聞いたことはないが、あの駄菓子屋、木戸屋という名前だった。たぶん、木戸という名前だと思っていたのだが、

 

「一応、日本では、木戸二郎と名乗っているそうで、キドニーは愛称らしいです」

 

 バジルがいうには、キドニーすら本当の名前ではないという。

 

「ど、どういうこと? ただの駄菓子屋の店長じゃないの!?」

「……沢田殿はご存じないのですか?」

「まぁな。キドニーは、元情報屋だ」

「うっそぉ!?」

「本当です。今は、引退しているということですが。引退とはいっても、情報が欲しいと探してやってくる人もいるそうで、そういった方々が店にくるという話を親方様がしていらしたことがあります」

 

 調べるのは相当大変だろうが、それでも完全に痕跡を消すというのは難しく、やってくる人もいた。

 

「ですが、同じくらい、もしくはそれ以上、キドニー殿を消そうとする人もいまして……そういった人は、のちのち、行方知れずになるんです。おそらく、キドニー殿と一緒に暮らしている子供が、護衛なのではないかと言われていたのですが……」

 

 それはあくまで予想。誰も確証はなかった。情報が一切出てこないのだ。

 バジルがリボーンへ目を向けるが、リボーンは何も答えなかった。

 

「あ、近衛さん」

 

 すでに学校に来ていた凛は、どうやらベルと話していたようだ。内容までは聞こえないが、ベルの表情は笑顔。凛も遼太や潤也と話している時のような雰囲気だ。

 

「……」

 

 仲はいいように見える。少なくとも、命をかけた勝負をしているような間柄のような雰囲気ではない。

 獄寺がやってくると、観覧席に行けと言われ、綱吉たちの方へ歩いていく。

 

「逆恨み、すんじゃねぇぞ」

 

 すれ違いざまに言われた獄寺の言葉に、凛は不思議そうに足を止めると、笑った。

 

「まさか。むしろ、喜ばしいことじゃない?」

 

 眉をひそめた獄寺に、ベルはただ笑っていた。

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