久々に遼太と話をして、今までキドニーのところでやっていた仕事の本当のところを、少し話してしまった。自分たちのことを、友人だと言うのだから、今まで隠し事をされていたと知ったら、怒るのも仕方がないとは思う。
だけど、本能的に恐れているのだから、やはり突き放すのが優しさかもしれない。
「勝たなければ、全て失う」
「?」
千種とクロームが不思議そうにこちらを見てくる。
「で、なんであたりめーみてーにお前がいるんだ!!」
「ちょっと前まで一緒にいた仲じゃない」
当たり前のように毎日、黒曜ランドへ来ている潤也に、犬が飽きもせず毎日食ってかかるが、軽く流されている。
「ハァ!? ふっざけんじゃねーびょん!!」
「でも、骸様は、構わないって……」
「うっせー! てめーは黙ってろ!」
「まぁまぁ……女子には優しくしてあげなよ。それに、風紀委員に見つからないようにしてるの、僕のおかげじゃない」
黒曜は並森の隣町だ。風紀委員の目も、並森より少ないとはいえ届きやすい。恭弥が帰ってきた今、もし骸の仲間が黒曜にいるとバレた日には、骸を探しにやってくるかもしれない。
前に、恭弥にやられた二人としては、それは避けたいところだ。
「さて、そろそろ行かないと……みんなはどうする?」
「あとでいく」
「わかった。じゃあ、僕は先に行くよ」
一勝三敗。もう後がない。今夜の対決は、いろいろな意味で重要な試合になる。
***
校舎につけば、遼太が山本と話をしていた。
「結局思いつかなかったァ!?」
「まー親父が無敵ってんだから、無敵なんじゃね?」
「……」
さすがの遼太も、それには開いた口が塞がらなかった。
「サヨナラのチャンスにバッターボックスに立つみてーにゾクゾクするぜ」
その感覚は、わからなくはなかった。だが、この試合は命をかけた戦いなのだ。
だというのに、山本は本当に野球の試合の時のような表情で、竹刀を肩に背負っている。
「……」
「どうした?」
「いや、そういや、あいつらもそうだったっと思ってさ」
嘘をつくのも見抜くも苦手だが、あの二人と仕事に行く時は、まったく違和感はなかった。だから、とは言わないが、まったく気がつかなかったのは、あの二人が今の山本のように、日常となんら変わりない表情だったからかもしれない。
度胸があるといえばそれまでだが、もっと根本的に精神の構造が違う。
「ちゃんと話せたのかよ?」
「ジュンの奴とは……」
昔から、恭弥の弟ということもあり、潤也がほかとは違うというのは、薄々気がついてはいた。だからこそ、一人で消えてしまうかもしれないと思って、黒曜の時も、それが怖かった。
逆に、凛は事情こそ違うが、自分に近いと、そう思っていたはずだ。なのに、今、一番避けているのは、凛の方だ。
「そっか……三日で一人っつーことは、俺が勝てば、近衛にもちゃんと話せるってことだな」
「え゛……!?」
「六日で二人ってことだろ?」
笑いながらいう言葉じゃない。山本の相手は、ヴァリアーのボスになるかもしれなかったという、スクアーロなのだから、勝つのだって容易じゃないはずだ。
「そもそも、そんな単純な話じゃ……!?」
「でも、前よりマシな顔してるぜ?」
「!」
ただ怖がっていた時の表情ではなく、なにかひとつ折り合いがついたような表情。
「なっ!」
いつもと何も変わらない笑顔の山本に、遼太はぎこちなく笑って頷いた。
「じゃあ、いっちょ頼むぜ!」
「おう!」
拳と拳を突き合わせた。
「今日、スクアーロが勝てば、オレらの勝ちじゃん。たんのしみぃ~なぁ? 凛」
松葉杖をつきながら、そう問いかけてくるベルに、凛は微笑んでいた。
「そうだね。でも、ひどいケガじゃん。大丈夫なの?」
「あったりまえだろ。俺、王子だぜ?」
「さすがだねぇ。王子は人とは違うねぇ」
楽しげな二人の様子を、綱吉は不安そうに見つめていた。
***
一部の水が赤く染まっていく。それは、雨のリングの対決が終わったことを示していた。
勝者は、山本武。負けたスクアーロは、今、サメに食われた。
「こんな終わりかた……」
重い空気が漂う中、淡々と明日の試合を発表するチェルベッロ。
「明晩の対決は、霧の守護者同士の対決です」
「あ……」
「潤也君?」
「いやーついに来たなぁ」
「そ、そっか! 霧の守護者って!?」
今だに姿を見せない霧の守護者に、綱吉が慌てて聞けば、リボーンはニヒルに笑った。
「いよいよ奴の出番だな」