笑って、群れて、失った    作:こっここーまん

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23 背中を押すのは

 久々に遼太と話をして、今までキドニーのところでやっていた仕事の本当のところを、少し話してしまった。自分たちのことを、友人だと言うのだから、今まで隠し事をされていたと知ったら、怒るのも仕方がないとは思う。

 だけど、本能的に恐れているのだから、やはり突き放すのが優しさかもしれない。

 

「勝たなければ、全て失う」

「?」

 

 千種とクロームが不思議そうにこちらを見てくる。

 

「で、なんであたりめーみてーにお前がいるんだ!!」

「ちょっと前まで一緒にいた仲じゃない」

 

 当たり前のように毎日、黒曜ランドへ来ている潤也に、犬が飽きもせず毎日食ってかかるが、軽く流されている。

 

「ハァ!? ふっざけんじゃねーびょん!!」

「でも、骸様は、構わないって……」

「うっせー! てめーは黙ってろ!」

「まぁまぁ……女子には優しくしてあげなよ。それに、風紀委員に見つからないようにしてるの、僕のおかげじゃない」

 

 黒曜は並森の隣町だ。風紀委員の目も、並森より少ないとはいえ届きやすい。恭弥が帰ってきた今、もし骸の仲間が黒曜にいるとバレた日には、骸を探しにやってくるかもしれない。

 前に、恭弥にやられた二人としては、それは避けたいところだ。

 

「さて、そろそろ行かないと……みんなはどうする?」

「あとでいく」

「わかった。じゃあ、僕は先に行くよ」

 

 一勝三敗。もう後がない。今夜の対決は、いろいろな意味で重要な試合になる。

 

***

 

 校舎につけば、遼太が山本と話をしていた。

 

「結局思いつかなかったァ!?」

「まー親父が無敵ってんだから、無敵なんじゃね?」

「……」

 

 さすがの遼太も、それには開いた口が塞がらなかった。

 

「サヨナラのチャンスにバッターボックスに立つみてーにゾクゾクするぜ」

 

 その感覚は、わからなくはなかった。だが、この試合は命をかけた戦いなのだ。

 だというのに、山本は本当に野球の試合の時のような表情で、竹刀を肩に背負っている。

 

「……」

「どうした?」

「いや、そういや、あいつらもそうだったっと思ってさ」

 

 嘘をつくのも見抜くも苦手だが、あの二人と仕事に行く時は、まったく違和感はなかった。だから、とは言わないが、まったく気がつかなかったのは、あの二人が今の山本のように、日常となんら変わりない表情だったからかもしれない。

 度胸があるといえばそれまでだが、もっと根本的に精神の構造が違う。

 

「ちゃんと話せたのかよ?」

「ジュンの奴とは……」

 

 昔から、恭弥の弟ということもあり、潤也がほかとは違うというのは、薄々気がついてはいた。だからこそ、一人で消えてしまうかもしれないと思って、黒曜の時も、それが怖かった。

 逆に、凛は事情こそ違うが、自分に近いと、そう思っていたはずだ。なのに、今、一番避けているのは、凛の方だ。

 

「そっか……三日で一人っつーことは、俺が勝てば、近衛にもちゃんと話せるってことだな」

「え゛……!?」

「六日で二人ってことだろ?」

 

 笑いながらいう言葉じゃない。山本の相手は、ヴァリアーのボスになるかもしれなかったという、スクアーロなのだから、勝つのだって容易じゃないはずだ。

 

「そもそも、そんな単純な話じゃ……!?」

「でも、前よりマシな顔してるぜ?」

「!」

 

 ただ怖がっていた時の表情ではなく、なにかひとつ折り合いがついたような表情。

 

「なっ!」

 

 いつもと何も変わらない笑顔の山本に、遼太はぎこちなく笑って頷いた。

 

「じゃあ、いっちょ頼むぜ!」

「おう!」

 

 拳と拳を突き合わせた。

 

「今日、スクアーロが勝てば、オレらの勝ちじゃん。たんのしみぃ~なぁ? 凛」

 

 松葉杖をつきながら、そう問いかけてくるベルに、凛は微笑んでいた。

 

「そうだね。でも、ひどいケガじゃん。大丈夫なの?」

「あったりまえだろ。俺、王子だぜ?」

「さすがだねぇ。王子は人とは違うねぇ」

 

 楽しげな二人の様子を、綱吉は不安そうに見つめていた。

 

***

 

 一部の水が赤く染まっていく。それは、雨のリングの対決が終わったことを示していた。

 勝者は、山本武。負けたスクアーロは、今、サメに食われた。

 

「こんな終わりかた……」

 

 重い空気が漂う中、淡々と明日の試合を発表するチェルベッロ。

 

「明晩の対決は、霧の守護者同士の対決です」

「あ……」

「潤也君?」

「いやーついに来たなぁ」

「そ、そっか! 霧の守護者って!?」

 

 今だに姿を見せない霧の守護者に、綱吉が慌てて聞けば、リボーンはニヒルに笑った。

 

「いよいよ奴の出番だな」

 

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