笑って、群れて、失った    作:こっここーまん

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24 なにもできない

 店の前で気絶した綱吉に、キドニーとリボーンは呆れながら縁側に寝かせる。

 

「そういえば、潤也のやつは一緒じゃねーのか?」

「ジュンは骸様が、雲雀恭弥を見に行く、付き添い」

「あいつがか……? 雲雀に見つかったら大騒ぎになるぞ」

 

 いくら潤也とはいえ、骸と雲雀の戦いを止められるわけではない。おそらく、見つかることはないようについて行ったのだろうが、心配だ。

 それにしても、事件を思い出すたびに三人のことを心配していたというのに、実際にあったら気絶してしまうとは、さすがに呆れてしまう。

 

「夜までに起きるの……? こいつ」

「日頃の疲れですかねぇ……学校までは連れていってあげなさい」

「えぇ……私が?」

「後で遼太が帰ってきたら、頼めばいいんじゃないですか?」

「……わかったよ」

 

 今は、山本の見舞いに行ってしまっていないが、夜までに帰ってくるはずだ。

 

「昨日はどうにか首の皮一枚つながりましたけど、まだピンチですね」

「んあッ!? 骸様が負けるわけねーだろ!」

「どちら側にもついていない私からすれば、絶対なんて言えませんからね。物事はちゃんと見ませんと」

「こいつ、みょーにあのヒヨコに似ててムカツク!」

「ヒヨコ?」

「ジュンのことだよ」

 

 雲雀の子供はヒヨコではないが、そういうことではないだろう。凛はあとでからかおうと予定を立てつつ、棚の後ろから、フルーツガムの箱を取り出し、犬に渡す。

 

「君は、守護者には選ばれてないんだ……」

「そもそも、ファミリーでもないし。レシートいる?」

「いらない」

「骸様らって――」

「犬」

 

 食いついてくる犬をなだめると、凛からおつりをもらい店から出ていく。

 

「てめーにはもったいない霧の守護者らって、ボンゴレに言っとけ!」

 

 そう残して、店を後にした。

 遼太が帰ってきたのは、その数時間あとのことだった。店に入ると、縁側で凛が座って、その膝の上にリボーンが座っていた。その後ろには、綱吉が気絶している。

 

「ど、どういう状況だ……? これ……」

「お邪魔しています。比賀殿」

 

 奥から顔を出したバジルが、今までの経緯を大雑把に説明してくれると、納得できたようなできないような、なんとも言えない表情になる。

 

「つ、つまり、霧の守護者は俺を襲ってきたあいつのボスで……ジュンが今、そいつらと一緒にいるってことだよな……?」

「はい」

 

 潤也があの時、骸たちのところにいたことは聞いていた。危険だと、前までなら連れ戻しに行ったかもしれないが、今は行こうとは思わなかった。

 潤也が大丈夫だと思って、向こうにいるのだ。なら、友人として、それを信じてやらなければ。

 

「連れ戻しに行ってくる。とか、言わないんだ」

「言わねぇよ。だいたい、お前ら、俺に内緒でいろいろやってたくせに」

「……あぁ、聞いたんだ。怒ってんの?」

 

 襖越しで表情は見えないが、リボーンだけは膝の上から見上げていた。

 

「怒ってないわけじゃねぇけど……なんで、俺に言ってくれなかったんだよ」

「なんでいうの?」

 

 本気で不思議そうな声色で聞く凛に、遼太も反応に困る。

 確かに、大っぴらに言うことではないが、一緒に仕事をしていたにも関わらず、たった一人だけ伝えられなかったのだ。

 

「言ってくれてもいいだろ」

「……そう」

 

 バジルが気まずそうに、辺りを見渡せば、目に入ったカサブランカの花。ヴァリアーが現れた日、ベルから凛に送られたものだ。

 

「近衛殿」

「ん?」

「この花……カサブランカ、ですよね?」

「そうだね」

 

 あの時、あえて渡してきたのだ。何か意味があるはずだ。しかし、何も思いつかない。

 

「ベルフェゴールは、なぜこれを近衛殿に渡してきたのですか?」

 

 凛だけが、この花の意味を理解している。回りくどく聞くわけでもなく、直接、バジルは聞いた。

 

「私を殺すつもりだからでしょ?」

 

 ごく当たり前のように、不思議そうに返した凛に、その場にいた全員が驚き、凛を見つめた。

 殺すと予告され、嫌だと泣き叫ぶわけでもなく、むしろ、心の底から嬉しそうに微笑んでいた凛。それは今も変わらない。今までの、どんな状況よりも嬉しそうに微笑んでいた。

 

「……」

 

 じっと凛を見上げるリボーンの脳裏には、潤也が前に言っていた『凛を殺してくれたら、ファミリーに入ってもいい』という言葉。

 

「一回だけだったのに、助けてって言ったの、ちゃんと覚えてたんだねぇ」

 

 きっと、彼は知っていたのだ。彼女にとって、死は祝福で、生きていることからの救済。

 だからこそ、あんなことを願い、黒曜の時も自ら銃を手にとった。

 

「昨日のアレは、そういう意味なのか?」

「アレ?」

 

 リボーンの目が、少しだけ怒気をはらんでいるような気がしたが、それに気がついたのは凛だけだった。

 

「あぁ……ベルとの」

 

 だが、どれだけ他人が怒ろうと、もう関係ない。

 

「不安なんだよねぇ。随分怪我してるし、ちゃんと、殺してくれるのかな?」

 

 見上げる漆黒の目に、困ったように泣きそうな表情の少女が映った。

 

「苦しいのは、イヤだもん」

 

 

***

 

 

 綱吉を背負いながら、並森中学校へ向かう途中、遼太は塀を歩くリボーンに目をやる。

 

「……ツナたちが勝ったら、ヴァリアーは手出して来れないんだよな?」

 

 綱吉が正式なボンゴレ十代目となれば、例えヴァリアーであっても、綱吉やファミリー、友人に勝手に手を出すことはできない。

 

「ツナ……頼む。勝ってくれよ……!」

 

 体育館で目を覚ました綱吉は、現れた犬、千種、そしてクロームに驚き、獄寺はダイナマイトまで取り出し、山本に止められる。

 

「やっぱりこうなった……」

「潤也君!? なんで一緒に……!?」

「手伝いだよ」

「え、あ、えぇっ!?」

「兄さんと会ったら大変じゃない。それを防止のためだよ」

「な、なるほど……」

 

 そう言われてしまえば、確かに納得できなくはない。恭弥が、一度負けた相手を放置しておく訳がない。もし、戻ってきてると知れれば、また殴り込みに行く。

 

「……凛と話したんだ」

「な、なんでお前らそんなすぐわかるんだよ……!」

 

 山本にもひと目でバレていた。それほど顔に出てくるのかと、ペタペタと顔を触るが、わかるはずもなく、潤也に笑われるだけ。

 

「なんかもう、吹っ切ったって顔してる」

「……この試合に勝てば同点。あとは、お前の兄ちゃんだろ」

「うん。負けるとか、考えないの?」

「も、もう信じるしかないだろ! 何もできないんだし! 応援でもなんでもしてやるよ!! いつもの円陣組もうぜ!」

 

 半ばやけになりながらも、クロームに声をかけるが、

 

「いらない」

 

 そんな冷たい一言が突き刺さった。

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