笑って、群れて、失った    作:こっここーまん

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26 対決開始

 ボンゴレリング争奪戦は、一夜にして九代目の弔い合戦となった。

 遼太は、学校が終わると、二人を探して校舎を走り回っていた。

 

「どうしたの? 遼太君」

「あ、ツナ! ジュンと凛見てないか?」

「見てないよ?」

「そ、そっか……あ、そうだ。ランボの奴、一回目を覚ましたって、さっき連絡あったぜ」

「本当!? よかった!」

 

 綱吉は安心して胸をなでおろしたが、リボーンは見上げて、二人について聞く。

 

「それが、探してるんだけど……見つかんなくてな」

「そうか」

 

 三人は下駄箱に来ると、凛の靴はもうないが、潤也の靴はあった。

 

「ってことは、風紀委員のところか……」

 

 だとするなら、さすがに行けない。先に帰っていようと、遼太も靴を取り出した。

 

「絶対、勝てよ。ツナ」

「うん」

 

 遼太は靴を履き変えると、店に向かった。

 その頃、応接室では電話を切った潤也がいた。

 

「これでよし……と」

 

 ちょうど、そのタイミングで入ってきた恭弥は、少しだけ目を見開く。

 

「おかえり。兄さん」

「なに?」

「足、痛くない?」

「痛くない」

 

 強がりなのはわかるが、わざわざ否定する必要はないだろう。潤也は、微笑むと、

 

「死なないでよ。兄さんは」

 

 そう言って、部屋を出た。

 凛は古いアパートを眺めていた。ずいぶんと寂れてしまったアパートは、もう取り壊しを待つだけの建物だそうだ。

 

「後悔してんのか?」

 

 振り返れば、リボーンが塀の上に立っていた。

 

「後悔? 何を?」

「……うすうすは気づいてんだろ。もう何も分からねぇ子供じゃねぇんだ」

「知らない。だいたい、家族は大好きなんだ。大切なんだから」

 

 笑う凛の表情に、嘘はなかった。

 

「愛を貰った。いっぱい。私も愛してあげるんだ」

 

 リボーンは静かに帽子のつばを下げた。

 

***

 

 夜の並森中学に遼太、凛、潤也の姿はなかった。三人はそれぞれ別の場所から、戦いの様子を見ていた。

 それは、キドニーがキャッチした、ヴァリアーがこちらへ向かってきているという情報。

 

「ヴァリアーは、おそらく今回の件に関わったすべての人間を消しに来るでしょう」

「なっ……!?」

「だろうねぇ。一応、応援は頼んでおいたから、遼太、その人のこと案内してあげてくれない?」

「お、応援?」

「メチャクチャ強い応援。期待しててよ」

 

 そう言われ、奈々やイーピン、京子たちがいる病院の近くで、遼太は隠れてヴァリアーが現れるのを待っていた。凛や潤也がどこにいるかはわからないが、関わった人間全てとなれば、守る人は多い。分担する他ない。

 

「……」

 

 言いようのない不安に、金属バットを握る手が汗ばむ。

 

「さて、ランチアさんは間に合うかな?」

 

 時間を考えれば、間に合ってもギリギリだ。

 

「……もういい加減諦めればいいのに」

 

 それは誰に向けられた言葉か、返事が返ってくることはなかった。

 

「……」

 

 凛は並森中で行われている戦いの光を眺めていた。

 死角に、影が降り立った。

 

***

 

 ザンザスが綱吉に破れ、ついにベルがチェルベッロの一人を殺した。コロネロたちも戦おうと、観覧席から出ようとするが、装置に細工され赤外線センサーが解除されない。

 

「くっそう! こうなりゃ、俺たちだけでやるしかねぇ!」

 

 獄寺がダイナマイトを構えた時、現れた黒い服を着たヴァリアーの隊員。

 

「ナイスタイミーング。待ってたぜ」

 

 ベルが笑う中、息も絶え絶えに男は口を開いた。

 

「報告、します。ヴァリアー隊は――」

 

 しかし、その口はそれ以上の言葉を紡ぐことはできなかった。後ろ首に引かれた赤い線は、血飛沫を吹き出し、倒れていった。

 代わりに現れたのは、凛。

 

「!」

「あんなかっこいいことして、負けるとかだっさいねぇ」

 

 いつもと変わらない人をおちょくる笑顔で、その片手には血のついた幅広のナイフ。

 引きつった笑顔のベルなど気づいていないのか、凛は一度ぶるりと震えると、心底嬉しそうに表情を歪めた。

 

「これなら、私を連れていってくれるかな? 消してくれるかな?」

 

 目の前を切り裂いた剣を男は、目の前で笑う女の目がじっと自分の目を見ているにも関わらず、どこか焦点のあわない視線に疑問を抱く間もなく、銃声を聞いた。

 その瞬間、後ろで構えていた仲間が倒れた。自分の目を鏡にして、後ろの仲間を見ていたのだと気がついた時には、男の世界から光は消えた。

 

「近衛さん……泣いてる……?」

 

 ただ一人、綱吉は嬉しそうに笑う凛の目が涙を流しているように見えた。

 

「ぐあっ……!」

 

 どうにか不意打ちで数人は倒せたものの、姿を見せて戦うことになれば、さすがに厳しかった。肩で息をしながら、少し目を後ろにやった瞬間、剣を構え迫っていた男。

 

「ッ!!」

 

 反射的に身をよじり、遼太は尻餅をついた。次に来る痛みにバットを構えるが、一向に痛みは降ってくることはなかった。そっと目を開ければ、周りにいたヴァリアーが倒れている。

 

「大丈夫か?」

 

 鋼球を携えた男が、遼太を見下ろしていた。

 

「あ、アンタがランチアさん……?」

「あぁ。潤也が言っていたのは、お前か」

 

 手を差し出され、立ちあがると、すぐにお礼を言った。もう少しくるのが遅ければ、遼太も危なかった。

 

「ここにいない奴らはもうボンゴレの元に行っているのだろう」

「! なら急がないと!」

「どうした? なにかあるのか?」

 

 確かに急ぐことに疑問はないが、遼太の焦り方は少々異常だった。

 

「あいつを助けないと……」

「……ならば、急ごう」

 

 なにを焦っているのかはわからない。だが、彼からは、確かに大事な何かを守りたいという気持ちが感じられた。

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