01 スペイン某所にて
「おーい。おーいってば。おっきろー。朝ですよー」
体を揺らせど、目を覚まさない少年。
「コケッコッコー!!!」
「うわぁああ!!!」
耳元で叫べば、さすがに飛び起きた。
「おはよう。バジル」
「え、え? お、おはようございます」
目の前にいる笑顔の青年は、どこか見たことがある顔だ。混乱する頭を動かし、どうにか記憶をたぐり寄せ至った結論。
「比賀、殿……?」
気を失う前、背後から何かに撃たれた記憶があった。それに、遼太には両親はいないはず。そうなれば、この遼太によく似た青年は他人のそら似か、ランボの持っていた十年後バズーカで自分が入れ替わったのか。そのどちらかだろう。
「お、当たり。スゲェな」
「いえ……あの……」
「混乱してるのはわかってるけど、とりあえず移動しようぜ? 近くに隠れ家があるんだ」
隠れ家に移動し、ここが十年後の世界であることを告げれば、驚きこそしたが、すぐに納得してくれた。十年後のバジルが残したという、リングと匣兵器、それに助太刀の書のおかげもあるのだろう。
そして、ボンゴレ狩りが行われていることと、すでにボンゴレ十代目であった綱吉が殺害されていることも伝えた。
「そんでもって、
「それで、拙者も知らない隠れ家に……」
チェデフのアジトはある程度頭にいれてある。それでも、この場所は見たことはなかった。
「そういうこと。まぁ、俺も初めて来たんだけどな…………なぁ、バジル。もうちょっと驚いたりとかしないの? 十年後だぜ? 十年後」
「え、あ、はい。拙者も驚いてはいるのですが、混乱している時こそ、まずは状況を整理しろと、親方様から教えられていますし……」
「いや、確かに言われたけど、さすがに突拍子なさすぎてもうちょっとびっくりするだろ……? 普通」
遼太だって、バジルが十年前からやってくるから、回収してなんてメールが届いた時は、何を言ってるのかしばらく理解できなかったというのに、バジルは現状を冷静に頭にいれている。
「これが実戦経験の差ってやつか……? あ、いや、でも、一応十年前のバジルなら、俺でも勝てるんじゃね……?」
「ところで、比賀殿はなぜチェデフのことを?」
ヴァリアーとの戦いの際、遼太はマフィアのことについて、最も知らなかったはずだ。この十年で何があったのかはわからないが、それでも随分と詳しい。
「俺もチェデフに入ったんだよ。中学卒業してからだけど。それから、家光さんに鍛えられた。だから、バジルと仲間だったんだぜ?」
「そうだったんですか!」
一度は嬉しそうにしたものの、遼太の周りを見るとバジルは聞きにくそうに、二人の名前を出した。
「潤也殿や近衛殿は……? 一緒にチェデフにこられたのですか?」
「……あいつらはチェデフに入ってない」
「では、沢田殿たちの元に?」
「うーん……半分合ってるのか……?」
「?」
難しい顔をする遼太に、バジルは首をかしげる。
「なんていうか、とりあえず、今は全然あいつらと連絡をとってないんだ。いや、とってると言えばとってるんだけど……一方的にメールが届くから、アレはノーカンにしたい」
「つまり、みなさん所属している場所はわかっていても、実際行動は共にしていない、ということですか?」
「お前、すげぇな……」
さすが先輩と、冗談混じりにいえば、バジルも苦笑いをこぼした。
「まぁ、仲間と連絡が取れない以上、この一方的な指示に従うしかないんだ」
「一方的な指示、ですか」
「ジュンの奴からなんだけど、バジルが入れ替わるちょっと前くらいから、日本でツナたちも十年前と入れ替わってるらしい。だから、この時代の戦い方をバジルに覚えさせながら、日本に向かって、白蘭を倒してくれって」
「沢田殿たちもこの時代に!?」
「らしい……俺も詳しくはわかんねぇけど、他に頼りもねぇし、いくしかないだろ」
「わかりました」
頷いたバジルに、十年経っているとはいえ、自分の方がこういった状況にはまだ弱いかもしれないと、少し不安になった遼太だった。
潤也が日本行きのチケットを用意してくれたが、空港はポルトガルからのもの。
「なにか理由でもあるのでしょうか?」
「ただの嫌がらせだろ」
メールには、鉄砲玉よ。ガンバレ。と書かれている。
「追伸、イタリアと日本ほど多くはないけど、スペインもミルフィオーレがいるから、気を付けてね~優しい僕が、車も用意してあげました。だそうです。あ、ルートも決められているんですね」
「……最低四回、最高十回の戦闘。レッツ☆ヒット&アウェイ……」
メールの最後に添付されていた鳥に猫耳がついたシルエットの口元が、やけに潤也がほくそ笑んでいるように見えてくる。
「なんだか、雰囲気変わりましたか?」
「いや、あいつ、嫌がらせする時のテンションは高いから。マジでコレ、ただの嫌がらせじゃね?」
少々心配になるが、チケットはありがたくちょうだいさせてもらいたい。潤也からのものであれば、足をつかないように細工してあるはずだ。
目的地を目指して森の中を進んでいると、耳に入った森では聞き慣れない音。二人は物陰に隠れて、それを見れば、モスカだった。
「モスカ……!? なぜここに」
「今はミルフィオーレが大量生産してるよ」
「では、中に人が!?」
「あー中に人は入ってない。あれは無人機。炎とリングに反応して襲ってくる。あれは、相手にすると大変だから、このままやり過ごすぞ」
「はい」
モスカをやり過ごし進めば、町があった。森の中ならまだしも、町中でこそこそしてたら逆に怪しまれる。今度は、堂々としかし周りを警戒しながら、町を歩いていると、ふと目があった車に乗っている男性。
「……あ」
バジルも周りの数人が動き出したのが見えた。ミルフィオーレだ。
「こっちだ!」
走り出した遼太は、路地を曲がった途端足を止め、振り返った。その手には青い炎が灯ったリングと匣。
バジルが腕の下をくぐり抜けるのと同時に、角を曲がってきた男の顔面に向かって飛んでいくスズメは、男の顔面に激突したあと、そのまま上空へと飛んでいく。
直後、振り出した視界を遮るような豪雨。
「バジル」
雨音の中、聞こえた遼太と姿をどうにか追いかければ、車のボンネットを叩く遼太。乗れという意味なのだろう。バジルがその車に乗り込めば、遼太は運転席に乗り込んでくると同時にアクセルを踏み、走り出した車。誰か運転席から放り出されたような気がしたが、気のせいだろうか。
雨の中、窓を開けると戻ってきたスズメは、遼太が開く匣の中に戻っていく。
「それが匣兵器、ですか?」
「あぁ。やってみるか? どうせ、ここにいるのはバレてるんだし、レーダーに引っかかっても問題ないしさ」
激しく揺れる車の中で匣を渡される。いくらなんでも、運転が荒すぎるような気がするが、逃げているなら仕方ないと、なんとか体を支えながら匣を受け取る。
「バジルも雨属性だしな」
助太刀の書に、炎の属性と特徴については記載されていた。バジルは雨。特徴は鎮静。遼太も同じ属性なら、この匣を開けることはできるだろうが、自分の匣はちゃんと持っている。自分のではダメなのだろうか。
「お前のはイルカだから、でかいんだよ。ここで開けたらでかすぎて大変なことになる」
「なるほど。そうでしたか。では、お借りします」
「おー」
素直にリングに炎を灯す練習から始めるバジルを横目に確認しながら、遼太はため息をついた。
「なにが優しい僕が車を用意しただよ……」
奪えるようになってるから、奪ってね。の間違いだ。
後日談こと未来編開始しました。
まだ書き終わってないので、毎日更新というわけにはいきませんが、できるかぎり早めに書き上げるようにします。