イタリアでは、ボンゴレ連合軍とミルフィオーレの戦いが繰り広げられていた。しかし、数は圧倒的にミルフィオーレの方が多く、ボンゴレ連合軍はすでに壊滅状態。負けるまでは秒読みだ。
「フッ……」
堪えきれなかった笑いが漏れ出す。
「どうした?」
「あ、いや。さすがにタイムトラベルと聞かされても……その、アニメみたいだと思って……」
「……まぁ、わからなくはないがな。事実だ。すでにγがやられた」
「あーあのブラックスペルの……ってことは中学生にやらてたってことっすか」
白い服を着た若い男は、なんとも言えない表情で笑うだけだった。
ミルフィオーレは確かに大きいが、その分いろいろな人間がいる。突然十年前の人間がこちらに来ていると言われて、信じられる方が少ない。
だが、それは事実であるのだから、信じるも何もないのだが、本当であるなら、雷のマーレリングを持っているγは中学生にやられたことになる。
「所詮はブラックスペルだ。それより、モズ。それ、ちゃんと終わらせておけよ」
「はぁ~~……了解っす。俺も早くアニマルボックスがほしいんすけど……」
ミルフィオーレは大きなファミリーだ。だからこそ、匣は大量に確保されているが、需要と供給が釣り合っていない。特に、アニマルボックスと呼ばれる動物の匣兵器は数が少なく、部隊長クラスでなければ配給されない。
「新人がろくな戦果もなく、アニマルボックスを持てると思うな」
「憧れなんすけど」
「なら白蘭様のために働け」
「はぁい……」
モズが報告書をまとめていると、上司はワインを一口煽った。
「どちらにしろ、老害ファミリーも終わりだな。次の作戦で、総攻撃を仕掛けておしまいだ。たとえあのキャッバローネであっても巻き返すことなど不可能」
笑っている上司は、小さくぽつりと、
「最強の暗殺部隊とかいうヴァリアーとやらと戦ってみたかったもんだ」
そんなことを呟いた。
「激つよらしいですよ?」
もはや都市伝説とも言われている、その存在。人とは思えない身体能力を持っているとかなんとか。
「名前だけの集団だよ」
「会ったことあるんですか?」
「ないが、中学生に負けたんだ。強いはずがないだろ」
なるほど。と、モズは笑って頷いた。
「まぁ、俺も会ってみたいっすよねぇ」
「お前なんて見た瞬間に殺されてるんじゃないか?」
ほろ酔い上司が、モズのことを笑った。
***
「はぁ~~着いたぁぁ……」
「おつかれさまです」
もはや立場が逆転し始めている遼太とバジルはすでに、飛行機の中だった。結局、六回戦うことになり、バジルも随分未来での戦い方に慣れ始めていた。
「この付近に入ってから、妙に数が減りましたが、何かあったのでしょうか?」
「ミルフィオーレに一気に攻撃を仕掛けるって作戦があったから、たぶんそれ」
「我々は参加していないのですか?」
「元々は参加する予定だったんだけど、その集会に参加してた奴が帰ってくる前に、アジトが襲撃されてな」
結局、潤也からの指示に従う以外なくなったのだ。
「とりあえず、飛行機の中なら少しは安心できるぜ」
こんな人目に付く密室で、無茶をしてくる奴はさすがにそういないだろう。
「交代で休みましょうか」
「さんせー」
数時間の休息。今まで気を抜けなかったのに比べれば、随分長い休みだった。
***
城の中を、黒い影が飛び交い、その影が通り過ぎたあとには、人の死体だけが残った。
「あ」
その部屋を開けた途端、声を上げた女に、スクアーロはすぐに目を向けるが、その部屋にあるのは椅子と机だけ。
「ボスが気に入りそうな椅子発見」
「ふざけんのかテメ――う゛ぉ!?」
スクアーロを押しのけて部屋に入った、ザンザスはそのまま椅子に座ると、
「悪くねぇ」
その一言だけ残して、目を閉じた。
何も言わずに、スクアーロに向けられた女のピースサインに使われている二本の指を、今すぐにでも切り落としたい衝動に駆られたが、今は我慢する。ただでさえ少ない人材をこんなくだらないことで、削りたくはない。
「もうやだー! つかれたー!」
「なんだよ。こっからがおもしれーんじゃん」
幹部が集まって、いつものように口喧嘩しているバルコニーに子供のように駄々をこねながら、現れた女は柵に座る。
「奇襲、急襲大好き。場所がバレてるディフェンス嫌い」
「あらぁ~~!! わかるわぁ! 女は攻撃してなんぼよね!」
「テメェ、女じゃねぇだろ」
「いやぁ……私、ルッスみたいなイケイケ乙女じゃないから、当たって砕けるのは好きじゃないけどね」
「凛もふっつーにこのオカマ、乙女とかいってんじゃねーよ」
「ミーも同感ですーそれが乙女だったら、アンコウだって乙女になっちゃいますよ?」
「別に本人が言ってればいいと思うけど……」
本気で不思議そうな顔をする凛に、ベルもフランも呆れるように眉をひそめた。
「凛のそういうところ好きだけど、ママ心配になっちゃうわぁ。変な男に騙されないかしら……」
「ママ、安心して。ここ以上に変な人の集まりないよ」
全員自覚があるのか、否定はされなかった。ようやくルッスーリアに促され、スクアーロが作戦を説明する。
「レヴィとルッスーリアは城で待機。何かあればサポート。俺と凛は東の抜け道を守る。南はベルとフランだ。雑魚は好きにつれてけ」
「はーい」
返事をしたのは凛だけで、ベルとフランは不満だらけのようだ。任務中にフランを殺すとまで予告している。
「だいたい、ペーペーなら凛の方がペーペーだし。交代」
「ザケンナ! その二人合わせたらロクに仕事しねぇだろォがァ!!」
「最低限はしてますよー? ねー?」
「ねー」
向けられた恐ろしい視線に、二人は一斉に顔を背ける。
「ほら、フラン。鮫隊長の血管破裂しちゃうから、素直に命令に従ったほうがいいって」
「少しくらい血が抜けた方がよくないですか?」
拳を震わせているスクアーロの後ろで、レヴィとベルがなにやら画策していたようだが、ベルに拒否され、フランと凛に向かっていた怒りが、レヴィの脇腹へと吸い込まれていった。
「オラ! 分かったら行けェ!!」
お互い顔を合わせて、舌打ちしたが、またスクアーロの怒鳴り声に、バルコニーから降りていった。
「いっぱい殺ってくるのよー!」
「がんばってねー!」
二人に手を振れば、軽く手を挙げ返すベル。
「う゛ぉぉい」
「あ、はーい」
スクアーロに呼ばれ、凛もすぐにあとを追いかけた。