笑って、群れて、失った    作:こっここーまん

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03 イタリア主力戦

 森の中を走っていると、その気配に足を止める。後ろからのようだ。

 

「なんだぁ?」

「たぶん味方……」

 

 スクアーロも足を止めて振り返れば、傷だらけで倒れ込んでくる隊員。

 

「誰にやられた!?」

「ザンザス様です……」

「あ……」

 

 なんとなく全て察してしまい、口元を抑えて視線を逸らす凛は、一応、話に耳を傾けるが、案の定、肉の話だった。

 三人目が落ちてきた辺りで、笑った口元を隠す手を離し、両耳を塞ぐことに使う。直後、塞いでるにもかかわらず鼓膜を破りにかかるスクアーロの怒鳴り声に、反射的に目も閉じてしまう。

 

 ぞわりと背筋に這いずる感覚。敵だ。

 

 そっと目を開ければ、スクアーロと目があった。

 

「寝てたら死ぬぞ」

 

 凛の立つ枝の下には、一つの死体が落ちていた。

 

「これで死ねたら、とっくに死んでるよ」

 

 じっとそれを見下ろすと、凛は笑う。

 抜け道の近くにくれば、虫のように湧き出しているミルフィオーレ。剣を構えようとするのと同時に感じた不気味な殺気。

 

「……ここは任せる」

 

 すでに殺気は消えている。この独特な殺気は、凛のものだ。どうやらスイッチは入ったらしい。ベルとは違うめんどうな性格故の戦闘能力。そして、それを最大限まで引き上げるスイッチ。

 

「はーい」

 

 ベルが自分の血を見ることだというなら、凛は圧倒的不利な状況。自分の生死を分けるならば、なお良し。ヴァリアーとの戦い以降、自殺願望について一種の諦めをつけた凛は、もう自ら死ぬ可能性を大きくするようなことはしない。スイッチが入れば、ただひたすらに自分にとって危険なものを排除するだけ。

 スクアーロが方向を変えるのと同時に、凛はベルトにくくりつけられていた二つのリングと匣を掴むと握り締めた。

 

「手伝って。長老」

 

 紫の炎を携えた狼が現れ、ミルフィオーレに向かっていった。

 

「敵だ――ガッ……!!」

 

 認識するのと同時に、喉元へ噛み付かれた男に駆け寄ろうとする男にも、また同じ狼が噛み付いた。気が付けば、大量にいる狼。

 

「囲まれた……!!」

「クソっ!」

 

 突然、一人が地面に落ちていった。その男の頭には、見覚えのない穴。旧時代の兵器とはいえ、今でも十分に攻撃手段として効果のある銃痕。しかし、それも考慮した上である程度防げるのがミルフィオーレの戦闘服だが、いともたやすく貫通されていた。

 

「匣兵器は雲狼! 敵はスナイパーだ!」

 

 増殖する匣兵器に、音も無く戦闘服を貫通のできる銃。その二つが揃えば、まず考えるのは匣兵器を囮、攪乱用として敵を襲わせ、自らは隠れて敵の数を減らす方法。数が少ないからこそ、この戦法はとても有効なものになる。まず、間違いはない。

 ただし、相手が凛でなければ。

 

「……」

 

 闇から飛び出してきた凛は、一人の喉を幅広のナイフで切り裂くと、その体を踏み台に飛ぶとサイレンサーの付いた銃を一人に向け、撃った。

 

「なっ……!?」

 

 ありえない。ただのハンドガンが、戦闘服を突き抜けるなど。しかも、威力の下がったサイレンサー付きで。

 

「なにがどうなって――クソっ!」

 

 向かってきた狼を鎌で切り裂いた時、その男は答えを知った。だが、それを仲間に伝える前に、裂けた狼の腹から爆発した雷属性の死ぬ気の炎が、男を飲み込んだ。

 

***

 

 眩しい光が空で爆発した。

 

「う゛ぁーりやー」

 

 地面に着地しながら、また一人を撃つ。ずいぶんこの十年で戦い方は変わったものの、なんだかんだ使い慣れた武器を使い続け、武器と炎を複合させて戦う者が多い。

 

「弾の節約には、なるよね……」

 

 雲の属性は増殖。撃った弾丸が不規則に増え、ただのハンドガンでもショットガンとほぼ同等の効果を出すことはできる。それに、凛のもう一つの属性である雷は硬化。銃弾にまとわせれば、鎧を身にまとっていようが貫通する。それを合わせれば、貫通力のある散弾が飛んでくるという、敵にしてみればたまったものじゃない。

 

「生きてたかぁ」

「あ、スクアーロ」

 

 周りを倒し終わる頃、やってきたスクアーロと共に一度拠点に戻ると、見事に崩れた城。その中で普通に椅子で眠っているザンザスに、ルッスーリアも妙にテンションが高い。

 

「そういえば、ベル死んだの?」

「死んでねーよ」

 

 ベルもフランも無事だったようだ。

 

「双子のお兄さんにやられたんじゃないの?」

「俺、王子だぜ? やられるわけねーじゃん」

「んー? でも、双子の兄なんだから、向こうも王子じゃん」

「どっちにしても、やられてましたよねー」

「は? ちげーし。やられてねーから。だいたいテメーは、さっさと匣開けろよ」

「だーかーらー、ミーはポーズ決めないと開けられないんですって」

 

 言い争っている二人に凛は眠そうにあくびをしていると、突然二人がこちらを見た。

 

「先輩からも、この被り物取ったほうがいいっていってくださいよ。過去とか伝統とか古いですって」

「ふっざけんな! それ被ったまま死ね!」

 

 なんでも、開匣に腕を頭の上に上げる必要があるらしく、そのためにカエルの被り物が邪魔だそうだ。

 

「……スリムなカエル」

「「却下」」

 

 すぐに却下されてしまった。

 

「なんだよーせっかく二人の意見を取り入れたっていうのにさぁ……」

 

 膨れる凛とベルの目の前で、干からび始めたカエルは、見事に乾燥し、しわくちゃになった。

 

「ダイエットせーこー」

「イエイ☆ やったね!」

「いやいやいや! ただのミイラだろ! それ!」

 

 見事な棒読みで喜びあう二人に、ベルだけが納得できていなかった。

 

「妹と弟を世話するお兄ちゃんね」

 

 ルッスーリアが微笑ましそうに三人を見ていると、目の前に迫ってきたナイフ。慌てて避けたが、当たっていたらただではすまない。

 

「ちょっと! なにすんなよ!」

「テメーが変なこと言ってっからだ!」

「お兄ちゃん。落ち着きなよ。ミンク、モフモフしていいから」

「そうですよーお兄ちゃん。死んでください」

「てめぇが死ね! つーか、ミンクは俺だっての!」

 

 ご丁寧に全てちゃんと返しているベルに、ルッスーリアがまた微笑ましそうに頬を緩めていた。

 スクアーロが日本と連絡を取っていると、足元に擦り寄ってきたミンクに、フランとベルが喧嘩している中、凛は我関せずというように屈んでミンクのことを撫でる。

 

「いい手触り。さすがは高級毛がワッ!?」

 

 突然、耳から奪い取られた通信器に、耳に手をやり、奪い取った人物に振り返りながら立ち上がれば、ザンザスだった。

 

「……私の耳、ある?」

「あー……」

「ないですねー」

 

 喧嘩を中断して、二人は凛の右耳を確認して、フランが答え、ベルも頷く。そして、後ろでまた破壊音。

 

「ついでに通信器もなくなりましたね」

「なんということでしょう。つける場所もなくなれば、つける物もなくなりました。とても合理的な匠の技」

「技っつーか、力ワザじゃね?」

「はい。テイクツー」

「なんということで――」

「はいはい。茶番はそこまでにして、凛は予備の通信器取ってきなさい。ボスの分もお願いね」

 

 長くなりそうな茶番にルッスーリアがスクアーロを止めながら、ガレキの山の方を見る。

 

「このゴミの山、一人で探すの!?」

 

 城は崩れ、辺り一面ガレキだらけだ。ここから持ってきたコンテナを探すのは、さすがに一人では大変だ。

 

「レヴィは……無理そうね。ベルとフランも手伝ってあげなさい」

「えーいやでーす」

「長老ならにおいですぐわかんだろ」

「犬じゃないんだから……」

 

 そういいながらも、匣から長老を出し始めた凛だった。





安心してください。耳はありますよ。
さすがのザンザスさんでも、耳もぎ取るのは無理だと思いたい。

とりあえず、三人の属性はメインの属性は被らないようにしています。
ただある程度は、戦闘で使えない程度には流れていたりしますが、それは一人に限っては本編に出てくるので、それはまた今度。

未来編は、炎の属性と匣が出た時点で、簡単にあとがきで説明していきたいと思います。
なので、このあとは補足設定ですので、興味のある方は見ていってください。

凛は、雲・雷がメインです。
 避けられない貫通してくる銃弾に、ほぼ絶対に切り裂いてくるナイフで、優しさも容赦一片もないので、近づいてきた敵絶対ぶっ殺すマンしてます。
 潤也曰く、これで嵐属性まで使えたら、敵に同情するレベル。

匣は、雷雲狼。
 本編で言っているのでお気づきでしょうが、正真正銘、長老です。死体を元に匣兵器にしています。(本家ではモデルでしたが、ボンゴレならやってくれるのではないかと……)
 基本的な攻撃方法は狼ですが、体が一気に蒸発するような攻撃を受けた場合を除き、倒される時に雷属性の爆発が起きて、周りを巻き込んでいきます。死なばもろとも。
 他はすべて道具で、動物匣は長老だけです。
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