久々に帰ってきた並森は、なにか大きく変わったわけでもなく、懐かしい気分になる。
散策したい気持ちを抑えて、早々にアジトに向かうが、不思議なことにミルフィオーレがいない。
「どういうことでしょうか?」
「まぁ、尾行がないっていうならいいことだけど……」
不気味だ。
警戒は解かずに、アジトの近くに行けば、人の気配。
「沢田殿!」
いち早く気がついたバジルが顔を出せば、綱吉たちも驚いたように声を上げ、山本も遼太をじっと見つめると、
「りょ、遼太、だよな?」
「おう! 久しぶりだな! 十年前って、こんなに小さかったか!」
「リョウがでけぇんだよ」
久々の親友との再会に喜んでいるのも束の間、バジルと遼太の腹はもう限界だった。親友や仲間と出会えたからか、今まで耐えてきた腹の虫が一斉に鳴り響く。
「……」
「ムリだァー! 腹減ったァ!!」
「えぇぇええ!?」
座り込んでしまった遼太とバジルに、綱吉たちも慌てて二人をアジトに連れ帰り、京子たちに料理を作ってもらったのだった。
二人は、ものすごい勢いで料理を口に運びながら、今までのことを話していた。
「遼太君、父さんのところで働いてるの!?」
「まぁな」
当たり前のようにチェデフに所属していると明かされたものの、十年前から来た綱吉にとっては驚きだ。
「あの後、家光さんに頼んではいたんだけど、もう少し待てって言われてな」
「それってあの時の……」
なにか決意したように病室を飛び出していった時のことは、綱吉たちにとっては、まだ数日前でよく覚えている。
「あ゛……そういや、あの時はまだ言ってなかったっけか……まぁ、そうだな。あの時にな」
「にしても、意外だな。テメェは、あのまま逃げると思ってたのによ」
牛乳を一気に煽ると、困ったように眉を下げながら笑う。
「あのまま、何も見なかったことにしてたら、ダチを見捨てたって、俺が俺を許せなかっただろうしな。……後悔はしてねぇよ」
関わらないようにしていたはずなのに、十年後の今、引きずられるように深くまで関わってしまっていた。それに後悔はしていない。もうこれが日常でもあった。
しかし、綱吉たちの表情は暗い。
「ま、まぁ! とにかく、ボンゴレ狩り始まってからは、仲間と連絡つかないし、ジュンが送ってきたツナたちのことと、このアジトが本当にあること信じるしかなかったんだけどな」
「潤也も生きてんのか」
「そうだ! 二人は一緒じゃないの!?」
遼太を含め、潤也、凛の話題は、ここにきてから一度も出てきていなかった。てっきりボンゴレ狩りに巻き込まれたのかとも思ったのだが、遼太がこうして生きていて、潤也から情報が送られてきたというなら、凛も生きているはずだ。
一緒に行動していたことの多い三人なら、十年後でも一緒にいる気がしていたが、遼太の渋い顔を見る限り違うらしい。
「なんていうか……うーん……まぁ、メールがくるくらいなんだし、生きてはいるんだろうけど、ぶっちゃけ俺も潤也の居場所はわかんねぇんだよなぁ」
「一緒じゃなかったのか?」
「拙者も聞きそびれていましたが、所属する機関については知っておられるのですよね? ここなら同盟ファミリーや機関の情報が調べられるのでは?」
「ジャンニーニとフゥ太なら、ある程度知ってるはずよ」
「マジっすか!? ヴァリアーは!?」
「「「「え゛!?」」」」
ヴァリアーという言葉に、全員が驚いて声を上げた。そりゃそうだ。ついこの間まで、命をかけて戦っていたのだから。
今回は味方だとは聞いているが、やはり真っ先に出てくるとは思わなかった名前だった。
「ヴァ、ヴァリアーなら、前に通信入ったけど……」
「ザンザスの野郎が6弔花の奴をぶっ飛ばしたってな」
「スクアーロも元気そうだったぜ」
「そっか! よかった!」
「あ、あのさ、もしかして……」
遼太の今の喜び方からしても、ヴァリアーにどちらかがいるのは想像がつくが、先程、潤也の居場所を知らないと言っていた。つまり、残りは一人だ。
「近衛さん、ヴァリアーにいるの……?」
「あぁ」
十年前から来た全員が叫んだ。
「きょ、極限になぞだァ!!!」
了平が叫びたくなるのもわかる。確かにベルフェゴールとは仲が良さそうだったが、ヴァリアーに入るとは思わなかった。
「そ、そんなこと言われてもっすね……! そもそも、凛が誘拐されたのは中三だし」
「誘拐!?」
「ヴァリアーにな」
凛も中卒が必要ないなら、このままでいいかなんて、テキトウな考えでそのままヴァリアーに残ることを決めてしまった。
「俺も俺で、中学卒業してからは家光さんのところで修行してて、帰ってきたら、ジュンはいなくなってるし、店もなくなってて……それ以降、たまに会うくらいで、一緒にはいなかったんだよ」
絶句している綱吉に代わって、獄寺が思い出したように、ヴァリアーの通信に凛のことが一切出てきていないことを聞けば、「凛だから」の一言。
「だけどよ、いくらヴァリアーが健在でも、あいつが生きてるとは限らねぇだろ」
「大丈夫じゃね? ザンザスとスクアーロ生きてるなら、まぁ、死んでることはなさそうだし。それこそ、ヴァリアーがやられてないかぎり、凛は生きてるよ」
言い切ってしまう遼太に驚くが、すぐに苦笑いに変わった遼太は潤也から聞かされたそれを、獄寺たちにも聞かせる。
「なんでも、ベルが凛を殺せるか不安になってきたって言うレベルだぜ?」
あのベルフェゴールにそこまで言わせるとは、少しだけ凛と会うのが怖くなってきた。
「さて……ツナたち、どっか行くつもりだったんだろ? 飯も食ったし、付き合うぜ?」
立ち上がるとふらつく足元。すぐに山本が支えてくれたため、倒れることはなかったが、隣に座っていたバジルは顔を机に叩きつけるように、寝ついてしまった。
体力がもう限界だった。
「遼太たちは休んでろって」
「わ、悪ぃ。バジルは俺が部屋に運んでおくから」
「大丈夫? 手伝うよ?」
「大丈夫だって。ラルのスパルタ教育に比べれば、こんなのちょろいもんよ」
それには少し納得してしまった綱吉たちだった。