「チョイス……ね」
今日一日かけて、綱吉たちがバイクに乗る練習をしていた。さすがに、遼太は車も運転できれば、バイクだって運転できる。そのため、今日は体を休めるのと、入江たちの手伝いをしていた。
「その話だと、並森でやるってことにならねぇ?」
「さすがに白蘭さんも、そこまでやるとは思えないけど……ありえなくはないと思う」
入江の言葉に、遼太も眉をひそめるが、すぐに息を吐き出す。入江に詰め寄ったところで、話は進まない。
「そういえば、潤也さんからそれ以降、連絡は?」
「全く。ホント、どこにいるんだか……」
ため息をつく遼太に、入江も眉を下げた。潤也のことは、綱吉や恭弥から聞いてはいた。姿は見せないことが多いが、突然現れて情報を与えては、また消えるの繰り返し。
入江も、ミルフィオーレに紛れ込んでいるのではないかと、探ってみたことはあったが、全く見つからなかった。しかし、絶対に紛れ込んでいると確信していた。でなければ、ボンゴレが壊滅するのはもっと早まっていたはずだ。
「……僕もスパイをしていたからわかるけど、周りの誰もが敵って思いながら、相手の懐に入って自然と笑うっていうのは、難しいものだよ。それを長い間続けるなんて、まともな精神力じゃない」
「でも、正一もやってた」
「僕は途中からだし、第一、白蘭さんには気づかれてた。潤也さんとは違うよ」
「……まともじゃねぇんじゃね?」
意外な遼太の言葉に、入江が顔を上げれば、遼太は困ったように頬をかきながら、笑う。
「たぶん、どっちでもいいんだよ。あいつは」
キドニーと同じだ。金で情報をやりとりして、自分は常に第三者でいる。どちらに味方するというわけでもなければ、片方が負ければ、勝った方につくだけ。冷酷で、無慈悲。だからこそ、情報屋として信用される。
「でも、あいつは店長じゃない。ダチだからこその、コレだろ?」
ビジネスではない、一方的なメール。それは、第三者としてではなく、綱吉たちの友人として、この戦いに参加するという現れだ。
「君たちは、一緒にいなくてもお互いに分かり合ってるんだね」
「まぁな! いや、あいつらはないわーとかいいそうだけど」
もし、ここに潤也と凛がいれば、二人して眉をひそめて、小声でわざわざ聞こえるような大きさでいじってくるだろう。容易に想像がついてしまって、遼太もつい苦笑いになってしまう。
「……うらやましいよ」
「ぇ?」
「僕ももしかしたら、白蘭さんとそんな関係になれてたのかもって思うとね」
記憶を取り戻すまでは、確かに親友だった。もしかしたら、彼らのように離れていても互いに分かり合えるような仲になれたかもしれなかった。
しかし、現実は全く違う。白蘭を倒さなければ、世界が終わってしまう。
「……今からでもなれる……ってのは、さすがに言い切れねぇか」
昔なら言えただろうが、もう遼太の口からは言えなかった。
「でもさ、それでも、案外また仲良くなれるかもしんねぇよ?」
「遼太さん……?」
「俺らがそうだったからさ! 今まで逃げてた分とか、全部一気に清算したみたいに、みんなですっげぇ苦しい思いして、凛なんて死にかけたし。それで、ようやく本当にわかりあえたんだ。絶対とはいえねぇけど、死にそうになるくらいやってみれば、うまくいくかもしんないだろ?」
そういって笑った遼太に、入江も小さく微笑んだ。
***
夜になっても、やはり頭を悩ませるのは、チョイスのことだ。
「ボンゴレリングにボンゴレ匣で、まぁ、少しは状況もよくなったかも知んないけど……こういっちゃ悪いかも知んないけど、やっぱ十年ってでけぇよ?」
十年の間に、綱吉を含めた守護者は、それこそ何度も死線をくぐり抜けてきた。経験や知識だって、十年前とは比べ物にならない。それを全て捨ててでも、伸びしろに賭けたのは、遼太には少し納得ができていなかった。
「ボンゴレリングが、この時代からなくなっちまってることもあるからな。入江が選んだ人選は間違っちゃいねーぞ」
「そ、それは……そうだけど……」
「おめーも入れ替わりたかったのか?」
「お、俺ェ!? 十年前ってまだロクに訓練もしてねぇし、今の俺の方ができるぜ? 色々と」
「だろうな」
「わかってたのかよ!」
確かにそれなりに十年前の遼太も、戦うことはできるだろうが、圧倒的に心構えも、力も今の方がある。
はっきりと言い切るリボーンに、ため息をついていると、アジト全体が爆発音と共に揺れた。
「!?」
「十代目の部屋から、炎の反応です!」
すぐに綱吉の元へいけば、壊れた壁にバジルと山本が雨の匣兵器で、橙色の炎をまとった化け物に攻撃をしていた。
「どういう状況だ!? コレ!」
驚きながらも、雨雀を出すと、化け物に向かわせる。三人の雨の炎でようやくそいつは匣に戻り、綱吉はぐったりと壁に寄りかかって座り込む。
「ツナ!」
「十代目! お怪我は!?」
見てみれば少し傷が出来ていた。遼太は新しく匣を取り出すと、今度は晴れの炎をそこへ注ぎ込む。現れたチョウチンアンコウは、綱吉の元へ降りていくと、その提灯から淡い光で傷を照らした。
「テメェも複数の炎使えんのか!?」
「まーな。雨も晴れもそんなに変わらないくらい使える。それ以外は無理だぜ?」
「そ、そーか」
「?」
複数の属性を戦闘に使えるのは少ないため、こんなに身近にいるとは思っていなかった。少し自分の有用性が危ぶまれるかと思ったが、二種類ならば五種類使える自分の方が、種類で言えば多い。その分、戦闘のバリエーションだって多い。
妙な負けず嫌いを発揮していた獄寺に首をかしげながら、綱吉に何があったのか聞けば、ただボンゴレ匣を開けただけらしい。
「大空の匣はデリケートなんだ。こんな開匣繰り返していたら、使い物にならなくなるぞ」
「ディーノさん!」
現れたのは、白馬に乗ったディーノだった。
「お、遼太もちゃんとついてたんだな」
「ちゃんと?」
なんだかすごくその先の言葉が予想できてしまい、つい眉をひそめてしまう。
「ジュンの奴からメールが入ってな」
「やっぱりー!!!」
もはやどこかに監視カメラや盗聴器でもつけられているのではないかと、不安に思えるレベルだ。
「あ、でも、悪ぃな」
「こっちこそ、ジュンの奴が迷惑かけてたら……!」
「別に迷惑はかけられてねぇよ。いや、まぁ、若干ドンピシャな情報すぎて怖いときはあるけどよ……」
遼太とディーノの引きつった表情に、その場にいた全員が今だに姿を確認できていない潤也に、恭弥とは違った恐怖を感じてしまう。
「そうじゃなくて、実はミルフィオーレを総攻撃するちょっと前に、凛、というかヴァリアーと一緒にいたんだ。それで、遼太がこっちに来る予定だから一緒にくるかって誘ったんだけどよ……スクアーロとベルフェゴールに拒否されてな……」
「ま、まぁ、あいつが俺がいるくらいでこっちに来るとは思えないですし、いいっすよ。そもそも、凛、幹部なんでしょ? そんな大作戦の時に、私用で動けるとは思えないですし」
二人の何気ない会話に、十年前からきた全員が驚いた表情で遼太を見つめ、遼太も半歩体を引いた。
「な、なんだよ……みんなして」
「凛のやつ、幹部なのか?」
リボーンが代表して言葉にすれば、遼太は当たり前のように頷く。
「確か、ヴァリアーの雲のリングもらってた……はず、だけど……大丈夫か?」
その場にいたディーノ以外の顔が先程まで以上に引きつっていた。もはや、驚きを通り越して、十年という歳月に関心してしまったのだった。
このあと、補足です。
遼太は、雨、晴がメインです。
基本的に、雨の属性で攻撃しつつ、晴は治癒と活性で戦っている時の体の補助に使っています。武器は斧を使っているので、雨の属性での近距離戦闘のスタイルです。
銃は驚くほど下手(ビアンキより幾分マシくらいの腕前)なので、家光直々に銃は使わず手榴弾を投げろと命令されている。
凛曰く、殺傷能力高いのか低いのかハッキリしないよね。
匣兵器は、雨雀のチュン太と晴チョウチンアンコウのつるし。
雨雀は、索敵、攪乱、攻撃などなど色々使い勝手がいいのでよく使っている。
本人が遠距離相手に弱いので、戦闘時には常に展開して索敵している。
何故か、凛が雨雀を避けているようなのを、少し気にしていたり……
晴チョウチンアンコウは、主に怪我した時のサポート。
提灯から晴の炎を浴びせるので、広範囲に照射可能なのと、倒れている仲間への治癒にむいている。
戦闘時は、遼太の近くで展開してサポートと時々アタック。
おそらく遼太が三人の中では、一番普通の匣兵器の運用をしてる。