笑って、群れて、失った    作:こっここーまん

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07 過去の傷

 バジルと遼太は、並森山で匣兵器を使って修行をしていた。小さな傷であれば、すぐに遼太が回復させられるため、修行は長い時間続けて行われた。

 

「こうしてると、前にお前に鍛えられた時のこと思い出すよ!」

 

 斧を大きく振れば、バジルはその隙をついて懐に飛び込むが、遼太の影に隠れていた雨雀のチュン太が体当たりしてくる。

 

「くっ……!」

 

 ガードしたものの、目の前を横切った斧に、小さく息を呑むことしかできなかった。

 

「立場は逆だったからこそ思うけど、お前、本当に手加減うまかったんだな」

 

 遼太は斧を降ろすと、困ったように頭をかき、バジルの腕をつかむ。先程雀が体当たりした場所から血が出ている。他の部分ならまだしも、腕ではこの先の修行に影響が出るかもしれない。

 

「つるし、頼んだ」

 

 晴チョウチンアンコウを出すと、ケガの部分に炎を照射した。

 

「比賀殿は常に全力であるからこそ、拙者もここにきてから成長できたのです。むしろ、手加減無用で来てください。そのほうが、沢田殿たちの力にもなれます」

「……」

 

 目を見開いて嬉しそうに口元を緩める遼太に、バジルは不思議そうに首をかしげると、目元を隠し、

 

「ごめん……俺、お前ほど素直な奴に会ったのが久々で……」

 

 いや、会ったことはあるかもしれないが、印象が薄い。

 チェデフに入って以来、人と深く接する機会がずっと少なくなった。肩に乗って、不思議そうに首をかしげているチュン太を撫でれば、擦り寄ってくる。

 

「そういえば……沢田殿たちは大丈夫でしょうか?」

「あー……女子たちと喧嘩してるんだっけか」

 

 修行を始めた日の午後のことだ。ミルフィオーレのことなどを京子たちに聞かれ、全てを話さなければ家事をボイコットすると、現在、その喧嘩の真っ最中だった。

 もちろん、遼太たちも事情について問い詰められたが、誤魔化した。二人にとって家事のボイコット自体は、それほど大きな問題ではない。こなせと言われれば、それをこなしながらでも修行できる。むしろ、修行をしている綱吉たちのために食事くらい作ってやるたいのだが、

 

「あの髪食ってた奴にメチャクチャ痛ェ蹴りもらったしなぁ……さすがに手ェだせねぇし」

 

 脇腹に刺さった蹴りは、常人の蹴りではなかった。そもそも、一体どこから入ってきたのだろうか。あの小さな女は。

 

「まぁ、あの二人が言ってることはわからなくはないんだけどな」

 

 実際に、十年前、二人に隠し事をされていた。それこそ、マフィアの深いところでのことを。

 

「遼太殿は話すべきだと?」

 

 彼らはそうだった。アレは、半ば強引ではあったが、潤也は今まで触れてこなかった真実を話すという選択をした。だからこそ、この未来がある。

 

「んーー……どうだろうな。できれば関わって欲しくはないな。やっぱり」

「……近衛殿と同じですね」

 

 そういえば、遼太は驚いたように目を見開き、笑った。

 たしかにそうだ。凛は、遼太に関わらなくていい、知らなくていいと言っていた。立場が逆になってみれば、自分だって同じことを言っていた。

 

「比賀殿?」

 

 もし自分と同じような道を京子やハルが辿るようになってしまったら、と思うと、自然と眉が下がってしまう。

 

「……後悔、しておられるのですか?」

「いや。後悔はしてねぇ。ダチの為に、なにもできてなかったあのままだったら、俺は今だって後悔してた。それに、凛なら溜息ついておしまいな気がするしな」

「女性というものは強く見えても繊細なものだと、親方様が言ってました。近衛殿も案外気にしていらっしゃるのでは?」

「凛がァ? いくらなんでもそれはないって」

 

 絶対ありえない。

 

***

 

 アジトに戻れば、なにやら楽しげなポップな音楽。通信室にいけば、白蘭からのチョイスについての連絡だった。

 京子やハルも含めて、過去からやってきた人間は全員参加しろと。

 

「こうなっちまった以上、ツナが京子やハルに状況を説明しちまったのは正解だったかもな」

「!!」

 

 リボーンの言葉に、全員の視線が綱吉に集まり、やはり一番激怒したのは、了平だった。

 

「お、落ち着けって! 先輩!」

 

 後ろから羽交い締めにすれば、腕の中で暴れまわっている。

 

「この状況じゃあ、話す他ないっすよ!」

「――ッ!! 貴様になにがわかる!?」

「少なくともこの中では、両方の気持ちを一番理解してるのは俺っす」

「!」

 

 暴れるのをやめた了平をそっと離せば、震えていた腕はだらりと力が抜けている。

 

「……戦いの中に連れてって誤魔化すなんて、さすがに無理ですよ」

 

 十年前なら、きっとそれでも京子とハルを巻き込みたくないと、誤魔化そうと言い出しただろう。

 しかし、言わなかった。希望と現実が合わないと分かっているからこその言葉。この十年で、確かに遼太は過去以上に成長していた。

 

「にしても、白蘭のやつどーやって回線に入り込んだんだ?」

「セキュリティがザルなんだぁ。アマチュア共がぁ」

 

 スクアーロだった。

 

「……まぐろ?」

「みやげだ」

「え゛? 凛からの嫌がらせ?」

 

 違うらしいが、まず最初にそれを疑った遼太に、ディーノもどうしても苦笑いになってしまった。

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