光に包まれたと思ったら、次の瞬間には、高層ビルの中心にした。
「って、お前、ギリギリ過ぎだって!」
「悪ぃ悪ぃ」
山本は遼太だけでなく、綱吉たちにも謝る。
チョイスのルールは、入江が言っていたものとほとんど変わりなかった。勝負の決し方が、ターゲットを倒すことくらいが追加されたくらいだ。
「各属性の参加人数が、あれで決まるってわけか……」
人数次第では、ボンゴレ側は人が足りない状況になるが、どうにか足りそうな人数だった。
「また不参加かぁ……」
リング争奪戦の時も、常に応援だった身からすれば、今は十年歳上なのだから、少しくらい一緒に戦ってやりたい。
「まぁまぁ、サポートも重要なポジションですから」
「おめーら、どっちが先輩かわかんねーな」
「うっせーよ! 十年経ってなきゃ、バジルの方が先輩だよ!」
バジルが苦笑いを浮かべる奥で、なにやらネクタイと格闘している山本の姿。
「結べないのか?」
近づいて、結び方を教えれば、じっと見上げてくる驚いた表情。
「な、なんだよ……」
「いや、そーいや、十年経ってんだよなって思ってさ」
「……そーだよそーだよ。俺はそんなに成長してねぇよ! なんなんだよ! よってたかって!」
「ハハッでも、嬉しいぜ。十年経っても、親友のままでいてくれるなんてよ」
「……武」
「ん?」
「それただの死亡フラグだから、やめようぜ?」
決戦前に潮らしくなるなんて、らしくない。十年前の、野球の試合の重要な場面と同じように、送り出してやろう。それが、親友としての役目だ。
「かっ飛ばしてこい」
「おうっ!」
***
裏切り者がいるから、チョイスが終わるまでにあぶりだしておいてね。と、白蘭が命令して出ていった。
白い服を着た男たちは、その裏切り者を探し、そしてある人物たちに狙いを定めた。
それは、先日ヴァリアーに襲われたアジトから生きて帰ってきた人物たち。
「しかし、本当によろしいのでしょうか?」
半ば勘だった。イタリアでの主力戦の際、確かにヴァリアーはこちらの動きをわかっていたように、当時の指揮官がいた城を攻め、占拠した。そして、その後も後退するミルフィオーレのアジトを狙いすましたかのように襲った。
数、被害を考えれば、それはもはや人間技とは思えず、内部からの情報が漏れているのではないか、自爆覚悟の内通者ではないかという説が浮上した。
そして今、命からがら逃げ帰ってきた病室に、ホワイトスペルの人間が飛び込み、けが人たちを撃ち始めた。
「なにを……!? これはいったい……!?」
「裏切りものめ!!」
「うらぎ――」
男たちは何も理解する間もなく、撃ち殺され、最後の一人になった時、部屋が嵐の炎に包まれた。
「おっ? 爆発したなぁ。先輩、お疲れさまでした」
モズは、笑いながらその機会を操作していた。
「暗殺ってバレてちゃ意味ないって……今言っても遅いか」
機械からようやく取り出せたのは、四つのおしゃぶり。それを手に取ると、感じた気配に銃を構えながら振り返る。
「ユニ、様……? あれ? 起きてらっしゃったんすか?」
「大丈夫ですよ。分かっていますから。雲雀潤也さん」
微笑むユニの表情は、これまで過ごしてきたミルフィオーレの生活で一度も見たことはない、優しいものだった。
モズこと潤也は、表情を崩すと、
「それはよかった。正直、あなたをどうやって起こすか検討もついていなかったもので。起きてきてくださったなら手間が省けた」
おしゃぶりを渡せば、ユニは大事そうにそれを抱える。
「ここにもう用はないですし、僕はもうお暇させてもらいますが、あなたは?」
「私もいきます」
「でしたら、出口まではご一緒にいきましょうか」
「はい」
二人は堂々と扉から出ると、潤也の姿は白い服から黒い服へと代わり、姿も変わった。ユニにとっては見覚えの有りすぎるブラックスペルのファミリー。
ホワイトスペルを見るやいなや、ユニを守るように体を動かし、ホワイトスペルの前に立ちはだかる。それは、本人とわかっていても、見間違えてしまうほどのもの。
「ユニ様!?」
「なんの騒ぎだ。ホワイトスペルの揉め事にユニ様を巻き込むな」
「なにをっ!?」
「内通者をあぶりだしている。ホワイトスペルだけではない。ブラックスペルにとっても一大事だろう?」
「内通者?」
「残りはモズという新兵だけだ。見つけ次第、殺せ」
「随分と物騒だな。さすがはホワイトスペル」
「貴様! 言わせておけば!」
銃が構えられたが、その引き金が引かれる前に、ユニの制止がかかった。
「やめなさい」
ユニはミルフィオーレのNo.2だ。逆らうなんてまず許されない。
舌打ち混じりにその銃は下ろされ、ホワイトスペルはモズを探しに走っていった。
「急ぎましょう。姫」
「……はい」
ユニはチョイスを行なっている場所に向かうという。そのための転送装置のある部屋へと入って、座標を調べる。
「潤也さんは」
「僕はまだやることがあるので。ここから先は一人でお願いします」
「わかりました。ありがとうございます」
「僕は何も」
「いいえ。あなたがいなければ、この未来にはたどり着けなかった。あなたは、みんなを見捨てて生き残る方を選ぶこともできた」
情報を流してさえいなければ、スパイであることがバレることはまずなかった。だが、バレてでも潤也は情報を流し、戦況を良いものへとするため情報を操作した。
「んー確かに、ちょっと前の僕なら世界が終わろうがどっちでもよかったかも。いや、今でも変わらないか……」
ただ白蘭を倒すということを綱吉や恭弥、入江から聞いた時、最初は迷った。倒せる見込みが低かったし、なにより現実味がなさすぎる作戦だ。
参加するかどうか迷っていた時、ちょうど会ったのが凛だった。
「凛はまだ死にたいって思ってるの?」
昔と変わらない、同じ質問をすれば、すぐに頷かれた。
「でも、生きてるものは仕方ない……痛いの嫌だし、スパっと殺してくれる人が出てくるまではのんびり生きてることにするー」
その時の一緒にいたベルの引きつった表情は、今思い出しても笑いそうになる。
「まぁ、なに? 部の悪い賭けは好きじゃないけど、どうせ一緒にいるなら楽しいメンバーとがいいじゃない?」
その潤也の笑みに嘘はなかった。ユニは微笑むと、頷いた。
ユニを送ったあと、潤也は基地からの脱出を計っていた。転送したことや裏切ったことがすぐにバレ、幻術を使っても、さすがに見抜ける人間も探索に加わってきていた。
追われながら、逃げ込んだ部屋には、パソコンが一台電源が入った状態で画面にある映像映し出されていた。
「これは……」
監視カメラの映像だ。しかも、決めていた脱出経路。
「……あ、あははは。まったくどこにいたんだか」
このカメラの映像を出していたであろう人物に、潤也も苦笑いをこぼしてしまった。