近づいてきた気配に、隠れていた全員が一斉に攻撃を仕掛けた。
ザムザがザクロの動きを止め、直後黒狐が貫き、トドメに獄寺が攻撃を仕掛け、ザクロの体は上下に分裂した。
「ぐぁぁああ!!」
しかし、その状態であっても叫び、リングをつけた腕は胸へと向かっていた。
「バケモノかよっ!!」
すぐさま遼太が斧でその腕を切り落としたが、一瞬、遅かった。
目の前に嵐の炎が渦巻き、雨雀が目の前で防御膜を張ってくれていなければ、これだけで分解されていただろう。
「仕留めきれなかったか……!」
獄寺は背中を怪我しろくに動けず、ラルも戦闘するには厳しい体調だ。遼太も二人に比べればずっとマシではあるが、やはり怪我はしていた。最初で決められなかったのは、良くない誤算だった。
現れたザクロは、動物ではあったが、かつて存在し、今は絶滅した恐竜のモデルの修羅開匣。
「トカゲはトカゲだろーが!! 恐竜とかいって、ただのトカゲ亜種じゃねーか!」
「バーロー。トカゲと一緒にしてんじゃ……ねェよ!」
確かに背後から攻撃したつもりだったが、斧で完全に防がれた。しかも、その表情は嬉しそうに口端が上がっている。
「やっぱ、ただ力強いだけのトカゲじゃねーか」
「のわりには、顔引きつってるぜ!」
「――ッ」
遼太を弾き飛ばし、追撃しようとしたザクロの視界に写ったのは、三つの匣兵器。
「チッ……」
舌打ちと共に軽々と一撃の下、三匹を叩き潰すと、放ってきた二人へと足を向ける。
ラルに爪を向けて駆け出した瞬間、目の前に落ちてくる斧。
「だよなぁ?」
まるで分かっていたかのように、急停止し、ラルに構えていたはずの爪を遼太へと向け、切り裂いた。
「安い挑発に気づいてねぇわけねーだろ。バーロー」
「ガッ……!」
「遼太!」
ラル、γと次々に倒され、獄寺がボンゴレ匣で対抗したが、ブルーベルの乱入によってザクロにトドメを刺すまでにはいかなかった。
「ブルーベルの大技見せてあげるわ」
「く、そ……」
目の前に現れた巨大なアンモナイトに、ザクロの嵐の炎。
それでも、最後まで抵抗しようと起き上がろうとした遼太の後頭部に、衝撃が走り、地面に顔面から突っ込むことになった。
「あ゛!?」
凄まじい咆哮と爆発音に遮られてしまったものの、鼻先を抑えながら、後頭部に蹴りを入れた人物へと目を向けた瞬間、色々言いたかった文句が全て真っ白になって、なんともマヌケ面でその人物たちを見上げる。
「凛……?」
そこにはヴァリアーの制服に身を包んだ凛が、昔と変わらない笑顔で立っていた。
「トカゲと貝に負けそうになるとか、ダッサ」
「しししっ情けねーの」
「う、うっせーよ! 化石だぞ! 化石! それにT-REX!」
「進化をやめた引きこもりと、進化できず凍え死んだトカゲだろ。どうせ作るならクマムシで作れっての」
ベルに担がれていた獄寺は落とされた痛みを感じながらも、驚いた顔で凛を見上げる。遼太たちの言ったとおり、本当にヴァリアーの制服を着ている。傍らには雲の炎をまとった狼。
「ほ、本当にヴァリアーにはいってんのかよ……」
「? なんでそんな反応?」
「逆にこっちが聞きてーよ! ナイフ野郎と殺し合いしてただろ!」
「……あーベルとリボーンが私殺せなかった時の?」
ほとんど覚えていないため、少し理解するまでに時間が掛かり、獄寺も遼太も表情が引きつってしまう。
「そんなんベルとリボーンをイジる時のネタ程度じゃん」
「なっ……」
「それよりも、スクアーロどこにいるか知ってるかしら?」
「……あいつはやられて、今、山本たちが捜索してる」
獄寺が申し訳なさそうに言ったものの、帰ってきた反応は予想の斜め上のものだった。
「ハッ死んだか」
「ハッ死んだか!」
「てことは、次期作戦隊長は私かしら!」
「これでド突かれずにすむ♪」
「いやー静かになっていいね。サンドバックないのは心配だけど」
「やっぱこいつら普通じゃねぇ……」
仲間意識なんて、ヴァリアーにはないのだろうかと、少し心配になってしまうが、獄寺が心配したところで意味はない。
ヴァリアーが戦闘している場所から少し離れた場所に、獄寺たちは運ばれ、ルッスーリアに治療を受けていた。前にはライフルを撃っている凛の姿。
「んもぅ! やっぱり家事ばっかりなんて嫌よォ! ねぇ? 凛」
「変わる?」
「ライフルはあんたの方が得意でしょーが。掠らせたら私が殺されちゃうじゃない」
「ごめん。ミスった。じゃダメ?」
「それで許されるのはアンタくらいよ……」
ルッスーリアがため息をつくと、近づいてくる気配に目を向ければ、草むらから現れた狼。
「あら?」
凛の匣兵器だろうかと、目をやるものの炎がどこにも灯っていない。本物の狼のようだ。凛もルッスーリアの声が気になったのか、顔を上げて振り返ると、目の前に迫ったそいつ。
「うわぁっ!?」
遼太との再会以上に興奮した様子で、全身をくまなく擦りつけるような激しいスキンシップ。
「痛い痛いっ! ニセー、すと、ストップ!」
全身にこすりつけられ、時折脇腹にあたる痛みに凛が楽しげな悲鳴を上げていると、ようやく落ち着いたのか、長老に押し返されながら少し離される。だが、表情は誰がどう見てもまだまだ物足りなさそうだ。
「知り合い……? というか、マーキングされるんじゃない? 凛」
名前からして、完全に長老の次かなにかの群れの長だろう。その証拠に、長老にも同様にスキンシップをしているが、凛に対してほど激しくないし、長老がひとつ唸れば頭を下げている。
「お前ら、軍用狼でも育ててたのか?」
「違う違う」
ラルに聞かれても、遼太にはそう答える他なかった。
「あー痛かった……ん? 痛かった? ニセー。おすわり」
ふと感じた疑問に、凛がそう命じれば、ニセーは大人しく座り、尻尾をバタバタを振る。その中、凛はニセーの体をまんべんなく触ると、首付近にかけられた硬い何か。
「……」
手にとってみれば、無線と手紙のようだ。しかも、猫耳の付いた鳥のイラストが描かれている。
「もう危ないからここから離れてって、みんなにも言っておいて。いいね?」
少しだけ不満そうに、だが頷いたニセーの頭を撫でると、
「いい子。あいつに頭突き食らわせていいから」
そういうと、ニセーは森の中へと戻っていった。