笑って、群れて、失った    作:こっここーまん

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14 幽霊 vs 狂殺者

 ゴーストから伸びた触手は、敵味方関係なく、炎を吸収していた。リングや匣兵器を出していれば、それだけ多くの死ぬ気の炎が吸われる。とにかく、避けるしかなかった。当たれば死ぬ気の炎を吸い付くされ、死ぬだけ。

 動けないラルの目の前に迫ってきた触手に、ラルは目を閉じたが、一向に衝撃もこなければ、炎を吸われる気配もない。そっと目を開けてみれば、目の前にいたのは自分に向かっていた触手を斧で防いでいる遼太だった。

 

「貴様、何をして……!?」

「文句言われる筋合いねェよ!? ケガ&病人なんだから大人しくしてろって!」

「そんなことをしたら、貴様の炎が吸い付くされるぞ!」

「ヘーキ! ラルのスパルタ訓練より、百万倍マシだし!」

 

 後ろからでもわかるほどのやせ我慢。しかし、ラルにはどうすることもできない。

 潤也は物陰に隠れて様子をみていた。

 

「ジュン!」

「跳ね馬? それにスクアーロも無事だったんだね」

 

 大怪我ではあるものの、生きているようだ。

 

「あの巨人、どうにかしねーとな」

「でも、どうにもならな――っと」

 

 飛んできた触手を避けたものの、潤也を追うように曲がる。

 

「ぇ……」

 

 触手は曲がるという新しい情報を頭に入れる頃には、誰かに突き飛ばされ地面に叩きつけられていた。

 痛みに耐えながら、体を起こせば、そこには見慣れた幼馴染が青い顔をして立っていた。

 

「凛!! 右!!」

 

 ベルの声に目をやれば、こちらに向かう数本の触手。しかし、逃げる方向を塞ぐように先程潤也を襲おうとした触手が、遮っていた。

 

「――っ」

 

 幅広のナイフを構えたその瞬間、目の前に飛び出してきた影は、凛と触手の間に割り込んだ。

 その影の死ぬ気の炎を容赦なく触手は吸い取り、それを干からびさせた。代わりに、凛にその触手が当たることはなかった。

 

「……」

 

 その影の正体を誰よりも早く、理解したのは凛だ。

 ほかの人間がその影の正体を理解したのは、ただ恐ろしいほど痛い殺気がまき散らされた後だった。

 

 殺気を放つ人間を遮っていた触手が、消えた。

 

「あ……アハハっ、なぁんだ殺せるよ。殺せる……殺す。えぇ。絶対」

 

 狂気にも似た純粋な殺気を携えたまま、凛はゴーストに向かって駆け出した。迫る触手はすべてナイフで切れば、消えてなくなった。

 

「あれじゃあ……あの人、そのものじゃねーか……」

 

 どんなに強大なファミリーであろうと、たった一人の大事な兄を抹殺しようとするなら現れ、全てを破壊していった女。

 

「ベル先輩。素朴な質問なんですけど、本当にあのバーサーカーな先輩殺せるんですか?」

「……」

 

 いくら呪いの指輪をつけて力が倍増されているとはいえ、あの殺気は本物だ。今まで見てきたどんな時よりも、純粋にゴーストを殺そうとしていた。

 

「そんな無理かもって思ってる先輩に朗報でーす。あのまま放置してたら、凛さんは死にまーす」

「負けるってことかよ」

「勝とうが負けようが、どっちにしても凛さんは死にますよ。あのリングはただでさえ代償が大きいのに、セーフティー無しで全力で力使ってますし、精神食われながらゴーストに生命力食われ続けてるんですから、むしろ今普通に戦ってるって時点でおかしいんですよー」

「戦えてんだろ。もしかしたら、全部使い切る前に倒せるかもしんねーだろ。クソガエル」

「あれ? 実は先輩、凛さん生きててほしかったり――ゲロッ」

 

 頭にまたナイフが刺さった。

 

「ま、ぶっちゃけ、もう凛さんの意識、ろくにないと思いますよ? あの白蘭似の幽霊殺すって思考以外ないと思いますし」

 

 ゴーストに近づけば近づくほど、触手の幅は狭くなる。最後の一歩の瞬間迫る触手を、左腕で防ぐ。その瞬間に左腕から干からび始めるが、

 

「邪魔」

 

 その一言で左腕を切り落とすと、もう一歩を踏み込んだ。

 殺せる。

 思考と行動は寸分の狂いも誤差もなく、ゴーストの首を切り落とした。代償として、ゴーストの首は体から離れた瞬間、消え失せ、残ったのは体と触手だけ。

 

「殺、した……――――ッ」

 

 首を落として死なない人間はない。そう、゛人間”であれば。

 たった数瞬の遅れだった。切れた首の断面から生えてきた触手を避ける気力も体力もなかった。

 

「カスが」

 

 痛みを感じる機関もイかれたのか、目の前の景色が急速に回転し始め、なんとなく分かった。ザンザスに蹴り飛ばされた。

 

「ボ、ス……?」

「凛!」

 

 景色が止まり、視界の上から現れたのは見慣れた金髪。

 

「死んで、ない。死に顔、一瞬でも、見なきゃ」

「ちょっと! ベル、抑えてて! そのまま行っても、倒す前に失血で死んじゃうわよ!」

「いらない、殺す。ヘーキ。粉々にし――」

「とーお」

 

 気の抜けた掛け声と共に、リングが外され、途端に凛が倒れた。

 

「ゴーストが消えていく……?」

「元々こちらに存在するべきものじゃなかったんだろう。危ういバランスで立っていたのを、あいつが壊した。だから残った体は徐々に崩壊していっているのだろうな」

「……」

「俺は平気だ。行ってやれ」

「ゴメン! ラル! ありがとう!!」

 

 走っていった遼太に、ラルは大きく息を吐いた。






バーサーカー 降☆臨 ヽ(゚∀゚)ノ

凛のぶっ壊れ具合かけてよかったです。
名前でしかでてきてない、叔母さんに似てる言われてた大切なものが壊されたor壊されそうな時の反応出そうと思いつつ、出せてなかったので。

呪いのリングと思いっきり会話してるので、どっちがどっちと区別して読んでいただけたら楽しいかな? 
どっちも殺伐してますが…(笑)

一応、補足。
長老はモデルではなく、長老の死体をそのまま使ったので兵器として運用していた以外に、微かに生前の記憶のようなものが残っています。そのため、凛を庇ったのは凛の指示ではなく、本人の意思でした。
結果、凛ちゃんブチギレ、バーサーカーと化してますが。
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