笑って、群れて、失った    作:こっここーまん

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15 おわりの笑み

 綱吉と白蘭、ユニのいる空間に、どれだけ攻撃してもヒビひとつ入らない。

 

「なんか壊す方法ねェのかよ!?」

「そんなこと言われても……」

 

 一瞬、気絶してしまっている凛に目を向ける。

 もしかしたら、凛の持っている呪いの指輪の能力であれば、どれだけ硬い壁だろうが、空間であろうが、壊す、消すのどちらかは可能かもしれない。

 

「今のところ、どうにもならないよ」

 

 しかし、今生きているのですら、ザンザスの機転のおかげだというのに、これ以上あのリングを使わせたら、次は本当に死んでしまう。

 

(ザンザスは、あの時、唯一ゴーストを倒せる可能性があったから、凛を助けた。なら、今度だって……)

 

 あの壁を破壊できるというなら、凛を叩き起してでも破壊させるだろう。起こさないのは、確証がないから。

 

「おしゃぶり?」

 

 遼太の声に、潤也もユニの方へ目を向ければ、地面に落ちたおしゃぶりから飛び出しているなにか。

 大空のアルコバレーノの力をもってすれば、仮死状態のアルコバレーノを復活させることができる。しかし、それには時間とあるリスクが伴う。

 

「まさか、ユニ様の逃亡の狙いは最初から……」

「……アルコバレーノの復活の時間を稼ぐためだよ」

「ふーん……それで、潤也君が非73線装置を破壊してたんだ」

 

 最強の赤ん坊と言われていても、また非73線がでていてはまた負ける可能性がある。そのため、ミルフィオーレから脱出する際、すべて装置を破壊してきていた。

 

「でも、その様子じゃ、下手すりゃあと1時間はかかりそうだね」

「!!」

「図星だね」

 

 その声と共に綱吉の首から、ゴキャと骨が外れる音が響いた。

 

「ツナ!」

 

 仲間たちの叫びが響く中、綱吉は額に灯っていた炎を消しながら、地面に力なく倒れた。

 

「ツナ、お前は白蘭を倒さなきゃなんねーんだ」

 

 たった一人、リボーンだけが綱吉に静かに語りかける。

 

「いいか。ツナ、死ぬ気で戦ってんのはお前だけじゃねぇ。ユニもお前たちを平和な過去に帰すために、命を捧げる気なんだ」

「なっ……!?」

「いくら大空のアルコバレーノだっていっても、死ぬくらいのリスクは、あるだろうね」

「お前、それ知ってて……!?」

 

 ユニを逃がしたのは、潤也だ。そして、おしゃぶりを託したのもの。

 死ぬかもしれないと分かった上で、ユニを助けたのかと、すぐ喉元まで迫った言葉に、潤也は小さくため息をついた。

 

「そうだよ」

 

 たった一言だけ。そう、答えた。

 現状の戦力で白蘭を倒すには、それくらいのことをしなければ、難しいのだから。

 

「げほっ!」

 

 リボーンの言葉が届いたのか、綱吉が目を覚まし、起き上がる。

 今までの綱吉の人生が不運の連続だと、白蘭は笑ったが、綱吉ははっきりと違うと否定した。

 

「この時代にきてなくてよかったものなんてひとつもないんだ。つらいことも、苦しいことも、楽しかったものも……そして、みんながいたから、俺はここにいるんだ」

 

 言葉に呼応するかのように、綱吉の額には橙色の炎が灯る。

 

「俺の炎は、お前が支配するこの世界だからこそ生まれたみんなの炎だ! むやみに人を傷つけたために倒されることを、後悔しろ!!」

 

 グローブからも大空の透き通った炎が溢れ出した。

 そして、現れたボンゴレⅠ世。ボンゴレリングはふたつに分けるため、その炎の力をマーレリングやおしゃぶりに比べ弱くしているという。そして、今、この時、その封印解くと。

 封印を解いたおかげか、綱吉も白蘭と同等に戦えるようになり、結界の中での戦いは一層激しさを増し始める。

 

「これ、本格的にユニを安全な場所に移動させたほうがいいんじゃない?」

「そうだな! ユニがどうするにせよ、あそこは危険すぎる」

「なぁ、そのことなんだけど」

 

 遼太の提案に、全員が頷いた。

 綱吉と白蘭が結界の中で戦う中、遼太たちはタイミングを計っていた。全ての匣でコンビネーションを行うのは、どうしてもタイミングが難しかったが、バジルが叫ぶ。

 

「今です!!」

 

 雨イルカに全ての炎が集まり、凄まじいエネルギーを発していた。

 

「アレなら破れるかも」

「頼む…!!」

 

 バジルと雨イルカの攻撃が結界に当たるが、人一人がようやく入れるくらいの小さな穴を作っただけ。

 しかし、その小さな穴へと飛び込む人影。

 

「よぉ。姫」

 

 γだった。

 

「俺の炎も使ってくんねーか?」

 

 そういうと、γはゆっくりとユニを優しく、強く抱きしめた。そして、二人は数度言葉をかわすと、二人は消えた。

 

「……笑ってた」

「ぇ?」

「ユニのやつ、笑ってた。ホント、うれしそうに」

「……そう。なら、よかったんじゃないかな」

「……」

 

 結界の中で、白蘭と綱吉が互いに最後の一撃に全てをかけて、攻撃を放った。

 その衝撃は、あの結界すらも破壊し、大きなくぼみに残っていたのは、綱吉だった。

 

「十代目!」

「ツナ!」

「大丈夫か!?」

 

 慌てて駆け寄った獄寺、山本、遼太たちに綱吉は支えられると、涙を流す仲間たちを悲しげに見つめる。

 戦いには勝ったが、いろいろなものが傷つきすぎた。

 だというのに、ヴァリアーはまだ桔梗を攻撃する。

 

「ちょっなにしてるの!? これ以上の犠牲者はいらないよ!」

「こんなカスを庇ってどうする気だ。こいつは殺ししかできぬ怪物だぞ」

「それは違う……彼らは、元々一般人だ」

 

 ミルフィオーレの幹部時代、各方面でスカウトのために調べていたが、桔梗たちは誰一人として引っかからなかった。つまり、リストにあがらない一般人。

 

「一般人とは安い言われようですね……我々はパラレルワールドなら各分野で天下を取った人間だ!だが、この世界ではくだらぬ不運でそれは叶わなかった……白蘭様はそんな我々の憤りを力に変えてくださったのだ」

 

 綱吉や入江が息を呑む中、たった一人笑いを堪えなかった人物がいた。

 

「ふっ……アハハハ!」

「雲雀、潤也……」

「ジュン!?」

「いや、ごめんごめん。僕も少しは空気を読もうとは思ったんだけどさ、さすがにコレは、ね?」

 

 潤也は困ったような笑みを作りながら続けた。

 

「だってそうでしょ? パラレルワールドのことなんて、ユニや白蘭でもなければ確証が取れない。もしかしたら、実力があって、その失敗を白蘭が“奇跡”で助けられる人物からピックアップされたとかさ。

 そもそも、ボンゴレ匣が作られるただひとつの世界で、ちょうどその各分野天下を取れるはずの人間が、運良く失敗するなんて、相当な確率だとは思わない?」

「ッ――」

 

 桔梗が口を開いたその瞬間、こめかみに当てられた銃口から撃たれた炎が、首から上を全て消し去った。

 

「うわっ……」

 

 潤也を初めとする、数人の悲鳴があがるものの、撃った本人は気にせず、どこかに歩き去ってしまう。ルッスーリアだけが、首のない桔梗の命を繋ぐために晴の匣兵器を開いていた。

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