笑って、群れて、失った    作:こっここーまん

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16 ピリオド

 白い天井。消毒液の匂い。

 

「……」

 

 ここはどこだろうか? 体についているチューブを全て外して、扉から外に出れば、驚いた顔の女の子たち。

 

「凛ちゃん!!」

 

 なぜだか、この子の泣き顔は好きじゃない。

 

「よかった……」

「よかったです……」

 

 泣いている彼女たちにかける言葉は、なんとなくわかった。

 

「なかないで。きみらになかれたら、あいつにのろわれそう」

「呪われる……?」

「あいつ?」

「過去の凛だろーな」

 

 いつの間にかいた黒い赤ん坊は、何故かニセーの上に乗っていた。

 

「はひっ!? あの狼ですか!?」

「外でうろちょろしてたから連れてきたぞ」

「ニセー……? どうし――」

 

 言い終わる前に、のしかかってくる狼。気が付けば、悲鳴と天井が見えた。

 

「今の悲鳴なんだ!?」

「ニセー!? なんでここにいるの!?」

「てか、凛食われてるー!!!! だめだー! ニセー! 凛、今スゲーけが人!!」

 

 遼太とニセーの戦いが始まると、凛は起き上がりどこか寝起きのような表情で、全員を見上げていた。

 

「完全に後遺症でてるね……あと数時間もすれば戻るとは思うけど」

「大丈夫なの?」

「うん。いや、左手は、歴史が修正された時に治るんじゃないかな? というか、これも」

「そうなんだ。よかった……」

「だから、凛のことは僕らに任せて、京子ちゃんたちは過去に戻る準備してきなよ」

 

 京子とハルが部屋に向かったあと、まだニセーとじゃれ合っている遼太から目を離し、また眠ってしまった凛の傍らに座るリボーンに目をやる。

 

「そういや、キドニーの奴はいねぇのか?」

「いやーそれが、いるみたいなんだよ。僕がミルフィオーレから逃げるときに、手助けしてくれたし、桔梗たちのデータをくれたのも、実は店長でさ」

「あの人もしぶといなぁ……ぐへっ!! のやろー!! やったなぁ!! こ――って、アレ?」

 

 遼太が構えると、突然ニセーが走り出し、大きくうなり始める。その角から現れたのはベルフェゴール。

 

「あ? んだよ。なんで王子が威嚇されんだよ」

 

 ベルは一度凛の方を見ると、廊下で寝ているようだ。

 

「……なんで廊下で寝てるわけ? つーか、そこのアルコバレーノ。今すぐ、凛起こしてくんね!? こいつ、スゲー威嚇してくんだけど!?」

 

 あと一歩でも近づいたら飛びかかってきそうだ。

 

「お前なら殺していっかとか言い出しそうなのにな」

「それしたら、ぜってー凛ブチギレんだろ」

「「あっ……」」

 

 ありえる。潤也が迷った結果、近づくと傍で屈み頭を撫でた。

 

「その人は悪い人じゃないから。今はちょっと凛の血の匂いすごいかもしれないけど、この人のせいじゃないから、ね?」

 

 そういうと、少しは信じてくれたらしく、唸るのをやめた。しかし、その目はやはり疑っていた。

 

「凛の回収?」

「そ。王子が迎えにきてやったってのに……」

 

 一瞬ニセーを見たが、抱えたら噛み付いてくるのは想像できた。

 

「マーモンも後からくるだろうし、それまで待ってれば?」

「そーすっか……」

 

 その間に、一度目を覚ましてくれるのが一番いい。

 凛はベルに任せ、潤也は恭弥のもとに行こうと歩いていれば、出口に向かっている骸たち。

 

「あれ!? 骸さん、見送りは?」

「いきませんよ。クロームには今済ませました。あぁ、でも、君がどうしてもというならいきますが?」

 

 わざとそんな潤也の胃が痛くなりそうな提案をする骸の表情は、笑っていて、潤也も冗談と分かりながらも少しだけ胃が痛くなりそうだった。

 

「牢獄出てテンション高いのはわかるけど、はしゃぎすぎは禁物ですよ?」

「クフフ……では、クロームのことを頼みます」

「はいはい。わかりました」

 

 今度こそ恭弥の元へ行こうと、踏み出したところで、息をついた。

 

「やめよう……」

 

 行ったら髪の事やら、骸のことで色々聞かれるだろうし、下手すれば問答無用で噛み殺される。

 バジルは荷物をまとめ終え廊下に出ると、なにやら忙しなく何かを探している遼太がいた。

 

「比賀殿?」

「ん? おーバジル。準備できたのか?」

「はい。比賀殿、これを未来の拙者に返しておいてはもらえませんか?」

 

 取り出したのは、匣と指輪、それから戦いの指南書だ。どれも未来の自分のもので、今までは借りていただけだ。直接返すことはできないが、遼太であればちゃんと返してくれるだろう。

 

「おう。任せとけ」

「それで、なにか探しものですか?」

「あー武の奴が見当たんなくてさ。知らねぇ?」

「山本殿でしたら、先程スクアーロと外に」

「ん? 俺になにか用だったのか?」

 

 いつの間にか山本がそこに立っていた。その手にはバット。それ以外には何も持っていない。

 

「お前、荷物それだけ? あ、いや……ありえなくはなさそうだけど……マジで?」

「牛乳は飲んじまったしな」

 

 律儀にそこまでしっかり持ち帰る必要はない。入江から言われているのは、匣兵器は過去へ持ち帰れないこと、指輪は未来で手に入れたものは持ち帰れない。それ以外のボンゴレリングは持ち帰ることができる。その他、未来で開発、手に入れたものに関しては、全て持ち帰ってはいけない。

 それを全部なくすと、ほとんどが手ぶらになった。

 

「そういや、準備できたって言ってたぜ? 俺たちもいこうぜ」

 

 山本が装置の場所へ歩き出すと、バジルと遼太もついていく。その途中、少しだけ山本が歩く速度を緩めて、遼太の隣に並ぶと、先程の探していた理由を聞いた。バジルもそれが聞こえたのか、二人の会話の邪魔にならないよう、少しだけ距離を開けて歩く。

 

「あー……その、なんていうか、昔の俺にさ、言伝をだな……ほら、リング争奪戦のあとだろ? だから、色々さ」

「ん。なんて伝えりゃいいんだ?」

 

 少しだけ恥ずかしそうに頬をかくと、

 

「『ありがとう』……それだけで」

「そんだけでいいのか?」

「もっと言いたいことはあるけど、たぶん俺の今までって、白蘭がどうとかで変わるもんでもないだろうし、だから、あんまり未来のことは言えないだろ?」

 

 この年、仲間の誰が死んだとか、それを助ける方法とか、今ならわかるが、それを教えるのは反則だろう。

 

「だから、あの時、俺がした選択は間違ってなかったって、それだけ伝えられりゃいいわ!」

「……そっか! ちゃんと伝えるからな!」

「あぁ、頼むぜ!」

 

 二人は、互いに笑いあうと拳を突き合わせた。

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