笑って、群れて、失った    作:こっここーまん

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04 遭難したそうなんです。

 この並森山の奥までくるようになったのは、中学に入ってからと、まだ一年と経っていないが、すっかり道は覚えてしまった。

 覚えなければ、ここに入り浸る友人たちを見つけられないし、秘密基地すらたどり着けない。

 

「にしても……」

 

 潤也が仕掛けたであろう罠は、割と本気で生きているものを殺しにくる。もちろん、人がくるような場所は、遠慮してケガ程度で済むように作ってあるが、奥にくれば来るほどその危険度は増す。

 

「これ、確実に俺が引っかかっても、仕方ないか! で済ませそうだよな」

 

 本当に友人だと思われているのか、不安に思えてくる。

 

「あーもう、動物相手だ。動物相手」

 

 とにかく潤也たちを探そうと、いることの多い場所の方へ向かっていると、大きな揺れと共に、大きな亀のような何か。

 

「なんだありゃ!?」

 

 動物にしても、見たことがない。

 

「……行ってみるか」

 

 友人探しはあとだ。珍しい生き物だったら、捕まえるか巣まで追いかけて、自慢してやろうと、警戒しつつ、それのいた場所に向かえば、騒ぎ声。

 

「って、武?」

「遼太! なんでこんなところにいんだ?」

 

 山本に綱吉、獄寺とビアンキと、知り合いが集まっていた。

 

「俺は、さっき変な生き物いたから、そいつ探して……」

「そりゃ、たぶんエンツィオだな」

「エンツィオ?」

「こいつだ」

 

 リボーンが見せるのは、小さな亀。

 

「いや、もっと大きいやつだって」

「こいつは、スポンジスッポンっていって、水を吸うと大きくなるんだ」

「……マジで!?」

「試してみるか?」

「「やめろ!!」」

 

 綱吉とディーノが青い顔をして止め、リボーンの手からエンツィオを奪うと、しっかりとポケットの中にしまった。

 

「それでツナたち、何してんだよ? 女の子泣いてるし……」

「じ、実は、橋の上から落ちて……道わからなくなってて」

「あーホントだ。吊り橋落ちてんじゃん」

 

 上を見上げてみれば、かかっていたはずの吊り橋が無くなっていた。

 

「なるほどな。帰り道わかんないんだったら、案内してやるよ」

「え!? わかるの!?」

「あぁ。というか、いろいろ危ないしな」

「?」

「ほら、前に言っただろ? ジュンのやつ、この辺に罠仕掛けてるから」

 

 そういえば、前にそんなことを言っていた。綱吉も山本も本当だったのかと、苦笑いになってしまう。

 

「なら、たまに置いてあった非常食はあなたたちが置いた物かしら?」

「置いてあったなら、たぶん。昔、宝探しごっこで隠したやつ、そのまま置いてあったりするんで」

 

 適当な地図と暗号で互いに隠した宝を探すのだが、似たような場所が多いのと、動物も多いので、結構危ない。ただ、それを咎める人は、三人の周りにはいなかったが。

 

「でも、遼太、用があって山にいたんじゃねぇのか?」

「あーダチを探しに来たんすけど……って、なんで俺の名前……」

「……さっきから、ツナに呼ばれてんじゃねーか。俺は、ディーノ。よろしくな」

「比賀遼太っす」

 

 顔を合わせるのは初めてだったが、キドニーたちから本当に何も聞いていないらしい。適当に誤魔化せば、頭を下げられた。

 

「ホント、すみません! 俺のダチがこの辺、変に改造してて、わりとマジで危ないんす!」

「え? あ、あぁ。別に平気だって。気にすんな。このままじゃ、野宿だったしな。こっちこそ、ありがとな」

「いやいや! ホント、死人でるレベルで危ないんで、案内します……」

 

 珍しい遼太の暗い笑顔に、綱吉たちも潤也に少し恐怖を抱くが、詳しく聞きたがる人はいなかった。

 

「と、とりあえず、潤也君探さなくていいの?」

「あいつらなら、勝手に帰ってくるし、別にいいって」

「別にいいじゃねぇか。元々、キャンプの予定だったんだ。潤也たち呼びに行くくらい一緒に行くぞ」

 

 結局、全員で潤也たちがいるかもしれない場所へ向かえば、ハルや綱吉の悲鳴が絶え間なく響いていた。

 

「だ、だから、本当にいいのかっていったのに」

「これ、本当に危ないのな……」

「これじゃあ、トレーニングだな」

「敵地への侵入の修行にうってつけだな」

「お前、最初からこれが目的だっただろ!」

 

 どうにか小さな川までくれば、予想通り見つけた二人の影。

 

「騒がしいと思ったら、なんかいっぱいいるね」

「もっと罠減らせ! 死ぬかと思っただろ!」

「当たったら実際死ぬんじゃない?」

 

 悪びれない潤也の隣では、川に向かって何か投げる凛。数秒後、川に火柱が立った。

 

「たーまやー!」

「は、はひっ!?」

「爆弾!?」

「いや、ナトリウムだな」

「ナトリウム?」

「正解! さすがだね。爆弾とはちょっと違うんだけど、ナトリウムは水に触れると、燃え上がるんだ。だから、普段は油の中で保存してるでしょ?」

「そ、そうなの?」

 

 理科は得意ではなく、自然と綱吉たちの視線が獄寺に集まり、獄寺はすぐに頷いた。

 

「空気中の水分にも反応するので、手で握るなんてありえないんすけど……」

「そのへんは水で溶ける紙で包んでみました。それで、感想は?」

「うーん……おもしろいけど、使える感じはしないなぁ。それに、遊びにもあんまり使えなさそうだし」

 

 川から流れてくる浮き上がった川魚をつかむと、袋に詰め込む。

 

「ボンバー漁、禁止されてるしね」

「まぁ、犠牲になってしまったものは、おいしくいただくとしましょう」

 

 袋に魚を全て詰め込んでいる凛の後ろの茂みから現れた狼の群れ。

 

「近衛さ――むぐっ!?」

「大きな声出すな。ツナ。俺が刺激しないように、凛をこっちに連れてくる」

 

 頷く綱吉の口から手を離し、ディーノが近づこうとすれば、その腕を掴んだ遼太。

 

「大丈夫っすよ。あれ、多分長老っすから」

「長老?」

 

 不思議そうな表情を浮かべるディーノたちに、遼太は凛の方を指せば、狼たちは茂みから出てきたところで、座り、動く様子はなく、凛も狼たちに気がつくと、楽しげに笑顔を向けて、魚を数匹狼たちへ投げた。

 

「やっぱり」

「え!? どういうこと!?」

「あいつ、何故か長老と仲がいい……のか、なんなのか……」

「で、デンジャラスな方ですね……」

 

 野生の狼と仲がいい人なんて初めて見たが、顔に子分だという虫をつけていた赤ん坊がいたのを思い出し、どちらの方がマシかと考えてみたところ、狼じゃないかと、妙に納得してしまった綱吉は、それ以上何も言わなかった。

 

「で、結局なんなの?」

「遭難した人たちを助けようって話。ちょうどいい時間だし、僕らも帰る?」

「了解」

 

 まだ袋には魚が残っていた。数えてみれば、四匹。

 

「……凛!? ちょっと待って!?」

「なに?」

「それ、まさか家で食べるんじゃ……!」

 

 遼太の疑問に、凛と潤也は驚いたように遼太を見つめたあと、

 

「今頃……?」

「へ?」

「いやいや……罠に掛かった動物とか、結構食べてるよ?」

「大丈夫だって。生きてるものなら、大抵食べられる。ほら、昔はうさぎを鳥だって偽って食べてたくらいだし」

「俺はこれからからあげが出てきた時、どういう顔で食えばいいの!?」

「普通に鳥ならかかってる時あるよ」

「そういう意味じゃねぇよ!」

「で、デンジャラスな人たちです……」

「三人共、結構すごい生活送ってるだね……」

 

 学校では、普通の人たちだと思っていたが、案外違いそうだ。さすがの山本も、これには困ったように笑っていた。むしろ、平気そうな顔をしているのは、マフィアに関連している人たちの方だった。

 

(なんか、この二人ってリボーンたちと考え、似てんのかな……?)

 

 ふと、そんな思いがよぎった綱吉だった。

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