この並森山の奥までくるようになったのは、中学に入ってからと、まだ一年と経っていないが、すっかり道は覚えてしまった。
覚えなければ、ここに入り浸る友人たちを見つけられないし、秘密基地すらたどり着けない。
「にしても……」
潤也が仕掛けたであろう罠は、割と本気で生きているものを殺しにくる。もちろん、人がくるような場所は、遠慮してケガ程度で済むように作ってあるが、奥にくれば来るほどその危険度は増す。
「これ、確実に俺が引っかかっても、仕方ないか! で済ませそうだよな」
本当に友人だと思われているのか、不安に思えてくる。
「あーもう、動物相手だ。動物相手」
とにかく潤也たちを探そうと、いることの多い場所の方へ向かっていると、大きな揺れと共に、大きな亀のような何か。
「なんだありゃ!?」
動物にしても、見たことがない。
「……行ってみるか」
友人探しはあとだ。珍しい生き物だったら、捕まえるか巣まで追いかけて、自慢してやろうと、警戒しつつ、それのいた場所に向かえば、騒ぎ声。
「って、武?」
「遼太! なんでこんなところにいんだ?」
山本に綱吉、獄寺とビアンキと、知り合いが集まっていた。
「俺は、さっき変な生き物いたから、そいつ探して……」
「そりゃ、たぶんエンツィオだな」
「エンツィオ?」
「こいつだ」
リボーンが見せるのは、小さな亀。
「いや、もっと大きいやつだって」
「こいつは、スポンジスッポンっていって、水を吸うと大きくなるんだ」
「……マジで!?」
「試してみるか?」
「「やめろ!!」」
綱吉とディーノが青い顔をして止め、リボーンの手からエンツィオを奪うと、しっかりとポケットの中にしまった。
「それでツナたち、何してんだよ? 女の子泣いてるし……」
「じ、実は、橋の上から落ちて……道わからなくなってて」
「あーホントだ。吊り橋落ちてんじゃん」
上を見上げてみれば、かかっていたはずの吊り橋が無くなっていた。
「なるほどな。帰り道わかんないんだったら、案内してやるよ」
「え!? わかるの!?」
「あぁ。というか、いろいろ危ないしな」
「?」
「ほら、前に言っただろ? ジュンのやつ、この辺に罠仕掛けてるから」
そういえば、前にそんなことを言っていた。綱吉も山本も本当だったのかと、苦笑いになってしまう。
「なら、たまに置いてあった非常食はあなたたちが置いた物かしら?」
「置いてあったなら、たぶん。昔、宝探しごっこで隠したやつ、そのまま置いてあったりするんで」
適当な地図と暗号で互いに隠した宝を探すのだが、似たような場所が多いのと、動物も多いので、結構危ない。ただ、それを咎める人は、三人の周りにはいなかったが。
「でも、遼太、用があって山にいたんじゃねぇのか?」
「あーダチを探しに来たんすけど……って、なんで俺の名前……」
「……さっきから、ツナに呼ばれてんじゃねーか。俺は、ディーノ。よろしくな」
「比賀遼太っす」
顔を合わせるのは初めてだったが、キドニーたちから本当に何も聞いていないらしい。適当に誤魔化せば、頭を下げられた。
「ホント、すみません! 俺のダチがこの辺、変に改造してて、わりとマジで危ないんす!」
「え? あ、あぁ。別に平気だって。気にすんな。このままじゃ、野宿だったしな。こっちこそ、ありがとな」
「いやいや! ホント、死人でるレベルで危ないんで、案内します……」
珍しい遼太の暗い笑顔に、綱吉たちも潤也に少し恐怖を抱くが、詳しく聞きたがる人はいなかった。
「と、とりあえず、潤也君探さなくていいの?」
「あいつらなら、勝手に帰ってくるし、別にいいって」
「別にいいじゃねぇか。元々、キャンプの予定だったんだ。潤也たち呼びに行くくらい一緒に行くぞ」
結局、全員で潤也たちがいるかもしれない場所へ向かえば、ハルや綱吉の悲鳴が絶え間なく響いていた。
「だ、だから、本当にいいのかっていったのに」
「これ、本当に危ないのな……」
「これじゃあ、トレーニングだな」
「敵地への侵入の修行にうってつけだな」
「お前、最初からこれが目的だっただろ!」
どうにか小さな川までくれば、予想通り見つけた二人の影。
「騒がしいと思ったら、なんかいっぱいいるね」
「もっと罠減らせ! 死ぬかと思っただろ!」
「当たったら実際死ぬんじゃない?」
悪びれない潤也の隣では、川に向かって何か投げる凛。数秒後、川に火柱が立った。
「たーまやー!」
「は、はひっ!?」
「爆弾!?」
「いや、ナトリウムだな」
「ナトリウム?」
「正解! さすがだね。爆弾とはちょっと違うんだけど、ナトリウムは水に触れると、燃え上がるんだ。だから、普段は油の中で保存してるでしょ?」
「そ、そうなの?」
理科は得意ではなく、自然と綱吉たちの視線が獄寺に集まり、獄寺はすぐに頷いた。
「空気中の水分にも反応するので、手で握るなんてありえないんすけど……」
「そのへんは水で溶ける紙で包んでみました。それで、感想は?」
「うーん……おもしろいけど、使える感じはしないなぁ。それに、遊びにもあんまり使えなさそうだし」
川から流れてくる浮き上がった川魚をつかむと、袋に詰め込む。
「ボンバー漁、禁止されてるしね」
「まぁ、犠牲になってしまったものは、おいしくいただくとしましょう」
袋に魚を全て詰め込んでいる凛の後ろの茂みから現れた狼の群れ。
「近衛さ――むぐっ!?」
「大きな声出すな。ツナ。俺が刺激しないように、凛をこっちに連れてくる」
頷く綱吉の口から手を離し、ディーノが近づこうとすれば、その腕を掴んだ遼太。
「大丈夫っすよ。あれ、多分長老っすから」
「長老?」
不思議そうな表情を浮かべるディーノたちに、遼太は凛の方を指せば、狼たちは茂みから出てきたところで、座り、動く様子はなく、凛も狼たちに気がつくと、楽しげに笑顔を向けて、魚を数匹狼たちへ投げた。
「やっぱり」
「え!? どういうこと!?」
「あいつ、何故か長老と仲がいい……のか、なんなのか……」
「で、デンジャラスな方ですね……」
野生の狼と仲がいい人なんて初めて見たが、顔に子分だという虫をつけていた赤ん坊がいたのを思い出し、どちらの方がマシかと考えてみたところ、狼じゃないかと、妙に納得してしまった綱吉は、それ以上何も言わなかった。
「で、結局なんなの?」
「遭難した人たちを助けようって話。ちょうどいい時間だし、僕らも帰る?」
「了解」
まだ袋には魚が残っていた。数えてみれば、四匹。
「……凛!? ちょっと待って!?」
「なに?」
「それ、まさか家で食べるんじゃ……!」
遼太の疑問に、凛と潤也は驚いたように遼太を見つめたあと、
「今頃……?」
「へ?」
「いやいや……罠に掛かった動物とか、結構食べてるよ?」
「大丈夫だって。生きてるものなら、大抵食べられる。ほら、昔はうさぎを鳥だって偽って食べてたくらいだし」
「俺はこれからからあげが出てきた時、どういう顔で食えばいいの!?」
「普通に鳥ならかかってる時あるよ」
「そういう意味じゃねぇよ!」
「で、デンジャラスな人たちです……」
「三人共、結構すごい生活送ってるだね……」
学校では、普通の人たちだと思っていたが、案外違いそうだ。さすがの山本も、これには困ったように笑っていた。むしろ、平気そうな顔をしているのは、マフィアに関連している人たちの方だった。
(なんか、この二人ってリボーンたちと考え、似てんのかな……?)
ふと、そんな思いがよぎった綱吉だった。