笑って、群れて、失った    作:こっここーまん

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05 ある男の話

「今回は、ずいぶん溜まってるね」

 

 積み上がった書類に、最初にこぼしたのはその言葉だった。

 

「だから、ジュンを呼んだんでしょ」

「うん。わかってるよ」

 

 兄である雲雀恭弥に、こうして呼び出されることはよくある。大抵は、風紀委員の仕事の手伝いだ。

 群れるのを嫌う恭弥ではあるが、さすがに無理なものは無理だ。忍者のように分身でもできれば、組織を作る必要なんてないだろうが、さすがに最強の不良と呼ばれていようとも、そんなことはできず、風紀委員という組織を作った。

 

「いつまで群れるつもりだい?」

 

 遼太と凛のことだ。

 

「とくに、決めてないよ」

 

 基本的に、恭弥は放任する。そうでなければ、小学生の時に半ば家出のように家を出て、胡散臭い駄菓子屋に居候するなんて許さない。

 

「別にジュンが裏でやってることは、気にしないであげるけど、あまり群れると、かみ殺すよ」

「わかってるって」

 

 あまりにも群れとなれば、弟であろうと容赦なく噛み殺しに来るだろう。

 そのへん、遼太はともかく、凛も友達が多いほうではないし、二人共両親がいないこともあって、トラブルも起きにくければ、近所での交流もほとんどない。

 あるのは、たまに絡んでくる不良くらいだ。

 

「……」

「兄さん?」

 

 外をじっと見つめていた恭弥は、立ち上がるとドアへ向かう。

 

「少し、出てくるよ」

「? うん。いってらっしゃい」

 

 恭弥が出ていったあと、外を見れば白銀の世界。日曜日というのも相まってか、校庭は白一色。

 かと思ったが、誰か外で遊んでいるらしい。

 

「って、ツナたちじゃん。あ、遼太もいるし」

 

 生徒が遊んでいるにしては、大きなカメや、穴があると思っていたら、どうやら綱吉たちが遊んでいるらしい。

 しかも、ちょうど今、恭弥が外に出ていった。

 

「あーぁ……」

 

 手を合わせ拝んでいれば、ノックの音の後に入ってきた、リーゼントの男。草壁だ。

 

「潤也さん。いらっしゃったんですか」

「兄さんなら、ちょうど今出かけていきましたよ」

「そうでしたか……」

「書類とか伝言なら、渡しておきますよ」

 

 この仕事のたまり方だ。副委員長である草壁も忙しいだろう。不良グループをひとつ潰したという報告を聞くと、それを簡単にメモしておく。

 

「……潤也さんは、いつ家にお帰りになられるのですか?」

 

 その言葉に、ペンが止まる。

 

「帰らないよ。僕があそこにいたら、兄さんに噛み殺されるのは絶対だからね」

「そんなことは……!」

「絶対、だよ。喧嘩も強くないし、それに、僕、群れるの好きだし」

「……」

 

 群れれば、確実に噛み殺される。それは草壁も理解していた。

 

「でも、勝ち馬に乗りたい。だから、兄さんとうまく距離をとってるんだよ。本当なら、もっと手伝ってあげたいけど、あんまりやりすぎると、ボロがでて、病院送りにされそうだしね」

「委員長も、あなたには甘いようですから、もう少し会う頻度を増やしていただけないでしょうか?」

「考えとく」

 

 昔から、弟というだけで、逆恨みされて、年上の不良に狙われることはあった。だが、ほとんど恭弥本人に事前に察知されるか、潤也をおとりに使って負けるかのどちらかだ。

 そういう意味でも、自然と距離をとっていたのは自覚があった。

 

「僕も、嫌いじゃないんだけどね」

 

 一人になった部屋で、潤也は一人そう、こぼした。

 遼太が倉庫を爆発させた時のような、光と爆発音に、慌てて校庭を見れば、倒れている綱吉たち。

 

「……噛み殺されは、しなかったんだね」

 

 ただ救急車は必要かもしれない。

 

***

 

「ただいまー」

「おかえりなさい」

 

 居間には、キドニーしかいなかった。遼太は病院にいるからいないことに違和感はないが、凛が見当たらない。台所かと覗いても、いない。

 だとすれば、二階の部屋かと、荷物を置くついでに確認してみたが、いなかった。

 

「凛は?」

「体調が悪いそうです」

「……」

「ほんの少しだそうですけどね。使います?」

 

 ノートパソコンを軽く小突けば、潤也も座り、それを自分の方へ引き寄せた。

 凛の居場所を調べたあと、付近のカメラを確認してから、電話をかける。向こうがでるのには、そう時間はかからなかった。

 

『今日、兄貴のところ行ってるんじゃなかったの?』

「もう帰ってきたよ。調子は?」

『だいぶ良くなった。もう平気じゃない?』

「一応、確認しておくよ」

『よろしく』

 

 電話を切ると、キドニーも分かっていたようで、微笑んだ。

 

「本当に、引退って言葉の意味ちゃんと調べて欲しいですね」

「店長も調べたら? スーツのいかついおっさんが、駄菓子屋にくるっておかしいよって教えてあげたほうがいいって」

「私だって不本意ですよ。あと、顔で人を判断したらいけませんって。コワモテのサラリーマンがスイーツ食べちゃいけないって言ってるようなものですよ。かわいそうでしょ」

 

 今だに、キドニーから情報を買いたがって、店に来る人は多いが、やはり子供が多く来るこの店では、やはり目立つ。

 情報屋として、周囲に奇妙な目を向けられるのはよくないことだ。しかし、引退して、もう情報を売る気があまりないとなれば、普通の人から奇妙だと思われたくないヒットマンは、自然と店にはこなくなり、仕事も減る。

 もしかしたら、そういったことも狙っているのかもしれないが、真意は不明だった。

 




遼太は基本、山本が参加してるイベントには参加してる設定ですが、他二人が参加しないことが多いので、カットすることが多い…(笑)
雪合戦の話は好きなんですけどね。
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